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2.

***


 朝がきた。起き上がり日数を数える。ダメだ。今日は行かないと出席日数が足りなくなる。何よりも母親にバレてしまう。

 母親には学校に行ってるフリをして毎朝同じ時間に家を出るが、母親が出かけると家に戻るを繰り返していた。計算して飛び飛びで出席日数に足りるように学校に行く。ただ朝一からはしんどいので三限目に遅れて登校している。

 憂鬱だなー。いつからかクラス雰囲気が変わり居づらくなって、気づけばいろいろされるようになった。始めは上靴に山盛りの画鋲だったかな。よくもまあ、こんなことばっかり出来る、思いつくと、ある意味感心するバカどもだ。

 はあー、また相手にしないといけない。疲れる奴らだ。ストレス溜まる一方だ。




 学校に着く。狙い通り、今は三限の前の休み時間だ。靴箱を開ける。


「ん? 手紙……」


 下駄箱の中に入っていた手紙をポケットにしまい教室へ向かう。

 靴箱は異常ない。今日はどこだ? なんだ?

 教室の扉を開けて中に入る。ふざけていた連中も静まりかえる。ん? これかよ! これは無視できないだろ! ああ、腹立つ!


「俺の机どこやった?」


 それが合図だったのか池上がセリフのように言う。


「九条、来なくていいのに。なあ」


 そこに話を振られた中谷も話に乗る。


「ああ。もう来なくていいって九条。なあ、皆」


 ああ、もう、腹立たしくて見るのも嫌だ。目のはしには笑ってる女子がいる。なんなんだよ、これ?

 ガタッ


「ん?」


 突然席を立つ音がする。立っているのはクラスで大人しい、いつもは目立たない女子だ。


「こんなことするの良くないと……思う」


 皆の痛い視線を浴びて最後は少し弱気になっていたが最後まで言い切っていた。

 へえー意外。とそこへクスクスと女子の笑い声。え? なんで? なんで、お前がここにいるんだよ!


「か、カガノさん?」


 さっきの女子が隣の席のあいつに声をかける。そうだカガノ……加賀野だ!

 昨日あいつの家に送った時に家の表札にそう書いてあった。

 だからか、だから俺に昨日、明日ねって! 言ったのかよ!


 加賀野は静かに立ち上がった。


「ごめんごめん。イヤ、最後の答えが出たから面白くって」


 この状況を面白がるなよ。


「最後の答えってなんだよ!」


 池上が問う。俺も聞きたい。なんだよ、答えって。


「最後の答えは最後に聞かないとわけワカンなくなる。だから、始まりから話しましょう! このクラスの異常な現象を」


 異常な現象?

 皆は黙り込んでいる。ん? なんか知ってるのか?


「では、はじまりはこのクラスのサイトの掲示板」


 クラスの掲示板? なんか教室に緊張がはしってる。


「私はこの学校のこのクラスになって、その掲示板を教えてもらった」


 数人の女子が顔を見合っている。きっとそいつらが教えたんだろう。


「で、サイト立ち上げ直後の掲示板にまで戻って内容を確認した。最初の掲示板に書き込んでいたのは、ハンドルネーム、xyzとカツ丼と白鳥だった。最初はよくある担任からいろんな先生の悪口と、たわいもない内容だった」


 皆は静かに加賀野を見守ってる。おい、俺の休んでる間に転入してきてたのかよ。


「が、次第にそれはそこにいる九条君への個人攻撃となっていった。そして、何気ない風にxyzに皆は命令されるようになる。気づけばカツ丼も白鳥もいなくなってた。自分の本来のキャラから遠いカツ丼も男なのに女のフリをしないといけない白鳥も面倒になったから。もうクラスは牛耳ってたし、ね、宮本君!」


 クラス全体がどよめいた。中谷じゃないのかよ、って声も聞こえてくる。おいおい、じゃあ今まで俺にしてきた事って、宮本の命令? 掲示板で?


「あ、坂本君もう取りに行ったら? 体格いいから選ばれたんだね。机の運び役」


 坂本は宮本を睨みつけながら無言で教室を出て行く。坂本って確か野球部だよな。確かに体格はクラスで一番いい。


「宮本君いい加減、勉強やめて話に入ってきたら?」


 そう。宮本は名指しされようが黙々と勉強していた。おい、マジかよ、俺が狙われた理由って!


「僕がしたって証拠でもあるの?」

「ないけど」

「じゃあ」


 と宮本はまた勉強する気だ。


「それが証拠」

「はあ?」

「いや、もう皆も気づいてるよ。宮本君は一年生からずーっと学年二番、九条君はずっと一番。三年生になって同じクラスになって怒りがあったんじゃない? ってかあったよね? 掲示板にずらずらっと書いてあったし、あなたの思い? ってか妬み」

「おまえ、たかだかそんなことで俺たちを操ってたのか!」


 池上が宮本に詰め寄る。


「そう、皆は操られていた。彼の九条君が学校に来なければ学年で一番になれるって気持ちに利用されて。最初、皆は遊び半分だったけど、だんだん断るのが怖くなる。断れば今度は自分が次の標的にされるんじゃないかってね。でも、その状況をさらに利用してた人がいる」

「えー」

「どういうこと?」


 教室中のざわめき、宮本も固まって加賀野を見ている。宮本も知らないみたいだ。中谷は自分がその掲示板の中心核だと思われてたのが面白くないようだ、加賀野に聞きに行く。


「誰なんだよ?」

「それは……」


 人差し指ををクルクルまわす。そして、差した先にいたのはさっきの女子だった。


「内山さん」


 内山って言うのか。さっき俺をかばった発言をした……それでわかったのか内山だって。内山って……俺の気を引くためにしたのかよ。


「白鳥に変わって白いバラってハンドルネームが出てきた。すっごい攻撃的だし、最初の嫌がらせも自ら言い出して行動した。さて、彼女の目的は?」

「わ、私!!」


 内山は立ち上がり教室から出て行った。

 と、入れ替わりに坂本が机を持って来た。俺の席へと運び一言


「悪い」


 とだけ言って自分の席へ去って行った。


「あーと。内山さんは逃げちゃったんで、宮本君!」


 宮本はビクッとなった。加賀野はずっと同じ調子だ。


「掲示板は閉鎖して。あと、学校で一番になっても志望してる大学に入れないんじゃ意味ないんじゃないの? それくらいはわかってると思うけど」

「ぼ、僕はここにいるべきじゃないんだ。ここじゃない!」


 宮本のスイッチが入ったようだ。


「どこにいるべき? 進学校?」

「そ、それは……熱だったんだ。本来の力じゃなかった……なのに、こんなとこでも一番になれないなんて!」


 ああ、その言葉……操ってただけでも、皆睨んでるのに……完全に引かれてる。


「だから、クラスのみんな操って一番の九条君にテストを受けてもらわないように頑張ったと。頑張るとこ違うでしょ? しかも一番になってないし」

「……」


 宮本もう無言だよ。返す言葉もないだな、まさに。


「じゃあ、以上。このクラスへの私の指摘」



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