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レボリティー・レポート  作者: アルフ
イギリス革命編
36/55

終章 あなたに送る、追悼の記憶

「……さて、戦いは終わった。でもまだまだやり残してることはいっぱいだ」


 光臨の間や、界離の間、天罰の間ではまだ戦闘が続いているかもしれない。まずはそれを止めに行こうと、ジャックは螺旋階段に向かって歩き出した。


「ちょっとまたれいジャックよ」


 螺旋階段の前で、立ち塞がるようにクレイモワが立っていた。


「うぬに話しておきたいことがあるのじゃ」


 ジャックはむげに断るわけにもいかず、ちょっとだけ話を聞くことにした。


「仲間がまだ戦っているので一刻を争います。話すのなら短時間で済ませてください」


 クレイモワにはカーツと対峙していたときの張りつめた様子はもうなく、ジャックが初めて天神の間を訪れたときの優しそうなおじいちゃんに戻っていた。


「ふぉっふぉっふぉ。儂の話を聞けば一刻などという些細な問題など意味のないもの、と知りえようぞ」

「……それはどういう……」

「簡単な話じゃ。儂のこの力、創造の能力をうぬに献上しよう、ということじゃ」


                ☆


 創造の力。


 それは天界の神とも言われている人間のみが扱える秘術。

 クレイモワはその神にもっとも近い人間だった。

 創造というのは、この世の事象、流れ、運命力を完全に無視して行われる。

 万能という言葉はまさにこの創造の力にこそ相応しいといえよう。


「かつて儂は大掛かりな創造を行ったことがある。その日は、今よりもう少し日がたった頃じゃった」


 クレイモワがその大掛かりな創造を行ったのは三〇〇〇年の一月。晴人の知る、『何か』が起こった世界。


「案の定カーツが現界へと出て暴れ回ったわい。それだけは防ごうと、儂は数年前の世界の再現、という創造を行った」


 世界の再現は、天界だけでなく、現界、魔界すら含める規模のもの。

 クレイモワが行ったのは数年前の世界にそっくりそのまま巻き戻すことだった。


 だが、


「……カーツの現界進撃はその運命上では決められた事実じゃったようで、その未来が変わることはなかった」


 一度、二度、クレイモワは一語一句変わっていない世界を過ごした。

 変化は、三度目のときだった。


「儂は過去である時間軸に本来いてはならない不確定要素を織り交ぜることにした。それがジャック、うぬじゃよ」

「俺が、不確定要素……?」

「そうじゃ。聞きたくはないじゃろうが、これはこの事態を招いた儂の、せめてもの罪滅ぼしじゃ、本当に、悪いとおもっているのじゃが――」


 ジャックは、クレイモワの話を聞きながら、どんどん嫌な予感が自分の中に拡がっていくのを感じていた。

 こんな予感を人生の中で何度も体感したことがあった。


「ジャック、お前の体と記憶は、儂が自分勝手に作り出した、人形なのじゃ」


                ☆


「俺が……人形……!?」


 衝撃の真実。

 ジャックという人格は、ジャックという存在は、クレイモワによって生み出された人形だったのだ。


「っでもさ! 俺はちゃんと生まれきたし、親の顔だって覚えてる、成長してきた記憶もタバサのことも「それじゃよ」――!?」

「タバサ=ウィルソン。単騎で天使軍を相手に快進撃を続け天神の間に到達後、グリフォンにあっさりと殺される」

「あっさりなんていうなよ。親父は最後まで勇敢に戦ったんだ!」

「うぬの中では、そういうことになっているじゃろうな」

「……? 言ってる意味が解らないな……」

「そのことを、タバサ=ウィルソンの快進撃を知っておるものは?」

