第4章 The first summer vacation!!! 【花火大会編】①
第4章 The first summer vacation!!!【花火大会編】
第一話 「花火大会といったら?」
今日は、八月六日。八月に入り本格的な夏がやってきた。外では蝉がミーンミーンと、大合唱を繰り広げていて、そしてついに来てしまった花火大会当日だ。正直な所、花火大会なんて行かずに家でギャルゲーしてたい……。でも、行くって言っちゃったし……高校生になってから初めての夏休みだし……勉強しなくてもいい時だし……。……遊んでおいた方がいいかな⁇ ……めんどいけど……。ってか、もう午後一時じゃん。家の自室の床でだらだらと転がりながらゲームやゲームとかゲームをやっていたらいつの間にか寝落ちして……お昼だぜ? 昼……。さっき寝落ちから目が覚めたばっかで頭まわんねー……。
さてと、瀬戸達が来るまで何してよーか?
「ミッチー‼ お昼ご飯出来たわよ~!」
「はーい。」
母親にミッチーと呼ばれるなんて……。ま、いつもの事だけどさ。とりあえずご飯食べたら、着替えてギャルゲーだ‼
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三神は小さい頃の記憶は薄っすらとだが覚えてる。だけど、それがいつだかは覚えてない……。たしかこれは誰か小さい少女と出会った時のだろう……。
「うぅ。ぐすん……。ねぇなんでおじいちゃんは帰ってこないの?」
その少女は泣いていた。この言葉を聞いたのは何度目だろうか? 毎日毎日聞いている。
「あのね。あの人はね。今、病気なの……だからしばらくはさっちーには、会えそうにないの。」
その少女の母親は言った。だけどその眼は涙が浮かんでいた。なんで泣いているんだろう? 病気ならすぐに帰ってくるじゃん。だけどもう三ヶ月も帰ってきてないのだ……。
「じゃ、じゃぁあ‼ いつになったら帰って来るの⁈ ……ぐすん。」
少女は泣きじゃくっていた。
「うっ……。きっと……大丈夫……大丈夫だから……あの人はちゃんと…………帰って来る……はずだから。……………………だから、信じて。」
「うわぁあああああああん‼」
「お願い……これ以上泣かないで…………お母さん。悲しさに耐えられなくなっちゃうの……うっ。うわぁああああああああん‼ ごめんねっ!」
母親は少女を抱きしめながら、少女と共に大泣きしていた。もう何もかもが絶望したような精神の片隅で何か大切なものが無くなった様な悲しい光景だった。その光景を見ていた上斗は、何も言うことが出来なかった……親子の消失した悲しみは見ている上斗の小さな心では受け止められなかった。そして……
「…………あれ? なんで僕も泣いてるんだろう…………。」
いつの間にか上斗も泣いていた。号泣ではないが目からは涙がポツポツと……。上斗は急に胸のあたりが痛くなって、その場でそのまましゃがみこむと突然目から大量の涙が出てきた。
「(なんだよ。この胸の痛みは……やめろよ。なんで僕までこんな……。なんで何の関係もない自分が泣いてんだよ! …………胸が痛くて涙が出るよ……。)」
それから約二十分程が経っただろうか。少女はその場で涙を流したまま、泣き疲れたのか寝てしまっていた。それを確認した母親はポケットから出したハンカチで涙を拭いた。
そして、母親は上斗の方へ振り返り、言った。
「…………三神くんごめんなさいね。こんな見苦しい所を見せてしまって……。一つ、三神くんには言わなきゃいけないことがあるの。落ち着いて聞いてね?」
母親は真剣な目になっていた。……上斗は少し嫌な予感を感じていた。それは、真剣な目から涙が流れていたからだ……。
「は、はい。」
「それと、この一つは守ってね。――――絶対にこの子だけには言わないであげてね。あのね? 本当はね? あの人……いや、おじいちゃんは………………。」
母親から出た言葉は信じられない事だった。でもこれが現実だった……。そしてあの少女が、信用……心の支えだったのが父と母などの親ではなく……そのおじいちゃん〝だけ〟だったという事……。
ただ、これだけは言えた。これは、あの少女が聞いたら精神のどん底まで落ちるという事…………そして、母親がもう長くはないということだ…………。
……………………。
「三―神―‼ おきろ――――‼」
突然腹部あたりに強い衝撃がかかり反射で目が覚め跳び起きた。
「いってー⁉」
って、あれ? なんで佐次がいんの? てか、僕寝てたのか……。あ、そういえば……。
「……今、何時?」
