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霧の思い出〜Revival  作者: 秋本そら
2日目——本当の帰還
17/24

16章 訪問者

目が覚めた。

起き上がってみると、見慣れない空間だった。

「ここ……どこ?」

布団も、ベッドも白い。壁も白い。何やら色々置かれている台が薄茶色。そして隣には……見知らぬ人が。

「……あ!目が覚めた?」

椅子に座ったその人は、とても可愛らしい声で言った。容姿も、すごく大人っぽくて、綺麗だった。

だけど、全く知らない人だ。

「あの……どなたですか?」

私が尋ねると、その女の人はくすりと笑い、驚く様子もなく言った。

「ごめんね、驚かれちゃった。うちは中村顕子。高校2年生なんだ。生まれつき目が見えないの。近所の高校でね、吹奏楽部っていう部活に所属しているの。よろしくね」

「あ……よろしくお願いします」

思わずそう返してしまった。すると、中村さんは興味津々といった感じで言った。

「……自己紹介は?」

「あっ……」

そうだ。私達は初対面。中村さんが私の名を知っている訳がない。

私の名前を、知っている訳が……

……私の・・名前・・……?

名前が……分からない!

そんな風に私が困っていると、中村さんは、ふふっ、と笑った。そして、こんなことを言った。

「さきちゃんが記憶を失くしていることは、知ってるよ。そんなに慌てないで。うちが教えてあげる」

さきちゃん……誰のことだろう。私のことだろうか?

記憶を無くしている……私は確かに、今までのことを何も思い出せない。

色々と混乱してきたところで、中村さんが言った。

「まあ、落ち着いて!」

その一言は、混乱していた私の頭の中を一旦落ち着かせるだけの力があった。

中村さんは、ちょっとわざとらしく咳払いをして、いたずらっ子っぽく話し出した。中村さんは、大人っぽいのに元々の話し方が人懐っこいような、いたずらっ子っぽいような、そんな気がする。

「……こほん。あなたの名前は、内川咲希です」

「内川……咲希」

「そう。年は16歳。高校1年生。咲希ちゃんも私たちと同じ、吹奏楽部に所属しているよ」

「……そうなんですか」

中村さんが話す私のことは、まるで他人事のような気がした。

「まぁ、他人事のように感じちゃうのも当たり前だよね。うちも、何にも覚えてない時に自分の名前とか言われても、多分他人事のようになっちゃうもん」

そう言ってから、中村さんはあっと声をあげた。

「そうだ!今日ね、この病院に私達が所属する吹奏楽部が演奏しに来るんだ!中庭で演奏があるんだけど、一緒に行かない?」

「……行ってみたいです」

自然に、そう答えていた。

「よーし!じゃあ決まりだね!演奏、楽しみだね」

中村さんは、笑顔でそう言った。

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