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レボリティー・レポート  作者: アルフ
イギリス革命編
27/55

『天上天下に憂い憚ること勿れ』

 近代的とも未来的とも古臭くともとれる外観の城下町。

 その町をいつも通りな平穏の中と思い歩く、背中から羽の生えた人々がいた。

 天使だ。 

 彼らは地上で何が起こっているのか知らない。いや、知らされていないのだ。


 情報統制。


 イギリス、ひいてはこの天界を総べるトロイト=カーツは軍部の人間にしか現界の情報が行き届かない様に細心の注意を払っていた。

 故に天界に暮らす彼らにとっては今日だって何気ない日常の一ページ、だったはずなのだ。


 彼らが悪いわけではない。彼らは純粋なまでに無実だ。

 しかし、そんな彼らも現界の人間には皆等しく平等に革命、復讐の対象。打ち倒すべき敵。

 何も知らずに侵略される『侵略者』と、何も知らない者をただ闇雲に殺そうとするもう一つの『侵略者』。

 正義があるとすれば、それはいったいどちら側なのだろうか。


「ここから先は作戦なんて何一つない。あるとすればそれは俺たちの最大の目的、革命だ。敵は見渡す限り広がった天界そのもの」


 ジャックは全員が転送完了したのを確認したらおそらく最後になるであろう演説をしていた。

 その言葉の端々には言い表しようのない感情が見え隠れしていた。


「武器を持て、立ち上がれ! 俺たちレジスタンスはこれより最後の聖戦を始める。目指すは敵の大将だ」

「大将だと? アンジェラわかるか?」


 晴人はジャックの言葉に疑問を浮かべていた。

 向こうの世界に残っているカーツが大ボスではないのか、といった思考だ。


「誰だろう……私もあまり天界のことは詳しくないの」


 アンジェラもよく理解できていないようだ。

 晴人は周辺のレジスタンスを見まわした。どうやら他の人たちもジャックの話についていけていないらしい。

 それでも、ジャックは皆を勢いづかせる為に全身全霊を以って話している。


「ジャック……大丈夫かな」


 ジャックが無理をしている、アンジェラの目にはそう写った。


「アイツが無理してるなら俺たちがしっかりと支えてやらねーとな」

「晴人君……うん、そうだよね。私たちが頑張らないと!」


 まわりのレジスタンスも各々士気を上げだしていた。自軍のリーダーがあれ程まで燃えているのだ。士気が上がらないはずがない。


「邪魔するものは薙ぎ倒せ!! 一対一じゃなくていい、最悪逃げても構わない、あそこに聳え立つ白銀の城まで辿り着け。行くぞ、全軍出撃――!!」


 ジャックの言葉を皮切りに、とうとう始まってしまったのだ。

 もう、後悔しても遅い。


                ☆


「ほう、ここが例の空間移動なんとかのある部屋か」


 キャッスルオブグレートヴリテン空間移動装置室前で佇む男が一人。


「この俺様が直々にそっちへ行ってやろうとしているというのに出迎えの一つも出来んとは……」


 彼の名はエル。本来柊晴人の傍にいるべき人物だ。

 しかし彼は現在こうして一人で行動している。


「フッ、まあよい。俺様も向かうとするか、懐かしき故郷へと……!!」


                ☆

 

 天界城ギラトン査問の間――


「統治支配したはずのイギリス国民の総反乱……これはいったいどういうことかしら、ハッキリ言って異常事態なんじゃない?」


 現界のキャッスルオブグレートヴリテンにいる総統、トロイト=カーツからの伝達を受け急遽査問の間に集まった四人の一人、アルマは半ば笑いながら三人へと言葉を投げた。


「あのカーツが俺たちに応援を要請してきたんだ。それなりにヤバいんじゃないか?」

「カーツ様と呼べエルリック。あのお方は天界三賢者だ、貴様ごときが呼び捨てするなど恐れ多いぞ」

「賢者つっても“元”だろ。それとも何か? “現”三賢者のお前も様付で呼べってか、グリフォンサマよぉ!?」

「あんた達は顔合わせる度にケンカばっかりしてー、『間』を司るものとしての自覚あるの?」

「うっせーんだよババア! テメーはカイと一緒に黙ってろ!」

「ぷっちーん、今私切れた。表出ろエルリック、死なない程度に死なす」

「……(ケンカしてんのはどっちだよ)」

「まったく、これだから短気は」

「「テメー(あんた)には言われたくない!!」」


 現在この間に集まっているのは天界でも特に重要な立ち位置に君臨している四人。

 一見短気そうな男はエルリック。四人のうち唯一の女、アルマ。心の内で呆れている少年はカイ(エルリックのみの呼称)そして晴人と一度戦闘を行ったことのある天界三賢者の一人、グリフォン。

