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白夜を行く 2

(ちべ)たい…」


 くしゅん、と黒髪の少女は小さくクシャミをした。

 イェンは外套がわりの古い布を持ち出すとキリを手招きした。タタタと駆け寄ってくるキリを包むと、キリは当たり前のようにイェンの隣に座って曇天を指差す。


「イェン!見ろよすっごい!白いのが降ってくる!すげぇ!」

「せめてすごい、って言え。品がないな」

「ンなもん、あるわけねーじゃん」


 黒猫はプイっとそっぽを向いた。その鼻先に雪が舞い降りて、思わず笑ってしまう。

 こんなにふわふわなのに甘くないんだなと、キリはどこか不満気だ。


「雪を見るのは初めてか?」

「見たことあるわけないじゃん。ここは砂漠なのに!」

「それは、そうだな」


 砂漠に雪が降る。


 ありえないことのように思えるのだが、実は百年に一度はある珍事らしい。一生に一度見られるかどうか。幸運だなとうそぶいて、イェンは空を眺めた。


 砂の世界が一面白になって、雪の静寂に世界が閉ざされる。

 エチカは、今日も具合が悪くて寝込んでいる。

 キリは風邪が良くなるといいな、と無邪気にエチカの寝室に行こうとしたが、イェンは「お前がいたら喧しくて休めないだろ」と黒猫の首根っこを掴む。


「そうだね、雪が止んだらエチカの体調もよくなるのかな?」

「たぶんな」


 キリは何を思ったのか、雪の塊に身を踊らせた。

 粉雪を舞い上がらせて、ケラケラと笑う。


 一面、水平まで続く白砂。空を覆う、曇天。

圧倒的な余白に支配された幻想的な光景の中にイェンはしばし思考を遊ばせた。


 竜族の里を出て、もう何年になるのか。片手では足りない年数になってしまった。

 何かあれば報せろと口酸っぱく言い聞かせてきた、兄貴分のスイに持たされた紙片を開く。


『ここに連絡すれば、俺につながるから。何かあれば報せろ』


 結局、一度も手紙を書かなかった。

 惨めな自分を知られたくないという小さな意地もあったし、スイに会えば途端に弱くなる。それが怖い……。


 だが、と思い直してイェンは手紙を書いた。

 いま自分のいる場所、スイに会いたいこと。

 それから、助力を願うこと。


 必要以上に素っ気ない文章をキリと一緒に近くのオアシスまで行って、届けてくれる業者に渡す。

 エチカの家に戻って、キリを寝かしつけると、この家の主人の寝室にそっと身を忍び込ませた。


「……キリは、寝た?」

「起こしたか?まだ、寝ていろよ」


 元々痩身の男は、またさらに痩せたようだった。


「イェン、お前は案外子守がうまいよな。意外だ……」

「子守に就職できるんじゃないかと思ってるよ」


 軽口にエチカは笑い、笑った拍子に腹が痛むのかまた呻いた。






『多分、腹のなかに良くないものがあるんだ』


 一月ほど前。


 この馬鹿のつくほどのお人好しは、サラリとイェンに告げた。

 明日の天気を告げるみたいにあっさりと言う。


『親父も同じようになって若くして死んだ。俺も多分、長くはないんだと思う……』


 唖然とするイェンに、聖職者は静かに微笑んだ。


『だから、よかったな、って』

『何が?何が、よかったと……!?』


 動揺で思わず声を荒げてしまったイェンにまあ、座れよと椅子をすすめて、エチカは肩を竦めた。


『最初に身体が変だなあ、って思った頃にお前がここに来たんだ、イェン。泥だらけで臭いし汚いし捨てようかと思ったんだけど』

『……そいつは失礼』


 くつくつとエチカは喉を鳴らす。


『俺がいなくなった時に、キリをどうしよう、って。あいつは難しい奴だから誰にも懐かない。だけど……お前は大丈夫だろ?……実は大神に祈っていたんだ。俺がいなくなった後も、キリを助けてください。どうかあの子を守ってくださいって。そうしたら、ほどなくしてお前が現れた』


 イェンはたまらずに拳を机に叩きつけた。


『俺がここに来たのは何の役にもたたない神とやらの差し金じゃない!俺の意思だっ!!ふざけるな。なんでお前の保護するガキなんか押し付けられなきゃいけない!お前が最後まで、面倒を見ろ!』


