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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
19/55

再戦

 場面は変わってエンドゲイダンス城大広場、門前。


「おっ! 懲りずにまた来たのか勇者」


 そこに着いたとたん、例のホモの声が聞こえてきた。

 アイツは門の上の方で待っていたらしい。もっと堂々としろよ、ホモ。


「よお善玉……相変わらず萎れたリンゴみたいなツラしてるじゃねえか」

「あ?」


 精神攻撃は基本だ。特に単純な馬鹿にはよく効く。ついでにこの心の声は善玉には聞こえないようにフィルターをかけてある。


「ああそういえばここに来る前に善玉っていちいち言うのが面倒だからお前今からホモ玉な」

「ふざけんな! それじゃあ俺がまるでホモみたいじゃねえか!」

「みたいじゃなくてホモそのものだろ」

「うるせぇ!! それ以上ホモって言うな!!」

「え? 何だって? もう一回言ってくんない? ホモ玉」

「……」


 そんなにお気に召さなかったか? せっかくホモな兄と差別化できるように考えたのに。


「あれ? どうしたの? 急に黙り込んじゃってさー。こっち来てあそぼーぜ!」

「……振り切れちまったよお前……」

「は?」


 ホモ玉は門の上にいるのでよく見えない。


「……メテオイースター」


 ホモ玉は何やら魔導を使ったようだ。しかし、


「何も起こらない……?」


 特に変わった様子はない。


「これはあれか? ポ○モンでいう『しかし、何も起こらなかった』状態か?」

「気をつけろよ……勇者」

「気をつけろってなにをk―――」


 呆然とする俺。

 一瞬で視界が闇一色になった。

 否、正確にはとある一色しか見えなくなったのだ。


「上を見ろ勇者」

「……」


 正直、顎がはずれるぐらい口が開いていたと思う。


「なななな……」


 ホモ玉は魔導をちゃんと発動させていたのだ。

 そう、上空には、星の数の、モアイ。


「なんじゃこりゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 ――メテオイースター。またの名を、モアイ隕石群。


「フハハハハハハハ!! 舞台は整った!! さあ始めよう勇者、楽しい楽しい、勝負(コロシアイ)の時間だ!!」


 ホモ玉は自分の背後に巨大な魔法陣を作り出した。


「喰らえ! 雷撃の聖十字――グランドクロス!!」


 十文字の雷光が俺に迫った。

 激しい稲光、例の魔導書で見たことがある。

 グランドクロスはMP45の高コスト魔導だ。ちなみにエルナがヘルドラゴン戦で使った爆鳴迅空衝撃弾道・アングレ=スクルド=オリエントドライブはMP100。これは最高コスト魔導の一つで、規格外の威力を持っている。


「だが、この程度であっさり死んでたらキリがねえんだ」


 絶大な破壊の十字を目の前にしても俺に引く、という選択肢はない。

 そろそろ、時間だ。


「いまだ!! エルナ!!」

「任せよ!!! 詠唱はなしじゃが、効果は十分!! プラネットストーム!!」


 エルナはグランドクロスの聖十字を呑み込むように魔導を発動させた。

 プラネットストームは、聖十字を完全に吸収し、結果として俺たちにホモ玉の攻撃が届くことは無かった。


「ふはははは!! どーじゃ余の魔導! 貴様の魔導を完全に無効化したぞ!!」


 喜びを露にするエルナ。しかし、彼女の頭上にはモアイが迫ってきていた。

 このままじゃエルナが潰されてしまう!


「エルナ!! 刀剣変化だ!!」

「ふぇ!?」


 状況をよく理解できないまま刀に変化するエルナ。


 ――轟ッッ!!


 エルナが変化して俺の手元に来るのとモアイがエルナの元いたところに落下してきたのはほぼ同時だった。


「助かったぞ晴人! おぬしがいなかったら余は今頃……」

「そんなことは今はどうでもいい!! 次が来るぞ!!」

「何っ!?」


 ホモ玉を見ると、神々しく輝く魔導解読書が目に入った。


「………―――」


 かろうじて口が動いているのが見えた。


「あやつ、魔導書を見るに何やら詠唱をしておるな」

「チッ、させるかっての! エルナ、火属性モードだ」

「主の仰せのままに」


 刹那、刀剣エルナは爆熱の火炎を噴きだす炎剣となった。

 詳しい説明はまだだったな。どうやらエルナのこの力は俺が知る以上に強かったようだ。


「ふんっ」


 俺はホモ玉が直線状にいる座標を斬った。

 すると、届くはずのない斬撃がホモ玉目掛けて走り出した。

 飛ぶ斬撃。マンガとかではよくあること。

 まるで花火が空中に上がっているときに出す音を鳴らしながら炎を帯びた斬撃が飛んでいる。何も知らない一般市民はこれを見て何と思うだろう。


「界明の門、衝撃の扉、無念の……っておわああああああぁぁぁぁ!!」


 直撃だった。

 よし、ホモの詠唱を邪魔できた。


「くそ~、急に火が飛んでくるもんだから驚いて詠唱が途切れちまったぜ」

「………おかしい」

「どうしたのじゃ晴人」

「アイツ、ダメージをまるで受けていないんだよ」


 ――無傷。

 ホモ玉もとい善玉は先程の斬撃を一身に受けてピンピンしている。


「どうなってやがる……」

「大方魔導によるものじゃろう。余はそのような魔導はあの本では目にしておらんが……奴らはこのゲームの製作者のようなものじゃ。余らには知り得ん魔導を扱える、ということも可能じゃろう」