 四人はレジスタンスについての対応を話し合うはずだったのだが、どうにも穏やかではないのが現状だった。


「つーか何がぷっちーんだよ、年増のくせに自分可愛いですアピールしてんじゃねー気持ち悪い」

「あら、ごめんなさいねぇ! そんなつもりで使ったわけじゃないんだけど!? 気に入ったのなら何度でも使ってあげようじゃない! ぷちぷちぷっちーん」

「やーめーろー!! 耳が腐る、ババア臭くなる――!!」

「……(まるでガキの言い合いだな)……」


 彼ら、話し合う気が皆無である。

 アルマとエルリックは低レベルな言い争いを延々と続け、それを無言で傍観するカイ。


「……この阿呆どもめが……!」


 グリフォンは、その纏まりのない様に煮えを切らし、


「いい加減にしろ貴様等!! 事は貴様らが思ってるより深刻なんだぞ!!」

「いてっ!」「あいたっ!」


 二人の頭をガツンと殴って無理やり止めることにした。




「よし、では第一級非常宣言だ。各々天守を尽くすように」


 グリフォンの最終決定により、残りの三人は自分のいる場所へと戻っていった。


「さて、私も行動に出るとしよう」


 第一級非常宣言。


 これは、天界に危険が訪れたときに発動する異常事態の中でも一番大きく、わかりやすくいうと『未曾有の事態、直ちに問題の解決を要求する』といったものである。

 圧倒的に劣勢と思われたレジスタンスだったが、神憑りのような快進撃によって天使たちに第一級非常宣言を発動させるまでに至った。


 しかし、革命とはそう簡単には終わらないものだ。それもイギリス国内だけではなく、天界をも屈服させなくてはジャックたちに未来はない。逆らったものは皆処刑か一生奴隷の二択だ。

 少なくとも、主犯であるジャックにまともな最期が待っているとは考えにくいだろう。

 彼はもう進むしかないのだ。たとえすべてのレジスタンスが倒れても……。


                ☆


「うわぁぁぁぁぁ!! 現界人が来るぞ、逃げろぉぉぉぉ!!」

「遠征軍は何やってるんだ!? 俺たちは安全じゃなかったのかよ!!」


 第一級非常宣言の一報を聞き、いてもたってもいられなくなった天界人たちは来るレジスタンスに怯え、その脅威の届かないところまで逃げ回っていた。


「お前らもぼさっとしてんな! 早く逃げないと殺されちまうぞ!!」


 殺される、彼ら天界人は生存本能に従って必死に逃げ回っている。

 おかしくないだろうか、天界人は通常の武器では傷を受けても瞬時に再生するのではなかったのか。


「そんなこと言っても現界人がどこから来るなんて俺しらねぇよ!!」

「現界から来るんだからゲートのある場所からに決まってるだろ! だからできるだけゲートから離れるんだよ!!」


 彼らは現界を知らない。現界人を知らない。現界の武器を知らない。

 故に彼らは現界の武器では自分たちが死なないということも知らないのだ。

 無知から来る恐怖ほど怖いものはない。彼らは無知であるが故怯え逃げ回る。


「こっちだ! とにかくゲートから一番離れている場所、サラトリアへ!!」


 実に単純な思考。

 天界には果てというものがある。もとより天界はそれほど広くはない。ゲートから三時間も走れば、果てにはすぐ辿り着く。彼ら天界人はそのようなところへ一斉に非難したのだ。


