第2章 三神の青春の季節③
三話 瀬戸、落ち込む?
プールの2階にいる三神は相変わらず、望遠鏡を覗きながらポツリと言った。
「へー……井下ってあんなに、泳ぐの速かったのか……。って、なんで僕、井下の写真ばっか撮ってんの⁉はぁ……ま、いっか~。どーせ、明石とかも写ってるし……。あ――――。本っ当に天国だなぁー今日は‼っと、次のレースが始まるなっと……準備、準備♪」
と、言って望遠鏡とカメラを取出し、写真を撮る準備をする三神。
なぜ、そんなに写真を撮りたがるのかは、不明だ。
「次は、誰が出るのかなぁ~?お‼四ノ宮が出んじゃん!写真とっk……げっ、佐次も出てる……。しかもコースとなりじゃねぇかよ……。まぁ、いっか。ズームにすれば…………よしっ‼佐次はいれずに撮れた‼」
……など、一人でブツブツ言いながら写真を撮りつずける三神。本人は、否定しているが、やはり根っからの変態である……。三神のしていることは、確実に犯罪だ。(……女子の写真ばっか撮って……)まぁ、この後もそんなことを気にせずに写真を、撮りつずけるのだった……。
そして、開始から三時間三十分が経ち……
ピピ――――――――‼
「これで、午前の部を終わる!午後の部は、一時間後……一時三十分から始める‼次のレースは、第二十八レースから始める‼選手は、A組、三十九番‼B組、二十番‼C組、四十番‼D組、四十二番‼E組、五十番‼F組、十六番から始める‼選手は、遅れずに来ること‼以上、解散‼」
ザワザワザワザワザワ……
「あ、終わったー……。いーや、今日はずっとここにいるって決めたし、パンもってきてるし……。って、あれ?さっき……僕の番号呼ばれた……よね?うわぁ――――。めんどー……。ま、サボればいーんだけどぉ♪」
この時の三神の決断がいけなかったのだ。ちゃんと出ておけば……あんなことには、ならなかったのに…… 。
===>
一方、井下たちは……
「……もう、死にたいです……」
「さ、さーちゃん……。大丈夫だよ?ほら、だれだってあんなこと言われたら、キレるのはあたりまえだよ‼」
瀬戸が井下を慰めようと頑張っていた。
時間は少し戻って、井下が泳ぎ終えた所……。もう、第二レースが始まる所だ。井下達は、人があまり来ない所にいた。
「うぅ……もう……絶対に……キレないって……決めてた……のに…………。」
そういって、泣き始める井下。
「うぅ……うぅ、うわぁ――――――――ん(泣」
「え、あ、ちょっ……さーちゃん⁉ねぇ、泣かないで?ね?」
「う、うぅ……うわぁ――――――――ん(泣」
瀬戸は、井下に苦戦していた。それに水木が横で言った。
「おい。これどーすんだよ⁉」
「うちに聞くな‼さっきーは先生に呼ばれていないし、拳くんは今、泳いでいるし……うちらで、どーにかしなきゃいけないんだよ‼」
「でも、どーすんの?」
住谷が言った。
「え?あ、それは……その……」
「お――――い‼お前ら、見てたか?俺が泳いだ所を‼一位だぜ⁉らくらく、一位になったんだぜ⁉……って……な、なんで井下泣いてんだ⁉」
「あ……拳くん……た……助けてよー‼(泣」
「え?ちょ、まっ……ひなまで泣くな‼何があったかちゃんと説明してくれよ⁉」
「だ、だってぇ~さーちゃんが……泣き止んで……くれないん……だもん(泣」
「……はぁ?」
「えっとね、そのね、井下が『絶対キレないって決めたのに……』って言って泣き始めて、泣き止まそうと頑張ってんだけど……全っ然泣き止まないんだよね……」
「で、佐次が来たら瀬戸も泣き始めたってわけだ。」
住谷と水木が佐次に説明してやった。
「もう、泣いてない‼」
「泣き止むの早っ‼って、どーすんのこれ?」
「うぅ……も、もう……キレないって……き、決めたのに……(泣」ブツブツ……
井下は、泣きながらブツブツ何かを言っている。そのとき……
「第十レースに出る、D組の十番の人――――⁉急いで、待機所に来て下さーい‼」
と、国語の内気先生が呼んでいる。
「あ、僕だ‼じゃあ、あとよろしく~‼」
「あ‼住谷‼ったく、あいつ逃げやがった‼」
「と・り・あ・え・ず‼どーする?」
「どーするって言われても……。」
瀬戸達が話あっていると……
「たっだいまー☆」
そこに、先生と話してた南野が帰ってきた。瀬戸はほっとしたような顔で南野に言った。
「さっきー‼ちょうどいい所に‼」
「ん?どーしたの……って、え⁉なんで、さーちゃん泣いてるの⁉」
「……。(佐次と同じ反応⁉)」by水木
「えっと……実は……」
瀬戸は住谷と同じ説明をした。
「なるほど……。そーゆーことか……。さーちゃんて意外とメンタル弱いんだね~」
「え?あ、さ、さっきー⁉」
「うわぁ――――――ん(泣」
「南野‼お前、何言ってんだよ⁉」
井下は、泣き止む気配さえなく、水木は、南野に少し強めに言った。
