第2章 三神の青春の季節①
第2章 三神の青春の季節
一話 届かない……
ある日の全校朝礼。めずらしく、朝礼に出た三神は、なぜかうれしそうだ。全校朝礼の中盤、体育教師の北先生が、壇上にあがり、
「え〜、今日から水泳の授業を開始します。水着等、忘れ物がないようにして下さい。」
と、言った。すると……。
《わぁ――――――‼》
生徒全員が、歓迎を上げた。
「よっしゃあ‼」
「三神……お前、本当変態だな……。いつか、警察に捕まるぞ?」
「だーかーらー‼変態ゆーな‼あと、なんで警察なんだよ⁉」
お前も言うかっ!と言いたそうにつっこんだ。
「あははぁあ」
福右は、三神と白川の会話に謎の爆笑をしていた。
「てか、三神……お前、もともと知ってたろ……?」
「ん?知ってたけど?なんで?」
三神は黒根の質問に当たりまえかの様に即答をした。三神の返事に白川は驚いた。
「まじで⁉」
「だって、三神が朝礼に出るなんて、それくらいしかないだろ?」
黒根は三神が朝礼に出ることから推測をすると、白川が納得した。
「たしかにな……。」
「あ~!だから、今朝からテンション高いのか‼」
完全に理由が納得できたのか、福右は手をポンッと叩いて言った。
「うん♪」
「どうやって、知ったんだ?先生達は、聞いても教えてくれなかったし……。」
ただ、納得してもどうしても三神が知った理由を聞きたい黒根。
「ふ・ふ・ふ……それはね……この間、たまたま職員室の前を通ろうとしたら、先生達が水泳の授業開始日について、打ち合わせしてたのを聞いたってわけ‼」
三神は淡々と知った理由を語った。それに福右はなるほどね。コクコクと頷いた。
「あぁ……そーゆーことか‼だから朝礼出てんのか~。」
「あたり前じゃん‼そーじゃなきゃ、朝礼なんて出ないよ‼」
「あははっ‼たしかに~」
福右がまたもや爆笑をしていると後ろの方から謎の大きな影が現れた。福右達はその影に嫌な予感を感じ振り返ると……。
「こらー‼お前ら、何話してんだ‼」ムカ、ムカ
嫌な予感は的中し、影の正体はもちろん怒っている山田先生だ。
「うわぁ……やっべぇ……」
白川は逃げられないと確信したかのように小さな声を漏らした。
「今、朝礼中だぞ⁉わかってんのか⁉お前ら、一回、外出ろ‼外‼」
「うぅ……って……あれ?三神は?」
白川がふと気づき、それに続き黒根達と山田先生があたりを見渡すが、三神は影も形も見当たらなかった。
「あ、あいつ……逃げやがったのか⁉」
黒根はまたかよっ!っとため息を吐いた。
「何ぃ⁉ったく……めずらしく、朝礼に出たと思ったらこれかよ……本っ当しょうがねぇなぁあいつ……。」
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ここは、体育棟全四階のプール二階……プール全体を見渡すことの出来る位置に、望遠鏡を持った不審者……もとい、三神がいる。
「ふぅ……危ない、危ない。もう少しで捕まる所だった……。お‼来た、来た‼あ〜、やっぱ夏は、プールに水着を着た女子だよなぁ〜‼」
「やっぱり、変態……ですね……。」
三神がプールに入ろうとしている女子生徒を望遠鏡で眺めていると後ろの方から突如聞きなれた声が聞こえた。その声に三神は反射で後ろを振り返る。
「う、うぁ⁉な、なんだ……って井下か……いきなり、話しかけないでくれよ…….。で、何かよう?」
「……山田先生に『三神をつれて来てくれ』って言われたから……。」
「……じゃ、僕はこれで‼」
危険を察知して足速に逃げようとする三神。
「……せ……先生――――――――‼三神君、いましたよ――――――‼」
「わぁ――――⁉ちょ、やめてってばー‼」
「みぃ――つぅ――けぇ――たぁ――ぞぉ――‼」
「う、うわぁ――――――⁉」
逃げようとしたがすぐに山田先生に捕まえられた三神。
「ふ・ふ・ふ……今日という、今日はゆるさないからなぁ~?」
「すみません。すみません。ちょっとした出来心なんです。許して下さい‼」
「だめだ‼お前は毎回の様に授業サボりやがって……生徒指導室で反省文十枚だ‼」
「いやだぁ――――――――――⁉」
三神の叫びは、学校中に響き渡った。
~それから……約四時間半後……~
「つ、つかれ、た……。」
ふたたび、プールの二階……先ほどと同じ所で座っていた。
「ったく……何で十枚も反省文を書かなきゃいけないんだよ……」プン、プン
自分が悪いのに、ぶつくさと文句を言い続ける三神。(つまり、逆ギレ)
「だいたい、あの先生は怒り過ぎなんだっつーの……お‼ちょうど次のクラス来た‼え~っと、これは何組かなぁ~って……げっ⁉」
