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長雨 7

「シンが来ているんですか?」


 宿に戻った私に、ドミニクが実は……と打ち明けた。

 シンと近衛騎士の数人がお忍びでこの街に来ているらしい。

 ーー私はメルジェのシルヴィアの屋敷にこのまま向かうつもりだったけれど、シンが来るのを知った手前、素通りするわけにもいかない。

 挨拶というか、簡単な会食をセッティングしてもらうことにした。


 内々に会いに行ってもいいんだけどなあ。


 それだとちょっと「公女がお忍びで、シン公子に会いに行った。彼らは恋仲だ」なんて邪推もされてしまうわけで。

 ううん、会えるのは嬉しいけど、面倒なことが多いね!


「公女様、公子からのご伝言をお預かりして参りました」

「ーーー!どうぞ。お入りになってください」


 私の居室が聞き覚えのある声とともにノックされて私は慌てて立ち上がる。

 果たして、現れたのは……イザークとヴィンセントだった。


「再来月から、シン公子付の騎士の一人になります。イザーク・キルヒナーと申します。公女殿下」

「同じく、ヴィンセント ・ユンカーと申します」


 かしこまったものいいに苦笑した。知ってるよ!

 イザークとはあの夜会以来久々に会うのに、拍子抜けするくらいいつも通りで私はかえってギクシャクしてしまった。

 意識しちゃうのは修行が足りないのかな。

 ソワソワとお茶を頼んで上の空で口に含む。


「シン公子がお忍びで北に来られるなんて珍しいですね。どうして?」

「それは、本人から聞いた方がよろしいかと。レミリア様はどうしてメルジェに向かってらっしゃるんですか?」


 ヴィンセントが尋ねてくる。

 なんだかかしこまった口調に背中がムズムズする。私は背後の宿にいる給仕達をみた。


「少し、下がってくれる?」


 彼らは大人しく引きさがって、部屋の中には私とイザーク、ヴィンセント 。

 それからカミラだけになった。


「もう!無理!いきなり近衛騎士になったからって他人行儀な口調にならないでくださいませんか!息が詰まりますから!」


 私が口を尖らせると二人は顔を見合わせて笑った。


「わかった、ごめんごめん。ちょっと大人ぶってみよっかな。って」


 イザークが笑う。いつもみたいににかっと笑うので私はほっとした。ヴィンセント が何故か私たちを見比べて紅茶を含む。


「それで?なぜ公女殿下はここに?」

「長雨のせいです。川の堰が一部決壊して……」


 ヴィンセントはああ、と納得したように頷いてカップを置いた。


「君が、以前言っていた気になる治水のこと?」

「ええ。幸い、畑被害はあったんですけど、人的被害は少なくて。ほっと一息ついているところなんです」


 私が被害の状況を説明すると、二人はそれはよかった、とうなずいた。


「……こんな長雨が続いたことは、この百年ないはずだ。ーー収穫が怖いな」

「今年は領民への税は撤廃して、逆に穀物を返すことになりそうです。そうでないと、暴動も怖くて」


 天災に対する備えがないわけじゃないないけど、やはり一人一人に十分な補償ができるかはわからない。


「それで、シン公子がここにいらした理由は?まさかお散歩じゃないでしょう?」

「直接言ってもらうよ。そろそろシンがこちらにくるはず」


 そう?と私が首を傾げたところで、先程の給仕の一人が部屋に入ってきた。

 シンが部屋に来るという。

 私が一応立ち上がって待っていると、背の高い青年が現れて私は目を丸くして、思わず叫びそうになってしまった。


 シン公子がここにいるのは想定内なんだけど!!

 驚いた私に気付いてシンが苦笑する。


「久しぶり、レミリア。どうしたの?鳩が豆鉄砲食らったような顔してるけど」

「びっくりもするわ。だって、その髪どうしたの?」


 シンのイメージと言えば、美しく長い銀髪だった。

 この前会った時は腰まである髪の毛を結んでいたはず。ゲームの中でだって長い銀髪は彼のトレードマークだった。

 それが、さっぱりと首の後ろで切りそろえられている。


 シン推しで、かつ、やっぱり現世でもシンの髪の毛に憧れていた私はちょっぴりショックである。

 私の反応が面白かったらしいシンは微笑んだ。


「……ちょっと今から会いたくないやつに会いに行くから、印象を変えようと思って。少しは大人っぽく見える?」

「すごく!会いたくないやつって?」


 まあ、似合うからいいかな!と呑気に微笑んだ私は、シンの続く言葉にピシッと凍りついた。


「会いたくはないけど……竜族の長に会いに行くんだ。……あってくれるかはわからないけどね」


 …………私、さっき、その人に会ったんですけれども!



ものすごく短くてごめんなさい!

続きは15日に!!

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