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レボリティー・レポート  作者: アルフ
イギリス革命編
25/55

それぞれの戦場

 キャッスルオブグレートヴリテン・宮殿内部。

 レジスタンスはその圧倒的な数により、天の使いを薙ぎ払って着々と侵攻を進めていた。


「敵勢力は未知数だ、気を抜くなよ!!」


 現在レジスタンスは宮殿の外堀を制圧中だ。

 そして外堀全域の制圧完了次第レジスタンス全勢力で内部を一気に攻め落とす。


「外堀制圧完了予定時刻まで残り十分です! 各部隊予想外の反撃に対応できるように堕天武装の準備を怠らないでください!!」


 ジャックの側近が全部隊にジャックの旨を無線で伝える。


「マリアナ」


 ジャックが側近の名を呼ぶ。


「なんでしょう」

「各部隊に新たな伝達だ。――衝撃に備えろ。今すぐだ」


 ジャックは平坦な声でそれだけ言った。


「わかりました。各部隊に新たな伝達! 衝撃来ます! 備えてください! 繰り返します、衝撃に備えてください!!」


 その伝達は動揺となって全部隊に伝わっていった。

 外堀攻略中の第六部隊。


「衝撃? 一体何が起こるんだ」

「わからん、だがこれもジャックの作戦の一つなんだろう。お前らァ! でっけぇのが来るぞ、自分の身は自分で守れよ!!」


 内部侵略待ちの第七部隊。


「リーダーさん何考えてるんだろうねぇ。早く宮殿攻略してしまえばいいのに」

「そんなこと言わないで下さいよリリィさん。焦らずともこの革命は絶対に成功しますよ」

「言い切るねぇ。あんたのその自信はどこから湧いてくるのよ」

「自信じゃありません。結果の話です」

「ハァ~。やれやれだぜ……いいなぁそのスーパーポジティブシンキング」


 リリィは呆れたのポーズでため息を吐いた。

 しばらくしないうちにリリィの傍付きの少女はとある異変に気付いた。


「……リリィさん、何か聞こえません?」

「……この音は――まさか!!」


 リリィは窓から音の聞こえる方を見上げた。

 そして目撃したのは、

 晴天の大空を飛ぶ、人口の鉄の塊。



「「飛行機!?!?」」



 晴人は単独で最前線に立ち、堕天武装とデュオライフルで天使軍をバッサバッサと倒していっていた。


「なんか無双ゲーでもしてる感覚になってきたんだけど、ねっ!」


 躊躇いなく引き金を引き、何度も敵の悲痛な叫びを聞くうちに、まるでゲーム感覚に陥ってしまった晴人。


「ゲームがどうかしたのかい? 晴人」

「お前……カリータ!」

「やあ」


 最初会った時と変わらない笑顔でカリータは晴人の前に現れた。


「どうしてこんな最前線まで来てんだよ……誰も追いついてないって思ってたのに」

「それは僕のセリフさ。まあ僕の場合は天使を片っ端から排除して、気付いたらここまで来ていたってだけだけどね」


 ハハハ、と笑うカリータ。

 晴人はこの男を見てゲーム感覚になっていた感覚を取り戻す。


「いやあこれだけ自由に暴れれるのは気持ちがいいね。何もやっても今は不問だ、こんなこともね」


 主に、反面教師といった具合に。

 晴人はカリータが辿ってきた道を少しだけ見た。


「うわぁ……」


 そこには拷問でも行ったのか。と言われてもおかしくないほどの光景が……。


「おししょーさんもこんな気持ちだったのかなぁ」


 カリータの不意に洩らした言葉に晴人は興味を示した。


「おししょーさんって?」

「僕に戦術を教えてくれた人さ。義夫みたいなものだよ。名前は――」


 カリータの言葉は上空から発生した爆音に掻き消された。


「なんだ……これ!?」


 予想外の音に、晴人は両手で耳を塞ぎ叫んだ。


                ☆


 航空機パイロット室。

 地上とは打って変わってパイロット室は静寂に包まれていた。

 操縦席には一人の若い男のみ。

 彼の顔は、いろんな気持ちがぶつかり合ってくしゃくしゃになっていた。

 走馬灯だろうか……最後に浮かんだその笑顔は……。


