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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
12/55

暴虐武人伝ハルヒト

「人っていうのは必ずしも最善を尽くせるわけじゃないってのが俺の持論だ。それは何故か……至極当然のこと、人ってやつは昔から過ちを犯してきたからだ。過ちを犯すことが最善か? そりゃあ違うってもんだ。過ちなんて極力犯すべきではない、未然に防ぐべきもの。もしくはそもそもから起こさせる状況にしないに限る。だが人っていうのはなかなかどうして愚かな生き物だ。愚か極まりない愚行の行きつく先が現在進行形の今なのだろう」


――では、君はもう答えを見つけたの?


「全然。ここは俺が求めているのとは真逆みたいな世の中さ。あと、俺が求めているものに答えなんてないぜ。あるのは、いつでも結果だけなのさ」


――皮肉ね。不正常な世界に不条理な存在として生きる気分はどう?


 男は、一拍おいてにやりと笑った。


「そう悪くねーさ。少なくとも(・・・・・)お前は同類だからな(・・・・・・・・・)

 そんなこんなでカジノ。

 趣味で嗜む者もいれば、本気で臨む者もいる。

 彼らは、今後を切り抜けるために一か八かの博打に出たのである。


「お、これなんかいいんじゃね?」

「どれどれ。ほう、トランプとな」


 晴人が目につけたのはトリプルアップというゲームだ。

 ルールは、


 ・このゲームは二人で行うゲーム。

 ・このゲームは五十二枚+ジョーカーの計五十三枚を使う。

 ・最初に引いた数字×十のn乗を自分で好きなように決め、その数字が自分たちの賭け金となる。その賭け金はゲームの前に支払ってもらうものとする。ただし、ジョーカーが出た場合はもう一度やり直してもらい、これをジョーカーが出るまで続ける。その後、この賭け金の決定が終わったらそのカードは戻し、ディーラーにシャッフルさせる。

 ・ゲームの進行には、一人がカジノ側のルーレットを回し、大、小、同、異の四つを決め、もう一人が五十二枚+一枚の中から選んでいく。選んだカードは元に戻さずディーラーに渡す。

 ・ルーレットで大、を引いたら元の数字より大きな数字、またはジョーカーを当てなければならない。当たった場合はダブルアップとなり、その時点での金額の倍となり、はずれた場合はそこで終了。賭け金はカジノ側が回収する。

 ・ルーレットで小、を引いたら元の数字より小さな数字、またはジョーカーを当てなければならない。当たった場合はダブルアップとなり、その時点での金額の倍になり、はずれた場合はそこで終了。賭け金はカジノ側が回収する。

 ・ルーレットで同、を引いたら元の数字と同じ数字、またはジョーカーを引かなければならない。当たった場合はトリプルスクエアとなり、その時点での金額に三乗した金額となり、はずれた場合はそこで終了。賭け金はカジノ側が回収する。

 ・ルーレットで異、を引いたら元の数字以外の数字、またはジョーカーを引かなければならない。当たった場合はスルーとなり、ゲームが継続され、はずれた場合は、賭け金をカジノが回収し、さらにこの場合のみ、今まで自分がアップさせてきた分すべてを支払わなければならない。もしそれができないようであれば、我が会社で借金が返済できるまで働いてもらう。

