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31.燃えた村

 嘘だろ……嘘だろ!?

 俺はココ村に向けて全力で駆けた。

 さっきの声はババ様だ。ココ村が襲われているって……なんでだ!? アッセンからココ村に向かっている兵隊は居なかった!

 なんでココ村が襲われるんだよ! くっそおぉ!!


『ババ様、どういうことだ!?』


 全力で声を飛ばすが、返事は無い。

 遠くに飛ばすのは疲れるし、ババ様は返事をする元気がないのかもしれない。いや、返事をできない状態ってことも……!

 焦燥感が胸を焦がす。速く、速く、もっと速く走れよ俺ッ!

 ゴウゴウと耳の傍を風が飛び去っていく。

 フィーナ! 無事でいてくれよフィーナッ!



 村に近づくと何かが燃えた匂いが漂ってきた。

 目の前がカッと赤くなる。


 村はあちこちの家が焼け焦げ、畑もあちこちから燻ぶるような煙が上がっていた。

 村の門の近くに斬り殺された村人の遺体があった。

 皆が毎日働いて、笑っていた村が蹂躙されていた。


 フィーナ!


 俺はフィーナの家に急いだ。



 フィーナの家は燃え尽きていた。


 屋根は完全に無くなり、黒焦げの壁だけが辛うじて立っている。


 フィーナが毎日水を汲み、満たしていた瓶は割れ、破片が散らばっている。


 居間の籠も、寝室のベッドも、みんな燃えて無くなっていた。



「いた! いたぞ! やっと見つけた!」


 不意に声がした。


 男が3人、ラゴ爺さんの家の方から走ってくる。


 ああ、やっぱり俺って気配を探るのが下手だなぁ。


 余所者がこんなに近くにいたっていうのに、気がつかなかった。


 男の1人が首から下げた笛を吹いた。


 耳障りな甲高い音が響く。


「なんだ? 音がしねぇぞ? 壊れてるんじゃねぇのか!?」 

「お、おいどうすんだよ!?」


 また甲高い音が鳴り響く。

 

 うるせぇナ


 死ネ


「に、逃げっギィッ!?」


 こいつらなんなの? おい、フィーナはどこだ。


「あ、あ、あぁアギャァ!! 俺の足がァ!」


 どこから出てきたの? フィーナはどこだ!


「痛デェ! 犬、犬はどこだよ!? アガアアァァッ!!」


 犬はここだぁ! フィーナはどこだァッ!!


「ギヤアァァァッ!イイィィイィィイイイィ……」


 おい黙るなよ? これぐらいでどうした、おい?


『えげつないねぇ。もう死んでるよ、ソレ』


 俺に声が飛んできた。

 聞いたことのない声。

 見ると10メートルほど離れた道の上に茶色の犬が立っていた。


 俺とフィーナが毎日通った道だ。


 どけよ。


『うわっ!?』


 俺の渾身の噛みつきが避けられた。


『この道の上に立つんじゃねぇ、死ね』

『おい、待て、なんだよお前ッ!?』


 何度も何度も噛みつき、両手での引っ掻きを繰り出すが、避けられ続ける。

 相手はどんどん後退していく。水汲みの道に沿ってどんどん逃げていく。

 だから、その道の上を歩くんじゃねぇって、言ってんだろ!


『俺たちはなんにもしちゃいない! まずは落ち着けって!』

 へぇ、こんななんにもない、山間の行き止まりの村に偶然立ち寄った、ね!


 またフェイント混じりの噛み付きをまた躱された。器用に避けやがる。目潰しするか。顎に力を込め、電撃を噛み潰す。


 バァン!!


