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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
17/55

迫る巨竜


「エルナッ!! 回復頼む!」

「了解したのじゃ! べホイム!」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 俺は手持ちで最強の武器、グランドバスターで前方にいる複数の敵を一気に薙ぎ払った。


「よし、次行くぞ!」

「うぬ!!」


 俺とエルナは三階に続く階段を駆け上がった。

 エルナには刀にはならずそのままでいてもらっている。

 その理由は、刀状態だとエルナが魔導を使えないからだ。そのせいで一階ではすごく大変だったのだが、今は割愛させてもらおう。


「ん……なんじゃこの空間は」

「今までにもあっただろ。中ボス部屋だろ」


 階段を超えた先には次のフロアへ続く大広間が広がっていた。

 しかし、天井の配色のせいでいままで俺たちがいた城だと思えないような圧迫感がある。

 そこを少し進んだとき、どこからともなく大きな影が現れた。


「あれがこの階の中ボスじゃな!」

「みたいだな……なかなかイカす化物じゃねえか」


 それには二翼の翼があり、二頭の頭があり、二つの尻尾があった。図体は一。

 それは、翼を拡げ二双の口から空気をも融かさんばかりの炎を吐いた。

 そのものの頭上に名前が表示される。


『覚醒の双鏡竜――ヘルドラゴン・イミテーション……ヘルドラゴン・インビジブル』


「エルナ! 刀になってくれ!!」

「任せろ!」


 エルナを変身させ、構える。


「名前が二つってことは一体のように見えるが本当は二体ってオチかな!! エルナはどう思う!?」

「とりあえず切り裂くことをお勧めするのじゃ♪」

「大賛成だ!」


 ちなみに俺たちが際限なく話せるのは戦闘舞台がMMORPG形式になっているからだ。


「我流一式!! サックサクにしてやんよ!!」


 竜は口から炎を吐いて迎撃しようとした。


「エルナ!! あれ行くぞっ!!」

「じゃ!!」


 エルナの応答後すぐ、俺は竜の炎に一直線になるように刀を前に突き出した。


「アクアスプラッシュ!!!!」


 エルナにはまだ隠された新機能があった、火以外にも水も出せたのだ。

 さっさと教えてくれればいいものを、エルナ曰く本当に必要な時以外教えたくないらしい。

 ついでにアクアスプラッシュは俺が命名した。どうだ、かっこいいだろ?


