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レボリティー・レポート  作者: アルフ
イギリス革命編
26/55

誰が為の聖戦

 キャッスルオブグレートヴリテン飛行機墜落跡――。

 晴人は外部周辺の天使をあらかた片づけた後、第一部隊を追う形で城内へ侵入した。


「なんだ……こりゃあ……」


 彼は武天神兵によって瞬く間に制圧される第一部隊をポカンとした表情で見ていた。

 制圧なんて言葉すら、目の前の惨劇には勿体無いかもしれない。

 遊戯、武天神兵は第一部隊をまるで玩具で遊ぶかのように叩き潰したのだ。


 何も出来ずに立ち尽くしていた晴人を、一機の武天神兵が視界にとらえた。


『オイ! 入り口に人間がいるぞ!! レジスタンスの増援かもしれない、速やかに制圧せよ!!』

「やべ、見つかった!!」


 ボーっとしている場合ではない。晴人は直ちに行動を開始した。


『神兵Bは右、神兵Cは左から攻めろ! 俺は前から行く!!』

「クソッ! 随分統率のとれた機械共だなぁ……でもよ――」


 晴人は武天神兵に劣らぬ速さで後退した。

 武天神兵は急には止まれない。これは全国共通事項である。流石の天界人の兵器も物理的法則には逆らえないのである。

 結果、勢いを増した三機の武天神兵は同時にぶつかり合う始末。


「隙だらけだ――ッ!」


 晴人はデュオライフルの引き金を引く。勿論放ったのは起爆性の弾丸。

 その弾丸が武天神兵の胴体にめり込んだ瞬間、三機すべてを巻き込む大爆発が起こった。


「なんつー威力だよ……やっぱこれ対人用の武器じゃねえぞ」

「晴人! さっきの爆音は……」

「ん?」


 晴人に後ろから声をかけたのはレジスタンスのリーダー、ジャックだ。


「ジャックじゃねーか。俺はてっきりもう城内にいるもんだと思ってたけど」

「俺も自分で遅れたと思ってる。ちょっと準備に手間取っちまったけどもう大丈夫だ」


 晴人はふとジャックの後ろに目をやった。


「これは……!」


 見ると、ジャックの後ろには大名行列と同レベルの大軍団が所狭しと敷き詰めあっていた。


「外の機械兵は、第八部隊の精鋭MSS小隊と第一部隊の“戦鬼”カリータが抑えてくれている。だから残りの全部隊は今ここに集結している!」


 圧倒的数。

 イギリスの総人口のおよそ三分の二がこの通路に犇めき合っている。想像すらできない状況だ。


「あっち側にいる機械兵共は第一部隊を瞬殺しやがった……俺は目の前にいながら何もすることができなかった……ッ!!」


 晴人が暗い面持ちでジャックに打ち明ける。


「第一部隊が……そうか、彼らは最後まで戦ったんだな」


 ジャックはそんな晴人に優しく問いかける。


「ああ……ああ! 彼らは最後まで戦い抜いたよ!!」

「そうか……なら、いいんだ」

「ジャック! 前方から武天神兵が!!」

「クソッ! ここじゃ分が悪いっ――」


 晴人はジャックが飛び出して行こうとするのを手で制し、迫りくる武天神兵を見据えた。


「俺が道を作る。ジャックはその隙に一気に内部へ行くんだ」

「だけど「ジャック!!」


 晴人はほんの少しだけジャックに顔を向けた。


「お前は優しい男だ。だからお前はこの革命を成功させる義務がある。……チャンスはきっと一回だけだ。だから――」


 晴人は武天神兵に向かって走り出した。


「だから、優しいジャックは、俺が作るチャンスを必ずものにしてくれよ」


 轟、と爆発の重低音が通路全体に鳴り響いた。

 始まったのだ、晴人の決死の囮が。


「馬鹿野郎……」

「ジャック?」


 誰にも聞こえないような独り言のはずだったが、ご生憎近くにいたアンジェラに聞かれてしまっていたようだった。

 今の独り言を聞いていたかどうかで、次のジャックの言葉は様々な意味が込められていることがよくわかっただろう。



「全軍、ヴリテン城を蹂躙せよ――!!」

「「「「ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」」」」



 その進撃はまるで直下型地震を彷彿とさせるような揺れを伴って始まった。

 ジャックたちの革命は、折り返しを迎えようとしていた。


                ☆


「一匹たりともここを通すな!!」


 ヴリテン城内で壮絶な戦いが繰り広げられている中、城内入り口では、また一つの戦いが巻き起こっていた。


『こいつら何者だぁあ!? 武天神兵がまるで歯が立たねえ!!』

『くそったれ! このままじゃいつまでたっても中に入れねえぞ……』


 こちらは最早戦いと呼んでいいのか疑問に思うほどの一方的な虐殺だった。


「小隊長! 頑張った甲斐があってか敵は進軍を躊躇っていますよ!!」


