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01.一品目〜心地いい揶揄い〜

さっき話した通り俺、猫田猛は1年かからずに超肥満体へと成長してしまった。でも、焦りも後悔もなく今日も懲りずに舌と身体を肥やしていた。今回はそんな俺の学生生活を紹介……というか傍観してもらう。

「ふぁ〜……重い……」となんとか自重に潰されないように用心して起き上がる。なんせ脂肪過多こんなだし。

のそのそと最低限の身支度をする。ちなみにまだ制服は着ない。理由わけは……まぁ、察してくれると助かる。

「今日の朝メシなんにしようかなぁ……あっ、そうだ!まず食パンにオリーブオイルと塩を少々……そしてマヨネーズで四辺を囲んで、その中心に卵を落として、そのままレンジにかける!……美味そうだなぁ……」

俺は少し大きめのレンジに同じトーストを5枚並べて一気に焼いていく。

「よし、できたぁ!……もう限界……!」

俺はトーストが焼きたてなのも忘れてかぶりついた。玉子の甘みがとマヨネーズのコクが瞬時に口に広がる。気づけば綺麗に消えていた。

5枚もあったのに……こんな時ほど労力と食べる時間は釣り合わないことを痛感する。

でも、食べ終わってから「やっぱり油多かったかなぁ……」と罪悪感が込み上げてくる。……学習しないなぁ、俺。

パツパツの制服に無理矢理肉を押し込んで教室に向かう。鏡は死んでも見たくない……


「今日は早ぇじゃんかよ、猫豚!」

廊下をゆっくり歩いていると教室の方から1人の男子生徒が出てきた。

「何でわかったんだよ⁈気味悪いなぁ……」

「だって足音デカいんだもん。ドスドス響いてたぞ〜?」

「マジすか……?」

そんなにデブ丸出しの歩き方してたのか……?

「もうちょいやんわり伝えらんねぇのかよ、逢神!」

逢神透おうがみとおるは俺の中学校からのダチである。痩せてた頃からよく俺のことをイジり倒してきている。それどころか太ったのを境にどんどんエスカレートしてる……

「こんな身体中スライム飼ってるような奴にやんわりなんてあるかよ!」

そう言った途端に奴は俺の全身を揉み下してきた。

「おっ、なんか前より弾力アップしてね?特大スクイーズ君?」

「あっ……おいバカ、顔はやめろ!……ったく、俺はおもちゃじゃないんだぞ⁈」

「ぬいぐるみみたいなもんだろ?wwwうわっ、汗すっげえwww授業も始まるし、今はやめといてやるよ。」

「はぁ……『今は』?なんだよあのクソ狼……あっつ……」

俺は拭いきれない汗を滴らせたまま席に着く。隣の狼は獲物を見つめるような目でニヤついている。……お前のせいでどんだけ体力奪われたと思ってんだ!

今の【猫豚】システムは全て奴によって構築されたもの。逢神が『猫田の巨体はリラクゼーション性に優れており、ストレス発散に最適!』なんで言いふらした。ムードメーカーでインフルエンサーの素質がある自分の特性を生かしてしつらわれた椅子に俺は座っているのだ。確かにこの身体は自分で選んだ結果ではあるが、それをアイツの欲求を満たす道具にされるのは癪だ。どうせ狼の方は『友達兼クッション』ぐらいにしか思ってないんだろう。こっちはお前の面倒いろいろ見てやってるのに……


それでも授業はきちんと受けた。成績が良くないとデブってだけで立つ瀬がない。死ぬ気でやってもまだギリギリ上位に食い込めてる感じだ。


「腹減った……」

4時間目まで耐えるのが日に日に難しくなってってるなぁ……なんてことを思いながら食堂に行っていつもの定食に目をやる。

「これ合計カロリー高いんだよなぁ……食研所属なんだからそういうこと考えて食えよ……」

自分の腹を見つめて少しだけ喝を入れる。

こう言っておきながら先輩のとこに行くとカロリーなんて二の次になるんだよ……ほんっと痩せるなんて絵に描いた餅なんだよなぁ……限界まで喰うのが癖になってんのかも……

「いただきます……」

すると場を見たように逢神がやってきた。

「また凄い量食ってんな。」

「うっせ、どれ食おうが俺の勝手だ!茶化すんなら帰れよ!」

「そんなバクバク食うなって!悪かったよ、猫田〜!」

「馬鹿。構ってやるから黙れ!無視したら拗ねるし面倒くせぇから早く食ってやってんだよ!」

「オレのことよくわかってんじゃ〜ん!」

「触るな、メシが食えない。……げぷっ……」


一通り食べ終わったのを見て逢神が「ずっと聞きたかったんだけど……」と口を開く。

「何だよ?」

「猛的にはデブのままか痩せたいのか……どっちがいいのかなぁと思って……この前の健康診断の時、体重見てショック受けてたろ?でも肥満それ以外は何の異常もなかったし、今だって自立たててるし、舌の感覚が鈍るのも嫌なのかなぁって……」

「それって、遠回しに言ってんな?」

「違うって!オレはもちもちでも普通でも気にしないから!オレは猛の意思を尊重するけど……実のところは?」

確かにこのまま不摂生を続けたら重篤な病気にかかるかもしれない。でも、そんなすぐには痩せられないし、感覚が鈍るのももちろん嫌だ。やっと料理人シェフって夢が見つかったのに……

「そうだなぁ。痩せたい気もするけど……先輩とのこともあるから、すぐには無理だし……感覚取り戻すのも時間かかるだろうし、なんとも腹が減って仕方なくなってるから……兆候出るまでは待ってみるつもり。立てるように脚は鍛えてるからな。」

「うん、オレは別にいいけど、これってただのデブの常套句テンプレだな!」

気がきくと思ったらまたすぐムカつく事言う……

「はいはい。所詮、猫豚の言い訳ですよ〜。上げるか下げるかどっちかに決めてくれ……」

するとまたニヤついて「上げるのも下げんのもおもしれーから無理だな!……しっかし、痩せて頭の良かったニャンコを鏡餅デブケモにした魅惑の料理とは如何様なもんなんかなぁ……?」と耳元で囁く。テンプレのように腹で遊びながら。

「来るか…?お前もすぐハマって肉風船になると思うけど……?」と俺の方も応戦する。

「見学は賛成だけど、デブるのは勘弁だな!余裕でお前の体重越すと思うし。」

「そうかよ。ほら教室戻るぞ!」

「おう!……放課後、部室行く前に腹揉ませてくれよ!」

「断る。」

「えぇ?」

この後午後の授業を受けて、断ったにも関わらず時間ギリギリまで弄られて、独りで調理室へ向かった。

『そこまで言うならいつかその気にさせて俺の体型ところまで堕としてやろう。』なんて想像おもいながら。

「先輩……友達が見学したいって言ってたんですけど……2人ですっげえ美味いの作ってやろうと思って〜……」


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