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霧の思い出〜Revival  作者: 秋本そら
2日目——本当の帰還
22/24

21章 大切なあなたへ

——熱い。

左手が、熱かった。

小刻みに震える真珠が、熱を発していたのだ。


ずっと握っていたい。手放したくない。

握っている手を開けたら、真珠が逃げそうな気がして怖かった。そんな事はないと分かっているのに、手を開けたくなかった。

でも……熱い。

火傷しそうなぐらい、熱い。

熱くてたまらない。

もう……耐えられない。


私は、そっと手を開いた。

真珠は、白さと輝きを増して、そこにあった。

真珠は勿論、逃げ出したりはしないが……。


——眩しい!

不意に、真珠が一際眩しく輝いた。

真珠の白く光る光が眩しすぎて、私は思わず目を閉じていた。


次に目を開けた時、そこには——霧が広がっていた。


(——霧?どうして……)

そう思った時、霧の中に何かが見えた。

なんだろう、輪郭がはっきりしないが、それは人のようだった。しかも、何人もいる。

そして、その影は何故か、とても懐かしかった。

「……誰?」

私はその影に向かって、声をかける。

すると、その影たちは、こちらへと向かって来た。

〔——会いたかったよ〕

〔咲希、思い出して〕

〔私達のことを〕

〔ずっと、待ってたよ〕

その影たちはそれぞれ、沢山の言葉を口にした。


(——私はこの声を知っている)

確信はないが、直感的にそう思った。

(この声を——この影の人達を、知っている)


〔知ってなきゃ困るよ、もう〕

私の心の中を見透かしたかのように、1人の影が言った。

その声は、1番聞き馴染みのある声だった。

そして、()()()()()()()()()()()だった。

(——私?)

〔そう。私は内川咲希〕

霧の中から現れたのは、私とそっくりな——いや、同じ人だった。

「……そんな、まさか」

思わず声が出た。

〔まあ、正確には内川咲希の記憶(・・・・・・・)ってところかな〕

「……私の、記憶?」

いまいち、理解が追いつかない。

〔そう。ずっと待ってたんだから、咲希のこと。待ちくたびれちゃうぐらい〕

そう言って私は——私の記憶は、笑った。

あちこちから影がくすくす笑う声が聞こえる。

あの影たちも、きっと大切な誰か——私の記憶の一部なんだろうな、と思った。

〔せっかく『霧の道』になって咲希を現世に戻したのにさ、私達のこと忘れちゃうんだから、もう〕

「霧の……道?何、それ?」

〔本当に全部忘れちゃったんだね。もう、咲希ったら〕

再び、影たちはくすくすと笑った。

〔大丈夫、教えてあげるから。私達は、これからもずっと、一緒だよ〕

「うん」


「心配かけてごめんね。これからは、ずっと一緒だよ」

〔勿論だよ。ね、みんな!〕

私の記憶がそう言うと、他の記憶たちも声をあげた。

〔そうだよ!〕

〔ずっと一緒だよ〕

〔今までずっと、寂しかったんだよ?〕

〔心配してたんだから!〕

その影たちの言葉に、必死な様子に、私は思わず笑いだした。

〔なんで笑うのよ、もう!〕

私の記憶は、ふくれっ面をしてみせた。

でも結局……すぐに私と一緒に笑いだした。

霧の漂う庭に、2人の私の笑い声が響いた。


私が手を差し伸べた。

それを私の記憶がそっと握った。

なんだかふわふわして、頼りない感じがする。

そんなことを考えたその瞬間、握った手からまばゆい光が溢れた。

——眩しい!

私は再び、目を閉じざるを得なかった。

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