「そんなの、お前……」


 ジャックは記憶をたどった。

 その昔、タバサに拾われ育てられたとき……、


「そのときの皆ならタバサのことを知っている」


 だったらその中に知り合いがいるはず。そいつならタバサのことを知っていることになる……探す、


「あれ……おかしいな……いや……」


 ちょっと記憶が曖昧になっていたが、知り合いはすぐに見つかった。

 アンジェラだ。彼女もタバサの下で育てられた一人、


「アンジェラがいたじゃん……もう死んじまったけどな……」

「済まないのぉ。いらんこと思い出させてしまったようで」

「いや……いいんだ」


 ジャックはもう少し記憶をたどった。

 それは単純に、もっとタバサのことを知っているはずの人を思い出すため。


「タバサが死んだあと、どっかの施設に引き取られたんだっけ、俺」


 思い出す。自分のことがわからないわけがない。

 そうだ、タバサの下からそこに移ったやつは多い。

 アンジェラも、その一人の――


「はじめまして! きみ、名前なんてゆーの? わたしアンジェラ! よろしくねっ!!」


 ナンダ? ナンダコノキオクハ

 ジャックの脳髄に激痛のような衝撃が走る。


「うわああああああああ!! 違う、違う……違う!!」


 これは何かの間違いだ。記憶が曖昧なんだ。


「そうだカリータは!? リリィは、ハリエナは!!?」



「初めまして初めまして初めまして――」



「あああああああ!! なんで、どうして!! みんな、前から出会っていたはずなのに!!」

「思い出してきたかのぉ……ジャックよ。うぬは別の世界で儂が創り出し、その世界にしかいないタバサに育てられ、なおかつタバサが死ぬのをその目に焼き付けさせ、この世界に孤児として送り込んだのじゃ」

「嘘だよそんな、嘘ウソ……」

「済まぬが、これが真実なのじゃ」


 ざくり、

 ジャックの精神の深いところにその言葉は突き刺さる。


「……ウワァァァァアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


 ジャックは、頭を掻き毟り、叫んだ。


「なんで、そんなことを俺に言うんだよ!! 俺はただイギリスを救うために……タバサの無念を晴らすために……みんなと仲良く平穏に暮らすために頑張ってここまで来たっていうのにッ!! なんでお前は今更そんなことを言うんだあああああ!! ええ!? 答えろよクレイモワ!!」


 ジャックはクレイモワの胸倉を掴みながら訴える。


「安心せい。存在こそ儂が身勝手に創り出してしまったが、うぬが歩んできた道は決して眉唾なんかじゃない。そこは解ってくれ」

「じゃあタバサは……」

「彼はこの世界の人間ではない。おぬしが最初に生まれ落ちた世界の男……うぬはタバサを育ての親というが、儂は本当の意味でタバサがうぬの親だと思っておる」


 ジャックは、クレイモワも胸倉から、手を離した。

 ギリギリのところで理性はまだ失われていなかった。


「なんでこんな話をした」




「知ってもらいたかったのじゃ。うぬに纏わる真実と、理想的なハッピーエンドを迎える方法を」




                ☆




「ハッピーエンド、だと……?」

「そうじゃ。うぬにならそれが出来ると儂は踏んだのじゃ」


 儂にはもう固定概念とやらが頭にしがみついて、既存の世界へと巻き戻すように創造することが精いっぱいなのじゃ。しかしうぬはその限りではない。


「この世界に生きて、いままで誰も成し得なかったカーツの打倒をするまでに育った。儂は正直嬉しいのじゃ。成長したうぬと、こうやって会話できるのがのう。こんな幸せな気持ちで逝けるのなら人生に悔いなどあるわけがない!」