「この攻撃が政府反撃の大きな一歩になれば……俺は満足だ」



 そして、彼の最後の戦いは――



「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!」



 ――幕を閉じた。




『緊急連絡緊急連絡、カーツ様へ。COGV中央部に巨大な民間航空機が衝突しました。被害は甚大、中央部で反乱軍を待ち構えていた兵士たちの半数が戦闘不能!』


「ちっ、やってくれるわ反乱軍の連中め。処刑のときといい、これといい……随分とコケにしてくれるではないか」


 カーツが忌々しそうに状況を映し出したモニターを眺める。


「カーツ様、報告です」

「……なんだ?」


 モニターを見たままカーツは先を促す。


「天界から『武天神兵』の使用許可が下りました。アレの登場で戦線は一変するかと」

「ようやく下りたか……ここにいるすべての者に告ぐ、城内に三十、城外に残りすべての武天神兵を配置しろ! 挟み撃ちだ!!」

「「「御意」」」

「いつまでも好き勝手やれると思うなよ、クソガキ共」


                ☆


「ジャック、今の爆音は!?」


 アンジェラがジャックのもとに駆けつける。


「アンジェラか……」


 ジャックは感情を殺したといわんばかりに冷たい声を発した。


「ジャック、これも貴方の作戦だって言うの!?」

「ああ、そうだ。……俺が指示した」

「そんなっ……!!」





 ジャックは飛行機のパイロットのことをよく知っていた。


 その男はアンジェラに惚れていた。

 それで一番アンジェラに近かったジャックに何度も突っかかってきていた。

 しかし、彼はこの革命が始まる前にジャックにこう告げたのだ。


「ジャック、お前は宮殿の外側を先に制圧しろ。俺がその隙に宮殿の中央を壊滅させる」


 勿論ジャックはその行動に疑問が浮かび、無謀だと一蹴した。

 だが、彼には覚悟があった。


「だったら教えてやるよ。俺のしようとしてること――……」


 ジャックはその計画の全貌を知ってさらに止めるように説得した。

 わざわざ死ぬためにそんなことするんじゃない、と。

 しかし彼は何も言わずその場を去っていったのだ。


「安心しろ、俺がお前らを守るからさ。だからお前も俺を安心させろ、アンジェラを……お前が守るんだ」


 その一言だけ残して。




 

「無線を貸せ」

「あっ、ハイ……」


 ジャックは側近の持っていた無線を手に取り、言い放った。


「レジスタンス全員に告ぐ。今の爆音は俺たちの同士が自らの命を賭して作り出した希望だ」


 前哨戦は終わりを迎え、本当の戦いが始まる。


「何も臆することはない……総員、進撃せよ!! 仲間の死を無駄にするなァッッ!!!!」


                ☆


 レジスタンス第四部隊。

 もうじき十八を迎える少年テトリーは戦線の後方で過剰なほど周りを警戒していた。

 まるで、敵に怯えているかのように。


「来るなよ……俺のところには絶対来るなよ」


 彼は幼少の頃、天の使いに両親を目の前で殺されている。

 そのせいで、天使たちに異常なまでの恐怖を覚えるようになった。

 その程度はとても重く、視界に天使が入っただけで血の気がサァーッと引くほどである。

 さらにこの戦場で多くの戦死者を見ることになってしまい、精神的にはもう動けなくなってしまっていた。


「この革命……早く終わってくれないかなぁ」


 そしたらもう天使に怯えることもなくなる。彼はそう思ってこの革命に志願したのだ。


「……ん? この音はなんだ……」


 彼の耳に、いくつかの音が聞こえてきた。

 その音はだんだん大きくなり、自分のもとへ近づいていることを悟った。彼はその音の主に気付かれない様にどこかへ身を隠そうとしたが、


「おー………か……危…………ろ……」


 彼は見てしまった、仲間同士で何かを話している天使たちを。


「ヒィッ……!」


 全身に悪寒が走り、その場に座り込んでしまう。


(もう、駄目だ――!!)


