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ライトノベルの男主人公が妄想癖を持っているだけの話。  作者: 風祭 風利
第二章最初にある程度キャラを立てておかないと、後の後付け設定で大分痛い目を見ることになる
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第四節 学校のマドルチェとお願い、大きな本屋

 今日は朝からテストがあった。うちの学校は長期休みが終わるとどの教科も表裏一枚つづりのテストをやらされる。といっても9教科で試験時間は40分 休憩の10分とお昼休みを含めて大体帰れるのが夕方になるが試験内容は夏休みの宿題内から出るから宿題をやっていれば答えはほぼ同じだ。少し応用も混ぜてあったがなんら問題はない。

 高校に入ってからのこの法則を知ったが復習はしてきたし、赤点は回避出来るだろう。自分でも知能はよくも悪くもないと知っている。ほどほどに上にいれば俺は満足なのだ。 


 テストも終わり夕方5時15分そろそろ下校時刻なのだが俺は心理研究会の部室に向かっていた。というのもある人物に呼び出されたからだ。心理研究会のドアに立ち、ノックをすると「どうぞ~?」となんとも眠そうな女子の声がした。今回俺を呼び出した主である。 


「来てくれたんだね? うれしい~」

 呼び出した彼女はおっとりとした笑顔で話しかけた。夕日の逆光と相まってなかなか絵になっている。彼女は豊見永 エリカ《とみなが えりか》クラスが同じの同級生だ。(因みに壮一とはクラスは別々だ)森ガールを連想させる髪型で美形も性格もフワフワガールである。そんな彼女もこの部活の一員だ。


 意外にもこの部活がしっくり来たというのは彼女談だ。


「そっちが呼んだんだろ?後こんなところにいていいのかよ。「学校のマドルチェ」が」


 彼女が「学校のマドルチェ」と呼ばれているのは言わずもがなその性格と容姿だ。男子の間でかなり人気で「学校一の女子はだれだ?」という論争に学年別で人気ナンバー1である。 因みに「学校のマドルチェ」という二つ名はその清楚な感じからとられたらしい。


「んもう 意地悪ですねぇ亮二は。 こうしないと告白の嵐なんだって前に言いましたよね?」

 そう言いながら両手の頬付けをやめ、「ぷんぷん」という感じに怒っていた。そのときに机に乗っていた大きく育ったたわわな果実が揺れたものだから顔を逸らさざるを得なかった。

 もう分かったと思うが、これも彼女が男子に人気の一つである。男というものは結局そういう生き物だ。


「で? 俺を呼んだってことはまたどこかに一緒にいくのかい?」

 赤くなった顔を逸らしながら俺は言った。

「そうなのです。 ぜひまたあの大きな本屋で本を買いたいのです。」


 彼女は意外にも小説を多く読む。俗にいう「読書が趣味」ととらえてもらえればいい。

 因みに大きな本屋と彼女は言ったが、決して比喩表現ではなく、寸田市の数少ない本屋の中で横幅も縦幅もどちらも大きいので、庶民の大半はこの本屋にお世話になっている。寸田市に初めて来た人が「本屋はどこですか?」と尋ねると必ずその本屋になるほど市内では大きく有名な本屋である。


「それはいいが、前も言ったが別に一人で行けるだろ? 顔見知りなんかたくさんくるんだし、なによりもう引っ越してきて一年半以上経ってるんだ。 もう付き添いもいらないだろ?」


 市民になってしまえば理由は違えど集まる場所は一緒なのだから問題ないだろ。そんな思いを彼女にぶつけた。


「やっぱり亮二は意地悪ですねぇ。話し相手位欲しいじゃないですか。一人で黙々と探して見つけたら速攻買って帰るなんてつまらなくないですか?」

 本をいち早く読みたいから別に関係ないのだが、それを言うと彼女の機嫌を損ねて面倒になりそうなので黙っておいた。


「別に本屋に行くのは構わないが、その話し相手俺じゃなくてもよくないか? お前のファンのやつの中から選んで一緒に行けば・・・」

「うーん どうもああいう「お近づきになりたいけど話しかけにくい」みたいな人たちって、私をお金持ちのお嬢様と勘違いしているみたいなんですよねぇ。私は気さくに話しかけてくれればそれでよろしいのにぃ。 だからあんまり好きになれないんですよねぇ 私自身が」


