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レボリティー・レポート  作者: アルフ
情報の町編
11/55

序章

「はっ、はっ、はっ……」


 長い長い回廊を止まることなく走る男が一人。

 走るリズムにあわせてガシャンガシャンと音が鳴る。身に着けている武器のせいだ。


「はぁ……はぁ……ふう。……よし」


 彼はようやくたどり着いた最後の扉を、息を切らしながら開いた。


「眩しいな」


 そこは、完全な完璧が揃っている空間だった。


 優雅で壮大で均一で究極。

 神々的で無機的で神秘的で排他的。


「俺はここまで来たぞ! いいかげんアイツを止めてくれないか!」


 彼は誰がいるかもわからないこの空間に声を響かせた。


「おーい! 出てこいよー!!」


 必死に呼びかけるが返事は帰ってこない。


「誰もいないのか? やっとここまで来たってのに……」


 関係ないが、彼は赤が基調の服を着ていたように見えた。

 しかし、その服の本来の色は無地の白。

 変色した白の服が意味するのは……。


「ん? 何だあれ……ダメだ、ここからじゃよく見えん」


 彼が見た壁に張り付いているプレートには大きくこう書いてあった。


「ようこそ、天神の間へ」

「――っ!」


 彼がその声に気付いた時には、すでに体の四肢が切り刻まれていて、人間とは呼べない肉の集合体へと成り果てていた。


「それでは、私はこれで」

「うむ」


 『彼』を切り刻んだ男は一礼し『彼』が開けて入ってきた扉の奥へ戻っていった。

 そして、この天神の間と呼ばれた空間には血だらけの『彼』と、人と呼べるかすら怪しい男の二人だけとなり、完全な完璧が揃っている中に一つの障害として未来永劫残っていくことになる。


 そう、ここはもう完全な完璧ではなくなってしまったのだ。

 七月一日某時刻、さんさんと太陽の光が降り注ぐ。


「ふ~、天気は良好。温度は快適。絶好の観光日和だな」


 どこにでもいそうな高校生、柊晴人は太陽に手をかざしながらつぶやいた。

 彼らは晴人が当てたアメリカ招待券で、七十二州の一つ、バクトルディア州のエールスランディアという町に来ていた。


「晴人よ、どこに向かう?」


 金色の髪。薄いオレンジ色の瞳。そしてとてもアメリカには似合わないような服装、というかどこに行っても浮いてしまうようなゴスロリの少女。エルナは、手に持った旅行のすゝめなるパンフレットを眺めつつ観光先を考えていた。