 彼はすべてを諦めて両目を瞑った。どうにでもなれ……そう心の中で叫んで、


「そ……て………こ……」

「…や……に…………!」


 天使の声が頭の中で反響し、全身から嫌な汗が噴き出す。

 しかし、目を開けてみると……。


「あれ、いなく……なってる」


 さっきまでいたはずの天使たちはどこかへ行ってしまっていた。


「なんだよ、ハハ……誰もいないじゃないか」


 緊張の糸が一気に解けたテトリー。


「やってらんねぇ……こんな戦場なんてさっさと退散させてもら――――」


 テトリーが後方へ振り向いた瞬間、彼は気付いた。だんだんと大きくなっていた音の正体に。


「なんだよコイツら!? 逃げてる場合じゃねぇ!!」


 素っ頓狂な声が上がった。


 テトリーが目撃したのは無機質の鎧兵だった。

 数にして約三体。

 三階建ての建物ほどはある巨大な物体がその足で大地を蹴り接近していたのだ。


「隠れないと!」


 テトリーは鎧兵の姿を確認してすぐ自分では敵わないと考えた。

 ならば彼に残された選択肢はどうにかやりすごすの一択だった。


「……」


 息を殺し、謎の鎧兵が通り過ぎるのを待った。

 しかし、鎧兵の列の一番後ろにいた最後の一人はテトリーを見逃さなかった。


「うわあ!? やめっ……!!」


 無機質なソレはテトリーをその大きな手で鷲掴みし、持ち上げた。


「うぐっ……死、ぬぅ……」


 潰されかけのテトリーにある雑音が聞こえた。


『お前はレジスタンスだな? 機械を操作するのは初めてなんでな。まあ俺の武天神兵の練習相手になってくれよ』

「て……天使っ……か」


 この状況で相手がレジスタンスと知っていて攻撃してくるのは天使軍しかいない。


『ハッ、だったらどうする。俺を殺すか?』

「……っ!!」

『できなぇよなぁ!? 圧倒的な戦力差だしィ!? 第一、お前らみたいな劣等人種風情が俺たちに勝とうって思ったことが間違いなんだよ。烏滸がましいんだよォォ!!』

「ぐァァァァァァ!!」


 天使の口調に力がこもり、テトリーをさらに強く締め付ける。


『っはははは!! 良い悲鳴だ!! その悲鳴をもっと聞きたいからさぁ……お前をさっさと殺して行かせてもらうぜ』


 粉砕する音が響いた。

 その次に、爆発。


「痛っ」


 テトリーが地面に落ちる。怪我はない。

 粉砕したのは……武天神兵の両腕だった。


『クソッ! 新手かッ!?』

「違うな、厳密には新手は貴様等だ。天使は天国へと召され消えるがいい」

『ざけん――――』


 一刀両断。

 突如として現れた英国風の男は、テトリーの目に見えぬ速さで武天神兵を二分割していた。

 その男の手にあるのは、一本の小刀のみ。


「……ありが「っざっけんなァァァァァァァァァっぁあッ!!」


 完全に破壊されて燃え広がる武天神兵の操縦席と思われる場所から怒号が鳴る。


「俺をコケにしてくれたなぁ……絶対に許さねぇぞ、貴様ァァァァァァァァァァァ!!!!」


 西洋風の剣を手に取り英国風の男目掛けて駆けだす天使。

 そして天使の剣が英国風の男に襲いかかる。


 テトリーにはそれが戦い、殺しあいには見えなかった。

 全力の形相な天使とは裏腹に英国風の男は構えすらとっていない。


「死ね、死ねッ!!」


 天使の攻撃をゆらりゆらりと躱す男。


「クソが!! 何で当たらねえんだよ!! 俺は、俺は――天界傭兵団戦闘部隊隊長、オルガ=ゴラスだぞォォォォォォォォォォ―――」


 英国風の男がニヤリと口元を歪め、ゴラスの剣を弾き飛ばす。


「説明ご苦労。俺様は差し当るところ貴様の大先輩にあたる、エルというものだ」

「だから、どうしt「遅いな」……っ!?」


 反撃を試みるオルガにエルは冷徹に言い放った。


「諦めろ。貴様は既に俺様の射程範囲だ」

「なっ」


 ドッパァと血飛沫が舞った。

