道化たちの宴 『開幕』
残党狩り。
男は一言だけ言い放ち、飛んだ。
跳んだのではない、浮遊したのではない。羽ばたいたのだ。
「翼……だと? アイツ何者だ」
晴人は気落ちしたまま羽のある男を見上げた。
妙な神々しさを感じる。
「あっ、あの羽は……あの煌きは!」
レジスタンスの若い男は恐れ戦き、後ずさった。
「間違いない! アイツは、天界の賢者……グリフォン!!」
「賢者? グリフォン? 天界!?」
「晴人君知らなかったの?」
アンジェラは晴人が何も知らなかったことに驚いた。
「私たちが相手にしようとしてたのは、異界からやってきた侵略者……天界人だよ」
「天界……人? ちょ、急な話過ぎてついていけないんだけど……」
「うわぁぁぁぁぁ!! 来たぞ、殺される――!!」
グリフォンは晴人たちが話している間に残党狩りを開始した。
「二十三十……思ったより残っていたんだな。しかし、それもここで全員殺すのだから関係のない話……」
グリフォンの手には形容しがたい物質が握られていた。
形容しがたいというか、何も形容されていないのだ。
何も持っていない、ように見える。がしかし、彼は何かを握っているかのように拳を握っていた。
「一気に行かせてもらおう。いや、一気に逝ってもらおう」
グリフォンは居合の構えをとった。
見えない武器を持っている以上、相手の間合いがわからない。
「しゃがめ!! 死にたいのか!?」
晴人はその声を聞いて何も考えずにしゃがんだ。
しゃがんで考えた。エルさんはどこにいる? と。
「エルさん! 来てくれ!!」
「おっ? 俺様を呼ぶか、いいだろう」
「死ね――ハッ!!」
晴人がエルを刀として呼ぶのとグリフォンが攻撃を仕掛けるのはほぼ同時だった。
その攻撃はしゃがむのに遅れたレジスタンスの首を根こそぎ刈り取った。
かろうじてその攻撃を躱した者は仲間の頭が宙に舞う光景を見て唖然とした。
だが、怯んでいる暇はない。すぐに現状を確認する。
「アンジェラ!! 無事か!?」
「うん……なんとか。でも、みんながっ!」
アンジェラの無事を確認して晴人は安心する。
「お前は生き残ったやつをここから避難させろ、俺が時間を稼ぐ。あんまり長くは持たないから早く頼むぜッ!」
晴人は刀を携えてグリフォンのもとへ駆けた。
そこにアンジェラが声をかける。
「待って! グリフォンと戦うならこれを使って、えいっ!!」
アンジェラは一振りの刀を晴人へ投げた。
それを晴人はキャッチする。
「それは堕天武装。天界人と戦うときは必ずそれを使って!」
堕天武装の威力はカリータが見せてくれた。これさえあれば天界人の再生力も怖くない。
「ありがとよアンジェラ……二刀流は遊びでしかやったことねーけど、やってやる。覚悟しろよ、そこの天使!!」
晴人に天使と称されたグリフォンはようやく晴人を一個人として対応する。
「貴様、今私を『天使』と言ったな」
グリフォンは感情の起伏のない声で淡々と言葉を連ねていたが、その内はふつふつと怒りが煮え滾っていた。
「言ったけど、それがなんだ」
「私はただの天使などではない……私は天界の神を守護する『間』を持つ一人、グリフォンだ。それを貴様」
「羽が生えてるんだから天使だろ」
静かに怒るグリフォンに晴人は思っていることを素直に間髪を入れず告げた。
「なっ――弁えろよ人間風情が」
「ごたくはいいんだよ。俺は今超怒ってるんだ。レジスタンスを半壊させて、どうでもいいって感じで平気なツラァしてるお前になぁ!!」
「……そうか、貴様には私が何も感じていない様に見えるのか」
グリフォンは地面へ降り立ち、羽を背中にしまう。
「面白い――人間、名は何だ」
晴人は堕天武装の刀の鞘を抜いて、薄く笑い、構えをとった。
「テメーに名乗る名なんざねーよ。エセ天使」
「面白い!!」