三神が望遠鏡で見た先には、瀬戸達がいた。
「なっ……なんで……よりによって1-Dなんだよ‼ってことは……まさか、井下もいるのか⁉」
三神がもう一度、瀬戸達の方を見ると、そこに、瀬戸、南野と楽しそうに話している井下がいた。
「……なんで……なんで、あの二人と、仲良さそうにしてるんだ……?」
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一方、三神が反省文を書かされている間、井下は……
「ふぅ……なんで、私があの変態さんを探さなきゃいけなかったんでしょう……。」
「きっと、普段あまりしゃべらない子の方が見つけた時、すぐ知らせてくれるって思ったからでしょ?しかも、探す相手が三神だしね。」
「う、うわぁ⁉」
いきなり、後ろから瀬戸に話しかけられ、おどろく井下。
「な……なんだ……瀬戸さん……でしたか……。い……いきなり……話しかけないで……下さい……。」
「あははっ!相変わらず、しゃべるの苦手なんだね~。三神には、あんなにしゃべるのにね~。」
「あ……あれは……別に……変態さん……だけって……わけじゃ……。」
「へ~。じゃあ、誰に三神と同じように普通に話してるの?」
「え?あ……そ.……それは……その……えっと……あの……えっと……あぅ……。」
「あー……。ごめん、ごめん。冗談だから。」
「……へ?」
「ちょっとからかいたかっただけだから。気にしないで。」
「えっ……?あ……へ?」
「でも、先生もいじわるだよね~。井下さんじゃなくて、うちらに言えばいーのにさー。まぁ、うちらが行ったら、一緒にサボるとでも思ったんだろうけどさ。」
「あ……あはは……。」
「あっ‼井下さんが笑った‼」
「え?あ……ちがっ……。」
「笑った‼今、絶っ対笑ってた‼」
「っ……………………。」
井下と瀬戸が話していると、南野達がやって来た。
「何話しているの~?」
「あ‼ちょうどいい所に来た‼」
「は?何がだ?」
「さっき、井下さんが笑ったんだよ‼」
思わず驚きの声を上げる南野と水木。
「本当⁉」
「え⁉まじでか⁉」
「うん♪」
「…………………………」
「え~。見たかったな~。」
「本っ当の本当に、笑ってたのか?」
「うん。苦笑いだけどねっ!」
「な~んだ。苦笑いだったら、笑ったに入んないじゃん‼」
南野の言葉にマヌケな反応をした。
「え?そーなの?」
「ったく、そーゆー所はぬけてるよな~お前は……。」
「あの……私……そろそろ、戻っても……いい……ですか……?」
「え?あぁ……そーだな……っと、そーいやー……さっき、三神を探しに行ったみたいだけど……なんで、お前が行ったんだ?」
水木の質問に律儀に答える井下。
「そんなの……私が……知りたい……です……。」
「きっと、先生から見て、井下さんが三神君と仲が良さそうに見えたんだよ!」
南野の言葉に突如キレだす井下。
「んなっ...なんで私が、あの変態さんと、仲良くしなければいけないんですか!?」
「あ、いや……別に、三神君と仲良くしろっていうわけじゃ……」
「私、変態大っ嫌いなんです‼あの、変態さん、なんかと仲良くしたくないんです‼変態なんか、消えてなくなってしまえば、いいんです‼」
「お、おちついて‼たとえばの話だから‼別に、仲良くしろってわけじゃないからさ‼」
「え?あ、……はぁ――……。びっくりさせないで下さい……。てっきり……あの変態さんと…その……と……とも……友達……にならなきゃ……い……いけないの……かと……思いました……。」
「あははっ!たしかに、三神と友達になるようなものずきは、この学校にうちらぐらいしかいないと思うよ!」
さらりと『ものずき』と言われ、水木が少し不機嫌そうにして、顔をしかめて言った。
「ちょっとまて‼『ものずき』ってなんだよ‼『ものずき』って⁉」
「うん?そのままの意味だけど~?井下さんじゃ、三神と友達になるなんて、そーとーなものずきでしょ?なんか、間違ったこと言ってる?」
「うっ……。」
瀬戸に正論を言われ、何も言い返せなくなる水木。
「あははっ。たしかに、そーだよね~。井下さんじゃ、三神と友達になるのは不可能だよね~」by南野
「だね~!あっ‼いいこと思いついた‼」
「え?何、何⁇」
「ねぇ、井下さん?」
「は、はい⁉な……なんですか……?」
「三神とは、友達にならなくてもさ、うちらとは、友達になってくれるかな?」
突然瀬戸が「友達になってくれるかな」と言ったので井下はマヌケな声を出してしまう。
「へ……?」