「あ~腹減ったし食事をとれる場所がいいなぁ」

「そうじゃのう……おっ! ここなんてどうじゃ。えーっと、ナイアガラの――」

「そこは滝だ! 行っても水しかねーよ多分。それにここから何キロ離れてると思ってやがる」


 ここはアメリカの中でも辺境の地。ナイアガラの滝はここから真上にずっとずーっと行ったところにあり、とても気楽に行けるような距離ではない。


「なんじゃ、余は滝とやらを見てみたいぞ! ぷんぷん」


 頬を膨らませ、エルナはぷんぷんした。


「あれ? お前キャラ崩壊してね?」

「気にしたら負けじゃ」

「あ、そう」


 人間だれでもついボケてしまうこともあるだろう、そこは仕方ない。だがエルナは人間といってもいいのだろうか……。晴人は心の中で至極どうでもいい葛藤をしていた。


「ここなんていいのではないのじゃ?」


 パンフレットを晴人に見せながら行きたい場所を指でさす。しかし晴人はパンフレットには目もくれずに思ったことを口にする。


「その語尾はちょっと無理やり感があるぞ」

「むむ、そうなのじゃ?」


 エルナは首をコクッと横にして頭に?を浮かべた。


「やめろやめろ! あざとい真似はするな! お前がそんなことして喜ぶのはうちの姉貴ぐらいだ!」

「なっ!?」


 エルナの背筋が凍った。先ほどまでの余裕は消え、冷や汗を垂らして膝を振るわせる。顔は青ざめていて、頬は不自然に引きつっていた。


「よっよよよ、余は、よはぁ……!」


 目じりに涙を浮かべるエルナ。晴人の顔を見るが、自然と涙目上目使いになってしまい、晴人に言い知れぬ罪悪感が襲いかかる。


「ごめんごめん。そんなに引くことは無いだろ。さすがにねえちゃんがかわいそう……でもないか」

「晴人は知らんのじゃ! あれの本当の怖さが!」


 うひひひひ! アルメリア様ぁぁぁぁ―――……と聞こえたような気がして、エルナはさらに身震いした。どんだけ晴人姉が怖いのだ。


「とにかく! 余はこのネズミ―タウンという場所に行ってみたいぞ!」

「はいはい、じゃあどこに行こうか、うーん。もうめんどくさいしモックでいいや」

「余の話を聞くのじゃ!」

「あー聞いてる、聞いてるですじゃよー」

「じゃ、の使い方が違うのじゃーっ!!」


 晴人はさっさとモクダノルドなるファストフード店に入っていった。


「ちょ、余を置いていくなーっ!!」


 エルナは晴人の後を追ってモクダノルドに入店した、念のために言っておくが、マク○ナルドとは一切関係ありませんので、この物語はフィクションです! 実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません!!


   ・

   ・

   ・

   ・


「アイツらか……」

「ああ、間違いない」


 明らかに怪しい二人組はモクダノルドに入っていく晴人とエルナを物陰から盗み見ていた。


「絶対にミスは許されん。絶対にだ」

「わかってるって、兄貴」

「そうと決まれば早速アジトに戻って作戦会議だ! 戻るぞ、弟よ」

「おうよ兄貴!」

「「フハハハハハ!!」」


 二人は激しく高笑いをした。その結果、


「何あの人たち」

「きっと薬をキメてるんだ。近寄っちゃあいけない」

「彼らに幸福があらんことを。アーメン」

「ママーあの人たちだあれ?」

「見ちゃいけませン!」

「でもあの人たちたのしそう」

「見ちゃいけま―せン!! 行くわよ坊や」


 二人はゴミを見るような冷たい目線に晒された。中には携帯を取り出している人も。


「あのー警察ですか。はい…はい。そうです。不審者がデスネ」

「おっ、覚えてろよ! 柊晴人!」

「借りはきっちり返してやるからなぁー!!」


 そんな雑魚いモブキャラのような捨て台詞を残してモブ・ブラザーズは去っていった。




「ありゃ?」

「どうしたのじゃ晴人」

「いや、俺の名前が呼ばれた気がしたんだけど」

「そんなことあるわけなかろう。ここはアメリカなのじゃぞ?」

「そうだよな。ま、俺の聞き違いだろ」

「そんなことよりこのハンバーガーなる食べ物はまことに美味じゃ! これは神が余に大食いキャラになれ、と告げているのじゃろうか……」


 ハンバーガーを頬張りながら喋るエルナ。晴人はそんなエルナを優しく諭す。


「お前に大食いキャラは似合わんよ。普通が一番だ」


 もし大食いキャラになったら俺の姉ちゃんとキャラ被るし……と晴人は心の中で付け足した。


「そうかの。ならばよいのじゃ」

「あれ、案外すぐ引いたな。ってかお前って飯食うんだな」

「当たり前じゃ、余は主の武器であると同時に人間でもあるのじゃ」


 説明しておこう。エルナはもともと晴人の武器として現界している人非ざるもので、元は晴人の家の深くに直し込まれていたネックレスだったのだ。それを知っている晴人は、エルナが食事をとることができるということにふと疑問を抱いたのだ。