グリフォンは一気に間合いを詰め、晴人とグリフォンの距離はコンマ一秒の間にゼロ距離になった。
そのままグリフォンは晴人へ見えない武器で攻撃する。
喉元への一撃、晴人はそれをブリッジをする要領でなんとか躱した。
「いきなり急所とか、危なっかしいなぁっとぉ!!」
晴人はバック転するようにグリフォンの顎目掛けて脚蹴りをした。
しかし、それはすべるように躱され、逆に蹴りを食らって晴人は数メートル後ろに吹き飛ばされた。
「いってぇ!! クソッ、エセ天使のくせに……」
「私を侮辱するでない!! 人間風情が!!」
その時、妖しい光が晴人から発せられた。
しかしグリフォンは気にせず、吹き飛ばした晴人を追撃するためにもう一度距離を詰める。
「地獄に堕ちるのだ、人間――」
見えないままの武器を振り上げる。おそらく武器と思える箇所からはキュルキュルと謎の音が響いていた。
晴人は立ち上がりながらレジスタンスが避難を完了していることを確認した。
逃げる余裕はなかった、避けることも出来なかった。
「――逝くがよい」
ズン、と重低音が広場に響き渡る。
そして、
「何言ってんだよ。逝くのも、地獄に堕ちるのもテメーだ……グリフォン」
グリフォンは、背中に刃が刺さっていることに遅れて気付いた。
「ぐっ……貴様ぁ、どうやって……」
「そんなことお前は知らなくていーの」
晴人は刺していた刃をグリフォンの右羽を切り落とすように振った。
「ガァッ!! ぐっ、おのれぇ……人間如きにこの私がっ」
晴人はグリフォンの体から抜き取った刀の血を払うように払いながら、言った。
「その人間如きにやられる気分はどうだ、悔しいか?」
「……」
グリフォンは口を閉ざしたまま何も答えない。
「それと同じさ。お前に殺されたレジスタンスの連中だって辛かったし、悔しかったし、痛かった。少しは自分がしたことの重さが理解できたか」
「……」
「まあ理解してももう遅いけど。お前は今、俺がぶち殺してやっからな……」
堕天武装の刀をゆっくりと上げる晴人。
「天使はさっさと天国にでも還りやがれ」
その刃を、振り下ろす。
「…………フフ」
晴人がグリフォンの含みのある微笑に気付いた時には、刀は既に振り下ろされていた。
「フフフ……」
カキィン! という甲高い音と同時に振り下ろした堕天武装は砕かれた。
グリフォンの皮膚に当たり、その衝撃で折れてしまったのだ。
先程聞いたキュルキュルという音が耳に入る。
そう、当たったのはグリフォンの体ではなく、彼の持つ見えざる武器だった。
「ハハハハハハ!! 私の宝刀『ラヴィナル』は貴様らの作った対天使武装を無効化する!! 我々の唯一の弱点を対策していないとでも思ったか!!」
「クソッ!」
晴人がとっさに距離をとろうとしたのをグリフォンは見逃さなかった。
晴人に、凶刃が伸びる。
「貴様は逃がさん。他の残党すべてを逃がそうとも貴様の首だけは持ち帰るぞ」
「ハッ! 勝手に言って――ろッ!」
晴人は見えない刃を直感で弾き返した。
「チィ、足掻いてくれる。人間なら人間らしく地に這い蹲っていればよい……」
「誰が……っ!?」
晴人は急に体が重くなったように感じた。
「どうした人間。動きが鈍っているように見えるが」
「そんなことねーよ。むしろピンピンしてらぁ……」
しかし、晴人はその違和感が気になってしょうがなかった。
「そうか、ならば次で最後だ」
そしてその違和感は、最悪の形で影響を与えることになる。
グリフォンは、その違和感を……唱える。
「――絶対命令……武器を下げろ」
「はぁ? 何言って――」
しかし晴人の意思とは関係なく、武器を持つ手は構えを解き、だらりと力なく垂れ下がってしまった。
「どういうことだ…‥動かねぇ!! 何しやがったテメェ!」
何度も腕を上げるために力を込めるが、しばらくしないうちに武器を持っていなかったもう片方の腕も云うことを利かなくなってしまった。
