現代グリム童話2
2.始まり
「唯!唯!大丈夫か!」僕は無我夢中叫び続けた。
家はさっきの地震で荒れ果てていた。またもや嫌な記憶が頭をよぎる…
「どうしてそばにいてくれなかったの…? ねぇ、どうして…どうして…どうして…どうして…どうして!」
「…唯!」心の底から叫んだ。
「ここにいるよ~、そんな大きな声ださなくても」畑のほうから声が聞こえた。
「それにどうしたの?そんな涙目になってさ。おっきい地震があったから心配し…」
僕は車椅子に乗っている妹を思わず抱きしめて、
「お前がそんな心配をしなくていい…。ただ、ただ、自分の事を心配していればいいんだ…。」
「…」
それからしばらくして探索中に起きた出来事を妹に話した。すると、
「実はね、私も夢で見たの。しかも、お兄ちゃんがいない間にね、ついさっきの地震の後にハーメルンと も会ってるの。」
「会ってるって… そんなことがあり得るのか?」
「わかんない… でも、あり得ない事が実際に起きてる。それからね、お兄ちゃん、ハーメルンから何か 他の事…聞いた?」 唯は俯きながらそう言った。
「い、いや、他には特に…」言えなかった、と言うより恐ろしくて聞けなかった。
「そうなんだ。 それでどうする? 今晩また迎えに来るって言ってたけど、備えたほうがいいよね?」
「あ、ああ。僕ががやっとくから唯は休んどけ。」
そう言って手伝うと言った唯を無理やり無事だった寝室に押込み僕は準備を始めた。
とりあえず距離をおきたかった。
それから夜になった。
食料、衣類、それから戦闘をすると言っていたので銃も二丁用意しておいた。
「こんなところか… 唯!そろそろ起きろー」
「…んー、あ、お兄ちゃん準備ありがとう~……」反応がないただの屍のようだ…って
「寝るなー! ほら起こすぞ。」そう言って車椅子に座らせてやった。
「ごめんごめん! 今日いろんな事があって疲れてたみたいで、でももう準備満タン!いつでもこい!」
「あんまりはしゃぎすぎるなよ、これからなんだから。」
「でも、初めて行く場所なんだよ。確かに戦いはしたくないよ、でも、なんでも叶えてくれるんだよ!
そしたら私…」と、何かを言いかけたその時、
プ~、プ~、プ~プ~プ~♪と、どこからか笛の音が聞こえてきた。
「一体どこか…! か、体が動かない!」まるで金縛りにあっているようだった。
「私も! 動かない!」唯も同じ状況のようだった。
すると、なんと体が宙に浮き始め、創生の大樹のある方へ物凄いスピードで向かい始めた!
「あーーー! こういう宙に浮く感覚ダメなんだよー!っていうか宙に浮いてるけどーーーー!」
「ひゃっほ~い! メチャクチャ気持ちいい~~!」どうやら妹問題ないらしい。って!
「この状況が問題だよ----!」
数分後…
「空中の旅はいかがだったかな~? って、聞いてますか~?」やはり、こいつの仕業だったようだ。
それよりも早く地上におろしてくれー! …う、出ちまう…。
相も変わらず、妹は車椅子に乗ったまま飛ばさべたことに興奮が収まらないようで、
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!すごかったね!もう一回したいよね!」好奇心と言うのは恐ろしい。
「そろそろ…いいかな…。 おほん!これから創生の大樹の根本からグリムの地へと来てもらう。その前に 詳しくルールを説明するよ、フェアにと言われているからね。」そう言ってハーメルンは説明を始めた。
グリム法典
1.自然を侵すべからず
2.Ⅰ~Ⅻ針長のいう事に逆らうべからず
3.ただし、環境局局長、またはその使いの者の命令の場合1.2条は無視されるものとする
戦闘行為について
1.申し込み制であり、暗殺などの行為に及ぼうとした時点で死刑が執行される
2.Ⅰ~Ⅻ針長を順番に回ることとする
3.ただし、環境局局長と戦闘をする事もでき、これは2条に相当するものとする
これらを遵守し、勝利を収めれば願いをなんでも一つ叶えるものとする
なお、現在特例法が出されており、Ⅻ針長はいないものとする
「こんなところかな~ 質問ある~?」
「私たち以外にも生き残ってる人っているの?」妹が質問をした。
「そうだね~、残念ながら1000人ほどいるかな~。 その人たち君たちと同様に各地にある創生の大樹 に僕の幻影が集めてるよ。もちろん、これも幻影だ。」
「たった100人…」その言葉に思わず絶句してしまった。
「もうないようだったら行くけど。」ハーメルンが急かすのを僕は遮って
「環境局局長ってなんなんだ? 話からしてただ者でない事はわかるけど…。」
「あの方のことか… 君たちは神の存在を信じるかい? 俺は信じた事は無いけど、あの方はそれを具現 化したような存在だ。この美しすぎる地球が誕生すると同時に存在しているとされている。挨拶をしに行 くといいよ。」
そんなばかな事がありえるのか?
「もう行く時間だ、続きは直接聞くといい… ほんじゃ、いくぞ!」
ハーメルンがそう言って笛を吹き始めると再び体が宙へ浮き、創生の大樹の根本の穴へと吸い込まれて いった。