 苛立ちを隠せずに言うと、エチカは俺もそうしたいんだけどなあと苦笑する。

 クソ、とイェンは自らの髪をグシャグシャと乱した。

 こんな事を言いたいわけではない。違うのに。


『西国は医療が進んでいる。腹を裂いて治療する外科手術もな。一度行ってみればどうだ』

『……生まれもった体を自分で痛めつけるのは教義に反する。気が乗らないよ』

『お前は、正真正銘の阿呆か!?何が教義だ!正式な神官でもないのに何をかっこつけてやがる』

『あはは。……本当は、さ。外科手術を受けるのが怖いのもあるんだけどさ。やっても無駄なんじゃないかって気もしてるし』


正式な神官ではないと言うのは信心深いエチカに対する最大の侮辱だろう。

だが、イェンの侮辱にも全く怒らず、エチカはキリの寝室に視線を向けて、呟く。


『キリ。あいつ、多分、竜族混じりなんだ』

『え?』

『曾祖父さんか、そこらへん。異能はないけど、あの年代にしちゃ嘘みたいに頭がいいだろ?お前に懐くのも、無意識に竜族の血を感じてるのかな、って。……悪いな、イェン。お前が神様の話が嫌いなのも、竜族の事を持ち出されるのが嫌いなのも、知ってる』