「なんてことはない、しばらく現界を訪れていなかったものでな。私の能力の一つを完全に失念してしまっていただけだ」
グリフォンは嬉々として語りだした。
「私に備えられていた現界での能力。それは『言霊』だ。ある条件下で私の言葉は人間に強制的な命令を行わせることができるのだよ」
「ある……条件下、だと?」
「そう。その条件下とは私が現界にて、その現界の人間個人に特定の感情を抱いた時だ。特定の感情は何でもいい。今回は明確な殺意だったらしい」
晴人はついに握っていたエル刀さえも離してしまう。
そのエル刀が落ちた音で、グリフォンは自分の目的を思い出した。
「おっと危ない危ない。私の目的すら失念するところだった。……人間よ、よく私と対峙してここまで生きていられた。だが、貴様の命運もここで尽きた。なぜなら、この私に殺意を抱かせたからだ」
これで最後、と宣言したグリフォンは今度こそ確実に晴人を殺すために見えない武器を腰に当て、最初に見せた居合の形をとった。
最初の時には聞こえなかった謎の音がキュルキュルと晴人の耳に響いてくる。
その音は、晴人に死を知らせに来たのか、それとも……。
「終わりだッ! そこを動くな――」
その声と同時に晴人は一度目の攻撃で首が吹き飛んだレジスタンスたちを思い出した。
そしてその時しゃがんで回避したことも思い出した。
「っ!? しゃが……めねぇ!!?」
グリフォンは現界での能力のすべてを晴人に明かしてはいなかった。彼の『言霊』に別に特定の感情などは必要ではなかった。ただ、彼の『言霊』の能力は現界の人間に効果があり、絶対命令と言葉の前につけた場合は対象を完全に自分が言ったこと通りにすることができる。
しかし、グリフォンが晴人に隠していた効果。それは、
「私の『言霊』は微弱ながら常時発動している! 貴様が急に動きを鈍らせたのも、今しゃがめなかったのもすべて私の『言霊』の効果ッ!!」
「マジ、かよ……有り得ねぇ。為す術なしじゃねえか」
これが、天界人。
レジスタンスの、敵。
その強大過ぎる力は、物量となって晴人に襲いかかる。
刹那、
「おいおい、主がこんなんじゃあこの俺様がみっともなくてしょうがないではないか」
爆発があった。
剣と刀。
質量と質量とのぶつかり合い。
押し負けたのは、グリフォンのほうだった。
「エルさん、あんた……」
「あんだよ」
「いや……」
晴人は圧倒されていた。
その理由はエルにある。
彼は、グリフォンの攻撃を片手で耐え飄々としていた。
そして、グリフォンの一撃を防ぐだけでなく押し返したのだ。
しかしそれ以上に晴人が驚いたのは、そのときのエルの体勢。
エルは、初めからグリフォンのことなど眼中になかったのだ。
比喩ではない。
そう、エルは初めから晴人のほうを向いていた。
つまり彼は、グリフォンの攻撃を背を向けたまま、さらには片手で受け止め、跳ね返したのだ。
「貴様ッ……一体……」
グリフォンが怒りを露にする。
「俺か? 簡単さ、俺はお前らより……強い奴、だ」
それは、天界人など敵ではないという意思の表れだった。
「戯言を!」
グリフォンはエルに攻撃するために地を蹴った。
「ッ……!!」
しかし、グリフォンはたった一歩分動いただけで突撃することを躊躇った。
「どうしたんだ? アイツ……」
「天の者も所詮は人だってことだ。いくら強かろうが痛みに慣れていなければ動きだって鈍る。恐らく、こいつはここまで深手を負ったのは初めてなのだろう。温室育ちもいいところだ」
見方によっては躊躇っている様子は痛みに怯んでいるようにも見える。エルさんの読みは十中八九あたりと言えるだろう。
「私を愚弄するかッ! 貴様はッ――」
その言葉はエルの投擲した短剣が彼の腹部を貫通したことにより阻まれる。