 その選択が最良だったのかは、誰にもわかりはしない。


                ☆


「第二、三、四部隊は総員で天界市民の身柄を拘束しろ!! いいか? 絶対に死者は出すなよ!」

「「「了解!!」」」


 陣形が大きく変わる。

 第二部隊は右へ、第三部隊は左、第四部隊は後方へと進路を変更する。


「残りで敵の本丸と思われるヴリテン城に酷似した城を攻める。みんな、俺についてこい!!」


「「「「オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」


 ジャックの指示により各部隊の動きが決まった。


「作戦はないとか言ってた割にはしっかりとリーダーやってんじゃんアイツ。俺も死人だけは出さないようにしないとな、特に目の前にいる奴は全員助ける気概でいくとしようかね」


 晴人の最初の理想、誰も何も失わずに平和に解決する方法は結局達成できなかったが、だからといってすぐ諦める晴人ではない。自分の手の届く人間は必ず救うのだ。


「見ろ! 武器を持っている、天使軍だ!!」

「片っ端からやっつけろ!! 俺たちの人生を取り戻すんだ!!」


 天使軍はおよそ一個師団と言った程度。第二、三、四部隊がいなかろうがレジスタンスには数がある。

 圧倒するのはレジスタンス側だ。


「その程度の人数で敵うと思うな、俺たちレジスタンスの総戦力は二百万の志だ。臆することはない、進め――!!」


 各々が鼓舞し合い、その軍勢は本来以上の真価を発揮する。

 たとえ無限の再生力を誇る天使も、猛り狂った軍団を見て冷静でいられるはずがない。


「多すぎる……話が違うじゃないか!?」

「上の連中は何考えてんだ!? あんな人数俺たちだけで鎮圧できるわけないだろう!!」


 とある天使軍の男の嘆きも虚しくレジスタンスは侵攻を止めない。

 ある者は斬り伏せられ、ある者は叩き潰される。

 そうやって蹂躙される中で天使の一人は一つの真実に辿り着いた。


「そうか、そういうことだったのか! あのアマ――――」


 自分たちにこの戦場を任せるように指示を出した者に、やり場のない怒りをぶつけようとした。


 その時、


『いやー時間稼ぎご苦労だったね、私の可愛い可愛い手下たち♪』


 戦場の上空に巨大なモニターが浮かび上がる。

 聞こえてきたのは、戦場に似合わない女の声だった。


「裏切ったな!? この外道が!!」


 天使軍の一人がモニターの向こう側にいる女性に叫ぶ。


『失礼なこと言うわね、私がいつ裏切ったっていうのよ』

「は? ――ふっ、ふざけるな!! 俺たちは反逆者の残党狩りだってあんた言ったじゃないか!!」

『それのどこに私が裏切ったっていう要素があるのよ。現にそこにいる現界人は見方によったら残党みたいなものでしょ、うん一緒一緒』

「あんたは……この人数を見ても残党っていえるのか?! あんたにはそう見えるっていうのか!!」


 モニターの向こうの女性は男にいちいち回答するのが面倒に思えてきて、ため息をわざとらしく洩らした。


『だぁ~かぁ~らぁ~最初に言ったじゃない、時間稼ぎご苦労ってさ。仮にも私の部下なら察しなさいよねそれぐらい』


 正式に彼女の口から告げられたのは、「囮になってくれてご苦労」という意味を持ったものだった。

 男はそれを聞いてガクッと膝から地に着いた。

 そして感情に任せ、吼える。

 彼女の名、そのフルネームを。


「ふざけんなよ。アルマ……ベルホイ――――ッッ!!!!」

『ぷっちーん。気安く私の名前を呼ぶなよ』


 アルマの名を呼んだ男は一瞬のうちにその場から姿を消した。

 それと同時に上空のモニターも消滅する。

 一連のやり取りを呆然と立ち尽くして聞いていたレジスタンスだったが、またすぐに侵攻が始まったのはもう言うまでもないだろう。




 男は気が付いたら地平線が見えるほど広い無機質な空間にいた。


「……ここは」

「私の『間』よ。それぐらいわかんなさいよね」


 男の疑問は即座に明確な答えとなって帰ってきた。


「そんな……なんで……っ!?」


 男は信じられないといった表情で後ずさった。

 この間の主、アルマはニタニタと笑っている。


「俺はあんなに劣勢の中戦ったんだ! 俺は何も悪くない、むしろ称賛されるべきだっ!!」


 男は解かっていたのだ。ここにいる意味と、今から行われようとしていることが、


「あんたは俺たちに時間稼ぎをさせたかったんだろ!? 手段はどうであれそれは達成したじゃないか!! なあそうだろ!?」


 アルマは男の話など聞かず、おもむろに片手を挙げた。


「私って天罰をするのって苦手なんだけど、嫌いじゃないんだー」

「イヤだ……死にたくないッ!! 慈悲を――」


 アルマの手は、とある言葉と共に振り下ろされる。



「降臨せよ、天上の怒りの化身、不動神・明王偶像!!」



 一時の無音が訪れた。


「は……えっ――」


 男は後ずさりながらも何も起こらないことに安堵していた。

 アルマはジッと見ているだけ、男は一歩、また一歩と出口へと後退する。


 しかし、


「折角不動神が降臨したのよ? しっかり目に焼き付けなさいな」


 アルマは男に上を見るように促した。

 まるで死刑の宣告のよう……男に拒否権はなくただ言われるがままに行動する。

 男は、上を見ると「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 文字通り、男は明王偶像を見ることでその姿を目に焼き付けた。