 エチカは人の悪い笑みを浮かべた。


『でも、俺が死んだ後にキリが一人でいるのをほっておかないだろうな、って事は確信してるんだ。意外に情にもろいお前につけこもうと思ってる』

『……おまえは嫌な野郎だな。クソ神官』

『イェン、お前のその口調、キリにそっくりだよ』

『やめてくれ!……影響を受けている自覚はあるんだ!』


 エチカはくすりと笑った。

 だから頼むよ、あいつを見捨てないでやってくれ、と言って頭を下げる。

 イェンは答えなかったが、疲れたと言って寝室へ戻るエチカに肩を貸して寝室まで付き添った。

 寝入ったエチカから安らかな寝息が聞こえるまで、イェンは彼の側を動けなかった。




 ◆◆◆


「客をここに呼びたい。あんたは許可してくれるか?」

「お客?お前の?いいけど……誰だ?」


 数日後、イェンはエチカに許可をとって手紙を書いた。エチカは無言のイェンを無理に詮索しなかったので話はそれきりになった。

 体がだるくてねと苦笑するエチカに効果があるかもわからない薬を飲ませて、無理やり寝かしつけて、また窓の外の一面の白を見つめる。


 押し寄せてくる、余白。


 この余白に何を描けばいいのだろうか。

 皆目見当もつかずにイェンはただ、空を見つめた。




 数ヶ月のうちにくればいいと思っていた返事と待人は、手紙を渡してから半月後という驚くほどの早さで、砂漠のイェンのもとに現れた。

 彼はイェンの姿をみとめるなり大声で怒鳴った。


「イェン!この馬鹿!連絡が遅いんだよっっ!便りを何年待ったと思っているんだ!」

「スイ!」


 茶色の大きな龍に乗った人影は相棒が地面に舞い降りるなり、イェンに突進して二人は勢い余って地面に倒れた。

 イェンは痛いよと苦笑して半身を起こす。

 同じく半身を起こした金色の瞳が柔らかくこちらをみるので、イェンは懐かしくそれを見返した。


 ――父に招かれ竜族の里でイェンが親しくしていたの同胞は、二人だけ。


 シェンとスイ。

 スイは黒髪に金色の瞳をした男で、医術を学ぶのが好きな変わり者だった。


 前触れなく現れた怪しい男にキリが人見知りを発揮して木の陰に隠れ、声を尖らせた。


「イェン、そいつ誰!」

「……スイだよ」

「何者なんだよ!」


 ガルルルとあからさまに警戒し、いまにも飛び掛かって爪を立てようとするキリとは対照的に、スイは目つきの悪い少女に向かって「元気がいいなあ」と目を細めた。

 子供が好きな男なのだ。

 猛獣のようなキリを目の前にしてもひるむことなく、敵意はないよとばかりに両手を広げて、少女に近づく。


「初めまして、君が、キリ?俺はスイ。北部に住む竜族で、イェンの友達なんだ」


 うそだぁ、とキリは警戒を緩めなかった。


「イェン、性格悪いもん。友達なんているはず無いよ!」

「え、そうなの?いないの?まだイェンって俺以外に友達いないの?」

「……キリ、お前、今日の夕食はパンだけ食ってろ」


 頰を引きつらせつつ言うと、スイはくすくすと笑った。

 イェンに向き合って「大きくなって、大人になって、こんなに……」と感無量とばかりに髪に指を潜らせた。

 子供扱いはくすぐったいが懐かしいな、と苦笑していると……、


「こんなに、人相まで悪くなって……!苦労したんだなあ」

「――やっぱりアンタ、北に帰れ」



 さめざめと涙ぐまれて、イェンの方が泣きたくなった。





 このところ身体の調子が悪くないエチカは、いきなり現れた竜族に驚いたものの……すぐに気を取り直して歓待してくれた。


 四人揃って食卓を囲み、腹も膨れた所でキリは首を傾げた。

 エチカがスイに対して瞬く間に警戒を解いたせいで、彼は大丈夫な人間なのだと判断したらしい。

 キリの善悪の判断基準はすべて、エチカだ。

 それを危険だとエチカは今更後悔しているらしいが、イェンは仕方がないと思う。

 孤独な子供が、これだけ純粋に善意で甘やかされて愛情をかけられたら、全幅の信頼をおくのは無理もない。

 それを、アッサリと手放し、イェンに託そうと安易に考えるエチカに、実のところ腹が立っていた。


 いや腹が立つなんて生ぬるい。

 本当に、ものすごく、怒り心頭、だ。


 そう思いながらイェンはスイが持ち込んだ北部の酒を嚥下する。

 度数の高い酒は喉を心地よく焼いて胃に滑り落ちる。どう切り出そうかと考えあぐねている横でキリが客人に質問を重ねた。

 どこからきたの?北部ってどこ?なんで瞳が金色なの、あのドラゴンは何を食べるの。

 それから――


「スイはお医者さんなの?」

「まぁね」

「へぇ、すごいや!エチカもお医者さんなんだよ!あたしは助手」

「そうなのかい?」


 スイに水を入れ向けられて、エチカがとんでもないと否定した。


「前任の神官様の教え通りにしているだけです。私が何かをできるわけではありませんよ」


 スイはそうか、と微笑んだ。

 それから人の悪い笑みを浮かべて、明るく言い放つ。


「それは、そうだろうね?医者なら、自分の身体を放っておくはずないもんね。医者の不養生にもほどがあるよな?」

「え」

「しかも、運命だなんてあっさり受け入れて全部放り投げて死を待つだけだなんて、そんな無責任なことは言うまい。君が医者ならね!」

「な、んのことです」


 エチカは動揺し、キリが呆気にとられる。

 イェンは酒を煽りエチカをみて、一瞬遅れてエチカは、イェンを咎める視線をよこした。

 スイに、エチカの病状をイェンが話したのは明らかだろう。

 この小さなオアシスに辿り着いておそらく初めて向けられたエチカからの負の感情をイェンは無視して、キリに話しかけた。


「……どういうこと?」


 不安げなキリに、イェンは向き直った。


「キリ、よく聞いてくれ。エチカは、病気だ。腹の中によくないできものがある。あんまり長く生きられないと本人は言ってるし、俺もそうだと思う」



キリは呼吸を止めて……それから声を荒げた。


「うそばっかり!エチカが死ぬわけないもん!」

「死なない人間なんかいない。それが早いか遅いかだけで」

「嘘だよ、ねえ、エチカ。エチカがいつも寝ているのは、風邪が治らないからだよね?あたしを一人にしたりしないでしょう?」


 よせ、というエチカをイェンは無視した。

 キリは勘がいい。だから、二人の態度から何が真実かなんてすぐに看破しただろうし、実際のところここ数ヶ月のエチカの様子がおかしいことは気づいていたに違いない。

 黒い大きな瞳に、見る間に涙が浮く。


「嘘だよね?エチカ、嘘だって言って!ねえったら」

「……キリ……」


 イェンは、続けた。


「エチカはすぐに死ぬかもしれない。スイは医者なんだ。長く生きてるから知識もあるし、西国の医者連中に伝手もある。エチカは嫌だというけれど、俺は――、」


 言葉を探して迷う。考えあぐねたすえに、言った。


「あんたは生にしがみついて……あがくべきだと、思う」


 エチカは沈黙し、泣きじゃくるキリの前で途方に暮れている。

 イェンはスイに「後は任せた」と無責任に言い捨てて部屋を出た。

 小さな同じ空間にいづらくて、礼拝堂に逃げる。

 エチカが好んで座る場所を横取りするみたいに座り込んで龍と女神像にはさまれた大神像を見上げた。

 いつものように美しいその(おもて)はどんな時も表情を変えることはない。

 少年時代、イェンは神の信徒になりたかった。

 国教会に殉じて美しいものをみて理想だけを語って、人々にその御心を説きながら穏やかに過ごしたかった。……今は語る言葉をもたない。何も。


 ――情けないものだな。たかだかひとり説得するのも、自分じゃできない。

 少年の頃の己が今の自分を見たらきっと、この体たらくに失望するだろうと、自嘲する。


 しばらく像を仰いで、イェンはぽつりと大神に問いかけた。


「俺はもう、貴方の事を愛せはしないが――、だがこんな辺境でさえ貴方を愛する信徒がいる。たまには慈悲だか奇跡とやらを示してもいいんじゃないのか?出し惜しむほどのことでもないだろう?――なあ、どうなんだ?」