 ・その他、ディーラーに不正行為とみなされたものは警察に突き出すものとする。


「どうだエルナ。これで一発大儲けだ」

「余が気になるのはルーレットじゃ、『カジノ側が用意した』と書いてあるがそれはイカサマとかがあったりするのではないじゃろうか」

「それは問題ありません」


 横からヌッと現れたのは、長身痩せ型の男だ。


「このカジノはお客様の不正がない限り誰に対しても平等に勝つ可能性が与えられるように作られていますので」


 突然現れた男は流暢に説明した。


「あんたは一体……」

「申し遅れました。私はこのカジノ、ムーンライトイエローガーデンのオーナーをしております、アラモンド=サミスンです」

「店長さんか」

「そのとおりでございます」


 サミスンはこの口元をニヤリと歪ませた。


「どうですお客さん。このトリプルアップ、一つ遊んでみては?」

「晴人……」

「……おう」


 晴人は五百円をサミスンに差し出した。


「やってやろうじゃないか、トリプルアップ。この店が営業できなくなるぐらい有り金かっさらってやるよ!!」


 トリプルアップ専用テーブルにて、


「ディーラーはオーナーである私、アラモンド=サミスンが行います」


 緊張感に包まれたなか、ディーラーのサミスンがトランプを繰る。


「カードを並べる前にどちらが選択者になるか決めてください。選択者にならなかった方は自動的にルーレットの回し手になります」

「どうするエルナ」

「ここは主である晴人に任せよう」

「いや、一人で勝手に決めるのは早計過ぎる。お前の意見が聞きたい」

「余はか弱き少女ゆえ、そのような重大なことを決めることなどできぬ」

「わかっているのか? このゲームで大切なのはいかに自分の引きに自信があるかだ。俺はそんな自信皆無だ」

「余だって自信なぞないわ、第一このゲームをしようといったのは晴人ではないか」

「あのー」

「なんだと!? そういうお前もホイホイ流されるままゲームに了解したじゃねえか!!」

「それは主が言うから仕方なく…」

「仕方なくじゃねーよ!! もともとお前が筐体を壊さなかったらこんなことにはならなかったんだ!!」

「おぬしまたそれを掘り返すか! もう過ぎたことじゃろう!」

「すいませーん」


 店長は二人の間にはいろうとしたが、自然に遮られてしまう。


「本当のことだろ! 文句あるのか!?」

「そろそろ……」

「文句大有りじゃ! ありすぎて逆に辛いわ!!」

「…………(イライラ)」


 その言い合いは二十分ほど続いたそうな。


「よ、よし。じゃあ、引くぞ……」


 結果引くのは晴人になった。

 テーブルの上に並べられたカードを恐る恐る取ってみせた。

 そのカードは……

 ハートの一。


「エースですか、ならその数字×十のn乗で自分の賭け金を決めてください」


 晴人の手には五百円のみ。


「決まっている。俺は百円分を賭けるぜ!!」

「では、ゲームスタートです。そちらのエルナさんに、我がカジノがこのために用意したルーレットを回してもらいます」


 やたらルーレットを強調しているサミスン。エルナは気にせず一回目のルーレットを回した。

 結果は、


「大じゃ……」

「大、だな……よし…」


 つまり、エースより大きな数字を出せば勝ち。

 最初の勝負だ。いやがおうにも緊張が走る。


「これだ!」


 引いたカードは、


「クローバーのナイン、ダブルアップ成功です。よって、晴人さんに払い戻される金額は百円から二百円になります」


 一回目は成功。一安心する晴人。

 サミスンがゲームを進行する。


「では、晴人さん。トリプルアップ、続けますか?」


 このゲームを降りるタイミングは、アップに成功して次のルーレットを回すまでの間のみ。

 もちろん、晴人に降りる意思はない。


「続ける」


 晴人の宣言で、エルナが二回目のルーレットを回す。


「(今出ている数字はナイン。できれば次のルーレットは小が欲しい……)」


 しかし、晴人の思惑通りにゲームは進んでくれなかった。


「えいっ」


 ルーレットの結果は、


「何じゃと!?」

「くそっ、運の悪い!!」


 一回目と同様、


「ルーレットの結果は、大です。では晴人さん、どうぞ引いてください」

「わかってるよ……っ」


 晴人は早速追い詰められていた。何てことだ。

 ナインの上の数字はたったの四つのみ。枚数で言えば四×四の十六枚+ジョーカーで十七枚だが、それでも確率はあまり高いとは言えない。


「すまぬ、晴人……」

「いや、エルナは悪くない」


 このゲームは晴人の引きの強さにかかっている。一回目のときだって、ナインではなく同じ数字のエースを引く可能性はあった。


「当ててやるさ」


 このゲームに勝たないとお先真っ暗だ。我が家に帰れるかも怪しい。二人にとっては文字通り、人生がかかっているのだ。


「来いッ!」


 晴人は自分の勘を信じてカードをめくった。その数字は!


