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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
13/55

『情報の町』の情報屋

 七月二日。


「なあエルナ」


 日差しの眩しい昼下がり。


「なんじゃ、晴人」


 カジノから一日後。


「俺たちってさ、観光に来てるんだよな?」

「そうじゃ」

「情報の町に?」

「当たり前じゃろう」


 現在地、

 

 とある古本屋にて、

 

「観光できてねぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェェ!!」

「ひゃあっ!」


 晴人が発した嘆きの慟哭にレジにいた店員がビクッと体を強張らせた。


「五月蠅いぞ晴人。店員さんが怖がっているではないか」


 エルナは本が並べられている棚を眺めながら晴人を咎めた。

 店員は怯えた様子で晴人たちを見ていた。


「ごっ、ごめん……俺が悪かったよ」


 晴人はその店員に申し訳ない気持ちになった。


「でもこんなの絶対違うだろ、何が情報の町だよ。それっぽい奴はここにきて一度も見かけてないんだけど」

「~~♪」

「……無視ですか。エルナさん」


 何故晴人たちがこの古本屋にいるのかを説明しよう。


                ☆


 前日。カジノを出た後、彼らはまず寝る場所を探した。


「さすがに外国で野宿するわけにはいかないよぁ」

「余はふかふかのベッドでぐっすりしたい」

「そんないい条件の宿がありゃあいいんだけど……」

「うーむ。寝床一つ探すのも大変じゃのう」



 しばらく歩いて、ちょうどいい値段の旅館を見つけた二人は、とりあえずその日だけそこで寝泊りすることにした。

 問題は、その旅館での出来事である。


「エルナ、明日こそ情報の町らしいことをしようぜ!」


 彼らは、エールスランディアに訪れてから一度も情報屋に会っていない。

 ゲームセンターもモクダノルドもカジノもすべて新日本都にだってある。

 これじゃアメリカまで旅行しにきた意味がないじゃないか。晴人はそう思っていた。


「ほう、晴人はどんな情報が欲しいのじゃ?」

「それは……あれだよ、ホラ……うん。あれ」

「……」


 言えなかった。エルナには秘密にしていたのだ。

 晴人が得たかった情報はただ一つ。



「――――三〇〇〇年」


 エルナは、晴人が抱いていたその単語をさも当然のように言い当てた。


「!!? お前ッ!?」

「なんじゃ? 余はおかしなことを言ったかの?」


 エルナが口にした単語は、普通この状況で出るはずのないものだ。だってそうであろう。エルナは、それすら知らないはずだというのに……。

 しかし、エルナは確かに三〇〇〇年と言った。探る様子もなく、「まあこのことだろうな」とでも言うかのように、


「知って…いるのか……!?」


 エルナは黙秘した。答える気はないといった顔だ。


「答えてくれ!!」


 黙ったままだ。


「なんとか言ってくれよっ!!」

「……た………ろう」


 晴人は気が動転していてエルナの言葉を聞き逃してしまった。


「えっ、いま……なんて…」


 すぐさま聞きかええした。エルナは今言った言葉をめんどくさそうに復唱する。


「明日、余がその単語を口にした理由を教えてやろう。といったのじゃ」


 これが昨日の夜の出来事だ。その夜、晴人はエルナの言葉が気になって七時間しか寝れなかった。


                ☆


 晴人はエルナに言われるがまま古本屋までついてきたのだが、


「エルナ。そろそろ教えてくれていいんじゃないか」

「ああ――――三〇〇〇年か」

「っ……」


 晴人は何故かエルナがその言葉を言うだけで背筋が震え上がった。正体不明の悪寒だ。


「単語を口にするだけでこの有様とは、情けないのう」

「……うるせぇよ」

「なんじゃ怖気づきおって。知ることが怖いのか?」

「違う……」


 晴人は断固としてエルナの言葉を否定した。


「なんで……」

「なんで?」


 エルナは不敵な笑みを浮かべている。


「なんで、お前は三〇〇〇年のことを知っているんだ」


 核心に触れる一言。

 このことを知っているのは自分ぐらいだと晴人は思っていた。子供の頃に植え付けられた強烈な記憶。一片も色褪せることなくあの時のやり取りは覚えている。


 そんなことを思っている晴人とは打って変わってエルナは不敵な笑みをさらに深くした。


「三〇〇〇年とは、秘歴と認定された人類史上最悪の年のことじゃ」

「秘……歴、だと……?」

 晴人は思い返した。昔あの謎の人物が自分に伝えた言葉を、


「これから先に、先の未来に……『何か』が起こる……そう、ちょうど――」

「三〇〇〇年に、ってことか?」


 エルナは晴人の言葉を先読みして答えた。


「教えてくれ、『何か』ってなんだ。秘歴ってなんだ! 三〇〇〇年に一体、何が起こるんだ!!」


 エルナは、ゆっくりと口を開いて――



























「―――――――しらん」


「……は?」


 エルナの言葉に、晴人は耳を疑った。


「ふん、我が主は本当に馬鹿なようじゃのう」

「なっ、なんだと!?」


 エルナは深くため息を吐いた。


「簡単な話じゃ、解らないから調べるのじゃ。この状況をよく見て、考えろ。その程度のこと赤子でもわかる話じゃ」

「でもお前、秘歴って……」

「それは遠い昔に父上から聞いたのじゃ。だから秘歴という単語は知っているが、それがどういったものなのかはほとんど知らんのじゃ」