「はぁ? もう五時だけど?」
「まじで⁉」
三神は、っふと時計を見ると十七時を回っていた。
「あれ? どこまでが夢でどこからが現実なのかがわからねぇ~。……なんか、何年ぶりかのような夢を見たんだけど……佐次の腹パンの衝撃ですっかり忘れたわ‼」
「いや、ここが現実だよ⁉」
佐次が軽くつっこんだ。
「ん? ってことは……十七時間も寝てたのか? あれ? 何時間だ⁇」
だらだらとしながら過ごしてたから時間感覚が曖昧に……。
「いや、十七時間は寝すぎだろ……。まぁ、俺はオールしたけどなっ!」
そう言いながら佐次はブイサインを突き出した。
「……うん。バカだね。」
「なっ! お前に言われたくない‼」
「で、どーでもいいけどなんで僕の部屋に居るのかな?」
「ん? そろそろ約束の時間になるから、呼びに来た。」
あー……そういやー花火が打ち上がる前になんかイベントあったなぁ……。めんど……。行くのやめよっかな? ……確実に殺されるけどさ……。
「ほら、早く行くぞ~? 早くしないとまた水木に殴られるぞー?」
それだけは回避したいな……。あれ? そういえば……
「瀬戸達どーしたの?」
「んー? 先に行って場所取りしてるけど?」
うわぁ~瀬戸らしいなぁ~……。毎年取りに行ってないか? あいつ……。ま、結構いいポディション取ってくれるけど。
「はぁ……じゃあ、行くか~……。」
「じゃあ、先に出てるわ~。」
……行動早いな……。いつもの事だけど……。えーっと、昨日用意したカバンは……あ、あった、あった‼ えっと、財布、スマホ、PS vita、予備バッテリー、ハンカチ……よし‼ 準備万全だ‼ さーてと、行くとしますか……。
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……思ったより人混みやべぇ⁉ 何、この人の量⁉ まじ、うざいんだけど……ってか瀬戸達どこだし……。
「うっわ……電波悪っ‼ 電話出来ねぇじゃねーかよ……。」
隣で、佐次が電話が繋がんねぇ~! って騒いでいる……。
「?なんで電話する必要あんの? てか、誰に?」
「んなこと決まってんだろ? ひな達だよ。」
「……………………。まさかとは思うけど……道迷った?」
「なっ……んなわけねーだろ⁉ ただ、どこ行ったかわかんなくなっただけだよ‼ 人混みでね‼」
……それを迷ったって言うんだよ……。まじ、どこいんだよ、あいつら……。場所わかんねーよ……。わかり易い所に場所取れよ。帰ろっかなー……。もうめんどい。探したりとか……。家に帰ってギャルゲーしたい‼ ……よし帰るk
「お‼ 三神いたぞー‼」
後ろの方から声が聞こえ振り向くと瀬戸達がいて、水木が大きく手を振って叫んでいた。
「あー……やっと見つけた……。」
……なんで、帰ろうと思った時に見つかんのかな~? まじ最悪だ……。花火大会が終わるのが二十時半くらいだから……うわぁ……後三時間くらい家に帰れないのかよ……。早く帰りたい……。
「これで全員そろったのかな?」
「……ひなちゃんが、いないんですけど……。」
住谷が三神と佐次が来たことを確認して、最終確認をしていると井下が瀬戸がいない事に気が付いた。
「南野もいねーぞ?」
井下に続き水木も気づく。
「え? どこ行ったの? あの二人。」
「さぁ……?」
佐次と住谷は首を傾けた。
……なぜ行こうと言い出した二人がいない⁉ なんで⁉ なんでいないの⁉ 普通はいるだろ? ったく、どこ行ったんだよ……。
「どこ行くか聞いてないの?」
「知らねー。『ちょっと出かけて来る‼ キラッ☆』って言ってどっか行ったぞ?」
「なぜ『キラッ☆』?」
佐次が二人がどこに行ったのか聞いた。それに水木が答えるが結局どこに行ったのか、わからないままだ。
三神は最後の言葉が気になるらしいが佐次達も、もちろん知らない。
「俺に聞くなよ……。」
「たっだいまー‼」
三神達が話していると後ろから瀬戸の声が聞こえた。
「あ、おかえりなさ~い。」
「瀬戸、何その荷物……。」
瀬戸と南野が大量の荷物を持っていることに三神はすぐに気づいた。
「ん? 家から食べ物をパクってきた~(笑)」
「マジで⁉」
「家からパクんなよ‼」
瀬戸が家からパクってきたことを知り驚く三神と水木。だが、すぐに南野が笑いながら、言い直した。
「と、ゆーのは嘘で、本当はマグレで買ってきたんだよね~。」
「そーなんですか?」
南野の言葉を聞き井下は瀬戸に問う。
「もう‼ なんで言っちゃうのさ~。」
……何がしたいんだこいつ……。マジで馬鹿だろ……。瀬戸は何がしたいんだ?