『なんだ!?』


 目が眩んだらしいが、その場に留まらず大きく飛び退いていく。

 俺は真っ直ぐには追わず、迂回しながら追った。


 馬鹿だね。ビビって後ろに跳び過ぎだ。


 ボチャン。


 茶色の犬が川に後ろ足を踏み入れた。


 死ネ


 俺は川に右手だけ漬け、全力で電撃を放った。


『ウ、ギャアァッ!?』


 茶色は電撃に身を強張らせた。

 あー、右手が痛いけど、いいや。このままこいつを殺そう。


 俺がさらに力を込めようとした時、突然茶色が消えた。


 消えただと? チラッとイノシシの影が見えた気がした。


 俺は慌てて飛び退く。


 しかし俺が心配したように俺の後に犬が現れることはなく、水汲み場の真ん中に茶色の犬と白い犬が現れた。

 

『お前は自分の能力を過信し過ぎだ。私達が少し遅れてたら死んでたぞ』

『すまない』


 あの白いのがワープさせたのか? 厄介だな……


 そして次の瞬間茶色の犬が何事もなかったかのように立ち上がる。これには少々驚いた。暫くは痺れてるはずだが。


『まずは誤解を解いておきたい。私達はココ村が襲われていると声が飛んできたから様子を見に来ただけだ。この村をこんなにしたのは私達じゃない』


 白い方が声を飛ばしてきた。

 ちっ! こんなやつら放っておいてフィーナを探しに行くべきだった! こう向い合っちまったら、こいつらに後を見せた途端なにをされるかわかったもんじゃない。

 仕方がない、手の内と出方を探るのに付き合ってやる。


『お前たちは何者だ?』

『私達はこの世界に転生した日本人だ。君もだろう?』


 解ってるよ、そんなことは。


『……そうだ』

『日本人はみなイヌ科の生き物に転生していて、みな苦労している。そこで皆で集まり助け合い、なんとか日本に帰る方法を探っているんだ』


 へぇ。


『そんなことができるのか?』

『まだ探っている段階でね。でも、こんな不可思議な力がある世界だ。可能性はあるだろう?』

『……確かにな』

『だから君も私達に協力してくれないか? まずはこの村を襲っている奴らを倒すのに、私達も力を貸すよ』

『わかった、いいだろう』

『ありがとう。私の名前はサトウショウゴだ。こっちはイシダタイチ』

『俺はフィンだ』


『え?』

 白いのことショウゴが僅かに身を強張らせた。

 俺は何も言わず、相手を見つめる。

『おい、ショウゴ……』

『……』

 茶色ことタイチが不安そうにショウゴに声をかけるが、ショウゴはそれに答えず、聞き返してきた。

『フィンっていうのはこの世界の名前だろう? 本名を聞いてもいいかな?』

『本名は忘れちまってな。俺の名前はフィンだけだ』

『……なるほど、よろしくフィン。ところで、昨日この村から飛んだ声で呼ばれていたアルスって人は知り合いかい?』

『ああ、そうだ』

 俺がそう答えると、2人がソワソワし始めた。俺が嘘をついているのか、本当なら声で呼ばれた”アルス”が今どこかに潜んでいるかもしれない、と気になるのだろう。

『その人は今どこに?』

『さあ、知らないな』

『その人は人間かい?』

『……なんでそんな事を聞く?』

『……』

『アルスって名前はこっちの世界のものだろう?』

『それは……』

『あの呼びかけを聞いたら、声を飛ばせる人間が人間に呼びかけた、と感じるはずだろう?』

『……』


『なんでアルスが人間じゃないかもしれない、と思った?』


『君はなにか誤解をしているよ』

『あー、もういいわ』

 これ以上押し問答しても時間がかかるだけだ。最初からこいつらは80%敵だったのが、アルスは人間かって聞いた時点で100%敵だ。

『キョーコにもう色々と聞いてるんだよ』

 適当に鎌をかけるてみると効果は劇的だった。


『……』

『ッ!?』


 2人はすぐに身を緊張させ、殺気を纏った。

 キョーコの名前が通じたっとことは、やっぱりこいつら同じ一派だな。敵だ。


 死ネ

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