「仮にあの無敵が魔導によるものとして、どうやってアイツに攻撃を与えるんだ。あの様子じゃきっとどんな攻撃も無効化しちまうぞ」


 空中からは無数のモアイ。前方からは魔導による広範囲攻撃。


「どうする……どうやって乗り切る……っ!」


 おそらくあの時も……。

 腹を貫かれたときの感覚が蘇る。生まれて初めての激痛だった。

 あんな痛み、二度とごめんだ。


「借りはキッチリ返してやるからな」

「晴人!! 上じゃっ!!」


 確認する必要はない。

 俺は真上に刀を振りぬいた。

 斬った感触があった。石を斬った感覚。モアイだ。


「このままじゃジリ貧だ、一気に攻める!」

「手立てはあるのか?」

「あん!?」


 俺は走りながら短く返事をした。


「バリアーじゃよ! 無敵バリアー」

「何だその名前」


 お前にはネーミングセンスというものが無いのか?


「余が今しがた名付けた。まあ、余のセンスについていけなくとも無理はない。所詮晴人は一般庶民なのじゃからな」

「テメー刀剣状態だからって好き勝手言いやがって」


 あとで覚えてろよ。って走ってるときは心の声で話した方が楽だな。


「ホレ庶民。善玉が再び魔導を使ってきたぞ! あれは、余も知っている……DQバギXじゃな」

「ったく、めんどくせーなぁっ!!」


 刀剣から火炎を放つ。その威力は凄まじく、魔導すら焼き払った。


「――――っ!!?」

「善玉ァァァァァァァ!!」

「よ、よお勇者、とうとうここまで辿り着いたか。だが、てめえの快進撃もここで終――」

「せいっ」


 ズバッっと断ち切った。しかし、


「効かんッ!!」


 無傷。

 善玉は前回と同じように懐に仕込んでおいたナイフで刺そうとしてきた。


「来ると思ったぜ!!」


 刀の柄でナイフをはじき、善玉の手からそれを奪い取った。


「これで、どうだァァァァァァァァァ!!」


 勢いよくナイフを善玉目掛けて振り下ろした。

 ぐにゃあ。

 その音は、ナイフの刃が変形した音だった。


「効かん効かん効かぁぁぁぁぁん!! 勇者、貴様はここで、死ね」


 無傷。


「――――っ!!」


 善玉が俺の目の前に出した手のひらには、小さく魔法陣が書かれていた。


「――神槍・グングニル」


 次に映ったのは、槍の先端。それは既に眼下に迫っている。


「(俺は、これで死ぬのか……?)」


 それは悟りのような、諦めのような……。


「違うだろ……」


 そうだ。こんなところで終わってたまるか。

 ガシッ!!

 俺は、咄嗟に手を伸ばし、確かにソレを掴んだ。

 バキッ。


「……………何ィ?」


 訝しがる善玉。彼の耳に届いた音。それは、グングニルの折れる音。


「晴人!?」


 ――予想、的中だ!!


「おい善玉。お前の罪を教えてやる……その一つは」


 俺は、手につかんでいた魔導書を善玉からありったけの力で奪い取った。


「全身白タイツのおっさんだったことだァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」


 容赦や躊躇いなど一切ない一撃を全力で叩き込んだ。

 その一撃は善玉の立っていた地面、つまり門ごと半分に斬り裂いた。



 善玉・HP――ゼロ――――――。



「もう一つの罪は、お前がホモだったことだ……」

「おぬしはホモに何か恨みでもあるのじゃ」


 ふう……辛く激しい戦いだった。


「善玉……お前たちはどうして――」


 倒れ伏した全身白タイツを見つめる。

 彼は既に物言わぬ残骸……


 ……ここにいてもしょうがないか。

 奪い取ったままだった魔導解読書を善玉の倒れ伏した傍に置いた。


「行こうエルナ。あとはこいつの兄貴だけだ」

「そうじゃな。ここまで来たら最後まで突っ走るしかなかろう」


 エルナは、既に人間状態に戻っていた。


「それにしてもこのRPGもあとはラスボスのみ、か。なかなか感慨深いものがあるな」

「頼りにしておるぞ、勇者様」

「ハッ、そもそもどうして俺が勇者なんだよ。適任なんて山ほどいただろうに……」

「そればかりは敵さんに直接訊いてみらんことにはわからんな。さあ、門もおぬしが斬り崩してしまったのだし、行こうぞ、晴人」

「ああ……」


 ホモを根絶やしにする――これは、俺にとっての聖戦でもあるのだ。

 今までの雰囲気とは一変した空間。

 妖しい、とても怪しい……俺の第六感が激しく警報を鳴らしている。

 なんていうか、こう……、


「ゲイバー?」


 そう! ゲイだよゲイ!


「って、エルナ、お前どこでそんな言葉覚えた! 俺はそんな教育した覚えはありませんよ」

「言っておくが余はおぬしより数倍はこの世界について詳しいぞ? それこそ――――」

「おしゃべりはここまでだ。来るぞ――!!」


 その時、確かに場の空気が変わったのがわかった。





 ―――――――――――――――――――ォォォォォォォォォォォォォォォォォォ


「ォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」


 とんでもないスピードで何者かは着地した。

 天空から降りてきたのは美少女ではなく、ガチムチ。


「よくぞ来た、勇者。そして」


 ガチムチは額に血管を浮かべながら、いや、その血管もすぐに千切れ、プチプチとあまり聞きたくない音が聞こえてくる。


「――よくも俺の弟を倒してくれたなあああああああああァァァァァァァァァァァァ!!!!」




 次回『EXオブジェクト』

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