 もちろん、答えはない。

 ただ、礼拝堂の入り口から戸惑うような気配がした。


「神への思いは、信仰とは、見返りを求めるものではないよ」

「エチカ」


エチカは困ったように笑って、邪魔をするよとイェンの隣に座った。

キリはスイに預けてきたらしい。

それから、参ったなとぼやいてため息をつく。


「……イェンの客人が来るというから、何かと思ったら。こういう事を企むとは、思わなかった」


 恨み言を言われて、フンと鼻を鳴らす。


「神の末裔たるヴァザの俺が手術を受けろと言い、しかもその差配を神の化身たる竜族がやってくれるんだ。それにキリに泣いて駄々をこねられたら、いくら頑固なあんたでも、断りようがないだろ?……と思った。外堀から埋めるのが一番だろ」

「……俺は、頑固かな」

「頑固だね。柔らかく微笑んで人の話を聞くくせに……自分が納得しない限り、絶対に考えを曲げないんだ。本当は、残されるキリのことなんか、考えていないんじゃないのか?執着が薄いと言えば聞こえがいいけど。冷血なだけだろ」

「冷血って」

「あんたのために泣いてくれるキリより、物言わぬそこの石像が好きなんだろ。この変態野郎」

「……へんたい……」


 エチカはあまりの言われように、うう、と呻いた。

 弁解するように眉を下げる。


「病になって、それで根の国へ行くのなら。それが運命なら致し方ないと、そう思っただけなんだよ。信仰とか、たいそうな、事じゃないんだ……」

「それを言うなら、神に導かれてここへ来た俺が、あんたにもう少し欲張って生きろと言って、あれこれおぜん立てするのも運命だろ?あきらめろよ。あきらめて俺のいう事を聞いて、……少しでも長生きしようとあがいてみろよ」


キリの泣き顔を思い出す。


「あんたにとってはあと一年、二年寿命が延びたところで、執着するほどの年数じゃないかもしれないけど。ガキの頃の一年は長いだろう。……愛情に飢えた子供なら、なおさら」


 エチカは決まりわるげに視線を逸らした。イェンは、苦笑する。

 キリの気持がイェンにはわかる。わかると、思う。

 父の元へイェンと母は呼びよせられたが、欠陥品の息子を父は全く愛さなかった。たまに煩わしそうな視線で追い払われるだけで、会話をしたことさえ、数えるほどしかなかったと思う。

 ……スイと、シェンがいなかったら。

 彼らが義務感からなのか気まぐれなのかはわからないが、それでもイェン少年に構って寂しさを埋めてくれなければ、あの頃、少年の心はとっくに壊れていた、だろう。

 本当はあのまま、竜族の里にとどまって彼らと過ごしてもよかったと思う。


(だが、俺は逃げた)


 イェンは竜族の血を引くとはいえ異能のないただびとに過ぎない。

 やがて線引きされるだろう二人との関係を想像するのが恐ろしかった。

 それが里をでた理由の一つでもあったと思う。

 いつか失うとわかっている関係なら、自分で手放した方がいい。

 その方が、傷が浅くて済むから。


「きっと、俺にとってのスイが、キリにとってのエチカなんだ」

「……」

「出来る限り、側にいてやれよ。あがいて、あがいて……その末にあんたが死んだのなら……、俺が北山の魔女の里に連れて行くと約束するから」


 竜族の里のふもとには、竜族混じりの人間たちが住む集落がある。

 変わり者で人間が好きなスイは頻繁に集落に出入りしているし、キリが落ち着くまでイェンが付き添ってもいい。


 言い終えてから、イェンは笑った。

 今の台詞は嘘ではないが――、キリをだしにして、卑怯な言い草だろう。


「それに」


 イェンは隣の男を見た。

 それから、背後の煩い気配に気づいて手招く。

 キリは泣きながら駆けてきて、イェンの首根っこにかじりついた。わんわんと泣きわめく背中を撫でながら呟く。キリのためだ、エチカのためだなんて言いながら、本当は違う。

 ただ、単に……。イェンは息を吐きだした。観念して自白する。

 キリのためだけじゃない。……本当は、違う。


「ここは居心地がいいんだ」


 エチカが困ったようにイェンを見た。


「俺の居場所じゃない。多分違う。俺にはどこにも、いていい場所がない。だけど……ここは……楽に息ができる。あんたがいて、キリがいて、ほかに誰もいなくて。静かで……平和だ」


 失うとわかっている。

 こんな箱庭は簡単に崩れる。消えてなくなる。審判の日は、ひたひたと忍び寄ってくる。

 だが、もう少しだけ。

 いつか失う幸福だとしても……、この平穏が続くのを望むことは許されないだろうか?


「頼むよ、エチカ」


 声が震えないようにイェンは小さくつぶやく。

 神に、ではなく、こんな風に誰かに願うのは……初めてのことかもしれなかった。


 エチカは静かに天井を仰いで、小さな礼拝堂にはしばらく、キリのすすり泣く声だけが響いていた。

続きは3月になります。すいません。

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