13章 秘密
中村さんは、不意にくすくすと笑いだした。
「咲希ちゃん、気づかなかった?」
「え?」
「美穂さんは、私のお母さんだよ!」
「——えーっ!じゃあ……」
「そう!誠さんは、私のお父さんのことだよ。長女は私、長男は陸斗の事なんだ。」
驚きで、声が出ない。
「目が見えなくてもスコアが読めるのは、手に触れているものだけ見える力があるから。スコアに触れてさえいれば見れるからね。もちろん、音源を聴いて覚えたりもしてるけど。他にも、私がスマホのケースを使ってないのは、スマホに触れるため。ケースに触れてもケースしか見えないからね。目が見えないから、聴力や嗅覚、手先の感覚、舌の感覚は敏感だし、気配を読むのも自然と上手くなったの。だから、あまり生活には困ってないの。」
「……他に、どんなことができるんですか?」
「うーん……こんな事とかかな?もう直ぐ陸斗が来るから、そのときわかるよ。」
「……?」
言葉の意味が分からず戸惑った、そのときだった。
「お姉ちゃん、お母さんが呼ん……」
陸斗くんが話しだした直後、中村さんが、手を叩いた。その音は長い余韻を残して消えていった。
陸斗くんの言葉の続きは聞けなかった。
なんと、中村さんは、時を止めたのだ!
陸斗くんは、微動だにしない。時計の秒針も動かなかった。
「これで、分かった?」
「はい!」
2人で顔を見合わせ、笑った。
「他にもできることはあるけどね、今日はこのぐらいにしておこうか。さて、元に戻すよ!」
中村さんは、もう一度手を叩いた。
「……でるよ!お風呂に入りなさいって言ってた。中川さんも一緒に入れば?」
「分かった、今行くね。咲希ちゃん、お風呂入ろっか!」
「はい!」
私はその後、温かいお湯に浸かり、体が温まったところで、中村さんと同じベッドで一緒に横になった。
私はすぐに眠りについた。
 