「だってそーじゃん。ちょっとキレただけで泣くなんてさ~。ひなだって、たまに人格変わるけど、そこまで落ち込まないしさ~。」
「あ、ちょっ、さっきーそれは……。」
「……本当……ですか……?(グスッ」
「たしかに……今更だけど、瀬戸は、ガチギレしてもすぐ、いつもの感じに戻るよなぁ~。」by水木
「うん。よく、普通に俺らと話せるな~って、たまに思うな~。」by佐次
「ねぇ……さらっとひどいこと、言ってない?」by瀬戸
「あ……。ごめん……。」by佐次
それを聞いて井下が気を取り直したかのように泣きあんで言った。
「……なんか、その話聞いたら、泣いている自分がバカっぽく思えてきました……。」
それに南野が言った。
「でしょ?だから、泣くのは終わり‼」
「はい。」
「たっだいまぁ‼あ⁉井下が泣き止んでる!」
井下が泣き止んだところで、住谷が戻ってきた。
「おっ!おかえり~。」by水木
「どーだった?住谷~。」by佐次
住谷は、ふふふっと言いながら、笑顔で手をピースにして言った。
「ぶっちぎりの二位っ!」
「ぶっちぎりの二位って……もー少しがんばりなよ‼」by南野
「D組の人……一位たくさん取ってるのに……住谷君のバカ‼」
「はぁっ!なんか井下さんにバカにされた⁉」
「…………うちってなんだろう……。」
一人、落ち込んでる瀬戸。と、そこに……
「あ‼瀬戸さん!やっとみつけまったで~‼」
と、平成先生が、急いで瀬戸を探して走っていたのか額には汗をかいていた。
「あ……先生……なんですか…?」
「⁉ちょっ……どったの⁉いつも明るいのに……。何が、あったの⁇」
「いえ……何でもないです……。で、なんですか?」
「へ?あ……。第二十八レース……午前の部最後のレースに出場だっから、早く待機所に行ってな?ということです。」
「はい……。わかりました……。」
そう言って待機所に向かう瀬戸。
「……なんか、言っちゃいけないこと言った気がするのは、俺だけかな?」by水木
「大丈夫。私も、そんな気がするから……。」by南野
「後半……ひなちゃん空気みたいでしたよね?」by井下
「言ってはいけなかったんだな……。」by佐次
この4人の会話に着いていけない住谷は、水木達に聞いた。
「え?何?何の話?全然わかんないよぉ……‼」
「実は…………。」
南野は、先ほどの会話を手短に住谷に話した。すると住谷は……
「あーあ……。その話題出しちゃったんだ……。そりゃ、あーなるよ……。」
「……へ?どーゆーこと?」
南野が疑問に思い住谷に聞いた。
「実は、前に『うちって、なんなんだろう……』って、言ってたから『なんで?』って聞いたら……『キレた後なのに……なんで普段と同じように接しちゃうんだろ……消えちゃえばいいのにな……』って言ってたんだよ?」
「え……。」by南野
「は……。」by水木
「へ……。」by佐次
《はい――――――――⁉》by佐次、南野、水木
「う、嘘でしょ⁉あのひなが⁉そんなの言うわけない‼」by南野
「マジかよ……。あの瀬戸が……。」by水木
「…………。百%ないな。……。ボソッ」by佐次
「佐次くん、今、何か言いましたか?」by井下
「い、いや、別に……。」
など話しているうちに、午前の部が終わり、瀬戸が井下達の所に戻ってきた。
「たっだいま――――――☆」
「あ、ひな‼お帰りー‼」by南野
「どーでしたか?」by井下
「ん?ぶっちぎりの一位だよ‼白川いたのに一位だよ⁉ってか、周りの男子ばっかだったし~!中学の知り合いに『逆ハーレムだね』って言われた~(笑)」
「あ……あの~瀬戸……さん?」by水木
「へ?何?みずゆ……。なんで、敬語つかってんの?」
「あ、いや……さっきまで落ち込んでるみたいだったから……ですね……。」
「……え~?何のこと~?うちが、落ち込む訳ないじゃんっ。何言ってんのさ~。みずゆ、あつさで頭やられた?(ニコッ」
せとは、笑顔で笑っている……
「……なんでもないです。」
「≪絶対、言わない方がいいな……。≫」
瀬戸以外の全員が、心の中でそう思った。
「にしても、おなかすいた~。早く着替えて、昼ごはん食べよ~‼」
そう瀬戸が言って更衣室の方に歩き始めた。
「へ?あ、うん‼」by南野
「あ、ひなちゃん……。待って下さい‼」by井下
「ひな‼速いって‼」by佐次
「もう少しゆっくり行こうよ~‼」by住谷
「瀬戸‼聞いてんのか⁉」by水木
……やっぱり、ご機嫌斜めな瀬戸を先頭に、更衣室から教室に戻っていく井下達。この後、井下達は、少し……てか、かなりやばい事件にまきこまれるのであった……。
===>
午前の部が終了してから一時間ほどが経過……。もう少しで午後の部が始まろうとしていた。
「おい!F組十六番‼どこいったんだよ!」