「ひなちゃん、何がしたいんですか?」
よし。言ってくれた。僕が聞く必要なくなった~‼
「ん? 別に~? 特に何がしたいっていうのはないよ~?」
「今日、ひなのテンションがおかしいから、あまり気にしない方がいいよ?」
……だからか。いつもだったらパクったとか言わねーしな……。あと、『キラッ☆』とか言うのもな……。
「なんで、なんで、テンションおかしいんだ?」
佐次の質問を止めようとする南野だが一歩届かず。
「あ、それ聞かないほうg……」
「だってさ‼ 小学校からの大親友がさ、昨日久しぶりにあったら小学校の時より、可愛すぎて‼ まじ、俺のy「スト――――ップ‼」えー……。」
瀬戸が言いかけた所をすぐさま南野が大声で叫んだ。
……何が言いたいかだいたい分かった。放送禁止用語だな。俺嫁宣言だろ? ……女子が俺嫁宣言しちゃだめだろ……。
「何?『俺の嫁だ‼』とか言いたかったのか?」
わぁ――⁉ 水木のやつ言いやがった⁉ こいつ、言いやがったよ‼ まじで言うなっつーの‼
「ん? 言ったけど何か問題あった?」
「ひな、問題しかないと思うが……。」
「問題発言です……。」
瀬戸に水木と井下が呆れながらツッコむ。
……瀬戸ってさ、もしかして……おかしな方向に向かってる? たとえば……
「まさかお前、レz「んなわけないだろ‼」……ちっ」
……そーだと思ったんだけど……。ってか水木、また放送禁止用語を……。どんどんカオスな状況に……そろそろ止めないとやばい気がしてきた……。
「どーでもいいけど、そろそろはじまるよー‼」
「あ、まじで⁉」
瀬戸はケータイを開いて時間を確認した。
……時間少しは気にしろよな……。それと、住谷サンキューだっ!
===>
『さぁ‼ 花火打ち上げまで残り三十分で――す‼』
会場内(蘇戸川の河川敷)に設置されているスピーカーから、花火大会本部からの放送が響く。
ってことは六時三十分か……瀬戸達は『打ち上げ前のイベント見に行ってくる‼ キラッ☆』とか言って行っちゃったし……。まぁ、そのおかげでPS vitaでゲームができるんだけどさ。PCは黒根に返しちゃったからな……。……ってか、黒根達って友達と言えるのかな?
にしても遅いな~あいつら……。高校に入ってからあまり多人数でいなかったから、一人でいても大丈夫って思ってたけど……あいつらと絡むとな~……。
「……意外と一人って寂しいな……。ボソッ」
「そーですか? 私は一人でも寂しいと思ったことないですよ?」
井下は、遠くの暗い風景を眺めながらポツリと言った。
「井下はすごい……な……。…………って、うわぁ⁉ い、いい、井下⁉ い、いつからここに⁉」
「慌てすぎです。変態さん。そんなに慌てなくてもいいと思います。」
慌てすぎって……そりゃ、慌てるだろ⁉ だって真後ろにいられたら誰だってびっくりするだろ? ふつぅー……。……あれ? 井下がいるってことは……。
「瀬戸達は?」
「え? あ、なんか『食べ物が無くなったから買ってくる‼ キラッ☆』って言って、他の人もつれて買い物に行っちゃいましたよ?」
……なんなんだよ‼ あいつ‼ 花火大会行こうって言った本人が買い物行ってどーする⁉ バカだろ、あいつ‼ まじで、早く帰ってこいし‼ あ、そういえば前に、水木に何してもいいって言われたっけな?……。よし。戻ってきたらやるか‼ あ、間違えた。殺るか☆
ってか、始まる前に買って来いよ‼ ったく……で、井下と二人っきりか……。この前も二人っきりだったな……。…………まさか……わざとか? ははは……そりゃないか~。さすがに……な……。……そーだったらどうしよーか……。
『お待たせいたしましたっ! それではっ! 第60回蘇戸川エキサイティング花火大会を開幕致しますっ!』
ヒュ――――――――――――ドーン‼〔パラパラパラ……
