第2章 三神の青春の季節②
二話 水泳大会
〜八時三十分〜。三神は、チャイムがなる、三十秒前に席に着くという、ある意味奇跡……というか、もはや神的なことをしていた。(ちなみに、瀬戸達は三神が席に着く一分前には、席についていた。
そして……この、朝学活が……のちに、三神に不幸(?)を呼ぶのであった……。
「……です、以上で北先生からの、水泳の注意事項の連絡を終了する。」by山田T
ザワ、ザワザワ……
「おーい。まだ連絡は終わってないぞ~‼」
「えー⁉先生今、終了って言ったじゃん‼」by安石
「そうや‼嘘は、泥棒の始まりやで、先生‼」by上野
「あーもう。お前ら話聞いてねぇなぁ……。いいか?先生は、『北先生の連絡を終了する』って言ったんだぞ?連絡を全部終了したなんて、一言も言ってねぇぞ?」
「……ただのへりくつだろ……ボソッ」by黒根
「あぁ?なんか言ったか?黒根。」by山田T
「いえ……別に~。」by黒根
「よーし。もう、文句言う奴はいないな?それじゃ、最後の連絡だ。いいか?よーく聞いておけよ?……今日の時間割は全て変更だ‼」by山田T
「はっ?」by安石
「先生、それどーゆー意味やねん?」by上野
「ふ・ふ・ふ……聞いて驚くなよ?実はな…………クラス対抗水泳大会を急遽行うことになった‼」by山田T
《え――――――――――⁈》byクラス全員
「マジで⁉先生‼それ、本当!⁈」by安石
「もちろん‼ってことで、さっそく一時間目からやるから、とっとと準備しろよ~‼全員遅れんなよ‼」by山田T
ガラララッ。ピシャ。
連絡を終え、教室を出て行く先生。他のクラスも連絡が終わったらしく、廊下も騒がしくなってきた。各クラス、生徒達がはしゃぎまわっているようだ。
「水泳大会か~‼楽しそうだな‼」by白川
「たしかにな!まぁ、俺らのクラスが優勝に決まってるさ‼」by福右
「おう‼なんてったって、学年一運動神経がいい安石がいるんだからな‼」by白川
っと‼ここでキャラ説明をしよう‼ まず、安石 かおり(あんいし かおり)。学年一、運動神経がよく、体育の実技は学年一位‼ 次に、四ノ宮 美堀。白川と同じく、頭がいい。女子の中で成績一位だ‼ 最後に、上野 あかり(うえの あかり)。京都出身。学年で一番普通なタイプだ‼ ちなみに、この三人、小・中・高と、同じ学校なうえ、同じクラスでもある……。
「ちょっと、かおりちゃんばっかに頼らないでよ⁉」by四ノ宮
「せや、男なんやから、かおりより早よ泳いだろとか思わへんの?」by上野
「あ、いや、その……ごめん。ごめん。俺らも頑張るよ‼」by福右
「にしても、本当楽しみだなぁ〜。なぁ‼三神‼……って、あれ?三神は?」by黒根
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一方、みんながはしゃぎまわってる中、三神は一人でいつもの『定位置』についていた。(定位置…つまりプール2階の椅子の隙間。)そこで三神は、昨日と同じように、望遠鏡を持って座っていた。唯一、昨日と違うのが三神の隣にカメラが置いてあることだけだ。
「あぁ~本っ当生まれてきてよかった~。よし‼今日はずっとここにいるぞー! 」
と、一人言をつぶやいている。
「やっぱ、こーゆーのは写真撮っとかなきゃな!カメラを持ってきてよかった~。女子は、一応全員撮っておくか~。どーせ、撮ってもバレないしっ!この場所知ってる奴はいないもんなぁ~!」
などと言っているが、三神は完全に忘れていたのだ。この場所を知っている人物が、一人いることを。そして、自分も水泳大会の選手に選ばれていることを。(まぁ、全員強制参加だから選ばれるもなにもないのだが……。)
この、たった一時の気の緩みが、今後の三神の運命を大きく左右することになると、本人はまったく気ずかず、どのポイントが一番撮りやすいかと詮索する三神。あとで後悔するとも知らずに……。
だが、この話は、今はまだ先のこと……。(と言っても後、約五時間後の話なのだが……。)
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三神が1人でいろいろやってる頃、井下たちは……。
「す……水泳大会……ですか…………。」
「さ、さーちゃん、そんなに落ち込まないで!ほら、私だってうまく泳げないしさ!」
「何、嘘言ってんだよ。南野はクラスの中で、一番タイムが早いって先生喜んでたぜ?」
「うぅっ……水木ぃ~それは、言わないでほしかったなぁ~」
「そ、そうじゃないんです。」
「え?どーゆーこと?」
井下は下を向きながら瀬戸の言った疑問の言葉に、落ち込んで、今にも泣きだしそうな状態で瀬戸達に向けて小さな声で言った。
「……泳げないんじゃなくて……お、泳ぐのが……得意すぎるんです……。」
その言葉に佐次が言い返した。
「だったら、いーじゃねーか!」
「だ……だって……クロール五十メートル……十八秒で泳げちゃうんですよ?……」
「す、すごっ!」by住谷
「だから……みんなに……注目……されるじゃないですか……。だから、出たくないん……です……。」
