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朝が出来た

『パーチ』を2223KX12の周囲をぐるりと一周させ、詳細な地表の地図データを採取したあと、今度は白黒の境界面めがけ着陸させる。

 光学カメラから送られてくる画像と、レーダーやレーザー計測器が図る距離を細かくチェックし『パーチ』のスラスターを吹かす。

 2223KX12の地表面が迫って来た。

 小さなクレーターと大小の氷の塊に覆われた地面。白黒の境界はぼやけていて白い面に黒い粉や粒、塊がぶち撒けられたように広がっている。

 白黒二つの小惑星がくっついて出来たわけじゃ無い様だ。

 着陸させると、今度は作業用アームにセンサーアタッチメントを装着し地面に下す。

 しばらくすると『パーチ』からデータが送られて来た。 

 ナニナニ・・・・・・。八割近くは水。あとは窒素やらメタンやら、それに有機化合物か。黒いのはこいつが原因のようだ。

 採取したデータを『オジサン』に託し、私の思い付きが上手くいくか否かの判定をしてもらう。

 

 私の狙っているのは、それで発生する『ヤルコフスキー効果』だ。

 星が自転を始めると、当然、昼と夜が生じる。昼夜の境界である夕方の地点は太陽によって十分暖められているため、熱放射の量が多くなる。それに対し朝の地点は夜の間に冷えているので、熱放射の量は夕方の地点に比べて少ない。この差がモーメントとなって星の軌道を変えるのだ。

 2223KX12は自転が止まっていて白い面は昼のままだし黒い面は夜のままになっている。

 そこでアポジキックモーターを取り付け噴射し、自転をさせてやり昼夜を作ってやると、熱放射の量の差を生み出しヤルコフスキー効果によって軌道は少しづつ変化してゆく。

 ただし問題は有る。一つは星のサイズ。1キロメートルを超えるとこの程度の現象では効果は期待できない。2223KX12は全長850メートル、微妙なところだ。

 もう一つは此処があまりにも太陽から遠い事。十分な熱を得られるかが心配、それに星の組成や地形なども影響してくる。

 一か八かの賭けなのだが、今の状況ではこれしか手が思いつかない。


『オジサン』が答えをはじき出した。

 結果は、ヤルコフスキー効果は起こせる。

 この賭け、私の勝ちだ。

 早速『パーチ』を離陸させ、再び2223KX12の周りを周回させながら『オジサン』が指示したポイントにアポジキックモーターを打ち込んでゆく。縦回転を与えてやり黒い面にも朝が来るようにしてやるのだ。

 打設作業が終了すると『パーチ』を自律航行に切り替え引き戻す。

 私は観測室に戻って噴射の様子を見守る。


「五器のアポジキックモーターを一度に噴射させ最大値の推力を出します。噴射まであと六十秒」

  

 シートに座るのももどかしく、私は立ったままで視覚野に映し出された2223KX12を見守る。

 サンデーのカウントダウンが始まった。


「・・・・・・10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。アポジキックモーター全器イグニッション」


 黒い面の先端に並べたアポジキックモーターから噴射されたプラズマが明るく輝き、2223KX12はゆっくりと、本当にゆっくりと、白黒の境界面を軸とした自転を始める。

 この小さな星に、朝と夜が訪れる時が来た。


「さて、第一関門は突破って訳ね。効果が表れるか解るの、どれくらい?」

「48時間後です」

「果報は寝て待て。ね」 

「48時間もお休みされるんですか?」


 と、びっくり顔でサンデー。この子のデータベースに、諺って入って無かったのかな?



 タイタンに送られるD型小惑星の軌道を横切ろうとした小惑星喰いの船に警告を出したり、C型小惑星を動かすために取り付けたソーラーセイルが、もやいが解けて行方不明に成ったので探してあげたりと、何かとバタバタはしたものの、やっぱり脳裏から2223KX12の事は離れず、常に視覚野の端に情報を表示させながら他の用事をこなしてきたが、二日目の夜。夕食前に結果報告が『オジサン』からもたらされた。


『変遷軌道に乗ったことを確認。コリジョンルートから離れた』


 今日の前菜代わりのコールスローを持ってきたサンデーを捕まえハイタッチ。


「ねぇ、今日のメニューはビーフシチューでしょ?赤が一本残ってたよね、持ってきて、お祝いよ」

「解りました。倉庫に行ってきます」


 と、彼も嬉しそうに小走りでダイニングから出てゆく。

 聴覚野に、居住区の環境や観測所員の健康を管理しているAI『オバサン』から音声メッセージが入った。


「ビーフチシュー730カロリー、赤ワイン720ミリリットル570カロリー、本日の運動量から勘案して明らかにカロリーの摂りすぎです。控えなさい」


 うるさいなぁ『オバサン』。

 今日はお祝いをしたい気分なの!

小惑星ほし暮し日乗』第一話

最後までお読みいただきありがとうございます。

最近、サツバツとした話ばかり書いていたので、たまには優しい物語を書いてみたいと思い、本作を構想しました。

とはいってもまだ物語のとっかかりなんで優しい雰囲気は出せてないとは思います。

これからアリサとサンデーの日々の暮らしの中で滲み出させるよう頑張ります。


 一応、ハード風味を効かせた(ハードとは恥ずかしくて申せないのであくまでも『風味』と言う事で)なんで、科学考証には気を使っていますが、根が文系なもんで正確さには自信がありません。

 もし、本作を読まれた方で、その方面に明るい方がいらしたら、突っ込みよろしくお願いいたします。


さて、次回の『小惑星ほし暮し日乗』は、二人の暮らしに密着します。

乞うご期待。


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