15章 病院訪問の日
音楽室に吹奏楽部員が集まっている。そして、何故か楽器を外に停まっている車に積み込んで行く。
実は、今日は下町病院という所に訪問して、演奏をする日だった。この日のために、2ヶ月前から練習していたのだ。
部長の凛と副部長の昭が話している。
「いよいよ下町病院を訪問する日だね」
「——うん、そうだね」
凛がぽつりと呟いた。
「昨日は咲希ちゃんがいたのにね……」
「うん、今日は見当たらないね」
2人に霊感があるからこそ、話せる話題だった。
「あっこが休みだからかな……?」
昭の言葉に、凛は驚いて言った。
「えっ⁉︎そんなの聞いてないよ!」
「あっ、言い忘れてたね。あっこが今日、急遽休むことになったよ。親戚が昨日、亡くなったんだって。ほら、パートのラインですっごく謝られたんだよ」
顕子と同じパートの昭がグループラインの画面を表示させて、凛に見せた。
『あっこ:ごめんね!昨日親戚が亡くなって……急遽行けなくなっちゃった!ソロもあったのに……本当にごめん!ソロは2人に任せても平気かな?』
『山口恵理奈:大丈夫です!』
『昭:大丈夫だから、心配しないで行ってきて』
『あっこ:2人ともありがとう!本当にごめんね 泣』
「……そっか。分かった」
しばらくの間、画面を見つめていた凛が言った。
その頃、サックスパートは。
「今日は咲希ちゃん、いるのかな?」
「分かんないよ……うちら、霊感ないんだし」
「まあね……」
琴音と湧真が話していた。楓はトイレに行っていて、その場にはいない。
「琴音先輩!湧真先輩!」
楓がトイレから帰ってきた。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「——今日は咲希、来てないみたいです。千尋先輩がそう言ってました」
「……そっか。教えてくれて、ありがとね」
しばらくの間が空く。
「ほら、積み込みはまだ終わってないよ!頑張ろ!」
沈黙を破ったのは、湧真だった。
そんなサックスパートの様子を見ていた人物がいた。
凛だった。
「……言えないよなぁ」
小声で、ぼそりと呟く。
「……下町病院に、咲希ちゃんが入院してるなんて……」
突然の三人称視点で驚かれたと思います。
これからは咲希の一人称と三人称視点とを交えて書いていく予定です。
ちなみに、グループラインの会話の中に出てきた山口恵理奈ちゃんは、フルートパートの1年生の女の子です。