「たしかに井下の性格じゃ死んじゃうもんなぁ。」by水木
「まぁ、あきらめよう⁈北先生は、見学させてくれないと思うよ?」by南野
「そ・れ・に!大丈夫だよ!F組みには、クロール百メートルを三十七秒……つまり五十メートルを約十五秒で泳ぐ『安石』ってゆーのがいるから平気だよ!」by瀬戸
「えっ⁉クロール五十メートルに……十五秒⁉」by住谷
「化け物だな……そいつ……。」by水木
「はっ、何言ってんだよ!俺だって本気出しゃ、五十メートルくらい十五秒で泳げるさ!」by佐次
「変な所で張り合わないの!だいたい……安石さんって……女子だよ?」by瀬戸
「え⁈そーなの⁉」by南野
「男子かと……思いました……」
「井下に同感。」by水木
「上に同じく。」by佐次
「上の上に同じく。」by住谷
それに、飽きれたように瀬戸が言う。
「あのねぇ……さーちゃんの話してんのに、なんで男子をだすのさ!」
「あ……。」by南野
「たしかに……。」by住谷
「そー言われてみれば……。」by水木
「そーだったな……。」by佐次
「忘れてました……。」by井下
「はぁ……まぁ、いっか……。と・り・あ・え・ず!早くプールに行こう?一分でも遅刻するとうるさいからさ~。あの先生……。」by瀬戸
「だなぁ~。さっさと行くかっ!」
こうして、水木の言葉で更衣室に向かう井下達。だが……この数時間後(と、いうか約五時間後)入学してから初めての大事件(?)が、起きるのだが……そのことはまだ、誰も……知らないのであったのだ。
……三十分後……
水着に着替え、プールに出てきた井下達。プールの周りには、1年生の生徒達で、ごったがえしていた……。
「うっわぁ~……めっちゃいっぱい人がいるね……。」by瀬戸
「そりゃそーだよ。だって、一年全員……約二百四十人いるんだしさ~。」by南野
「うっわぁ……そんなにいんのかよ……。うっとうしいなぁ……。」by佐次
ピンポンパンポン♪
『一年生の皆さん、まもなく、水泳大会を開催します。クラスごとに速やかに並んでください。全クラスが並び終わったら開会式を行います。』
ピンポンパンポン……
「あ、並ばなきゃ!」by南野
「じゃあ、並びに行こっかぁ~……。めんどくさいけど……。」by瀬戸
~並ぶのにかかった時間約五分~
「おーし!全員並んだな?それじゃあ、これより、第一回水泳大会を開催する!」
北先生が声を張り上げた。
ワ――!ワーワーワー!
「いちいち、うるさいな‼説明を聞け!いいか?注意事項は、今朝連絡したとおりだ!泳ぐ順番は…………くじ引きできめる!」
「えー‼」「くじ引きかよー‼」「なんでよー‼」「ちゃんと決めろー‼」「適当すぎるだろ‼」
いろいろなクラスからブーイングがあがった。その中にも佐次のブーイングも含まれていたが……あまりにひどすぎる言葉だったため、瀬戸達に止められた。
「うるさ――――い!くじ引きなもんは、くじ引きなんだ!文句を言うなー‼」
北先生の声で、一瞬にして、静かになった……
「よーし。じゃあ、始めるぞー‼あ、ちなみにくじは、出席番号だからなー!……じゃあ、くじ引くぞー‼まず、第一レース、A組、五番!B組、三十番!C組、十八番!D組、三十二番!E組、十番!F組、三十一番!以上‼」
ちなみに……出席番号は、一~二十が男子で、三十~五十が女子となっている。
「わ、私⁉ガーン」
「さーちゃん、がんばって‼」by瀬戸
「さーちゃんなら大丈夫だって!」by南野
「井下ファイト!」by佐次
「リラックスすれば大丈夫だよ!」by住谷
「お前なら、いけるって!ファイトー!」by水木
「う……うん!が……がんばります!」
そう言ってスタート地点に向かう井下。
「……ねぇ。いま、思い出したんだけど……F組ってさ…………安石さんじゃない?」by瀬戸
「あ……。」by南野
瀬戸達が井下のほうを見ると、そこには……得意そうな顔をした安石が井下をいじっている所だった。」
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「な~んだ。みんな、弱そうな奴ばっかじゃん。本気を出す必要ないな~。」
「…………。(強そう……。瀬戸さんが言ってた安石さんってこの人……かな……?)」
「しかも、無口で笑わないって有名な井下がいるんだ~。にしても、本っ当に無口なんだな~。」
「…………。」
「あーあ。せめて、D組の選手が南野ならな~。ま、D組の中で一番早いっていわれてるけど、どーせあたしには勝てないんだろうけどっ‼」
「……!」
「ま、女子であたしに勝てる奴はいないってことさ!」
「……で下さい……。」
「は?今、なんか言った?声が小さくてまったく聞こえないんですけど~井下さん!」
「南野さんを……さきちゃんを侮辱しないで下さい!」
「はぁー?あたしより弱いくせして、何言ってんの?そーゆーことは、あたしに勝ってから言ってよね~!」
「じゃぁ……私が勝ったら……さっき言ったこと……あやまって下さい!」
「いいよ?あたしに勝てたらね?一応、手加減してあげるけどっ!」
「っ……。」
そこで、北先生が言った!