 これに関しては彼女の捉え方なので踏み入ることはしないが、一般人なのだから普通に接しにくればいいのにと思っているのだろう。

「だから亮二や壮一みたいな人たちと普通に会話できるここが好きってこともあるのです。」


 ・・・そういうことを相も変わらず平然というな。このフワフワガールは。ちょっと照れ臭くなった。

「じゃ、そろそろ行きますか。 校門の連中もいなくなったみたいだし」

 火照った顔を冷まそうと窓際に行ってついでに外を眺めて言った。時刻は5時半、みんなテストの疲れをとるために帰路へと帰ったのだろう。

「そうですねぇ 行きましょうかぁ」

 そういって俺たちは心理研究会を後にした。


 高校から近くのバス停へと行き、田舎に近いこの市内だが10分に一本ペースの市内バスへと乗り込んだ。ここから本屋まではそう遠くないがバスの方が速いためこういう形にした。

「意外と懐かしいものですね。」

「え? なにが?」

「私が最初にこの町に引っ越したての頃 こうやって亮二があの本屋に連れてってくれたじゃないですかぁ。」

 あぁそういえばそんな出会いだったなぁ。とその当時の事を思い出していた。


 去年の4月、入学する二日前くらいの昼頃に何となく散歩していたら、あちこちをキョロキョロ見回している少女を見かけた。明らかにこの市内の人間でないのは一目瞭然だったが、俺も初対面の時は声をかける事すら勇気が必要だった。このまま立ち去ろうかと思ったが、立ち去ると後味が悪い気がして、勇気を持って声をかけた。それのおかげで今こうして仲良くなれているのだ。


 そんな思い出話に更けていると、目的地が目の前にあった。もう降りるボタンは押されていたので降りる準備をして目的地前の停留所で降りた。

「おぉ いつ来ても大迫力ですねぇ」

 そう上を見上げる豊見永を横目にちょっと笑ってしまった。 


 我々寸田市民の頼れる本屋「青鹿図書館」である。 図書館と言っているが内装は本屋である。名前の由来はオーナー夫婦の名字を一文字ずつ取ったものだそうだ。因みに夫婦の名字は「青山」で奥さんの方の旧姓が「鹿根」だそうだ。 

 ここの本屋は青山一家総出で切り盛りしている。青山さん夫婦含め祖父母と子供たち(と言っても俺と同じ年代とその上下のいる3兄弟)の三代で本屋を回している。


 ここの本屋は4階建てで上の階に行くにつれて少しずつフロアが狭くなっている建物構造だ。さて、俺たち二人は中へ入り、エレベーターで2階へと来た。ここに彼女の目的のものが売っているからだ。


「わぁ! 今日もいい本に出会えるといいですぅ」

 うっとり顔で豊見永は言った。

「やっぱり新刊狙いか?」

「もちろんそれもありますが、既存本でもまだまだ見たことのない内容のものもある気がするのでそれを探しに行こうかとも思いまして。」

 二人して目的地の場所まで一直線に向かった。


「わぁ やっぱり知らないものばかりですぅ うーんどれを読もうか迷ってしまいますぅ」

 そう目にしたのは大量のミステリー本の数々だ。彼女はミステリー小説の愛読者だ。俺もこの辺りは詳しいといえるほどではないがミステリー物はなかなか世界観に嵌まれるものがある。 妄想の種にも有効的に使わしてもらっている。


「うーん 列車の時刻表を使うトリックもなかなか面白かったですが、毒を盛った時間の誤認トリックもなかなかハラハラさせてもらいました。あぁ室温を使って検視の裏をかくというのもいいですよねぇ」

 全部が全部大体の刑事ドラマの定番トリックだ。


「見つかった死体の身元が入れ替わっているってトリックもあるぜ。 白骨死体とか焼死死体を利用するトリックなんだけど・・・」

「あぁ、待ってください亮二、そのトリックの小説はまだ読んだことがないので全部は話さないで下さい。 よーし今回は入れ替わりトリックのミステリーにしましょう。 ありがとう亮二。また楽しみが増えました。」

 喜んでいただけてなによりだ。

「じゃあ俺は上の階にいるから、買い物が終わったらおいでよ。」

「はぁい分かりました。秋郎のところに行くのですね。私も後で来るとお伝えしといてくださいぃ。」

 了解と後ろ向きでサインを送り、上行きのエレベーターに乗り込んだ。

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