25.夜の村
俺は物陰から飛び出した。
まずは、動かない少女達を殺そうとしている兵士だ。
何人かは俺に気がついてポカンとしてるが、それだけだ、俺の標的はこちらに背を向けている。
首筋に喰いつく。大層な鎧を着てるが首がお留守だぜ。
「がっ!?」
バヂッ!
電撃を首に食らった兵士が身を強張らせ倒れた。
蛇が真っ二つになるやつだ、死んだだろう。
人が死んだ。俺に殺された。
なんだ、案外大したことないな。
動きを止めることなく、次の獲物に飛びかかる。
副官、お前だよ。素敵な余興をありがとう。俺、やる気みなぎっちゃった。本当はここまでやる気はなかったんだよ?
剣を抜こうをしてるが、遅いね。
飛び上がり喉笛に食らいつき、電撃を多めに食らわせる。
口を離したら副官の喉が炭化していた。やりすぎたかなぁ。この場の全員やるまで持てばいいけど。
「お、堕ちた獣! なんでこんなとこに!?」
誰かが悲鳴を上げた。
さて、次は誰でもいいが、とりあえず椅子の男かな。そうだね、次は?って催促してたしね。
やっと動き出した兵士が、俺と椅子の男の間に割り込もうとしてきた。
椅子の男は立ち上がり逃げようとしている。
やれやれ、逃がすかよ。死ね。
椅子の男の前に出てきた二人の兵士が斬りかかってきた。
バヂッ!
「アッ!?」
「イジッ!?」
剣に向けて放電してやると、兵士は堪らず剣を手放した。手袋した方がちょっとはマシだと思うよ、次があったら気をつけてね。
右の兵士に飛びかかると首を庇って手を上げてきたので、構わず手首に噛みついてやる。
「あぐっ!」
お前らの鎧、体の外にしか鉄板ついてないよね。
問題なく下顎の牙が手首の内側に食い込んだ。
バヂッ!
「あがあああ!!」
炭化した腕を庇うように体を屈め、頭が下がってくる。
次は無かったね。
右手で兵士の頭に電撃をぶち込む。
左の兵士が落とした剣を拾おうとしてるのが目に入った。
頭を下げてくれてありがとう。
俺は地面を這うように駆けると、左手がアッパー気味に兵士の顔面を殴りつつ放電。兵士はそのまま無様に顔面から倒れた。
おや、椅子の男。指揮官なんじゃないの? そんな一目散に逃げたら、駄目じゃないか。
待テ
ドクン。
俺の心臓が強く脈打った。
辺りが重く沈む。周りの兵士達の動きが急に遅くなった。
なんだ? まあ、いいか。とりあえず、片付けよう。
全部片付けた後、様子を見てみたら2人の少女は気絶していた。
堕ちた獣が目の前で虐殺しだしたら、そら、怖いよね。俺、堕ちた獣じゃないんだけどなぁ。
さて、ここにいる軍隊のトップかわからんが、結構な偉いポジションの奴を殺したんだ、混乱するだろう。
一時退却、とかになってくれると良いんだけど……とりあえず、村に潜んで様子を見るか?
ん、誰か来たな。
俺は路地に積まれた木箱の間に身を潜めた。
間を置かずに5人ほどの兵士が広場に入ってきた。
「ゴダン様!?」
兵士たちが倒れている椅子の男、ゴダンに群がった。
「これは……なんてことだ……」
「四肢が黒焦げだ。どうやったらこんなことができるんだ?」
「早くケーニャ様にお知らせしないと! ケーニャ様は西の陣に?」
「そうだ、ゴダン様のお誘いを断っておられたから、ご自身の本陣におられるはずだ」
「曲者は近くにいるかもしれん、門を守っている兵に知らせろ!」
兵士達はバタバタと散っていった。ゴダン様は放置なのね。人望の程が知れるわ。
しかし残念。どうやら同格の指揮官がもう1人居そうだなぁ。
そいつを殺して完全に頭を無くてやった方が身動きとれなくなるだろうが、西の本陣とやらに殴りこんで何百人も相手にすることになったら流石にガス欠になっちまいそうだ。
今のでもちょっと疲れたしね。
一旦崖まで引いて様子を見てみるか。
おっと、その前に。ここの村長さんは声を飛ばした人だよな。だったら……
『村長さん、無事ですか? 助けになれるかもしれません』
ちょっと大声気味に声を飛ばしてみる。
『……誰、だ? 聞き、慣れない、声、だな』
返事があった。随分辛そうだが生きてる。
『コ……』
おっと、どこから来たとか言わない方がいいか。
後々あの時の声は誰だったのか確認をとられても面倒だ。
『通りすがりの者です。捕まっているなら助けますが?』
『……助けて、欲しいが、無理だろう。兵士が5人も詰めているんだ』
5人かぁ、まあ、なんとかなるだろう。
『様子をみて助けれそうならやります。ゴダンって奴は殺したんで、詰めてる兵士は減るかもしれません』
『ゴダンを殺した!?』
おいおい、そんな大声出して大丈夫か?
『はい。とにかく捕まってる場所を教えてください。大声で話すのも疲れます』
『……そう、だな。農作物の倉庫に閉じ込められている。村の西の門の近くだ』
西の門か、生き残ってる指揮官が居る方だ。開放して助かるのだろうか……逃げたのが見つかったら殺されるだろうし。
だが、捕まったままでも殺されるかもしれんし。とりあえず、行ってみて様子を見てから考えるか。
2人の少女をこのままにしておく訳にはいかない。俺は2人の顔を舐め、起きる気配を感じたところで、広場から逃げた。
俺にできることはこれまでだ、なんとかうまく逃げろよ。
西の門の近くにある倉庫はあっさり見つかった。
結構大きな石造りの倉庫で、フィーナの家が丸っと4つは入りそうだ。
詰めていると言っていた5人の兵士は確かに居た。倉庫の入り口を5人で固めている。
ゴダンが死んだって知らせを受けて、殺した奴を探しに行ってくれればなぁと思ってたんだが、宛が外れた。
『倉庫の近くに居ます』
『……君は、勇敢だな。こんな兵士が、ウロウロ、しているところを。1人なのかい?』
『1人です。そちらは何人捕まってるんです?』
『……私の家族が6人と村の商人が3人だ』
村長も合わせて10人か。やっぱりそこそこの人数だな。逃げれるかなぁ。俺の姿を見せる訳にもいかんから先導もできんし。
『兵士はなんとかなると思いますが、逃げれる算段はありますか?』
返事に随分と間があった。
『……倉庫には、隠し扉が、あるんだ。私達は、縛られて、いるから、開けられないが、君が、開けてくれれば、逃げられる』
倉庫に隠し扉? 妙なもん付けるなぁ……俺、開けられるかな。
『わかりました。どこです?』
『……倉庫の、正面から、向かって、右側の壁に、色が違う、部分が、あるんだ、そこに、行ってくれ』
『はい』
『……すまない』
俺は向かって左側に居たので、倉庫の後を回って右側に行く。
色の違う壁、あるかぁ?
暫く眺めてみるが、そんなもの無いんだが……
「おや、可愛い犬っころねぇ。ゴダンを殺したのはお前ってことでいいのかしら」
なっ!?
いきなり倉庫の正面の方から声をかけられた。
『声を飛ばして捕虜と連絡をとる、なんて不用心よ?』
そこには白い革鎧を着た、金髪の女が立っていた。その女から声が飛んでくる。
『誰に聞かれているか、わからないからねぇ』




