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第3話



 夜が明けて翌日。

 高志はいつものように紗弥と学校に登校していた。

 最早見慣れた光景になっている、高志と紗弥のツーショット。

 最初は恥ずかしがっていた高志も慣れてしまい、恥ずかしいと感じることなどない。


「よう優一」


「ん……あぁ、なんだ高志か」


「どうした? そんなげっそりした顔で」


「いや……ちょっとな……」


 教室につき、優一に声を掛ける高志。

 優一はげっそりとした青い顔で机に突っ伏していた。

 

「なぁ……」


「どうした?」


「どうやったらSになれると思う?」


「一体お前はどうした?」


 友人からの思いがけない相談に、高志は驚く。

 なんとなく理由はわかる、恐らく優一の彼女の芹那のことで何か悩んでいるのだろう。


「いや、いっそドSとかになった方が良いのかと思ってな……」


「この数週間で何があった?」


「なんかな……あいつのキャラがな……」


 付き合い始めてから日に日に疲れを増しているような感じの優一。

 人の恋愛に口を出すのは、あまり良い事とは思わない高志だったが、この様子を見ては少し心配になる。

 そんな時、学校のチャイムが鳴り、石崎が欠伸をしながら教室に入ってきた。


「はぁ~……眠い……よし、ホームルーム始めるぞー」


 高志は自分の席に着き、鞄を置いてホームルームを受ける。


「あ、その前に転校生を紹介するからなぁー」


「え? 転校生!?」


「ま、まさか!」


「先生それって!!」


「じょ……女子!?」


「男だ」


「「「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 クラスの男子生徒の半数以上が、膝をついて泣き崩れる。

 そんなに悔しがることかと高志は呆れながら思い、女子生徒はそんな男子生徒達に呆れていた。


「ちなみに先生ー、その転校生ってうちの馬鹿男子よりもマシ?」


「おいこら西城! どう言う意味だそれは!」


「そのままの意味よ馬鹿」


「なんだとぉ!!」


 いつものように言い争いを始める朋香と赤西。

 石崎はそんな二人をいつものようになだめる。


「おい、入ってこい」


「はい」


 石崎のかけ声と共に入って来たのは、整った顔立ちの男子生徒だった。

 そんな男子生徒にクラスの女子は視線を奪われ、男子はつまらなそうに余所見をし始める。 高志は何となく心配になり、紗弥の方に視線を向ける。

 すると紗弥と目が合い、高志は思わず視線を反らす。

 紗弥には高志の考えていることがわかっていたようだ。

 紗弥はそんな高志を見て、嬉しそうに笑う。


「変な次期ですが、北海道から引っ越してきた泉陽大(いずみようた)です。よろしくお願いします」


 さわやかな笑顔で挨拶をする泉。

 女子はそんな泉に視線を離さず。

 男子は早くも泉に敵意を持ち始めていた。


「お前ら仲良くしろよ~、特に男子、イケメンが来たからってふてくされるな~」


「「「うぃ~っす」」」


「ホントに大丈夫かよ……あぁー、おい八重」


「はい?」


「泉の面倒を見てやってくれ、このクラスの男子の中じゃお前がまともだ」


「まともって……まぁ、良いですけど」


 石崎からの提案で、高志は泉に学校の事を教えることになってしまった。

 ホームルームが終わり、高志は泉の元に向かう。


「えっと、泉君だっけ? 俺は八重高志。よろしくね」


「うん、よろしく。面倒な役回りだと思うけど、色々教えてくれると助かるよ」


(なんだ、良い奴じゃないか……)


 良い人そうな泉に高志は安心する。

 顔立ちの綺麗な奴は性格も綺麗なんだろうなと、高志はクラスの男子生徒を見ながら思う。

「とりあえず、昼休みにでも校内を案内するからさ」


「ありがとう、一つ聞いても良いかな?」


「ん? なんだ?」


「さっきから、君以外のクラスの男子が、僕を凄い目で睨んでくるんだけど……僕何かした?」


「あぁ、大丈夫! ただ殺気を放ってるだけだから」


「それって大丈夫なの!?」


 普通に言う高志だったが、クラスの雰囲気を知らない泉は驚愕する。

 自分が原因なのだろうかと疑心暗鬼になりながら、泉は視線に怯える。

 そんな泉に気がついた高志は、泉に一言尋ねる。


「泉君って、彼女とか居る?」


「え? いや、居ないけど?」


「おーい、お前らぁ! 泉君彼女無しだってよぉー!」


「え、急に何を……」


 高志がクラスの男子に向かってそう言った瞬間、男子生徒達は放っていた殺気を引っ込め、笑顔で泉の元に駆け寄る。


「なんだよぉ~仲間かよぉ~」


「さては残念なイケメンだな~、茂木と一緒か!」


「追いコラ君たち! 僕は別に残念なイケメンなどでは……」


「あぁ、はいはいわかったわかった」


 先ほどまで放っていた殺気はどこへやら、クラスの男子はフレンドリーに泉に近寄る。


「うちのクラスの男共は嫉妬深いだけで、根は良い奴らなんだ。まぁ、彼氏の居る奴には冷たいけどな……」


「そ、そうなんだ……」


 引きつった笑顔を浮かべる泉。

 きっと数日で慣れるだろうと高志は思う。

 男子とは上手く打ち解けられそうな泉、そんな泉にクラスの男子は……。


「ところで泉君、君は女の子とは直ぐに仲良くなれる人かい?」


「え? いや、普通に仲良くは慣れると思うけど……」


「も、もしよかったら……合コンとかセッティング出来たりする?」


 転校してきたばっかりの泉に、一体何を聞いているんだと呆れる高志。

 泉もなんだか困っている。

 そんな泉を助けたのは、クラスの女子生徒達だった。


「ちょっと馬鹿男子!」


「誰が馬鹿だ!」


「あんたらの馬鹿な質問のせいで、泉君困ってるでしょ!」


「なんだとぉ!?」


「ごめんね、泉君。大丈夫?」


「え、あぁうん、ありがとう」


「ちなみに泉君って……どんな子が好みだったりするのかな?」


「え……」


「追いコラこのビッチ女子共!」


「なんですってぇ!」


「お前らの質問も泉を困らせてるだろが!」


「そんな訳ないでしょ! 困ってないよねぇ?」


「え……あ、いや……」


 クラスの女子と男子の言い争いに巻き込まれ、泉はまたしても戸惑う。

 このクラスでは日常茶飯事の事だが、転校生の泉はなにがなんだかわからず、またしても戸惑う。

 そんな泉に高志は一言。


「大丈夫、二日で慣れるよ」


「たった二日で!?」


 先行き不安な泉であった。

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