 比喩ではない。男の目は激しい熱を伴って溶解していった。


「目が焼ける――!! 熱、ィ―――!!」

「アハハハッ! 偶像を目視しようなんてあなたバカね!! 偶像とは人の妄想の結晶、明王偶像を捉えようとした人間はその情報の量に耐えきれず自壊するのよ」


 当然アルマもその例には漏れない。決して明王偶像を見ようとはしない。


「ユル……ザナァイ……ッ!!」


 男は焼けただれた目で、見えないながら確かにアルマを睨みつける。


「別に私があなたに許されなかろうがどうでもいいんだけど……私はあなたに下すわ」


 苦手といったが、嫌いではないその所業。その行為の名は


「天罰」


 空中に君臨しているはずの明王偶像は不動を有動へと変化する。

 有動神・明王偶像。

 それは、すべての事象を引き裂きながら降下する。

 そのスピードは最早……。


 ぐちゃ。


「さーて、レジスタンスの皆はここまでこれるかな? 楽しみだね~」


 明王偶像は消失し、たった一人アルマはその時を待つ。

 ここは天界城ギラトン。

 天界の頂点が座す神秘の空間である。


                ☆


 現界、キャッスルオブグレートヴリテン飛行機墜落跡。


「これは……」


 MSS小隊隊長はいまだ焼跡が残る飛行機を見て言葉を失った。

 しんと静まった空間にはMSS小隊隊長をはじめ、隊員全員と戦鬼、カリータだけしか生きている人間はいなかった。


「ほかのみんなは天界まで行ったようだね。僕たちも早く追いつかないと」

「そうだな。我々がいなくては戦闘が成り立たないよ、犠牲者も確実に減らせるはずだ」


 残存する武天神兵は無。


「それにしても――」


 MSS小隊の一人がカリータに話しかける。


「ん、なんだい?」

「カリータさんって本当に強いですよね。尊敬しちゃいます」

「まあね、天界人を相手にするときはリミッターが外れるっていうか……人間相手にはそんなことないんだけどね」

「そうですかぁ。カリータさんこんなに強いんだからあのカーツだって倒せちゃうんじゃないですか?」


 ナハハと笑うMSS小隊の男。

 カリータも笑い返そうとしたとき、奥の出口に誰かがいたのを目撃する。


「俺を倒す? ハッ――笑わせるなよ低劣が」


 その時カリータの本能は告げた。


「避けろ!! 死ぬぞ!!!」

「えっ――」


 鋭利的な何か、正確には針状の物質がMSS小隊の男の頭を貫くのとカリータがそれを回避するのはほぼ同時だった。


「どうした!? 一体何が!!」


 MSS小隊の隊長が事態に気付き駆けつける。


「カッ、た……たいちょ、ォ……」

「ああぁ!? ロニー!! 大丈夫かっ!?」


 小隊長の言葉に返事はなかった。

 ロニーと呼ばれた隊員は既に悍ましい表情で絶命していた。


「クソッ、誰がこんな……」


 カリータは奥にいた人物を見た。

 それと同時にMSS小隊もその人物を認識した。


「アイツ……アイツは!?」


 黄金色の頭髪。

 二メートルはある人間離れの身長。

 戦場に似合わぬ高貴な服。それも当然だ。

 彼に武装という武装は必要ない。


「なんだその反応は。俺の登場がそんなに不満か?」


 彼にとって敵は存在せず、現界・天界・魔界に於いて唯一『無敵』と称されることが許された。


「大総統……トロイト=カーツ!!」

「フン、貴様らはまだあっちには向かっていなかったのか。もうここには用はないのではないか?」


 反乱軍を前にして身構えることはしない。

