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第49話

「な、何泣いてんだよ! お、お前らしくもない……」


 気の強い朋香が、人前で簡単に涙を流さない事を赤西は知っていた。

 だからこそ、朋香が涙を流す理由が赤西はわからなかった。


「う……うっさいわねぇ……良いからこのままじっとしてなさいよ!」


「な、なんなんだよ……」


 朋香は赤西の背中に抱きつき、顔を埋めて少しの間泣いていた。

 赤西がこんなに泣いた朋香を見たのは、小学生以来だった。


「なんか……昔のお前を見てるみたいだよ……」


「ど……どう言う……意味よ……」


「泣き虫朋香が帰って来たな……」


「うっさいわね……アンタが泣き虫は嫌いって……言うから……私は……」


「そんな事俺言ったか?」


「言ったわよ!」


「イデデデ!! 抓るな!」


 朋香は赤西の言葉に腹を立て、赤西の脇腹を抓る。

 

「お、お前こそ……小学生の頃、俺のこと大っ嫌いとか言ってたくせに!」


「は、はぁ!? そ、そんな事言ってないわよ!」


「言ってたっての! 俺は聞いてたんだからな!」


「言ってない!」


「言った! 俺がそのときどんだけショックだったか……」


「え……」


「あ……」


 赤西の一言により、赤西が小学校の頃に朋香が好きだった事が、朋香にバレてしまった。

 赤西は顔を真っ赤にし、黙りこんでしまい、朋香はそんな赤西の背中に再び顔を埋める。


「……もう良いだろ……こうやって付き合えたんだ……」


「……かなり遠回りだったけどね……」


 そう言う朋香の表情には、どこか安心感があった。

 

「アンタに泣き虫は嫌いって言われて、私良かったと思ってるわ……」


「なんでだよ?」


「強い女になれたから」


「強すぎだっての……」


「じゃあ泣き虫の方が良かった?」


「関係ねーよ……俺は……朋香が好きだから……」


 赤西はそう言って、朋香の手を握りしめる。

 朋香は赤西から突然手を握られドキッとする。

 赤西はそのまま朋香の正面を向き、真っ赤な顔で朋香に言う。


「その……今まで気づいてやれなくて……ごめんな」


「私も……その……結構今まで冷たい態度取っててごめん……」


 赤西と朋香は互いに見つめ合い、そして抱き合った。 こうなりたいと願っていた朋香は涙が溢れて止まらず、赤西はそんな朋香を愛おしく思え、抱きしめる力を強める。


「俺……かなりスケベだぞ」


「知ってる」


「馬鹿だし……」


「知ってる」


「顔だって普通だし……」


「見ればわかる」


「……良いのか? 本当に俺で」


 そう言った赤西の唇に、朋香は自分の唇を重ねる。

 突然の出来事にに赤西は対応できず、固まってしまい、朋香は真っ赤な顔で赤西に言う。


「ほ、本当に好きな人にしか……私はファーストキスを……あげないわよ……」


「え……あ……えっと………ごちそうさま……」


「ばか………」


 自分が今何をされたのか、赤西はまだ整理がつかなかった。

 そんな赤西を見て、朋香は笑みを浮かべる。







「私と付き合って下さい!」


 修学旅行が最終日の夜、泉は修学旅行に入って三回目の告白を受けていた。

 一回目は由美華に見られていたあの告白、二回目はこれより10分ほど前にあった女の子から告白だ。

 そして現在は三回目の告白の返事をするところだった。


「ごめんなさい」


 この言葉を言う度に、泉は頭の片隅で由美華の事を考えてしまう。

 みんなからはイケメンだ何だと言われるが、肝心な好きな女の子からは振られてしまう。

 ごめんなさい、そういう度に由美華から断られた時の事を泉は思い出していた。

 泣いて帰って行く女の子の背中を見ながら、泉は自分の部屋に戻っていく。


「はぁ……やっぱりショックだよなぁ……」


 振られたショックがよくわかる泉は、女の子を振るのがなんだか申し訳なかった。


「あ……」


「あ」


 部屋に帰る途中、泉は自販機の前でとある人物と出会ってしまった。

 その人物とは……。


「い、泉君……」


「御門さん……」

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