12章 間の国の物語
「ねえ、昔話をしようか?昔話だけど、不思議なお話だよ」
「面白そうですね!どんなお話ですか?」
「……えーっとね……」
実は、ここ、現世とは別の場所があるって知ってた?
そこの名前は『間の国』。そこには死の国に行けない魂たちや、不思議な力を持つ人々が住んでいるんだ。つまり、人間と、魔法使いや死者たちの間の人たちが住むから、間の国っていうんだ。
ここから人間が間の国に行くこともできるし、間の国の住民が現世に来ることもできるんだ。
そんな間の国に住んでいた、女の人のお話だよ。
女の人の名前は、美穂さん。彼女は不思議な力を持っていて、生まれた場所も間の国だったんだ。美人で、快活な女の人だった。だからか、彼女は現世はどんなところなのか、興味を抱いていた。
でも間の国には『間の国で生まれた者は大人にならないと現世に行けない』という掟があるの。だから、その日をずっと待ち望んでいた……。
そして、ついにその時がきたの。彼女は、今から25年前ぐらいに、初めて現世にやって来た。
現世のことが何も分からず、困っていた彼女に声をかけた優しい男の人がいた。
その人の名前は、誠さん。
彼女の事情を聞いても驚かずに、現世の色々なことを教えたのが、彼だった。
かっこよくはないものの、とても優しい彼のおかげで、彼女は現世に慣れていったの。
やがて、2人は恋に落ちた。そして、彼女が現世に来てから5年後、2人はとうとう結婚したの!
2人はちゃんと事情を話した上で両親に許可を得ることもできたのよ。
2人の両親はきっと、寛容な人だったのね。
でね、その3年後、美穂さんは女の子を産んだの。どちらかというと美穂さんに似て、美人と言われたりすることが多く、不思議な力を使えるんだ。ちゃんと誠さんの血も引いている証拠に、彼に似て優しい性格なの。ただ、不思議な力を使える見返りなのか、生まれつき目がみえないの……。でも、それを補える力もあるしね、生活に不便はないのよ。
……まあそれはともかく、その5年後に美穂さんは男の子を産んだの。今度は誠さんに似たのか、あまりかっこよくないし、不思議な力も持ってなかった。でも、性格は美穂さん似でね、快活な男の子だよ。
「4人家族で、今も幸せに、現世で暮らしているんだって。でも、たまに家族で間の国に行くこともあるみたいだけどね」
「……面白いお話ですね!」
中村さんはうなづいてから、不意に、くすくすと笑いだした。
「咲希ちゃん、気づかなかった?」
「え?」