 無敵が故の傲慢、油断、余裕。

 カーツに恐れといった感情はありえないのだ。


「そうでもないさ」


 カーツの放つ威圧にMSS小隊の面々が怯む中、臆せず前に出る男がいた。


「カリータ君!」

「小隊のみんなは先に天界へ向かって!! 僕はここであれを足止めする」


 ありていに言えばそれは今から自殺しますと宣言しているようなもの。


「っ、馬鹿言うんじゃない! いくら君と言えどカーツは――」

「大丈夫。絶対に追いつくからさ、しんがりは任せて!」

「しっ、しかし!「フハハハハ!! 貴様一人で俺を足止めだと? 面白い、乗ってやろうではないかその戯れ」


 カーツはカリータの言動が可笑しく思えて仕方がなかった。


「じゃあ彼らは先に行ってもいいよね?」

「よい、特別に許可してやろう」


 敵を取り逃がすというのにカーツは欠片も焦らない。

 何を以ってしても最終的には自分が勝つと確信しているからこその態度だ。


「決まりだね、さあ行ってみんな!」


 カリータがカーツと一対一をし、MSS小隊はカリータをおいて天界へと向かう。


「駄目だ、カリータ君だけおいていくなんて我々にはできない……」

「そうだぜカリータ! 俺たち一緒に戦ってきた戦友だろ? 戦友をおいていくなんて選択肢は最初からねーよ!!」

「『俺のことはいいから先に行け』なんて死亡フラグ臭プンプンなんだよ、そんなこと言うやつをおいてなんていけないな」

「カリータ君、我々MSS小隊は死ぬ時も一緒だ。だから最後の時まで共に戦おう、あの無敵の男と」

「みんな……」


 カリータはMSS小隊の優しさに触れ、思いが揺らいでいた。

 しかし、


「ごめん……みんなはここで終わらせない。こんなところで終わっていい筈がないんだ」


 MSS小隊の人間すべてが光り輝き始める。


「これは……」

「やっぱりここは僕一人で十分だよ、小隊は天界で暴れていって」

「カリータ君っ!! t――……」


 MSS小隊の転送は完了し、とうとうここに残ったのは戦鬼と無敵だけになった。

 その片割れ、無敵のほうが口を開く。


「いまのはなんだ? どうやって奴らを天界へ送った」

「さぁーてね、僕にもよくわからないや」


 カリータ今の問答で嘘をついた。


 カリータは知っていたのだ、天界へ行く方法を。

 正確には空間移動装置を使わずに天界へ移動する方法だ。


「友人にその手の部門が得意な人がいてね、特別に教えてもらったんだ」

「ほう、博識な現界人もいるのだな。俺とて空間移動の理屈は皆目見当もつかんというのに」


 カーツは素直に感心した。自分の理論の及ばないことを知る人間がいるなど思いもしなかったのだ。

 空間移動の原理が解明できたら或いは……。そんな想像がカーツの頭をよぎった。


「……貴様はここで死なすには惜しい人材だな、可能な限り俺に貢献して逝ってもらいたいんだが」

「残念だけど答えはノーだ。僕はね、リーダーからあんたが天界(あっち)に行ってしまう前に倒せって任されてるんだ。この意味わかる?」


 その返答にカーツは笑みを浮かべながら云う。


「わからんなぁ」


 カリータも、カーツにつられるように笑っていた。

 そして、始まるのは。


「ここであんたは死ぬってことだよ」

「笑止――!!」


 戦いの中に生きる『鬼』とイギリスと天を統べる『無敵』の男。

 いまだかつてない最高レベルの戦闘が、現界にて勃発した瞬間である。

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