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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
15/55

謎の白タイツ 善玉登場

 エールスランディア・カンダ武具店にて――


「おっさん。一番いいのを頼む」

「へい毎度! ここで着替えていくかい?」


 答えはイエスだ。


「のう晴人。これなんかどうじゃ?」

「あー?」


 俺たちはとある武具店で魔王討伐の下ごしらえをしていた。


「んーなになに。EXオブジェクト・魔導?」


 聞いたことないなぁ。名前的に強そう。


「てんちょー、これなんなのじゃ?」


 エルナはEXオブジェクト・魔導なる本を武具店の店長に見せた。


「あーそれは魔導解読書だねぇ」

「解読書!?」


 俺は店長の言葉に驚きを隠せなかった。

 それは、


「それはどういうものなのじゃ?」


 俺が予想しているものだとしたら……。


「魔導解読書は、この世界の魔導の使い方がすべて載っている本のことだよ」


 ビンゴだ。


「のじゃー? いまいちピンと来んのじゃが……」

「俺が教えてやる。お前はさっき黒服を倒した時に、レベルアップしてホイムを覚えただろ?」

「うむ」


 エルナはステータスを開いた。


『魔導・ホイム』


「魔導? これは……」

「思った通りだ。つまり、この魔導解読書は元々レベルアップとかで経験を積まないといけない技を解読して本の所有者に魔導の使い方を教える本だってわけだ」

「おお! なるほど」


 ……にしてもすごい効果だなこの本。まるでチート級だ。

 そんな本がこの武具店に売っているとは、運が良かった。


「じゃあこれ買ってもよいかの?」

「いいぞ」


 金ならありあまってるしな。俺はエルナに所持金を使用する権限を与えた。


「てんちょーこの本一つ」

「毎度! お高いけどいいのかい?」

「いくらじゃ」

「二十万ですっ!!」


 は? 今予想外の金額が聞こえたような。


「ちょ、高すぎだろk「毎度ありぃ!!」」


 なぁっ!!?


「いい買い物したのじゃ~」

「エルナ、お前はなんてことをしてくれたんだ!」

「ん?」

「?マークしてんじゃねーよっ!! 二十万だぞ二十万! お前は金の価値を理解しているのか!?」


 能無しって言葉はこいつのためにあるんだろうきっと。そうだ! そうに違いない!


「脳はあるぞ。そんなことよりこれを見るがよい」

「なんだ。どうせ馬鹿が見るとか書いてあるんだろ」

「違うわ、ここじゃ」


 エルナが指をさしているところを見ると、そこにはある魔導の名前が刻まれていた。


「これなんて読むのじゃ? 余には残留桜城焼却雷空波ざんりゅうさくらぎしょうきゃくらいくうはとしか読めんのじゃが」

「ああ、これは残留桜城焼却雷空波フレアはだ」


 これくらい一般教養だろ常考。


「何が一般教養じゃ。一回で読める晴人の方がおかしいのじゃ」

「馬鹿言ってないで行くぞ。誰かさんが金遣い荒いから買い物する余裕無くなっちまったんだからな」

「これはきっと素晴らしいものじゃ。決して無駄などではないぞ!」

「はいはい、行きますよ。無職殿」

「何じゃと!? 余はもう怒った! 貸してといっても貸さんからな!!」

「いらねーっての」


 べっ、別に羨ましくなんかないんだからねっ。


「ニヤニヤ」

「SEを自分で出すな。見苦しいぞ」

「なんじゃ、ノリが悪いのう。心の声とは真逆に見えるぞ?」

「心の声は漏らすもの。常時の声は選ぶものなんだ」


 キリがないので俺は次なる目的地へ歩き出した。


「どこへ行くのじゃ?」

「狩場だよ」


 説明しよう。狩場とはRPGをする人によく用いられる用語の一つである。

 狩場では通常より多くの経験値をプレイヤーにもたらす特別な敵が出現するため、狩場は常に敵の死体であふれかえっているのだ。


「説明ご苦労。して、その狩場がどこなのか把握しておるのか?」

「それに関しては安心していい。この町はRPGなんだぜ? ゲームの世界ではない、現実のな」


                ☆


 エールスランディア第七地区。


「なんじゃこの人だかりは!」


 そこは様々な武器を携えた若者たちが目の色を変えてモンスターを討伐していた。


「感じろ。この空気を……」

「何を……」

「我先にと獲物に飛びつくその姿。他の追随を許さぬ武人。ポップする場所を解析し最速化させる効率厨――。ここはRPGの……いや、世界の縮図だよ」

「馬鹿なこと言っておらんで余たちも行くぞ」


 待て。


「何じゃ勇者」

「アレを見ろ」


 出来るだけ他人に聞こえないように声を潜めろ。


「アレ?」


 俺がエルナに見るように促した先には一人の全身タイツがいた。


「変態モンスターだ、きっと」


 だってモンスターに囲まれて何もせず攻撃を受けているんだし。


「よく見ろ晴人。あの男は明らかに武器を持たない一般人じゃ」

「弱いやつは死ぬ……ここは弱肉強食の世界なんだ」

「助けるぞ」

「はーい」


 エルナを刀に変えてモンスターを一刀両断する俺。TUEEEEEE!!