「俺様はお前に興味はないんだ、だがチャンスをやろう。一刻も早くここから消えるか、俺様に直接消されるか……さあ選べよ」
ギリッ、と歯ぎしりの音が晴人の耳に聞こえた。グリフォンのものだ。
「ぐっ、おのれ! 次に会ったら絶対に決着をつけてやる……」
グリフォンはそう言い残し、片翼の羽で飛び去った。
その様子をただ見ているだけの晴人。
エルは鼻を鳴らし、晴人のもとへ歩み寄った。
「晴人、俺様は少し知りたいことができた。俺様の気が晴れるまで自由に行動させてもらう」
晴人はエルの急な話に面食らう。
「……知りたいことって、なんだよ」
自分の相棒が一時的だが別行動を取りたい、と言っているのだ。晴人がその理由を聞こうとするのも無理はない。
「そんなこと、主である晴人にはどうでもよいことだ」
「どうでもいいって……」
「それより急いだ方がいい、レジスタンスのリーダーはイギリス政府の連中に捕まっているのだろう?」
エルのその言葉に晴人はハッとする。そして、
「――そう、ジャックは今クソ忌々しいカーツによって公開処刑されそうになっている」
始めて見る人が現れる。さっきのやつらではないのは雰囲気でわかった。
「あんたは……」
「俺はレジスタンスのリサイド=エリーだ。町の見回りをしていたら天界三賢者と戦闘している一般人がいると聞いて急いで駆け付けたんだが……見当たらないな」
「天界三賢者? あーさっきアンジェラが言ってたような……まあいいや、グリフォンって奴ならここにいるエルっていうのが――」
晴人はエルに目をやった、つもりだったのだが、
「誰もいないぞ?」
「いなくなってやがる……逃げ足はえー」
エルはいつの間にかどこかへ行ってしまっていた。
「まあ誰がどうしたなんてこの際どうでもいいんだ。それよりジャックを奪われてしまったレジスタンスは急遽次の作戦に出ることになった。一般人は危険の及ばない場所に避難していてくれ」
「おいおいバカ言うなよ。俺もレジスタンスの一員だって! ジャックを助けるためにできることをしたいんだよ」
「そういってもなあ、ここから先は正直計画もクソもない賭けみたいなものなんだ。作戦に志願したのもレジスタンスのごく少数だ。それでもやるのか……いや、やってくれるのか?」
晴人は自然と拳を握りしめていた。
「当たり前だ、こんな結末で終わらせるなんて俺のプライドが許さねえよ。奪われたものは取り戻す、失ったものは見つけ出す……そうするって決めたんだ」
リサイドは晴人の煮え滾る闘志を感じ取ったのか、「よし」と大きく頷いた。
そして、リサイドは歩き出した。
「ついてきてくれ、作戦開始まで時間が無い。急いで目的地に向かう」
遅れまいと後ろを歩く晴人が質問する。
「目的地ってどこだよ」
「処刑場だ」
リサイドは簡潔に答える。
「キャッスルオブグレートヴリテン。そこがジャックを殺す処刑場であり、俺たちの進軍開始地点だ」
ジャックの処刑まで、あと一時間。
☆
キャッスルオブグレートヴリテン公開処刑場兼宮内大庭園。
「おい、そろそろ始まるぞ」
「やっぱり政府に逆らったらこうなるのよ。無謀すぎるわ」
「バカ! そういうことはあんまり言わない様にしておけよ」
「あらいいじゃない? 恨まれることは言った覚えないけれど。レジスタンスの連中だってここにはいないでしょう」
「まあそうだろうけどさ……」
宮内大庭園はもうすぐ処刑開始時刻ということも相まってざわめきやどよめきといった静かな喧騒が起こっていた。
「まったく非情なやつらだ。今から処刑されようとしているのはお前たちの為と思って行動した強い男だっていうのに」
無論晴人もその中に紛れていた。
「目立っちゃだめよ。もう少しで始まるから」
晴人の隣ではアンジェラがひっそりと庭園内を観察していた。
それだけではない。