「スペードのキングです。ダブルアップにより、払い戻される金額は倍の四百円となります」

「あっぶねー。なんとか勝てたか……」

「次こそは簡単なのを射止めてみせるのじゃ」

「ああ、頼むからまた大は勘弁してくれよ」


 もし、また大になったらそれこそ終わりだ。何せジョーカーしか当たりがなくなる。晴人からしたら是非ともやめていただきたいところだ。


「続けるのですか?」


 サミスンはおちょくるように聞いてくる。まるでもう諦めたらどうだ、と言っているかのようだ。

 しかし、晴人たちはこの程度で諦めるわけにはいかない。


「当たり前だ」

「では、エルナさん。次のルーレットをどうぞ」


 三回目のゲーム。


「そりゃ!」


 次の条件は……


「なっ……これは……っ!!?」


 エルナは驚きの声を上げた。


「これは珍しい」


 サミスンは頬を緩ませ呟いた。


「おい……これって、まさかっ!?」


 ルーレットの針が指示したのは……『同』


「始まりました! このトリプルアップの真骨頂。同の条件です!!」


 来てしまった。同の選択。それはつまり約五十分の三の確率を引き当てろ、ということだ。

 ざわ…ざわ…

 サミスンの声に反応した他の客がちらほらと晴人たちのゲームを観戦し始めた。


「晴人さんがキングを引き当てたらなんと! 六千四百万円もの大金が得られることになります!! 果たして彼は初の勝利者になることができるのでしょうか!!」


 サミスンの口調が解説気味になっていたが、正直晴人にはそれを聞く余裕がなかった。


「あ、あぁ……なんて余は引き運がないのじゃあ………」


 エルナがぐにゃあと歪む。しかし、


「いや、これはまたとないチャンスかもしれない……」


 顔面を蒼白にさせながらも、晴人は……晴人の眼はまだ希望を捨ていなかった。


「バカ言えっ!! こんなものできるはずがなかろうっ!? この山のようなカードの中から残り三枚のキングを当てるのじゃぞ!!?」


 無理じゃ……無理に決まっている………っ!!

 エルナが頭を抱え込みながら声にならない声を上げた。


「ハハッ、簡単なことさ……またキングを当てるだけだ……余裕余裕。フフッ」


 晴人よ、その自身はどこから湧いてくるというのだ。

 観客が晴人の選択を固唾をのんで見守る。

 ざわ…ざわ…


「さあ早く引いてください。私としてもこのゲームの結果が少し気になっているのですから……」


 満面の笑み。それは今までこの『同』の選択を成功させた人が誰一人としていないということを晴人に強烈に知らしめた。


「晴人っ!!」


 まるで神にでも祈るかのようにエルナが彼の名を呼んだ。


「いいかサミスン」

「なんです?」

「俺の勘はよく当たるんだ……悪いな」


 晴人はサミスンに謝罪をした。


「なっ、なぜ謝る!? この状況で!!? どういう神経をしている!!」

「……」


 晴人の顔には焦りの表情。どうやら晴人自身も何故焦っているのかよく理解していなかった。

 ざわ…ざわ…ざわ…

 彼の行動の不可解さにギャラリーたちがどよめいた。


「………」


 晴人は無言のままカードの手を伸ばした。


「当ててくれ晴人……ッ!!」


 そのカードは……






 ジョーカー。




          ざわ… 


     ざわ…ざわ

       

    