 じゃから、儂の創造の力で、うぬが望む世界を創れ! それが儂の可愛い息子、ジャックに出来る唯一にして最大のプレゼントじゃ――――


                 ☆


 静寂。

 一つ、一人の静寂。


 天神の間には彼のみ。


 永く時を生きた神は、すべてを未来へ託す。


 明かされた真実。


 受け入れるには時間がかかりそうだった。





 だが、今の彼にはさして重要なことでもなかったのかもしれない。





 彼の前にあるのは、一つの選択だ。


 変えるか、否か。


 創造するということはそういうことである。


 過程も結果も、自分の思うがまま、今まさに、


「俺が望むなら、どんな世界でも創れる……か」


 ジャックは神のいなくなった『間』で一人、呟いた。

 そして、


創造(つく)ってやろうじゃねえかジーさん。最高で、最良の未来を……!!」


                 ☆


 同時刻、螺旋階段にて――、


「なあエルナ」

「なんじゃ晴人」

「この階段、なんでこんなに長いんだよ。もう下り始めてどれくらいたったと思う!?」

「三分くらいかのう」

「体感はそれの桁一個プラス分だーッ!!」


 晴人とエルナは全速力で螺旋階段を駆け下りていた。


「それにしてもこの階段、ほんとにこっちが天神の間なんだろうなぁ!?」

「間違いないのじゃ! 天神の間はそれほど高いところには無かった……はず!」

「はずってお前……なんでそんなこと言い切れるの」

「……なんとなーくじゃ」

「わーウソクセーッ!!」


 二人がそろそろ風になるんじゃないか俺(余)たち、とか思い始めたときに、下のほうから強い光を感じた。


「この光、そろそろ出口に着くんじゃね? なげーんだよクソ!!」

「クソとかあんまり言うものでないクソ晴人!!」

「俺はジャックにアンジェラのことを伝えなきゃなんねーから急いでんだよ――!!」


 晴人の目に、外からの強い光が差す。


「うおっ、眩しっ――――」


 先を走っていた晴人の姿が、光の中に呑み込まれる。


「うえっ!? 晴人?」


 エルナも、ちょい裏返り気味のこの声を最後に光の中へ呑み込まれていった。


                 ☆


 光臨の間、


「もう……いい加減に死ねよ!! このっ、このっ!!」


 光臨させた偶像を、他の光臨させた巨大な銅像のような男を使ってMSS小隊に向かって投げる、投げる。


「いい加減そっちも疲れてきたんじゃない? オ・バ・サ・ン」

「ッ~~~~~~~言ってくれるじゃない……これでも食らいなさい!!」


 アルマの操っている巨大な石像による押しつぶし攻撃。

 ……ぐちゃ、という音が聞こえた。


「あれ? とうとう勝ったの私……やったわぁ――ぁ」


 ザクッっという音と、自分の体から流れ出る血を見て、アルマの表情は喜びから一転する。

 アルマに勝利の余韻に浸る時間も暇も、無かった。


「どう……して……」


 アルマは潰れたMSS小隊の数を数えた。

 眩い光に隠れて、アルマには一人しか確認できなかった。


「そーゆうこと……私ってホントドジっ子――」


 アルマは薄れゆく視界のなかで、安らかな眠りについた――、


                ☆


 界離の間、

 ここはもうアンダーワールドと化している。

 既存の法則や理論は一切通じない異次元空間。

 カリータとカイゼルの両者は、次々と作られる無尽蔵の世界のルールを見つけ、それに対応することで戦闘を続けていた。


 そして、次の世界は


「カッ……ぁ……!!(息が、出来ない!!)」


 カリータは自然発生的に生まれた『呼吸法の変化』に対応できず窒息しそうだった。


「ふふ……どうやら今回はエラ呼吸じゃなくて普通の肺呼吸らしいよカリータ」


 カイゼルは肺呼吸を久しぶりにやったので、慣れない様子だった。


「ぷはぁ!! 久しぶりに肺呼吸なんてするからさぁ……やり方忘れてたよ……」


 カリータも、ようやく呼吸に慣れてきた。


「これまではエラ呼吸、皮膚呼吸、無呼吸の繰り返しだったからね。普通のはずなのに懐かしさすら覚えるよ」

「よーし調子でてきたぞ天使君。元々に近いこの世界こそ決着にふさわしいと思わないかい?」

「それは僕も薄々思っていたよ。この果てしなく続きそうな殺し合いの、決着を着けようじゃないか!!」


 カリータは標準サイズになっている斧を構えて走り出した。


(ブラッディ)()四枚翅(アーティファクト)!! これで最後だ、おおおおおおおおおおおおッッ!!」


 対するカイゼルは、白き六枚翅を顕現させた。


「君のそれはもう対策済みだって、わからないのか!! 僕のこの、浄化する(アレイソナ・)空のグランドワイトに君の常識は効かないんだよォォォォォ!!」


 激突、後に消滅。

 二人は、自重という名の光に、自由を奪われた。


                  ☆




























 そして世界は――大いなる意志によって、再構築される。




























                  ☆


 青く澄み渡る空。

 雲一つない空に、鳥のささやかな鳴き声が響き渡った。

 もうじき、太陽が昇る頃だ。


「この風景は……天界、じゃない……」

「ああ、余らはどうやら戻ってきたようじゃな」


「「イギリスに!!」」


 二人の少年少女は、生還の喜びを大いに分かち合った。





「あれ? 私生きてんの? こりゃラッキーだわ」


 数々の英霊を顎で使ったおばさん天使も、欠損一つない光臨の間に気付いたら一人寝そべっていた。





「何だぁさっきの眩しい光は……ハッ! そんなことより僕が生きてるってことは、僕は勝負に勝ったのかな!?」


 界離の間の不思議な能力を扱う少年は、辺りを見回し、戦闘の痕が無くなっていることに疑問を抱いた。





「これはいったい何が起こったのだろうか……」


 完全に身体を失って再生不可能になって『死んだ』筈の二刀流の彼も、自身が生きていることに疑問の念を隠せなかった。

 