ここには作戦に志願した少数のレジスタンス全員が集まっていた。
「いい? 勝負は一瞬よ、私が合図したら一気にいくわ」
アンジェラは無線を使ってレジスタンスに語りかけていた。
「来たぞ! ジャックだ」
「ジャック……」
ジャックが鎖につながれたまま宮殿内から連行されてきた。
彼の服はところどころ破けていて、体も傷だらけだ。
「まだやらねえのかアンジェラ。もう待てそうにないんだが……」
ウズウズと体をそわそわさせる晴人。助けたいのに助けられない、そんな生殺しの状況が晴人にはじれったく感じられた。
「始まるわよ、処刑が……」
ジャックが処刑台に座らされる。
「総員準備はオッケー?」
アンジェラの無線がレジスタンスに行渡る。
「十、九」
執行人が台へと登り始める。
「八、七」
処刑場全体に緊張が走る。
「六、五」
公開処刑の一部始終がイギリス中に中継される。
「四、三」
晴人の額に、一粒の汗が流れる。
「二、一」
執行人の刀が、ジャックの首を斬ろうとした。
瞬間!
「今よ!!」
アンジェラが叫ぶ。その声に呼応してジャックの瞳に輝きが光る。
「うおらァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」
「うわっ!?」
ジャックは腕に繋がれた鎖を使って執行人を殴り飛ばした。
「お前ら!! レジスタンスの開始だ!! いけェェェェェェェェェ!!」
「「「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」」
見物人に紛れていたレジスタンスたちが吼える。
「クソッ! 何だコイツら!? 急に暴れ出しやがったぞ!!?」
「気をつけろ!! 堕天武装持ちだ!! 食らったらヤバいぞ!!」
「気をつけろだぁ!? ふざけんじゃねえ、レジスタンスがこんな人数だったなんて聞いてないぞ!!」
宮殿が異常な怒号ともいえる歓声に包まれる。見ると外は人の群れ――。
アンジェラの無線がスピーカーとして機能し、とある声が流れる。
『こちらレジスタンス第二部隊、作戦が開始したとの報告を受け、出陣!』
『ハリエナ率いる第三部隊も到着したよ!! そっちは大丈夫?』
『以下第十部隊まで全員揃ってます! これよりキャッスルオブグレートヴリテンに侵攻します』
レジスタンスの全体数は、イギリスに生きる二百万の意志のもと――。
『殲滅戦だ!! いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』
流れ込んでくるイギリス人口そのものの波は瞬く間に宮殿を蹂躙していった。
「俺たちも攻め込むぞ! 俺に続け……!!」
ジャックは執行人の刀を奪い高らかに宣言する。
「これが俺たちの……革命だァァァァァァァァァ!!」
「「「ジャックに続けェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」」」
処刑場はもはや処刑する側の人間とされる側の人間が入れ替わったようだった。
「俺も行かねーとな。ジャックともちょっと話したいし」
晴人は使う機会があるかと思って隠し持っておいたデュオライフルを懐にしまった。
大波乱の宮殿。
その光景を眺める英国風の紳士が一人。
「随分と規模の大きい革命になったものだ。やはり国民全員でやった方が圧倒的に成功率も高いだろうよ」
紳士、エルはその革命の渦中へと足を進める。
彼にも、目的というものがあるのだ。
「それにしても……よくできた話だ。このようなことを現世では運命、とでも言うのだろうか」
特性の短剣をプランプランと振り回し歩くその姿からは、行事ごとを楽しみにしている少年と同じ印象があった。
「天界……久しく訪れていなかったものだからな。どうなっているのか実に興味深い」