「だから、その……あーもう‼めんどくさい‼要は、友達になろうって言ってんの‼」
「……へ……あ……その……えっと…………。あの……わ……私でよければ……あの……い……いい……ですよ……。」
「やったぁああああ‼」
「あ、あーあ……また、始まったよ……瀬戸の悪ぐせ……。」
「中学の時も、同じことやってたよねー…………。」
そう、中学の時から瀬戸は、気に入った人をすぐに自分のグループに引き込もうとするくせがある。ちなみに、今のグループは、ほとんど瀬戸が中学生の時に引き込んだ人……らしい。
「え……中学生の時も……ですか?」
「うん。まぁ、気にしないであげて。本人、悪気はないから。」
「は、はい……。」
井下達が話していると、一人で舞上がっていた瀬戸が3人にいきなり話しかけた。
「3人共、何話してるの~?」
「な、なんでもないよ~!ね~‼」
「あぁ、なんでもねぇぞ‼」
「はい……なんでもありません!」
「ふ~ん……。まぁいいや~。あ、そーいえば……拳君と住谷は?」
「ん?あぁ、あの2人なら、三神が反省文書き終わった後、またプールに逃げないように、プール見張ってろっていわれてたぞ~。」by水木
「そっか~……って、……あっ⁉次の授業、水泳じゃん‼」by瀬戸
「あー‼そーだった‼やっば~」by南野
「は、早く行きましょう‼い……急がないと、先生に怒られます⁉」
「い、急げ――――‼」by水木
こうして、このグループに新メンバーもとい井下が加わった。
だが、このままでは次の授業を遅刻してしまう瀬戸達は更衣室に向かって急いで走って行ったのであった。
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……ということがあったことを、全く知らない、三神は頭の中が『?』でいっぱいのまま下校。(ちなみに、1−Dの水泳は6時間目だった)
三神が、それについて考えながら歩いていると後ろから、
「三っ神――――――‼」by佐次
と、声が聞こえたと思ったのとほぼ同時に
バゴッ「いって――――⁉」
佐次にバッグで後ろから勢いよくぶつけられた三神。
「いきなり何するんだよ‼って……あれ?」
三神が後ろを振り向くと、そこには……瀬戸達にまぎれ、井下がいた……。
「あ、あれ?なんで井下がいんの?」
「そんなこと言うなんて……最低です‼変態さん‼友達と一緒に帰って何が悪いんですか⁉」
「え?あ、いや……ごめっ……って……友達⁉井下と瀬戸達が⁉」
「うん。友達だよ……ね〜」ニコッby瀬戸
「ねぇ〜。」「なぁ〜。」「おぅ!」「うん!」「はい‼」
「ってことで、三神はもーいらないや。」by瀬戸
「はっ?それ、どーゆー意味?」
「ん?さーちゃん(井下)がグループに入ったから、三神はもういらないってことっ!」by瀬戸
「……え?」
「今まで、ありがとう‼ってことで、うちら帰るから~‼」by瀬戸
「え・あ、ちょっとまっ……」
「グッパイ、三神。」by水木
「今まで、ありがとう。楽しかったよ!」by南野
「んじゃ、そーゆーことで!アディオス‼」by佐次
「バイバイ、三神。」by住谷
「さようなら。変態さん。」
と、言い足早にさっていく瀬戸達。三神は呆然としている。
「え……?え――――⁉あ、ちょっ……み、みんな待ってよぉおお‼意味全然わかんないってば――――――⁉」
あわてて、瀬戸達を追いかける三神。追いかけてる内にいつの間にか公園に来ていた。……そして、公園で探すこと三十分……
「みんな――――‼どこにいんの~⁉…………返事がない……僕……嫌われたのかな……?何もしてないのに……ひどいよ……みんな……一体……どこにいるのさぁああああああああああ⁉」
半泣き状態で三神が叫ぶと突如……
ピロリン♪
と、ケータイが鳴った。
「……へ……?」
慌てて、三神がケータイを見ると……
『from-瀬戸』
瀬戸からのメールだ。本文は……
『公園の広場にある噴水に来て‼』
……と、書かれていた。
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数分後……広場についた三神。
「はぁ……はぁ……やっとついた……えーっと噴水は……あ‼あった、あった‼……って……誰もいないじゃん……。まぁ、いっか……少し待ってみるか〜」
……十分経過……
「まだ、こない……。でも、もう少し待ってみるか……」
……そして、さらに十分経過……
「……二十分待ったのに……誰も来ない……もう、帰ろっかなー……みんな………大嫌いだ――――‼」
《わっ‼》by???