「フッ、決まった……」

「調子に乗っている暇などないぞ!!」

「わーってるって」


 次に繰り出されたのは二つの尻尾による薙ぎ払い攻撃。

 俺は空中に飛んでその一撃目を回避し、遅れてやってきた二撃目の尻尾を切り落とした。


「ギャオォォォォォォォォス!!」

「させるかよ、っと」


 竜が叫んでいる隙に懐に潜り込む。敵に攻撃する暇など与えない。


「終わりだ」


 腹の下から竜の体を縦に真っ二つにした。竜は息の根を止め、腹の下にいる俺に城の天井を見せるように割れた。

 おびただしい血の噴水。


「なんかぐろいな、これ」


 その光景を眺めていたら、天井にありえないものが張り付いていたことに気付いた。


「なっ……あれは…………」


 ぎょろり、と天井が生き物のように蠢いた。


「まじ……かよ」


 天井に張り付いている物体の名前が表示される。


『覚醒の双鏡竜――ヘルドラゴン・アルタミラージュ』


「晴人! 何を呆けておるのだ!! 避けろっ!!」


 光があった。

 目を覆いたくなるような、光。

 それは収束し束になって俺に襲いかかる。


「ガアアァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!」

「!!?」


 俺はあまりの壮大さに気を失いかけていた。

 そもそも避けることなどできないのだ。範囲が広すぎる。

 『それ』から放たれたレーザーのようなもの。

 予備動作はあったはずだ。だが、竜の下にいたことでその予備動作にすら気付くことができなかった。


「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」


 回避ができないまま、俺は直撃してしまった。

 ヘルドラゴン・アルタミラージュは、巨大だった。俺が天井を見たとき目に入ったのは――いや、正確には天井など見ていないのだ。

 そう、俺が今まで天井と思っていたものは天井ではなく、ヘルドラゴン・アルタミラージュの眼球そのものだったのだ。

 その眼球が再び蠢きだす。これが意味するのは、


 閃光。

 ヘルドラゴン・アルタミラージュの眼球から二撃目のレーザーが放たれる。


「クソッ!!」


 そのレーザーをなんとか避けて走った。最初から来ることがわかっていれば何とか避けるぐらいはできる。


「策はあるのか!? 晴人!!」

「策なんてねえよ! でも眼球の真下でじっとしてたら遅かれ早かれレーザーの餌食だ、じっとしてるより動いたほうがマシだろっ!!」


 走る足を止めずに続ける。


「どうにかしてアイツに攻撃できないか!? 刀じゃ届かねえんだ!」


 あの竜を倒さないと次の階にいけない。クソッ、俺も魔導が使えたらよかったのに!


「余に魔導を使え、と?」

「頼む! エルナは今どんな魔導が使えるんだ?」

「余にはよくわからんのじゃ。晴人がみてくれ」


『魔導 ホイム・べホイム・ベホム・……』


「この辺は回復魔法ばっか――」


『アンチクロス・デザイアストーム・ファイアウォール・アルテマドレイク・……』


「いろいろ覚えてんだな」

「まあの、魔導解読書でいろいろ勉強したのじゃ!」


 いろいろねぇ……いろいろ?


「一番覚えるのが難しかった魔導はどれだ」

「どうしたのじゃ急に……魔導の欄の一番下にあるじゃろう。それが一番覚えるのが難しかった技じゃ」


 読者の皆にだけ俺がなんでこんなことをエルナに聞いたのか説明しよう。

 エルナは魔導解読書で『覚える』ことで魔導を習得していったんだ。

 簡単な話、覚えるのが難しかった魔導はその分強力な魔導、ということになる。はずだ。

 その可能性に賭けて、エルナのステータスの魔導の欄、その一番下にあった魔導を探した。


『爆鳴迅空衝撃弾道・アングレ=スクルド=オリエントドライブ』


「これだッッッッ!!!!」


 俺の封印されし厨二病の扉をこじ開けんばかりの痛いネーミング。あのホモ共もこれほどの技名を考えるとは、結構やるじゃねーか。


「エルナ、この爆鳴迅空衝撃弾道・アングレ=スクルド=オリエントドライブを使うんだ!! この技なら絶対あの巨大目玉野郎も一撃だ!」

「それの詠唱は難しいのじゃが……やってみようぞ!!」

「すぐ撃てるのか?」

「三分、いや五分はかかるぞ」

「充分だ!!」


 エルナの言葉を聞き、すぐに彼女を元の状態に戻す。そして、続けざまにエルナに魔導の詠唱を開始してもらった。

 ここからは俺の出番だ。


「さて、時間稼ぎといきましょうか! 妖怪大目玉!!」


 このRPGは特性上、敵AIは活発に行動している人間を優先して襲う傾向にある。

 それは俺が最初に戦った黒服が証明している。

 彼らは頻繁に動いていた俺を最優先に狙ってきた。勿論時点でエルナも攻撃した。

 だが、同じときあの場にいて戦闘に参加していたFRは黒服から一切の攻撃を受けなかった。

 それから考えるに、ずっと何らかのアクションを起こしておけばエルナが呪文を唱え終わるぐらいの時間稼ぎはできるはずだ。


「でも、どうやって目玉の気を引けばいい……」


 エルナが刀じゃなくなったせいで俺の主要戦力が一気に無くなってしなった。

 たった一人欠けるだけで俺は何もできなくなる……これは対策が必要そうだ。


「建国をせしめし大安の時よ、新たな時を以てそれを再び成さんとす……」


 エルナの詠唱が始まった。まだ狙われてはいないようだな。

 俺は何でもバッグのようなものから攻撃力が高いソードを取り出した。

 そのソードを握りしめ構えを取る。

 その構えは剣を振るう構えではなく、手に持っているものをそのまま上にでもなげるかのような構え。


「こんな使い方はしたくなかったんだが……南無三ッッ!!」


 俺は上空にある巨大竜の目玉目掛けてやり投げのようにソードを投げつけた。


「あれにかけた十万は無駄じゃなかった。そうだろ!?」


 随分な値段だったんだが、敵に一矢報いれたらあのソードも本望だろう。

 ソードが勢いよく飛んでいき目玉まで寸前のところまで来た時にある変化が訪れた。


「なにィ!? 遠ざかっているだと?」


 確かに俺は目玉に届くぐらいの力で投げたはず。

 しかし、目玉はどんどん元の位置から離れていき、終いには俺の投げたソードはレーザーで撃ち抜かれてしまった。


「じゅうまあぁぁぁああぁああぁぁあぁん――――――!!!!」


 ちくしょう! お前の勇姿は無駄にはしない……っ!