 しかし、


「一つだけ解るのは……」





「俺たちレジスタンスは、天使たちに勝ったんだああああああああ!!」


「「「「「「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」


 現界のキャッスルオブグレートヴリテンの、レジスタンスが集結した開戦の場所、宮内大庭園。

 ここには、革命時に戦死した者そうでない者、すべてのレジスタンスが再び集結していた。

 MSS小隊も、戦鬼カリータも、アンジェラも、レジスタンスの皆が喜びに震え、狂喜乱舞していた。


「我々は……どうなったのだ?」

「小隊長! 勝ったんですよ俺ら! ビクトリー!」

「なんとも不思議な気分だな。まだ生きているとはな」

「素直に喜びましょうよ! ここは!!」

「……うむ、そうだな! 戦勝記念だ! パーティーを開くぞ!!」

「「「「いえーーーい!!!」」」」


「あれー? 僕はさっきまでカイゼルと戦っていたと思ってたんだけどなぁ」

「カリータ! 大丈夫だった?」

「アンジェラじゃないか。君こそ、生きてるみたいで何よりだよ」

「ううん、実は私も一回殺されてるはずなのよね」

「そう……一体、誰がこんなことをしたんだろうね」

「私はジャックだと思うな。あの子ならきっとこれぐらいのことはやってくれるよ」

「……そうだね。ジャックならこんな夢みたいなことをしたって言っても納得かもしれない」


「革命だ! 革命が成されたんだ! 俺たちの手で!!」

「俺は……変な機械に殺されたはず……? でもなんか生きてるぅぅぅ!」

「やったー! ばんざーい! ばんざーい!!」

「ひゃっほー!!」


 そんな中に、第七部隊の隊長もいた。


「はるっちはどこやーっ!! おーいはるはるぅー!! 返事してよぉー!!」

「ちょ、リリィちゃん!! そんな大声出したら恥ずかしいよぉ……」

「もぉ~シャーリィったら恥ずかしがり屋さんだねぇ~。レジスタンスのときのシャキッとしたセーカクはどこにいったのよ」

「あれはちょっとね、気合入ってたっていうか……」

「だったらあの時みたく気合入れてはるっちを探すの手伝ってよ~、は~るはるぅーー!!」


 この二人、ここにいない彼を探し続ける。





「うんうん。誰が何をしたかは知らないけど、なんか俺らが負けたっていうことは解った。しかし――」


 このレジスタンスたちの様子を観察する男がいた。


「これが外、か。いいねえすごいねえ! 冒険心くすぐられるじゃねえか! 俺ももう、あのレジスタンスたちみたいに、自由だぁーーーっ!!」


 果てしなく広い大空に夢を抱いた男が一人、飛び立った。



 天界でも、


「壊れた街並みが、元通りになってる……」

「奇跡でも起こったみたいだ」

「おい見ろアレ!!」


 一人の天界人が指差しで示した。


「天界城があった場所に、ドでかいモニターが映ってるぞ!!」


                ☆


 そのモニターは、宮内大庭園にも突如として出現し、喜びムードが一転し、みんなに緊張感が走った。


『イギリスの皆、天界の民たち、この放送を聞いているだろうか』


 モニターに映し出されたのはほかでもない、


「ジャック!!」


 叫んだのはアンジェラだった。


『俺はイギリスを極悪非道な独裁者、トロイト=カーツから守るためにレジスタンスを結成して、力の限り戦った。その結果は今、君たちの目の前に広がっている光景がすべて証明してくれている』


 ジャックの演説を、天界人も、レジスタンスも、離れにいる晴人たちも、この戦いに参加したすべての人間が、固唾を呑んで見守っている。


『元凶であるカーツは打ち滅ぼした。そして俺がこの戦いで死んでいったカーツ以外のすべての人間を蘇らせた。誰もが望んだハッピーエンドじゃないかもしれないけど、今後一切の現界と天界との行き来を全面的に開放したい。そして双方間の和解のしるしとして、これからパーティーを開こうと思う! 開催場所はこの今俺がいる天界城と、現界のヴリテン城だ……さあ、いまからみんなで歌って踊って、酔いつぶれるまで飲み明かそうぜ!!』