        ざわ。



「なっ!!」


 サミスンは泡を噴きかけた。


「やりおったわ……晴人が!! やりおったぞ!!!!」


「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」


 エルナの言葉を皮切りにカジノ全体は狂乱と歓声に包まれた。


「おい!! あのジャパニーズボーイがとうとうあのトリプルアップを攻略しやがったぞ!!」


 その男の声で店の中にいる客の全員がこのトリプルアップ専用テーブルに集まった。


「マジ……か……?」


 晴人はあまりの出来事に頭が混乱していた。

 しかし、そんな混乱はあっという間に吹き飛んだ。


「やった! やったぞ!! つーことはさっきは四百円だったから、その三乗の……」

「六千四百万……」


「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!! 大金!! なんという額だ!!」」」」


「でかした晴人!」


 エルナが晴人に駆け寄る。


「エルナ……まだだ。まだ勝負は終わっていないぜ」

「?」


 エルナには晴人の言っている意味がよくわからなかった。

 だが、


「なあ、サミスンさんよ?」

「ヒィッ!!!」


 サミスンは体を痙攣させていた。まさか晴人がトリプルアップを成功させるなんて想定の範囲外だったのだ。

 しかも、


「早くゲームを続けようぜ。エルナもそう思うだろ?」

「あ、ああ――ハッ! なるほど! そういうことか!!」

「また同とかやりたいな~。あれ、けっこうスリルあったしぃ~」

「ぐっ……させんッ!! 絶対にそんなことさせんぞ!!!!」


 サミスン。いや、カジノ側としては状況は最悪。理由は簡単だ。

 先程晴人が引いたのは一体何のカードだった?


「店側としては不味いよなぁこの状況。だって」

「っ~~~~」

「だって――――俺がさっき引いたのはジョーカーだもんなあ」


 ざわあ、ざわあ。ざわあ。


 観客が波立つようにざわめいた。

 いや、実際観客は波になっていたと思う。


「……エルナ。頼む」

「承知」


 エルナは無慈悲にもルーレットを回した。


「あ…あぁ……あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~」


 結果は、『同』


 サミスンと、その他従業員はぐにゃあ、と歪みの限りを尽くした。

 晴人は、鼻で人を一突きできるほどまで成長していた。


「どーれにしよっかなー」


 晴人の手は一切の躊躇いもなくカードをめくった。

 ダイヤのセブンだった。


「」


 サミスンは倒れた。失神だ。


「(父さん母さん。俺、世界一にの金持ちになれたよ……!)」

「えっと、いちじゅうひゃくせんまん……えーいめんどくさい!」


 数えるのも億劫だ。

 その数、二穣六千二百十四杼四千垓円。単位がわからない人は『お金の桁』でチェケラ。

 晴人っ…。

 勝利っ……!

 圧倒的勝利っ……!

 サミスンっ…。

 敗北っ……!

 人生的敗北っ……!