「こんな時に備えて買っておいた閃光炸裂弾を食らえッ!! エルナは目ぇ瞑ってろ!! 行くぞ、ボンバーーーーッッッ!!」


 閃光炸裂弾をヘルドラゴン・アルタミラージュの眼下目掛けて投擲した。そしてカッ、と圧倒的な光がこの空間を一瞬影すら存在しない異質に変化させた。


「ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


 アルタミラージュはその大きな眼球に重大なダメージを負い、錯乱したようだった。

 そして、目標を定めずレーザーを乱射させ始めた。


「やべ、逆効果?」


 汗を垂らしながらエルナの様子を窺った。エルナは、口では詠唱を続けていたが恨みのこもった眼で俺を睨んでいた。

 しかし、俺が時間稼ぎをする必要はもうなくなったらしい。


「大罪の意思、極刑の光、その身に降り注ぐは己が定めと知れ! アングレ=スクルド=オリエントドライブ!!!!」


 エルナ最大の魔導が発動の時を迎える。

 技名を唱え腕をアルタミラージュに突き出した。

 詠唱は止み、それと同時にある異変が起こる。いや、正しくは何も起こらなかった。


「おいエルナ。これって成功したのか?」


 魔導が発生しなかった。

 あれだけ大層な詠唱を長々とやっていたのに、だ。


「どうなってんだこれ。あの竜も何ともないみたいなんだけど……」


 俺はヘルドラゴン・アルタミラージュの全体像をもう一度凝視した。

 やはり、何ともないようだ。


「魔導は成功じゃ。何も問題はない」


 エルナの顔には一切の迷いがない。身を翻して出口へと歩き出した。


「成功っておまっ」


 ヘルドラゴン・アルタミラージュは確かにまだ息をしている。生きている。これでは先へと進めないんだが。


「しょうがないやつじゃのう」


 エルナは歩きながらため息を吐き、振り返ることもなくただ腕を上に掲げた。

 そして、掲げた腕をまたすぐ振り下ろした。

 それだけだった。


「行くぞ晴人」

「お、おい」


 トコトコとエルナは歩みを続ける。


「なんじゃしつこいのう。晴人殿のお陰であの巨竜を倒すことが出来ました本当にありがとうなのじゃ~。これで満足か?」

「倒したって、全然――――!!」


 俺は言葉の途中に振り返ったのだが、振り返った先には信じられない光景が広がっていた。


「消えた!? いや、収縮した……のか?」


 上空には小さくなったヘルドラゴン・アルタミラージュが見えた。いや、あれは小さくなったんじゃない。遠近法で小さく見えるだけで本当はずっと遠いところまでアイツが移動しただけなんだ。


