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ライトノベルの男主人公が妄想癖を持っているだけの話。  作者: 風祭 風利
第二章最初にある程度キャラを立てておかないと、後の後付け設定で大分痛い目を見ることになる
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第五節 店員とファンたち、隠されていた趣味

 さて俺は3階フロア、漫画フロアと呼ばれる場所についた。本にはほとんど目にくれず俺はレジカウンターに向かった。


「いらっしゃいま・・・ おうお前か源」

「よう青山、相変わらず繁盛してんな。」

 店員は俺を見るなりさも当然のように挨拶してきた。というのもこの店員こそこの「青山図書館」のオーナーの息子の一人、青山あおやま 秋郎あきろう本人である。彼も部員の一人だがこの通りバイトがてら家業をしているので部活に来るのはそこそこ不定期である。


「で、今日もここか4階か? まあお前は一階の本でもたまに見かけてかっていくらしいけどな もうほとんど常連だぜ。お前も」


 ここの本屋は1階から4階までそれぞれのジャンルで分かれている。

 1階はナンプレやパズル、音楽、雑学、経済学など娯楽から情報誌、哲学に関する本と様々な本を売っている。中には低年齢向けの本もある。

 2階は小説関係。主にミステリーや恋愛小説なのだが中には異色の小説も取り扱ってるとかいないとか・・・

 3階は先ほども言ったが漫画関係だ。いろんな漫画社の作品が取り扱われている。最後の4階はラノベ関係だ。ぶっちゃけ3階と4階はつながっていると考えてもいい。


「創業当時から通っているようなもんだからな。それはそうと..」

 と俺は後ろを向き、気になっているものに疑問を投げた。


「チラッと見えてるあの黒い暗幕、前に来た時あんなの無かったよな?」

「あぁあれな、あれは親父の案でつけられたものでな。あの先にもフロアがあってな、具体的には成人向けの・・・」

「それ以上は言うな。確認の為に聞きたかっただけだ。暗幕の時点で大体は察せれたから」

「おう家族の半分以上は反対したんだぜ? 2号店も立てようって時に何を今更ってね」

「お? あの噂本当だったんか。 半信半疑だったんだぜ。」

「まあな。 因みにオーナーは俺のじいちゃんばあちゃんになって俺も2号店の管理人になるんだ。」

「おぉ。 大出世じゃないか」

「おう。内装も俺とじいちゃんで決めていいって言われたからしっかり繁盛できるよう考えているんだ」

「すっかり経営者の顔だな。 まあ頑張りな」

「へへ。 ありがとうよ。来年の今ごろには2号店を建てる予定だからよ。」 

 案外早いなもう計画はあったみたいだな。


「で、ほんとに何しにきたんだ? 本を買いに来たんじゃないのか?」

「ああ、俺は今回は付き添いだ。 まあ難解パズルの本を買っていこうかなとは思うが。」

「付き添い? 誰のさ」

 俺がその人物を言おうとしたとき、


「亮二、お待たせしました。 あ、秋郎こんばんは。」

 その人物、両手いっぱいの本の入った紙袋を持った豊見永が現れた。


「お、お前、豊見永さんつれてきたのか!?」

 青山の同様の声をかわきりに一部の男子がこちらに向いた。あぁそういえばこいつも豊見永の隠れファンだったな。部活にいるときはどっちもぎこちなく平然と喋っているから半ば忘れるところだったわ。


「はぁい、今日は亮二と一緒に学校から来たんですぅ。今日もたくさんの小説を買っちゃいましたぁ。」

 といつもの口調で豊見永は話した。先ほどから俺に対しての殺気は基本的に無視である。 

 この殺気は豊見永のファンからのものであるのは明らかだし、なんで殺気を出しているのかも知っている。というかこの殺気に関しては去年の6月あたりからこの辺り一帯を豊見永と歩いていると、必ず起きるようになった。いつ襲われてもおかしくない状況なのだが、例え歩みよられても俺は「一緒にいるだけだ。付き合ってはないし、相手もおんなじ気持ちだろ」と正当性のある回答を常に持っている。


「な、なんですか豊見永さん。本屋に来るなら俺でも良かったじゃないですか。実家が本屋なんで。」

 因みに青山はそこら辺の暴徒気味の奴らと違い、面と向かって豊見永と話せるし、立場を対等に保とうと努力している。まぁ心のうちは流石の俺もわからないが。


「そうですねぇ。でも忙しくなりそうな時間でしたので、あとは今日はテストでしたのでいち早くお仕事をしなければならなそうでしたのでお引止めするのは申し訳ないかなと思って声を掛けるのをやめたのです。」