 MSS小隊の一人が喜びの声を上げる。


「我々も頑張ってはいるんだがな……実際あそこで暴れまわっている彼のほうが我々より大幅に戦果を挙げているんだよなぁ」


 小隊長の目線の先には一騎当千の活躍を見せるカリータがいた。

 馬鹿でかい斧を軽々と扱い、それをたった一振りするだけで武天神兵は最低二機破壊される。


「あ、また一機爆発した」

「てめーらぁ! 俺たちも負けずにぶっ壊すぞ!!」

「ッシャアオラァ!!」

「やってやるぜぇ!!」


 MSS小隊もカリータに負けじと士気を最大まで上昇させる。


『くそう……どうすれば止まるんだコイツら!?』

『また一機やられたぞ!! 有り得ねぇ……』


 圧倒的な戦力差のはずなのに押されているのは武天神兵側。


『おい、お前飛べよ』

『は? お前何言って――』

『空中から城内に入るんだよ。簡単だろ?』

『いやいや、飛ぶってお前……この武天神兵って飛ぶ機能とかあったっけ』

『成せばなる』


 そう言った武天神兵はさっきまで話していた武天神兵を持ち上げた。


『待て! 冷静になれ、そして俺を降ろせ!!』

『飛んで――いっけぇぇぇぇぇ!!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! こうなったらやってやんよォォォォオォ!!』


 飛ばされたまま空中で三回転し、バッと大の字になる。このままの勢いで城の天井に風穴を開けようとした。

 その時、飛んでいた武天神兵の中にいる天使はある感覚に捉われた。


「――殺気!?」

「逃げんなよ……下劣」

「貴様っ!? どうやって――」

「――ブレイクモード」


 いつの間にか侵入していたカリータは法悦とした笑みで、手のひらサイズだった斧を武天神兵十機分の大きさに変化させた。

 斧の巨大化に耐えられなかった武天神兵は宮中で爆散する。


『チッ、駄目だったか』


 爆散した武天神兵を飛ばした彼は計画が失敗に終わり舌打ちする。


『ん? あの斧……俺目掛けて落ちてきてない?』


 彼の上空にだけ一瞬夜が訪れる。

 カリータの大斧が太陽光を遮断する程巨大になっていたのだ。

 武天神兵に乗っている彼はそれに気付くのが遅すぎた。いや、いくら気付くのが早かろうが逃れることはできなかったのだが。


『ァ――――』


 爆発爆発また爆発。


「まるで君たちは僕の玩具だ」


 カリータは極上のスマイルでまた一つ武天神兵を破壊した。


                ☆


「これが最後の武天神兵か?」


 第九部隊・第十部隊は、ジャックたちを先に向かわせこの飛行機墜落跡の武天神兵の掃討を行っていた。


『俺が最後の一人だと……? そうか……』


 そしてしばらくした後、ようやく最後の一機まで追い詰めたのだった。

 他の機体より見た目が豪華だ。どうやら、武天神兵を束ねるリーダーらしい。


「これでお前ら天使軍も終わりだな、お前らにはもうこれ以上の戦力は残っていないだろ」

「武天神兵、だっけか? 一機一機が強かったし、何より数が多かった。随分と死傷者も出たが……彼らの死は無駄にならなかったようだ」

『ハッ、余裕そうだな……』

「当たり前だ! お前にはもう反撃する武器を使うことすらできないんだからな!!」


 そう、彼の言った通り最後の武天神兵には既に両手両足が無かった。

 かろうじて爆発することもなく胴体だけが壁に寄りかかっている状態だ。


『俺を殺さなくていいのか?』

「言われなくてもそうしたいんだが……」

「うちらのリーダーの命令でな、俺たちレジスタンスは当然としてお前ら天使軍も出来るだけ殺さない様に言われているんだ」


 よくよく見ると何人か息のある天使もいる。もともと天使は堕天武装以外では死なないので他にも生きている天使は多数いると思われる。

 まあ、カリータ等にやられた天使は例外なくご臨終しているだろうが。


『優しいリーダーじゃないか……羨ましいなぁ。俺んとこのトップなんかとは大違いだ』


 武天神兵リーダーの男は突然の告白をした。


「なんだお前、反政府の天使なのか?」


 武天神兵のリーダーの言いようによってはそうとれる内容だった。しかし、


『いやぁ、俺はカーツ様の忠実な僕さ。これまでも……これからも』

「……? 何が言いたい」

『わからなかったか? お前らのリーダーとは違ってカーツ様は非情にも俺に最期の命令をしていた。俺はその命令を忠実にこなす……それだけだ』


 だんだん機内にいる敵リーダーの言動に戸惑いが現れる。


「おい……」

『俺がやれば助けてくれるんだ……ミーナも、まだ小さいアンリも……』


 その声は、泣いているように聞こえた。


「おいお前!! まさか――」



 