 ジャックの思いは、両者によく伝わった。

 レジスタンス含む現界人は、これまでの天使たちの悪行をすべて許し、天使たちはカーツを筆頭とした原因である連中を表に出させ謝罪させることでこれ以上自分たちに悪いことをするやつも、する理由もないという証拠を差し出した。


 両者は、互いの痛みを分かち合い、楽しみあいながら三日三晩眠らず騒ぎ続けた。


 これで、本当に、この騒動は幕を閉じようとしていた。





「ジャック!」


 アンジェラは、まだやり残したことがあった。


「私、最後までジャックと一緒にいられなかった……だから」


 アンジェラは頬を赤らめながら、笑った。


「これからは、ずっとあなたの傍にいさせてくださいっ!」



                ☆



 数日後、


「なあマジでもう行っちゃうのかよ晴人……もう少しイギリスでのんびりしてってくれてもいいんだぜ?」

「はっはっは! 泣くなよジャック。お前一応俺より年上じゃねーかよ!」


 晴人は、そろそろイギリスを立とうとしていた。

 見送りには、晴人がイギリスに来てからなじみの深い人たちが集まっていた。


「はるはるともう会えないなんてさびしいよぉ~~」


 リリィは今にも泣きそうな、ってか既に号泣だった。

 晴人はそんなリリィの頭をゆっくり撫でながら言った。


「泣かないでくれよリリィ。寂しくなったらいつでも電話してくれていいからさ」

「……うん」


 晴人はリリィとちゃっかり連絡先を交換していた。


「君とももうお別れのようだね」


 次に出てきたのはカリータだ。彼は天使と戦闘する時こそ鬼神の如しだったが、すべて終わった後は、天界の宴会場で『突然! 格ゲー大会グランプリ』を主催し、持ち前の優男補正で友好を深めていた。決勝戦ではなんとあのカイゼルとの再戦を果たしたとか。


「お前も、もう暴れたりすんなよな」

「ハハハ何言ってるんですか晴人君。あれはもう黒歴史です」


 真顔で言うカリータ。これいかに。


「それでは僕はカイとの勝負があるのでこれで」

「おう! やるからには勝つんだぞ」

「それでは!」


 カリータはマッハの速度で行ってしまった。


「あ奴も難儀よのう」

「人ってのはこうやって話したくない過去が生まれるんだな……」




 他の人たちとも、別れを惜しみつつも、そろそろいい頃合いになってきた。


「晴人、そろそろ飛行機が」

「そうだな。いつまでもグダグダやってられそうにもないな……俺たちはもう行くよ!」


 別れは笑顔で、そう思って笑顔でここを去ろうと一歩を踏み出そうとした瞬間、


「晴人君! ……ありがとう!!」


 アンジェラの、心からのありがとうが、晴人に伝わった。


「……アンジェラも、ジャックと幸せにな!!」

「うんっ!!」


 アンジェラはとびっきりの笑顔だった。

 その横でジャックが恥ずかしかったのか狼狽えているようだったが、晴人は構わず、去ろうとした、瞬間、


「やっぱりまだ一緒にいたいよぉ~~はるっちぃ!!」

「おわっ!」


 後ろからの衝撃に、晴人はバランスを崩しかけた。


「うえーん! 離れたくない~~!!」

「馬鹿お前! 折角の締めが台無しじゃあねえか! 放せ!」

「やだやだやだやだ~~~」

「駄々っ子かお前は!!」


 その様子を、エルナはまずい物でも見てしまったかのような表情で見ていた。


「お主ら、本当に仲が良いのう……ふふふ」

「エルナ待て、違うぞ。そうじゃない! 俺は決してそんなこれは一切なくてね!?」

「うわーーん!! はるはるが私のこと嫌いってーーー!!」

「そうはいってねえよ!!」

「じゃあ、私のこと好きって言って?」


 晴人はとにかくリリィを離そうと必死だった。だから彼女の条件をよく聞こうともせずに返事した。


「はいはい好き好き、大好きダヨ!」


 瞬間、嫌な風が吹いた。




「へぇ~~~、晴人君ってそういう女の子が好きなんだぁ~~~~~~」



 