 その後に、崩れゆく亡骸が一人。


「……すげぇ…………」


 圧倒的な一方試合を目撃したテトリーにはそれを表現するには語彙が足りなかった。圧倒的に、


「さてと、俺様の後輩たちがこの程度なのは残念だが……行くとしよう」


 エルは歩き始める。


「天界へ――」


                  ☆


「クソッ! 何だコイツら!! 天使軍が背後から攻めてくるなんて聞いてねーぞ!!」


 レジスタンス第八部隊隊長は背後から強襲してきた武天神兵の対応に追われていた。


「隊長! 俺たちの小隊が次々に壊滅させられています! あの謎の軍団を止めることはできないんですか!?」

「残りの部隊に伝えろ、常に多勢で戦え。あの機械兵は非常に強力だ。しかし倒せない敵ではない、一体一体確実に仕留めるんだ!!」

「了解!」


 武天神兵の参戦によりレジスタンス対政府軍もとい天使軍の戦況は変わりつつあった。

 武天神兵一体につき、レジスタンスは最低でも二十人必要である。

 さらに投入された武天神兵はヴリテン城全体を囲うように存在している。

 レジスタンス二十人が一体の武天神兵を抑えるために行動してもすぐ横にいる別の武天神兵がその行動を妨害してくる。


 状況は最悪だった。


『こちらMSS小隊! 多数の機械兵がこの場所へと進行しています! 我々では対処できません、このままでは第八部隊が全滅しますッ!!』


 第八部隊きっての戦闘部隊MSS小隊、最前線で戦っていた彼らもこのままでは負けるというほどである。


「何てことだ……仕方ない、MSS小隊に命ずる! お前たちは近くにいる他の小隊を助けながら城内まで撤退だ。誰一人として死者を出すな!!」

『しっ、しかし! 我々が撤退するということは……』


 最前線のMSS小隊が撤退を余儀なくされる。それはレジスタンス第八部隊が実質天使軍に降伏したことと同義。

 MSS小隊の彼らはそれを理解しているから簡単に撤退などしてはいけないのだ。


『我々にもプライドがあります。ここで撤退するぐらいなら……未来のイギリスに生きるであろう人達の為、最後まで戦い尽くすまでです。そうだよな、お前たち!!』

『ったりめーよ! まだまだ暴れたりねぇぜ!!』

『小隊長さんなら、そう言うと思っていましたよ』

『俺たちが引いて誰がこのメカ共の相手をするんだ? 答えはひとォォォつ!!』


 第八部隊隊長の無線越しに、武天神兵が爆発した音が聞こえた。


「お前たち……」

『隊長の撤退命令は聞けない。ですが、他の小隊の安全は我々が保証します。そして周辺の機械兵もすべて倒します! 我々に任せてください』


 小隊長はそれだけ言って無線を切った。

 視点は小隊長に移り変わる。


「俺たちMSS小隊に不可能はない!! 人間様による下剋上の恐ろしさってヤツを腐りきった天使共に教えてやるぞッッ!!」


「「「「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」


                  ☆

『あ……あぁっ……俺の武天神兵が……!』

『うぁ……逃げるんだぁ……早く逃げないと!!』

「へぇ……これ、武天神兵って言うの?」


 爽やかな笑顔で喋っている男はカリータ=コルナディオン。


「かっこいい名前だけどさぁ――」


 彼は武天神兵の倍はある巨大な斧を縦に振り下ろし、武天神兵どころか地面そのものを深く抉った。

 その衝撃が消え、辺りが静寂に包まれた頃に呟いた。


「身の程に合った名前にしろよ、屑が……」


 大斧を元の刀身に戻し、カリータは城の外側を沿うように走り出した。


「僕の目の前に現れる武天神兵は一匹たりとも逃がさないよ!」


 一匹目のターゲットは逃亡したばかりの弱虫武天神兵からだ。


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