 つーかこの地区はMMORPG式なのな。


 説明しよう。MMORPGとは大規模多人数参加型オンラインRPGと呼ばれ、複数のプレイヤーが同じ世界をプレイできるゲームである。

 MMORPGのハマるとその中毒性により、まず昼と夜が逆転し、次に一日という単位が意味を成さなくなり、最終的にはゲームと現実が反転、廃人の誕生だ。


「おーいそこのおっさん。大丈夫か!」

「おおその声は勇者様! どうかお助けを~」

「晴人すごいぞ! あやつ――」

「ああ、わかってる」


 ――――全身半袖タイツ、白だ!!


「うおらあああぁぁぁぁ!!」


 俺は全身半袖タイツ、白を襲っている雑魚モンスターを一掃した。


「大丈夫か、おっさん」

「ありがとうございます勇者様。あと少しで私死ぬところでした~」


 全身半袖タイツ、白のおっさんはステータスを見せた。彼の残りのHPは一になっていた。


「本当にギリギリじゃのう、仕方ない。余に任せておけ」


『エルナはホイムを唱えた。善玉はHPを二十回復した』


「お前そんなことできるのか」

「フフン。こんなこともあろうかと転職しておいたのじゃ」


 エルナのステータスを見ると確かに職業が無職から魔法使いに変わっていた。


「社会復帰したのか。おめでとう、よく頑張った! DTだけど」


 ちなみにDTってのはある特殊な魔法使いになる為の必須条件である。


「その言い方だとまるで余が元ダメニートのDTみたいじゃろうが! 訂正を求むっ!!」

「わかったよ、ヒキニート」

「ニートじゃなぁぁぁぁぁい!!」

「あの……」


 全身半袖タイツ、白は申し訳ないような声で俺たちの無駄すぎる会話を止めた。

 助かる。このままじゃ終わりが見えないからな。


 俺はさっさと展開を進めることにした。


「おっさん早めに逃げろよ。武器を持っていない人にとってここは危険地帯だ」

「ですが……」

「また殺されそうになっても知らねえぞ」


 エルナも黙ってないでなんとか言えよーと心の中で呟く。ホントに便利な機能だなこれ。


「仕方ない。タイツの者、余がルー○で町まで送ってあげようぞ」

「待ってください! 助けて下さったお礼がしたいんです! どうか私を仲間にしてください!!」


 突然の話だな、実に困った。


「どうする? エルナ」

「勇者殿にお任せする」

「どうかこのとうりっ!!」

「あ~、しょうがねーなぁ。わかった! 俺がこの町にいる間だけな!」

「ありがとうございますぅ~」


『善玉が仲間になった』


 このおっさんの名前は善玉って言うのか―。アメリカは珍しい名前の奴ばっかだなぁ。


「勇者様何か言いましたか?」

「あぁゴメン。俺なんか周りの人に心の声が聞こえちゃうんだ」


 こんなふうにな。俺は柊晴人だ、あんまり勇者って呼ばないでくれ。


「おお! 聞こえましたぞ、ならこれからはハルヒト殿と呼ばせていただきます!!」

「よろしくな! ぜんだまで呼び方はあってるのか?」

「はい。善玉というのはこのゲーム上の仮の名前ですが」

「そんなことできるのか」


 リネームできるんなら俺もカックイー名前を付けたいんだが。


「晴人おぬし、ここに来た本来の目的を忘れてはおらぬか?」

「目的? そんなのあったっけ? なあ善玉」

「えっ!? さ、さぁ?」

「阿呆が……」

「今日は疲れたしもうかえろーぜー」


 帰ったら宿でロンロンミルクを一気飲みするんだ!!


「余たちはここにレベルアップをしに来たのだろう!? このままじゃいつまでたっても犯人にはたどり着けんぞ」

「まったく、エルナは真面目だねぇ~。……よし、いっちょいきますか」

「私は武器がないので安全なところにいますねー」

「すぐ戻るから待ってろ」


 さあ――――一狩り行こうぜッ!!


全身半袖タイツ、白という全く新しい属性のようなおっさん、善玉を仲間に加えた晴人たち。

レベリングのため、一帯のモンスターを狩り尽くす少年はまるで効率厨そのものだったとMMORPGの専門家は語る。




 次回『アドバンス・ジ・ソーサルウェポン』

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