「人間ができることは余にだってできるのじゃ」


 エルナはハンバーガーを一気に平らげた。


「だから食事もするしお風呂にも入る、無論疲れたら休息を取る。人間とはそういうものじゃろう?」

「へー、もともとネックレスだった割にご苦労なことで」

「そう思うならもっとずっと余を労わぬか。ほれ、さっさと次の場所へ行くぞ」

「わかりましたよ。お姫様」


 晴人とエルナはモクダノルドを後にした。


                ☆


『次の曲を選ぶドン!』


 晴人は筐体から発せられた音声通りに次の曲を選んだ。


『さあ、始まるドン!』

「よーし、いくぞ!」


 彼がやっているのはドラムの鉄人。ゲームセンターに必ず一台はある有名なリズムゲームだ。

 メロディーが流れ始め、それに合わせて音符が流れてくる。このドラムの鉄人はその譜面通りにドラムを叩くゲームである。

 太鼓の達人? なにそれ美味(ry


「ふははは!! 俺にかかればこの程度の音ゲ―など朝飯前だ!!」


 常人では早すぎて手が追い付かない最高級の難易度・鬼。

 晴人はその鬼の中でもさらに別格の難易度を誇る曲。【シャイニングデイズ~ハルマゲドンの祈り~】という曲をプレイしていた。


「ここのゲーセンの曲はこれが一番難しいのか!? 足りねえなぁ、全ッ然足りねえなあッ!!」


 晴人はこのドラムの鉄人をこよなく愛し、前回行われた全国大会で銀のメダルを獲得することができるほどの猛者である。


「なんだなんだ? ……これはっ!?」

「この譜面はベリーハードなやつじゃねーかYo それをこいつ、千コンボだぜ!? ハンパねぇな!」

「イッツ ア ワンダフォー!!」


 晴人の天才的なプレイを一目見るためにゲームセンターにいた人たちはこの筐体の周りに殺到していた。


「見てろ、アメリカンのにーちゃんねーちゃん!! これが俺の、アイアンヒューマンウェイだッ!!」

『フルコンボだドン!』


 一回のミスすらしなかったということを伝える音声が、今確かに響き渡った。


「「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」」


 観客は一気に盛り上がった。大人も子供も、男も女も、みんな晴人を祝福した。


「はっはっは!! センキュー!」


 コンボ数、千九〇〇。


「センキュー!! ベリーセンキュー! おいどーだエルナ。おれの素晴らしいドラム捌きは……っていねーしっ!」


 一方その頃エルナは。


「うらあああァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」

『アッー!! 五百㎏だ』

「っしゃあ!!」


 パンチングマシーン。蒼天のツナギなるゲームをしていた。


『ランキング一位じゃないか。いい突きだ』


 画面の向こうのいい男がエルナのパンチを褒め称える。


『どうだ、俺とやらないか』


 言いながら画面の向こうのいい男は、ツナギのチャックを降ろしていき―――


「うわあああああああああああ!!」


 エルナは音声に拒絶反応を示したのか、猛烈な破壊音とともに筐体をぶっ壊した。


「ちょっとお客さん!! そのようなことは困るんですが!!」


 その音にゲームセンターの店員が飛んできた。


「だっていきなりあんなこと言われるから……」

「あれはゲームの仕様です」

「なんじゃと!?」

「ああもう。ほら、ちょっと来なさい」


 店員に連れて行かれそうになったエルナは焦った。


「待て待て、待つのじゃ。余は晴人という男と一緒に来ていたんじゃが」

「ああ、あそこの……」

「?」


 店員が目をやった先にはドラムの鉄人がある筐体。そこで、周りからハールヒトッ、ハールヒトッ、と称賛の声を受けていた一人の少年だった。


「そうそう! あのハールヒトッじゃ!」

「よし、ちょっと連れてくるから待ってなさい」

「仕方ないのう」


 まもなく二人は事務所へ連行された。



 ☆次の曲を探すドン!☆



 夜の繁華街にて、


「なあエルナ……」

「なんじゃ晴人」

「なんじゃ、じゃねーっ!! お前が筐体壊したせいで俺たちは一文無しだよ!! どーすんのこれから!? どーやって帰るの!!?」


 あの後、晴人とエルナは弁償代を要求され、その結果、全財産のほとんどを失ってしまった。


「ん?」

「ん? じゃねえよ!! お前のせいで俺たちは野垂れ死に確定なんだよぉ!!」

「なんと!」

「あああああ!! 金が無いとどうも出来ねえぞ、くそー」

「のう晴人」

「なんだよ」

「おなかすいた」

「俺もだよ!!? 一体誰のせいだと思ってやがる!! テメーのせいだぞテメーの!! 金、金金金が欲しい!!」


 もはやなりふり構ってはいられない。なんせ、今夜の寝どこにも困っているのだから。

 晴人が狂乱しながら夜空に吼えていると、エルナに指でつつかれた。


「あれはどうじゃ」

「あん!?」


 エルナが指差したのは、煌びやかな建物。


「一攫千金か……」


 夜の街を黄金色に染めるその豪快な佇まいでそれは建っていた。


「一発かけてみるか」


 カジノ、ムーンライトイエローガーデン。


「行くぞ、大賭博の……開始だ!!」

「おー」


 二人に残されたのは、わずか五百円相当。勝て晴人! 負けるな晴人! 君の鼻はまだ、尖がり始めたばかりだ!!

久しぶりの投稿です。

これから二日に一度のペースで新編を投稿していきたいと思います。


次回『暴虐武人伝ハルヒト』

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