「さあサミスン。出せっ……! 金を…出せ!!」

「ブクブクブク………」


 サミスンは依然泡を噴いたままだ。


「サミスン!! 俺は、勝った。俺はっ、勝ったんだぞ!! このゲームにっ……!」

「晴人……」

「カニみたいにブクブクさせやがって……そんなんで責任を逃れられると思ってんじゃないだろうな?」

「ブクブクブク」

「ざけんなっ! 賭けは賭けだ!! 潔く、出してもらおう……。一十百千万十万百万千万……!」

「うぅぅぅ……」

「一億十億百億千億、一兆十兆百兆千兆い――」

「うあああぁぁぁぁあああぁぁぁあっぁぁああっ!!」


 サミスンはとても人間には出せないような声で喚いた。

 ざわ。ざわざわ。わさわさ。

 晴人の鬼気迫る声色に観客たちもざわざわを隠せない。ざわざわせざるを得ない。わさわさ。


「はっ、晴人。もうよ「もういいだろ」じゃ?」


 エルナの言葉に割って入ってきたのはさっきまで見ているだけのギャラリーのうちの一人。

 見た目は三十代半ばといったところか。体つきは東洋の男性のようで、ややボサボサな髪の毛が特徴的だった。


「誰だあんた。悪いが、関係ないやつは引っ込んでてくれない?」


 男は、軽く笑いながら晴人の前まで歩いてきた。


「関係なくはないさ。だって君、この店を経営難にしようとしてるじゃん」

「そんなこと知ったことじゃねー、賭けに勝ったんだから当然のことだろ」


 晴人の言い分は理に適っていた。彼は賭けに勝ったのだ。


「俺としてはここが潰れてもらっちゃあ困るんだよね。ここ、お気に入りなんだ。他の奴もそうだ。君たちもこのカジノは好きだろ?」


 男は、晴人ではなく観客たちに同意を求めた。


「そーだそーだ」

「稼げるとこはここぐらいしかねえんだよぉ」

「オーナーがかわいそうだろ!」


 観客たちは男の意見に概ね同意らしい。


「それに君たち、未成年じゃない? ダメだよ~子供だけでこんなところに来たら」


 痛いとこを突かれた。晴人はちっ、と小さく舌打ちした。


「……ああ確かに俺たちは未成年だ。子供だ。だが、それが理由でゲームの結果をうやむやするのはお門違いじゃないのか?」

「そ、そうじゃそうじゃ! 余たちはお金不足で今日の寝どこすら危ういのじゃぞ!」


 男がエルナの言葉に反応した。


「なんだお前たち。金ないの?」

「そうだよ。だからなけなしの有り金で賭けに出たのさ」

「ふーん。で、結果がこれか」

「そうだ」

「へ~。子供のくせによくやるなぁ」


 男は心の底から感心したような声を上げた。

 そして、そのまま一つの提案をした。


「まあ勝ったのは本当だし。こうしよう、今ここにいる全員が今日勝った分を少年たちに譲り渡す。これで手を打ってくれないか」


 ざわ、


「余はそれでよいと思うぞ」

「エルナ?」


 以外にも、エルナは男の提案に肯定的だった。


「第一、一人間が馬鹿みたいに金を蓄えても無駄じゃ。晴人如きがそのような大金をうまく使えるわけがなかろう」

「なっ!?」

「わからんか晴人。人間には一生のうちに使える金の量は決まっている、そう言っておるのじゃ」

「……」

「今回余たちは運よくカジノで勝ち、大金を手に入れることになった。しかし、その大金は余たちには扱いきれぬ長物じゃ、このオーナーも同様に」


 サミスンはいまだに気絶したままで目覚める気配はない。


「ならばこの男の提案に乗ろうではないか。しばらく食事に困ることもなく、このカジノに恩も売れる。一石二鳥ってやつじゃ」


 忘れていた。

 本来エルナは主人である晴人よりもずっと聡明なのだ。

 今の今まで、晴人はそのことをすっかりと忘却していたのだ。

 そのエルナがここまで言うのだ。何を疑う必要がある。


「(文句なし……だよな)」

「お姉さんいいこと言った! 現代にもわかるやつがいてくれておじさんは嬉しいよ」

「もっと褒めてよいぞ? ホレホレ」


 やっぱバカだ。


「エルナ、調子乗りすぎ」


 晴人はエルナの額を軽くチョップで叩いた。


「いたっ! うぅ~、調子になど乗っておらんわ!」


 そこで男がストップをかけてきた。


「少年。決定権は君にある……君は、どうしたい?」

「俺は……」


 ざわ、

 晴人は笑顔で答えた。


「あなたの意見に賛成します。えーっと……」

「南上……南上東城なんじょうとうきだ」


 南上は、晴人に手を差し出した。


「南上さん、あなたに止めてもらえなかったら大変なことになってたかもしれない。ありがとうございます」


 晴人は、その手を握り返した。


「受け取れ、これは俺たちが今日ここで勝って手に入れた金だ」


 そういって南上は約束通り金を晴人に渡した。

 総額、四十八万円。


「じゃ、ガキはさっさと帰りな、ここは大人たちの憩いの場なんだ」


 南上は笑いながら言った。


「言われなくても帰りますよ。ノルマは達成したんですし」

「ハハハ。それでいいんだ」

「それでは、ありがとうございました! さよなら」

「これでいいのじゃ」

「お前が締めるな! 元々はお前が……」

「よいではないかよいではないか~」


 二人はカジノを後にした。

 晴人たちが去った後のカジノ――。


「さよならじゃねぇ。またな、だ……」

「ん? どうしたんですか? 南上先生」

「いいや、何でもない」


 南上は失った分を稼ぐためにパチンコの台に腰を下ろした。


「(少年……お前とはまた会いそうな気がする)」

『それでも僕は、お前を倒す!!』パンパカパーン!


 大当たりだ。

 そう、このカジノは不正がない限り誰にでも、勝つ可能性が平等に与えられているのだ。



次回『情報の町の情報屋』

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