「お店の事も、俺のことも気遣ってくれて、俺は嬉しいよ。」

 ・・・ほっといたら涙ぐみそうだな・・・あいつ。


 秋郎と別れ、1階の難解パズルの本を吟味して俺も何冊か購入した。

「亮二はこういうパズルを解くのは好きなのですか?」

「あぁ、頭の体操になるし、なにより賢くなった気分に浸れるんだ。後は自分で考えるための練習ってとこかな。」

 ほんとはもう一つ、頭の活性化=妄想力の向上になるんじゃないかと考えているためとも言いたかったが、不毛なのでやめた。


 さて、お互い欲しい物は手に入れたため、こんな殺気立っている本屋をおさらばして帰ろう。

 時刻は7時を回っていた。すっかり日もくれていた。俺は学校に自転車が置いてあるが、取りに戻るほうが時間がかかるので今日はバスで帰って、明日は早く起きて歩いて登校しよ。そんなことを頭の中で考えながらバスに乗り、豊見永と帰路を目指した。


「しかし今日はまた多く購入したもんだな。」

「亮二のおかげで新たなものが見えそうです。」それはミステリーの意味でだよな?

「では私はここで。また明日学校で。」

 バスを豊見永は降りた。バスが締まり、豊見永が出たドアの階段近くに本が一冊落ちていた。


「ん? 豊見永が落としたのか?」

 拾い上げ表紙を見て俺は驚愕した。それはミステリー小説の表紙ではなくジェイソンが斧を持って佇んでいる表紙だった。


「まさか豊見永ってミステリー好きであり、スプラッター好き?」

 感性は人それぞれだしそれを拒絶する気はない・・・ないのだが・・・

「これは俺もさすがに驚くって・・・」

 自分で自分にそんな風に言った。


 あれから何事もなく(スプラッター小説は豊見永に渡すため持って帰ったが)家に帰り夕飯を食べ、風呂に入り、やることを済ませて就寝をし、翌日いつもより少し早く起きて家を早く出て歩いて登校した。逆算していつも通りの時間に登校出来た。(まあ想定内だったが)そして教室に入るとかばんを置いて真っ先に豊見永の席に行った。


「豊見永、昨日バスで落としてたぜ。」と例の小説を渡した。


「あ、ありがとう亮二。そっかぁ落としてたのかぁ」

 何事もなく手元に持って行った。


「まさかあの豊見永がスプラッターを読むとはな、正直驚きを隠せなかったぞ。最初は。」

 意外過ぎる同級生の趣味を見た感じだ。また殺気じみた視線が刺さるが、もう無視だ。気にし始めたらきりがないからな。


「そうですかぁ? といってもスプラッターを見るようになったのはごく最近なんですよぉ?」

「そうなのか。どおりで知らない訳だ。でもなんでスプラッターを見るようになったんだ?俺は正直グロいのはあんまり好きじゃないんだよな。」


 たまにそういう同人誌をチラッと閲覧したりするが、それのどこに興奮要素があるのかぶっちゃけ理解できない。まあ同人誌に限ったことではないが、そうまでして人間をエグい殺し方で殺したいのかと疑問に思う。いわゆる狂人と呼ばれても無理はないのだろうが・・・


「えぇ。私も最初は駄目だったんですけど、あるミステリー小説の殺し方を想像したとき、「こんな風に殺された人は殺された後にこんなことをされて、もし生きてるうちにこんなことをされたらどんな想いなんだろう?」というのがきっかけでスプラッターに手を伸ばしたという訳です。 そしたら意外にもはまってしまってといった具合です。」

 意外と(というか正常な)答えが返ってきた。もっと何か狂った感じの答えなのだと構えていたので、ある意味困惑している。


「新たな趣味嗜好を持つことはいいことだとは思うがな。これを新たな境地にするとはな。」

「えぇ。殺す相手が今にも自分に襲い掛かってきて、とてもこの世とは思えない恐怖とわざわざ一瞬でなくじわりじわりと嬲るように対象を恐怖のどん底に落としていきながら殺していく互いの想いが交差していく様を想像すると、なんだか見ない訳にはいけない感情になってしまうのですよね。 そこはそうぞうなのですが。」

 豊見永の顔がうっとり顔になっていてなんだか妙にエロい顔になっていた。・・・というか豊見永ってMなのかなとおもっていたが意外にもSの方が強かったのか。などとなんだか見てはいけないものを見てしまった感覚に襲われたのでとりあえず話を逸らすか。


「なんとなくあの部活に豊見永がいる理由がわかったよ。不釣り合いだと思ってたからな、俺は」

「むぅ。やっぱり亮二は意地悪ですぅ」

「え?今俺は何もしてないし意地悪なこと言ってなくね?」

「さっき「不釣り合い」って言いましたね?私だって想像力ぐらいあります。」

 ・・・癪に障ったのはそこかい・・・


 チャイムが鳴り1時限目、2時限目と乗り越えた中放課、うちの学校は2時限目と3時限目の間に20分の少し長い放課がある。

「あれぇ?おまえが豊見永の趣味を把握してないなんて意外だな。」

 その放課で俺は壮一と青山と廊下で過ごしていた。豊見永のスプラッター好きだという事をこの二人にはなしたら、驚き返された。まさかふたりとも把握済みだったとはちょっとショックだ。