「さてと……全員そろったなー?では……これより、第一レースを始める!準備はいいな?」
「(負けられない……何が何でも勝って……あやまらせてやる!)」
「位置について‼よーい……」
パンッ‼
ピストルが鳴ったとたん。井下、安石が一気に前へ出た。
「かおりちゃーん!がんばってー‼」by四ノ宮
「負けたらあかんでー!かおりー‼」by上野
「あんいしー!負けんなー‼」「一位キープしろよー‼」
クラスの人たちが一斉に安石を応援する。一方、D組は……
「さーちゃーん‼がんばれ――‼」by瀬戸
「負けんなよ――!」by佐次
「いっけー‼井下っ‼」by住谷
「井下ー‼負けんじゃねーぞー‼」by水木
「井下さんってけっこう速いね。」「うん。安石さんに勝てるんじゃない?」「井下ー!がんばれー!」
瀬戸達……というか、クラスの人達の応援を聞きながら、泳ぐ井下。実況席では、先生達が歓声を上げていた。
『えー……じゃ、実況始めまっすよー!第三レーンのF組さんと第四レーンの私のクラス……D組さんが、もうターンにさしかかってますねぇ~。おっ‼組さんが、ついにF組さんをぬかしまったよ!どんどん差を広げてまっねー‼』
「あははっ」「出ました‼平成先生」「かわいいですねぇ~」
平成先生の実況に笑い始める生徒達。一方、井下と安石の差はかなりついていた。そして…………
パンッパンッ‼
「ゴ――――ル‼なんと、あの優勝候補と言われてまった、赤石をぬいて、井下さんがゴール‼」
「「「え――――――――――⁈」」」
全生徒が驚いた!なんせ、あの安石をぬかすなど前代未聞の事態だからだ‼
「よっし‼これで、私のクラスが一歩リード!って、あ。なんでもないでっすよ?だから、その手を下ろしゃてくださいな。山田先生…。」by平成T
平成先生が喜んでいると山田先生がものすごいオーラを出して拳を向けていた……。この後、平成先生が、山田先生にひどく、文句(つまり、逆ギレ)を言われたのは言うまでもない。その頃、安石達は……
「くっ……手加減しなければよかった……。」
「……約束……守ってよ……?」
「えっ……。」
「さっきの約束……守ってよ?私……勝ったんだから……ちゃんと謝ってよ?」
「あ……いや……その……さっきのは……ノリ‼そう、ノリで言っちゃったんだよ‼だから、さっきのは、なしってことでっ‼」
「……嘘は……どろぼうの始まり……だよ?」
「あ、安石さん‼謝ったほうがいいよ⁉井下さん怒ると、何するかわかんないから……。」
中学のときから井下を知っている、他のクラスの助言したが、すでに遅かったらしく……
「嘘をつく人は、嫌いだ‼今すぐ……謝れ!さきちゃんをぶじょくしたこと……謝れ‼」
「わっ⁉ちょっあ、危なっ⁉や、やめて‼あ、あたしが悪かったから‼ごめん‼ごめんなさいってば‼」
「う、うわ――――ちょ、さーちゃん⁉何してんの⁉やめて‼」by瀬戸
「やめない!こいつぶっとばす‼さきちゃんを侮辱したから、ぶっとばす‼ちゃんと謝るまで、絶対許さない‼」
「さーちゃん……ありがとう……」by南野
「それでもだ・め‼拳くん、ちょっと手伝って‼」by瀬戸
「あ、おうよ!」by佐次
「ほら‼みずゆも、住谷もボケッとしてないで手伝う‼」by瀬戸
「あ、うん‼」by住谷
「おう!」by水木
四人がかりでようやく、安石から井下をはなすことに成功。ちなみに、この後安石は「さきちゃんを侮辱した」という井下の発言から、職員室へ連れて行かれるのだ。