 晴人は考えた。


「(エルナが三〇〇〇年に起こることについて詳しく知らないのはわかった。だから何が起こるのかを調べに来たのか………ん?)」


 ちょっとまて。と晴人の思考が緊急停止をする。


「おいエルナ。未来に起こることがこんな埃っぽい古本屋でわかるのか?」


 晴人のこの発言で、彼はもう一度エルナに何言ってんだコイツ……みたいな目で睨まれた。


「何言ってんだコイツ」

「それもう地の文で説明したから。そんな低レベルのボケはいらんから」

「……確かに、この古本屋は埃っぽいし、薄汚いし、暗いし、えーっと、あと臭い! なんか臭い!!」


 エルナは暴言をやたら強調して言った。


「お、おいエルナ。そんなにいったら店員さんにきk「うわあああああん!!」」


 晴人が言い終わる前に店員(レジ打ち)は泣きながらどこかへ行ってしまった。


「あーあ。エルナ謝ってこいよ」

「まあ待て、もしこk「待たんよ。謝ってきなさい」」


 晴人はエルナを掴んで連れて行こうとする。

 しかしエルナは晴人の手を叩き、連行を阻止した。


「えーい、余の話を最後まで聞かんか!! 彼女には話が聞かれては不味かったから一時退場してもらっただけじゃ!!」


 プンスカ怒るエルナに、晴人は諦めたように笑った。


「わかったわかった。とりあえず聞いてやろう」


 エルナはやっと話せる、と安心した。

 言うぞ? 言っちゃうぞ? とエルナが若手芸人ばりのノリで言ってきたので、晴人は冷静にツッコんだ。


「シリアスな時のボケほどつまらないものはない」


 エルナはコホンと咳払いをして、切りだした。


「もし、こんな古本屋に……本日に限り、凄腕の情報屋が現れるとしたら……どうする?」

 

 エルナの言葉と同時に古本屋の入り口が、ガララ、と開く。


「四十分よ」

「えっ」

「私が店内の空気を読んでわざわざ店の前でスタンバッてた時間は……四十分よっ!!」

「(めんどくさそうなの、キターーーーー!!)」


 彼女の登場を表現するなら、某海賊漫画の効果音で使われる『どーん』である。

                ☆


 世の中には、二種類の人間がいる。知る側の人間と知らざる側の人間だ。

 俺、こと柊晴人はもちろん知る側の人間だ。エルナも当然。

 というか、世の中の人間は基本全員が知る側の人間だと思う。それもそうだ。人間が何かを知るという行動を自制して止めることは不可能なのだ。もし、そんなことができるのなら、そいつは神か、仙人か、死者の部類だ。

 しかし、ここで俺が言いたいのは、本当は知らなくてもいいこと、つまり、本来知らざるべきことを知っている人間がいるってことだ。その特別なことを知っている人間がいて初めて人間は知る側と知らざる側に分類されるのだ。

 おっと、前置きが長くなっちまったな。

 つまり、彼女の前では俺やエルナは完全無知の知らざる側の人間ってわけだ。


「私を呼んだのは誰かしら?」


 突然現れた彼女は誰かに呼ばれてここに来たようだ。俺が知らないんだからエルナが呼んだのだろう。


「おぬしが例の情報屋か?」

「そだよー。私はこの情報の町で絶賛大活躍中の情報屋。通り名はFR」


 通り名ってなかなか本格的だなあ。


「FRとやら、話は聞いておったな?」

「もちろん」

「そうか……」


 エルナはカジノで手に入れた金を出した。


「なら話は早い。三〇〇〇年についての情報をこの金で買いたい」

「はぁ!?」


 何言っちゃってんの!? このバカは!


「足りませーん」

「はぁ!?」


 あーよかった。金は守られた。


「足りないってどういうことじゃ」

「そのままの意味。この情報を知りたかったら国一つ傾くレベルの金を用意してもらわないと」

「何……じゃと?」

「国一つ……だと…」


 惜しかったな。昨日カジノで稼いだ分があれば余裕だったのに……。


「でも」


 何だ? FRさん教えてくれる気にでもなったか?


「でも、本当にこの情報を知りたいのならそれ相応の対価を支払ってもらう」

「対価って?」


 俺は金を払わずに済むのならそれに越したことは無い派だ。なので対価とやらを聞いてみることにした。


「この話を受けるの?」

「受けるかどうかは話を聞いてからじゃ」

「順序が逆だよ。そっちに決めてもらわないと、情報屋として困るんだよねー」


 対価すら情報の一部なのか。見上げたプロ意識だ。


「晴人……」


 言われなくてもわかってるって。


「FR。お前の話を受ける……これでいいだろ。で、対価ってなんだ?」


 FRは納得したように頷いた。


「対価。それは、この町に侵入した虫を追い出すこと」

「それだけなのじゃ!?」

「語尾荒れてるぞ」

「……それだけなのかの」

「イエス。状況は最悪なのよ」

「ずいぶんと安い条件じゃないか」


 FRが言ってた虫ってなんだろう。


「晴人の言うとおりじゃ。国一つ分はどこに行った」

「そうでもないよ?」


 ゴキブリとかは嫌だなー。黒いし、テカテカだし。


「だって、相手の攻撃は既に始まっているのだから」


「なんじゃt「イヤアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!」


 エルナの言葉に被さるように俺は悲鳴をあげた。


FRというコードネームはある法則にそって作られています。ぜひ、解読してみてください。ヒントは一番上です。場所じゃないですよ?


次回『ヒイラギ・クエスト』

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