「青山は本屋だから豊見永とレジで会うから把握できるとして、お前はなんで知ってたんだ?」

「あぁそれは俺が一番乗りに部室ついた時があって、誰もいないからってちょっとグロの入ったサバイバル漫画読んでて、ほんのちょっとグロいけど妙に色気のあるシーンのページを読んでるときに、そのシーンに夢中になっちまって豊見永の気配に気が付かなった。違和感を感じて「なんだろう?」と思って後ろを向いたら、豊見永が後ろから見ていたんだ。流石に二重の意味でドン引きするかと思ったら、「やっぱり男性よりも女性の方がこういう表情は似合いますね。」ってなんか吟味して納得したかと思ったら、向かいに座って平然とミステリー小説読んだんだよ。」

 なんか一部ツッコミを入れたいところがあったがあえて流してやろう。掘り下げると意外と面倒な気がするし。


「そこでお前は知ったわけか」

「そういうこと。いやぁ嫌われるかもって覚悟してたけどむしろ好感がもてたぜ。」

「俺も。最初はいつものミステリーの他に一冊だけスプラッター関係が入ってて聞いちゃったもん「あの、これジャンル違いますが?」って、そしたら「いえ、それも買う商品です。」って淡々と答えるもんであの時はまさかって思ったもんだぜ。」


 やはり意外性のある方がよいのだろうか? ギャップ萌えというやつで、あれはギャップ萌えでは済まない気がするがな。

「しかし青山はいいかもしれないが他の豊見永ファンが知ったらどんな反応するだろうな?」

 多少は追っかけが減るのかな?そんな思いで語ってみた。

「どうかな?結局話せなくはなるとは思うけどな。」

「それは隠れファンとしての意見か?」

「それもあるがそもそも普通でも会話できていない輩ばかりだから豊見永さんの隠れ趣味を知る術は基本的にはないだろうな」

 青山は得意げだ。


「うーん、豊見永が人気なのは分からんでもないがただ話しているだけで殺意の目をぶつけられるのは勘弁してもらいたいものだ。」

 これに関しては流石に壮一も青山も大きく頷いていた。大体豊見永とただ話していたりするだけなのだ。ほんとにそれだけだよ?それだけで殺意ぶつけてくるんだぜ?男も女の嫉妬に匹敵するぐらいめんどくさいのだ。

「俺は本屋だし話す内容も小説の内容がそこそこ多いんだ。豊見永さんのその話に乗っかってるだけなのに「お前は我々の領域から外れる行為をした」って言ってくるんだぜ?ファンの奴ら。だったら勇気を持って話に行けばいいんだよ。なにを「汚い手で汚したくない」精神を持ってるんだか。」

「青山はそれでいいよな。それだけで済んで、俺なんかたまたま豊見永が困ってたから助けただけなのに、豊見永の要件が終わって別れた後にファンの一人に胸倉掴まれて「お前みたいな存在が豊見永さんの手助けなんか・・・・お前みたいな穢れた存在のやつが・・・うぅ・・・」って言ってその場で泣き崩れやがってよ。めんどいし弁護する気も起きなかったからそのまま放置して戻ったぜ。」

 その判断は正しいと思うわ壮一。下手に弁護で返すよりそっとしておいたほうがそいつのためだ。


「どうも豊見永があの心理研究会に入部したことを未だに納得いってない奴もまだいるみたいだしな。」

「そこはいい加減諦めろよって思うな。後、相手の意思に反するかのような勧誘もいけなかったんだろ。あんなんじゃ行きたくても行きたくなくなるぜ。」


 色んな運動部にマネージャーとして勧誘(あの時の状況をいえばほぼほぼ押し売りの状態だった)を強要されるようじゃ離れる一方だろうな。そういうのは相手から興味を持たせるのが重要なんだよな。


「ファンのやつらももう少し考え方を変えればあっという間に豊見永と仲良くなれるのにな。 っと余鈴だ。そろそろ戻らないとな」

 壮一の掛け声で俺たちは戻ろうとしていた。


「それじゃまた昼休み、屋上前の階段で、源、豊見永さんの事しっかりと守ってやれよ。」

「それ誤解生まれるからやめてくれ。まあいつも通り豊見永の話し相手してれば問題ないさ。よっぽどの事だなければな。」


 そういって俺たちはそれぞれの教室に戻った。その後、俺の教室の授業は国語で、男女のツーマンセルになって今習っている文章内の男女の気持ちになりきってみようという授業内容で、教室の男子の一部は豊見永に勇気を出して誘っていたが、すべてはねのけて豊見永が俺のもとに来たときは、殺気と恨みの念が一層強まった視線が刺さった。あぁ、別れ際に言ったあの言葉はフラグだったか・・・・・。

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