「う、うわぁ⁉だっ……誰⁉」
三神が後ろを向くとそこには……
『ドッキリ大・成・功‼』
……と、書かれた看板と……笑っている瀬戸達がいた。
「……へ……?」
「あははっ!ごめん、ごめんっ‼つい、からかいたくなってさっ!にしても……こんな反応するなんて……っ!」
瀬戸は看板を片手に持ちながら大笑いをしていた。それに続いて南野
「み、っ‼見てて面白かったよっ!」by南野
「っ……っ‼ぷっ」by水木
「あははははっ‼お、おなかいたっ‼はははっ!」by佐次
佐次、水木は爆笑して、うまくしゃべれていない……。
「本っ当、だまされやすいんだなぁ、三神はさ~。」by住谷
「ごめんなさい……。でも……見てて楽しかったです……」
「…………。」
「ってことで、さっきの話、嘘だから……って……あれ?三神?」by瀬戸
三神が無言でうつむいている。が、にぎった手が震えている……。
「……ねぇ……これ……ヤバくない?」by南野
「へ?」by瀬戸
「い……い……いーかげにしろ――――‼」
「うわぁ⁉」by瀬戸
「こ、今回は、瀬戸が言い出したことだし……俺らかんけーねーよな‼(汗」by水木
「うん‼(汗」by住谷
「えっと……ひな、ごめん。私も関係ないから。(汗」by南野
「ひな、悪い……俺も知らねぇ……。(汗」by佐次
「ひなちゃん...。ごめんなさい...。」
「え?え?あ、ちょ、み、みんな⁉」by瀬戸
「今日という今日は、絶っ対ゆるさないぞー‼」
「う、うわぁ⁉ご、ごめん、ごめん!神ごめんってば‼もう、絶っ対やんないから‼ゆるしてってば――――‼」
この後、瀬戸がどうなったかは、皆さんのご想像におまかせいたします。←住谷orz
そして……次の日……
「もー、みんなひどいよ……。責任全部うちに、おしつけて……。」by瀬戸
「だって~、言い出したのは、ひなだし……。」by南野
「そう、そう。」by水木
「でも‼みんなもノリノリだったじゃん‼」by瀬戸
「うっ……。」by水木
「そ、それは……」by佐次
「……え……えっと……その……。」
「……つまり、昨日の〝アレ〟は、みんなの共犯だったってこと……だ・よ・ね?」
《ごめんなさい……》by三神以外の全員
めずらしく、瀬戸達と一緒に登校する三神。話題は昨日のドッキリについて。いつもなら、もっとしゃべっているはずの瀬戸が今日はほぼ無言だ……。
「本っ当……なんで、あーゆーことするのかなぁ?こっちは、本気で嫌われたのかと思ったじゃないか‼」
「うぅ……本っ当、ごめん……。」by瀬戸
「あ!じゃあ、今日帰りに俺が三神に、なんか、おごってやるよ‼」by水木
「……本当に?」
「おう‼」by水木
「絶対の絶対に?」
「あぁ‼だから、ゆるしてくれ。な?」by水木
「……そこまで言うなら……ゆるしてあげるよ。」
「サンキュー♪」by水木
「……みずゆって……こーゆー説得〝は〟得意だよね……?」ヒソッby瀬戸
「……うん……。たしかにね……。」ヒソッby南野
「ん~?何か言ったか~?」by水木
「う、ううん。何でもないよ‼(地獄耳め……。)」by瀬戸
「ふ~ん……。ま、いーや。っと、そーいやぁ……さっきから、井下が全っ然話してねーな。」by水木
「あっ……。そーいえば……。」by南野
「どーしたの?さーちゃん?」by瀬戸
「……ひ……人が……いっぱい……いて……は……話し……ずらくて……。」
「あぁ~。そーゆーことか。」by佐次
瀬戸達が話してる間に、かなり学校の近くまで来ていて、人通りがかなり激しくなっていたのだ。そのため、井下がしゃべりにくくなっていた。
「たしかに……これだけ人が通っていれば、話しにくいよね……。」by南野
「じゃあ、とっとと校舎入ろーぜ‼たしか、誰も来ない部屋があったはずだから‼」by住谷
「え?あ……いや……それは……多分……無理……だと……思います……。」
「ふぇ?なんで?」by瀬戸
「だ……だって…………あと、十分で朝のホームルーム……始まりますよ……?」
「……え……」by水木
《え――――――――⁈》
井下のその衝撃の言葉にみんなが叫んだ。
ただ今の時刻は、八時十五分。朝学活の時間まで、あと十分しかないのだ。
「やっばい‼遅刻‼遅刻するー⁉(汗」by瀬戸
「い……急げー‼(汗」by佐次
こうして、三神達のあわただしい(?)一日が始まったのだ