北先生がかなり怒っていた。理由は簡単。いつまで経っても三神がスタート地点に来ないからだ。
それに、佐次と瀬戸が反応した。
「十六番って、三神だよね?」
「多分そーだろ?」
「あ、私……ちょっと、変態さんを探して来ます‼」
と、言って井下は、三神を探しに行った。
井下は、一番最初に昨日と同じ場所にいると思いプールの二階へと向かった。
「たしか、このあたりに……あ‼変態さ……ん……?」
井下の目線の先にはカメラで写真を撮っている三神がいた。
「な、何してるんですか⁉変態さん‼」
「へ……?って、い、井下⁉な、なんでここに⁉」
「先生がずっと呼んでいるのに全然来ないから探しに来たんです。……それより……何してるんですか?……カメラと望遠鏡なんか持って……。」
「え?あ、これは……そのですね……あの~……。」
なんて、言い訳を考えてあたふたしていたら、……手の中から、うまい具合にカメラが井下の方へすっ飛んでいった。
「(やっべぇ……。)」
「何、撮ってたんですか?」
「あ、ちょ、観たらダメ――――――⁉」
三神が急いでカメラを取りに行ったが、一歩遅く。井下がすでにカメラの一覧ボタンを押していた。
井下が一覧に写ってる写真を観てみると……
「……え……?私の写真……?それに……明石さんや、ひなちゃんのも……。」
「あっちゃあ……。」
そして、三神は……
〝死んだ。確実に死んだ。今、死亡フラグが立ってるぞ……。なんか、いい言い訳考えなくては……。確実に存在自体を消される……。何か……何かないか‼〟
「これは……どーゆーことですか事ですか?変態さん……。」
「え?あ、いや、これは……その……。」
「……つまり『隠し撮り』ってやつですか?」
ギクッ。バ、バレた⁉隠し撮りってバレた⁉や、やばい……
「あ……いや……その……。」
「……。ひなちゃん……来ないかな……。」ボソッ…
「へ?今、なんて……」
「さーちゃーん‼」
階段から瀬戸の声がした。
「あ‼ひなちゃん‼」
「げ⁉やっばぁ……。」
井下と三神が入口の方を見ると、瀬戸たちが山田先生を連れて来ていた……。
〝終わった……。何もかも終わった……。山田だけなら、逃げられると思う。だが、クラス一速い佐次がいる……。僕の青春は終わりを告げていた……。グッバイ青春。また、会う機会があるといいな……。〟
「先生ー‼三神君いましたよー‼」
「おう‼井下、ありがとな‼」
「あ、あと先生……これ……。」
井下は、三神のカメラを山田先生に渡して見せた。
〝って……そ、それは……。ちょっ!井下⁉それは、やめろよ‼って、やばいそれは……〟
「ん?なんだ?これ……は?」
「うわぁ――――⁉先生‼それはダメ――――――‼」
三神はあわてて。取り返そうとするが無理だった…。
そりゃそーですよね。あんな、写真……。誰にも見せられないですよね……。このあと、変態さんのかわりに他の人が泳ぐ事になって、変態さんは職員室に連行されました。まぁ、ドンマイ☆ですね。
ちなみに水泳大会は、無事終了し、優勝は私達のクラスのD組でした。まぁ、めでたしめでたしですっ! by井下
まぁ、このあとは言わなくてもわかるよね?職員室に連れて行かれ、1時間、先生に説教され、家に帰ったら親に殴られるし……。最悪な一日だったよ……。 by三神
第2章 三神の青春の季節(完)
今回はこの『僕S 3,4,5』を読んで下さりありがとうございます。前回の『僕S 1,2』ではプロローグと第1章だけでとても短くなってしまいましたが……今回は約1万5千文字くらいで読むには良いくらいかな~と思います。
さて。今回はついに夏!プール開きですっ!三神は変態度が増していますが、今回の重要キャラは井下ですね。井下の心境や感情などが大きく変わる章です。まさかここまでの展開になるとは筆者本人も驚きです(笑)井下が最初はあまりしゃべらなかったのが後半にはもうほとんどしゃべれるようになるという……かなりの成長ぶり。そして、井下は怒ると怖い!うん。ここまで井下が成長できたのは瀬戸達のおかげだねっ!
一方の三神は……うん。ただの馬鹿だね(笑)それ以外に言う言葉がないよ~
あ。筆者が勝手に淡々と内容を書いてしまい長くなってしまいましたね……あはは。
では、仕切り直して!一歩早く公開しているPixivではついに今月末に第4章が公開となります。はやいですね~。そして、今回でここでもついに第2章(完全修正版)を公開できました~。イェイイェイ♪
最後になりますが、この作品がPixivで公開しているものに修正を加えて公開しています。そして制作には水谷かおるさんの協力をいただいて制作をしています。さぁ、本番はこれからです!気に入ってくれましたら、今後ともよろしくお願いいたしますね♪
ではまた、第3章で……。
・2015年12月 宮田咲夜