 晴人は思った。なんだかいままで完全に無風だったのに今になってよく風が吹いてくるなぁ、と。

 あれ? これ自然に吹くような風じゃなくね? と、


「ひぃ君。ちょっと見ないうちに女ったらしになっちゃったの。そっかぁ……私悲しいなぁ」


 晴人はこの声に聞き覚えがあった。

 特にあの、ひぃ君ってやつね。


 仕方がない。


「まったく。何故大陸の向こう側にいるお前がここにいるんだ? リナ!」

「会いたくなったから来ちゃった♪」

「あのなぁ……」


 晴人はうなだれた。

 それは、事態がもっと悪化していくことを予見していたから、


「ちょっとはるちん誰この女! もしかしてかのj「違う! 断じて!!」」

「断じて!? なんかそれひどくない!?」

「だったら安心ね! はるちょんは私だけの~~」


 リリィがくっついたまま晴人にキスをしようとしたとき、リナはリリィから晴人を引っぺがした。


「ちょっと何すんのよ断じてさん」

「断じてサンじゃない!! 私はリナ!」

「邪魔しないでよ。そもそもあなたははるっちのなんなのさ!」


 リリィがその質問をしたことによって、リナは急に余裕を見せる。


「いいわ教えてあげる……その関係、言うなれば『幼馴染』ッ!!」

「なっ、なんですってーーッ!!」


 その時、リリィの体に電撃が走った。幼馴染とは、ヒロイン関係カーストのトップに位置し(以下略。


「はいはーいリリィちゃんの完全敗北でーす。退場しましょうねー」

「シャーリィ……済まないね……」

「いえいえ、晴人さんもお元気で!」

「おう、またな! ハハハ……、はあ」


 ようやく嵐が去った。

 しかし、すかさずリナが話を切り出す。


「じゃあ行きましょうか、二人とも」

「え……行くってどこにさ」

「反応が薄れておるぞ晴人」


 既にこの場には、ジャックとアンジェラしか見送りがいなくなっていた。


「貴方たちも、晴人君に言い残すことがあったら言ってあげて。これで正真正銘お別れ。もう当分は会えなくなると思うから」


 ジャックはリナにわかった。と返事した。


「晴人、絶対だ。絶対また会おうな! それまで元気にやれよ!!」

「晴人君……私が言うのもだけど、あんまり行く先々で女の子をはべらかさないようにね?」

「そんなこといつ俺がしたよ。まあ何にしても、いろいろあったけど楽しかったぜ、またな!!」

「これからもっと天界とより良い関係を築いていくのじゃぞー!!」

「さよならお二人とも……」


 三人は、別れを惜しみつつ歩き出した。

 リナ曰く、船に乗って次の目的地に行くらしい。


「晴人君にはたくさん助けられたね。感謝してもしきれないよ」

「だな。アイツらがいなかったら今はなかっただろうさ……さて! 晴人たちも行ったことだし、戻るぞ! これからはかなり忙しくなりそうだ!!」

「はーい! あ・な・た♪」

「それ恥ずかしいからやめてくれ~!」

「あははははは!」










 こうして、革命というお話は、完全に幕を閉じた。

 激動のイギリスだったが、晴人とエルナはその疲れを癒す間も無く次なる地へと向かう。

 今度の舞台はどこになるのか……晴人はそんな冒険心溢れる思いを心に抱いて、新しい出会いに淡い期待をするのであった。


                          イギリス革命編   完

どうも、私です。おひさです。

レボリティ―・レポート、イギリス革命編はこれで完結です。どうでしたか? 長々とやってこんなもんか、と思いましたか? 楽しかったと思ってくれたなら私は満足です。



十月中に全部あげてしまうつもりだったんですが、一日遅れてしまいました。反省です。


それにしても長い話だ。もう35ぐらい話を上げてるんじゃないでしょうか。終わる気がしませんね。この調子だと完全に終わらせるまでに200話ぐらいかかりそうなんですね実際。まあぼちぼち続けていくので、気楽にどうぞ。


これ以上は特に何もないです。最後に次回の予告と投稿予定を


「晴人君、責任って……ポッ//」


「え?」


 晴人が何か言う前にエルナはいつもの刀に変身していた。


「何でも、理事長の特別待遇らしいぞ」




「特別待遇? ハッ! 出る杭は打たれるっていうことを教えてあげないといけないね」



次回『魔法学院の転校生』

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