「――ごめんな、父ちゃん……先に逝くよ」




 天使には、強力な再生能力がある。それは天使も天使ならざる者も知っている常識だ。しかし、その再生能力も無敵ではないのだ。

 いくら再生できようが傷ついたら痛い。

 さらに、再生能力が及ばない場合もある。


 それはレジスタンスの武器、堕天武装によって致死レベルの攻撃を受けた場合、それともう一つ……体全身が一瞬で消え去った場合。

 

 完結的に言うと、飛行機墜落跡全体を巻き込む爆発が起こった。

 それによって第九・十部隊は勿論。息のあった天使もそのすべてが完全に消し飛んだ。

 これこそカーツが残した武天神兵リーダーに対する最期の命令。

 失われた魂は天界には戻らない、ならば一体どこへ向かうというのだろうか……それは誰にもわからない。

 天の使いである天使でさえも――――


                ☆


 武天神兵リーダーの爆発はカーツのいる部屋にまで聞こえていた。


「この爆発は……」

「カーツ様、現在を以て武天神兵全軍が反乱軍に降伏ししようです」

「わかっている。使えんカス共が……」


 カーツは特別性の椅子の腕置きを殴った。


「最後までとっておくつもりだったんだが、致し方ない。――そこのお前、あっちと繋げ」


 カーツは近くにいた天使を顎で使う。

 少しして、とある人物へと回線がつながる。


「――反乱軍は天界へと向かう、少しばかり早くなってしまったが……出番だ」


                ☆


 ジャックたちはヴリテン城中央の空間移動装置へと向かっていた。

 晴人もジャックのすぐ後ろについて走っている。


「なあジャック、天界へ向かうより先に手薄の総統を抑えた方がよかったんじゃないか?」

「いや、これでいいんだ。むしろ今この時こそが天界を叩く最大のチャンスなんだよ」


 晴人も今が天界に攻め入る好機だというのは理解している。何せ自分たちの力で作り出したものなのだから。

 しかし、晴人が気になったのはそれではない。


「でもこの間にカーツを殺すことだってできたんじゃないか? こんなに戦力があるんだからさ」


 ジャックはそれを聞いて悟る。――ああ、コイツは知らないのだ。


「お前がそう思うのも無理はない。確かに今ならカーツを守るほどの戦力は残っていないだろう。だけどな……アイツは多分俺ら全員の力を合計しても勝てない、絶対にな」

「は――?」


 晴人はジャックの絶対に勝てないという言葉を信じず、疑った。


「待ってくれよ! こっちにはこんなにたくさんいるんだぜ!? それがお前……勝てないって!!」


 レジスタンスの現在の総戦力は第二部隊~第八部隊とカリータ。数にして一万六千と一鬼。

 晴人からすれば彼らは最強の軍隊だ。


「カーツとだけは戦ってはならない。それは俺たちイギリス国民の間では呼吸をすることより常識的なことだ。もう一度言っておく……カーツが天界にいない今こそ俺たちが革命を果たす最大のチャンスだ」


 晴人はイギリスに来た初日のことを思い返した。

 カーツの部屋で目を覚まし、運悪くその部屋の主でありイギリスの総統でありジャックたちが絶対に勝てないと豪語した男、トロイト=カーツと会いまみえた。いや、しまっていた。

 もしかして彼から逃げ切ることができたのはとんでもない奇跡だったのではないのだろうか。

 そこまで思考が回った時、ふと体中に鳥肌が立った。


「っ!? あの扉は……」


 扉の上には親切にも『空間移動装置室』と彫ってあるプレートが飾られていた。

 ジャックは勢いよくその扉を開く、その先には――。



間章3


 親父……俺、やっとここまで来たよ。

 別に恩返しってわけじゃないんだ。俺は皆の為に立ち上がった、親父の意志は俺たちの意志だ。

 俺にはこんなにもたくさんの仲間ができた。皆には楽しい人生を送ってほしいんだ。だから俺、頑張るよ。


「総員準備は整ったか?」


 なんにせよ数が多い。

 数回に分けるべきだったかな。


「みんな準備できてるってよ」


 晴人が教えてくれた、助かる。


「最後まで気を抜くなよ。これからが決戦だ……行くぞ!」


 転送のボタンを押す。

 瞬間、声が聞こえた。


「お前がしたいことは、本当にそれだけなのか?」


 晴人が小さく呟いた。


「今――なんて……」

「時間だ。先行くぜ――」


 本当にしたいこと、だと? 何を今更……俺はイギリスの未来を按じて――


『本当にそれだけか――』


 アイツは気付いていたのか?


「ああそうさ。俺が本当にしたいのは……


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