「あ‼ 花火上がりましたよ‼」
「へ? あ、本当だ……。」
「すごーい……。綺麗ですね~‼」
「あー……うん。そうだね。」
たしかに、今年はすごいな……。去年より、花火の数が多い。めっちゃ綺麗だ。……井下、静かだな……。……何してるんだろう? ちょっとだけ、見てみるか……。……………………………………………………め……めっちゃ可愛い⁉ え、なに? めっちゃ可愛いんだけど? 本っ当に井下か⁇ すっげー可愛い……。やっべぇ……この前の倍可愛いんだけど? まじ、やばいy
「変態さん、顔赤いですよ?」
「うわぁ⁉ って、あ、井下か……びっくりした……。」
「?どーかしたんですか?」
「え? あ、いや、何でもないよ‼」
「そーですか……。それにしても、みんな遅いですね……。」
「本っ当だよ……ったく、どこに行ったんだし……。」
「あ‼ いた‼ たっだいまー‼ キラッ☆」
「いや、『キラッ☆』じゃねーよ‼ 遅いんだよ⁉」
「ごめんごめん キラッ☆」
「せ――と――――‼」
ちょっとふざけた為、三神に怒られる瀬戸。
「ごめんねー。三神、さーちゃん。ひなが、道間違えちゃって……。」
瀬戸の代わりに南野が遅くなってしまった理由を説明する。
それに続き水木と住谷、佐次もしゃべる。
「ったく、友達見つけて、『俺の嫁――‼』とか言って行くやつ初めて見たぜ……。」
「本っ当だよ……。」
「で、道に迷ったしな。」
……だーかーらー……なんなんだよこいつ‼ まじ、バカだろ‼ そんなことすんならその友達と行けよ‼ まじでバカなんだな……。イラッ
ってか、水木、放送禁止用語出すな‼まじやめろよ‼
「だっ……だって~……会いたかったんだし……俺のこと呼んだ気がしたんだぜ⁉ 行くしかないだろ⁉ 行くしか キラッ☆」
「瀬戸? キャラ崩壊しまくってるから、いい加減、やめようか?」
そろそろイラついてきた三神が少し強く言う。
「え――……。」
「や・め・よ・う・か?」
「……はい……。」
黒いオーラ、久しぶりに出したな……。マグレに行った時以来かな? ま、何回もやっていると引かれるしな。
「ひな、口調直そうか? 男子みたいだし。」
隣で、花火を見ながらも瀬戸の耳元につぶやく南野。
「ん? ん――……しばらくは直りそうにない……かな? 特に一人称がね。」
瀬戸達が話していると横でどうでもいいような目で瀬戸達を見ていた水木が言った。
「どーでもいいから花火みよーぜー‼ 次、瀬戸が楽しみにしてた、キャラクター花火だz」
「まじで⁉ きたコレだ‼」
水木の言葉にすぐさま反応し、途中で遮る急にテンションが上がった瀬戸。突然の声に驚く住谷。
「……キャラ戻るの早っ‼」
佐次と南野は、いつもの瀬戸に戻ったことにホッとしていた。
「いーじゃねーか。俺キャラのままよりさ!」
「たしかにね(笑) いつものひなの方がいいよね~。」
まぁ、『俺』とか言ってるよりいいよな……。どっちにしろうるさいからな……。
「わぁ――‼ ストィッチ‼ ストィッチの花火だ‼ まじ、きたコレ‼」
「ひな‼ うるさい‼ 少し静かに……わぁ――‼ ディズミーのキャラクター花火だ‼ すっご――――い‼」
「瀬戸も南野も二人ともうるさい‼ 水木~この二人だまらs「すっげぇ――‼ ミャキーいるぞ‼ ミャキー‼ あ! トッフィーもいるぜ‼」…………お前もかよ⁉」
住谷がこのうるささに水木に助けを求めたが駄目だった……。
………………バカかこいつら⁉ うるっせーんだよ‼ ミッキーの花火が上がったからなんだし⁉ うっぜーよ‼ 小学生かよ⁉ ったく……井下を少しは見習えy
「わぁ~♪ キャラクターがいっぱいですね‼」
……お前もかよ⁉ なんなんだよ……こいつら……《もう疲れた……。
このみんなのテンションがこの後、ずっと続いたのだ……。