「でもいつの間に!?」

「余が采配を一振りするだけであっという間じゃ」

「采配……?」

「これが次のフロアの扉かの」

「あ、あぁ……たぶん」


 そうこうしているうちに扉の前まで来てしまった。しかし、依然として扉が開くことはない。


「余興じゃ」

「はい?」

「折角長ったらしい詠唱まで行ったのじゃし、いまからその報酬として面白いことをしよう。と言ったのじゃ。それぐらい主なら理解せんか」

「さいですか……(余興だけでわかるか!)」

「わからずともすぐに感じれよう。しかし、その前に一つ。晴人は例の魔導解読書を読んだか?」

「いや、読んでないけど」

「そう。ならば教えてあげよう。余が先程行った魔導じゃが、あれは魔導書にはこう説明されておったのじゃ」

「?」

「爆鳴迅空衝撃弾道を対象の体、もしくは中心に発生させ内部組織からズタズタに引き裂く。と」

「oh……」


 なんて恐ろしい技だよ。明らかに対人間魔導じゃないよね。


「それだけではない。一番の特徴は……これからしようと思う。括目して見ておれ」

「……」


 エルナが遠くのヘルドラゴン・アルタミラージュを見据え、またもや腕を前に出した。

 そして、手のひらをいっぱいに開き。


「じゃ☆」


 一思いに握りしめた。


                ☆


 本来、光は音速より早くやってくる。

 雷などがいい例で、あれはピカッて光の後に音が聞こえる。

 つまり、音は光より遅いのだ。

 何が言いたいかというと、光だ。俺の目に光が映った。太陽ほど輝かしいほどではないが、それでもけっこう強い光だったと思う。

 しばらくその光を呆然と眺めていたが、もう飽きたのか、エルナが「終いじゃ」とか言いだした。


「こんなものかのう。さっさと次に行くぞ」

「……扉は……?」

「ほれ」


 扉は開いていた。やはりさっきの爆発のようなものでヘルドラゴン・アルタミラージュは完全に死んだらしい。


「さっさとゆくぞ! 間に合わなくなる前に」

「お……おう」


 あまりにもあっけない幕引き。

 俺とエルナは扉をくぐって扉を閉めた。

 そしたらその扉はパラパラと音を立て消滅した。


「やはりあの空間は異次元じゃったか。危ない危ない」

「どうしたんだよ」

「晴人は先程の爆発をどう思った」

「どうもなにも、スゲー光だなーって」


 ん? なんか自分の言葉に違和感……


「音は、爆発音は?」

「あっ!」


 音なんて聞いていなかった。違和感の正体はこれか。


「でもそれがどうしたんだ?」

「おぬしは救いようのないバカじゃのう……」

「えっ!? なんか酷い!」


 突然の罵倒。困惑の俺。


「何故あれ程の爆発で余らは爆発音を感じなかった」

「それぐらいわかるぞ。光より遅れて――――ってあれ?」

「ようやく気付いたか……」


 そうだ。光が早いからって別に音が遅いわけじゃない。いや、そもそも光はすごい早いんだけども……それでも俺たちは遅れてやってくるはずの爆音を聞いていない。

 それはつまり、あの時ヘルドラゴン・アルタミラージュが爆発して約一分ほどその場にいたが、俺たちに爆音は届かなかった。それほどまで俺たちとヘルドラゴン・アルタミラージュとの間に距離があった、ということになる。


「で、それがどうしたんだよ。音なんて遠ければ遠いほど小さくなるだけだろ」

「厳密には余が危惧しておったのは対象である巨竜を爆破した時の衝撃じゃ」

「あーなるほど」


 確かに、爆破したんだから衝撃波や爆風ぐらい来るだろうな。そこは何故か考えが及んでなかったわ。


「よいか、あの魔導。アングレ=スクルド=オリエントドライブは爆鳴迅空衝撃弾道なるエネルギー弾のようなものを対象の中心に現出させ、対象の自由を奪う技なのじゃ。そして、最終段階として対象を分子レベルまで粉々に消し去るような爆発を起こす」

「対象を粉々……」


 あのどれくらい巨大かもわからないようなやつでさえ、あの魔導の前ではなすすべがないのか。


「問題は次じゃ。対象に合わせて爆破の規模が変わる。便利な機能じゃが、今回はちと対象が大きすぎた。あのサイズを木っ端微塵にするなら、とてつもない規模の爆発になる。奴の詳しい全長は分かり得なかったが……およそこの地球の半分ほどはあったのではないか?」

「ちょっと待てい! 地球の半分て……でかすぎだろ!! ここはただのホモの城だぞ!? まったくもって入りきらないじゃねえか!!」

「余の予想ではあの場所は異次元空間のようなところなのじゃろう。だからこのRPGを作った、所謂『神』はあんな規格外な巨竜を配置させることができたのじゃろう」

「へ、へぇー。なんかもうよくわかんなくなってきた……」


 もう頭が痛い。知恵熱でそう。


「まあ要するに爆発の衝撃で死ななくてよかったね♪って話じゃ」

「最初からそう言ってくださいよ……」


 俺たちは、エンドゲイダンス城の中心を目指して歩みを進めた。

なんか中二っぽいネーミングがちらほらありますけど、発案者は私じゃなくてこのRPG世界を作った善玉、悪玉なので間違えないようにっ!



次回『最終回!? 最強の小悪党との死闘』

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