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7.

 ***


 母からのメールで慌てて若菜の家に向かう。

 玄関に出てきた若菜は少し元気がないが、思っていたほどではなかった。


「あれ? 直人? 大学は?」

「そんな事より若菜大丈夫なのか?」

「うーん。まあ……いや、大丈夫じゃないから紫苑さんに来てもらったんだけどね」

「ああ、そうだな。ん? 母さんは?」


 リビングに入って母がいないのに気づいて言う。


「ああ、学校から電話かかってきて向こうの保護者に連絡取れたんでって。で、紫苑さんにお願いしたの」

「そうか。うん。それがいいよ」


 若菜は十分傷ついたのに、さらに追い打ちかけるなんて。それが女子だとは驚いた。

 インターフォンが鳴る。若菜が出る。


「あ、九条君だ」

「え! 岳?」


 ああ、そうだった。岳から電話で言われたんだ、若菜の送り迎えは自分がすると。そもそも若菜が岳の学校を選んだのも岳に理由があったからだ。若菜はどうやら岳の問題をあっという間に片付けたようだ。あんなに明るい岳は久しぶりだった。

 が、なんなんだよこの急接近は!

 若菜は玄関に急いで行く。若菜と岳にいったい何があったんだよ。岳は相当荒れてたみたいだったのに。


 若菜は一人でリビングに来た。


「あれ? 岳は?」

「心配して見にきてくれただけだよ」

「そうなのか。ふーん。若菜やっとか……そうかそうか」

「何よ! 直人まで。紫苑さんにも言われたけど、何年前だと思ってるのよ!」


 そうだよ若菜何年想ってたんだよ。やっとその想いを振り切れたんだな?


「あれは若菜が……」

「もういちいち思い出さなくていいの! あいつのことはもう、いいんだから」

「岳には?」

「なんで言うのよ! あ、直人言わないでよ!」


 ふーん。若菜本気っぽいな。岳かあ。そういやあいつに似てるような。


「言わない。言わない。って気にしすぎじゃないか? やっぱまだあいつのこと?」


 ムキなのはどっちでだ?


「もう、終わった事。って言うかはじまってもない。そんな話いいでしょ、もう」


 やっぱり若菜あいつの気持ち知らないんだな。はじまってもないか。あいつ知ったらショック受けるな。まあ、あいつが悪いんだけど。不器用な奴だったからな。

 と、ここで母からの電話だ。


「はい。ああ、もう来てる。うん? え? マジで? わかった。そう伝える。ああ」


 母は電話を切った。


「どうなったの?」

「向こうが弁護士が来たんでパニクって娘と大揉めになって、挙句には校長にまで噛み付いて……で、自主退学するって本人が言い出したって。だけど学校は一応停学処分にするって」

「そう」

「若菜、大丈夫か?」


 顔色悪い若菜に聞く。


「ああ、うん。ホッとしたのと、やり過ぎたかと、心配になって」

「だけど、やり過ぎたのは向こうだし、挙句退学って言い出したのも向こうなんだから」

「うん。そうだね」


 まあ、これだけの話になれば若菜に噛み付いてくる奴はいないだろう。一安心と言えばそうだが孤立するかもしれない。


「ふふ」

「なんだよ。ううん。直人ってはじめからお兄ちゃんみたいだね。一つ上なだけなのに」

「お前なあ、最初っからあれじゃあ誰でもそうなるぞ」

「ああ、まあね」

「あ、母さんが今夜は一緒にご飯しようかだって」


 若菜は嬉しそうだ。やっぱり一人でいる時間が長いよな。


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