表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レボリティー・レポート  作者: アルフ
新日本都編
10/55

エピローグ

「じゃあ、ねえちゃん。俺もう行くよ」

「うん。アメリカなんて滅多に行けないんだから楽しんできなさい」

「わかってるよ」


 晴人はこの日、アメリカ行きの便に乗ることになっていた。例の招待券は今日のみ有効なのである。


「やっと解放される! 余はいい気分だ。これほどすがすがしい朝はない!」


 エルナは晴人姉から離れることを心の底から喜んでいた。だが、


「え? アルメリア様はここに残るんですよ?」

「は?」

「そうだぞ。この招待券は一人専用だからエルナはいけない」


 世界はエルナを許さなかった。


「なんじゃと!? 余の主は晴人じゃ! 余は主についていくぞ!!」


 駄々をこねるエルナはまるでおもちゃを買ってもらえなかった子供のようだった。


「アルメリア様……私では駄目なのですか?」


 晴人姉はエルナに上目使いで訴えた。うるうるしてる。


「そういう話をしておるわけではない! やめろ、そんな目で余を見るな!!」

「仲いいなお前ら」


 晴人はじゃれあっている二人に背を向けて空港へ歩き出した。


「待つのじゃ晴人!! 余を一緒に連れて行かんか!」

「じゃあお前どうやって飛行機乗るんだよ。言っておくが俺は飛行機代なんて持ってないぞ」

「それについては大丈夫じゃ。ほれ」


 ポンっと音が鳴ってエルナはこの間のように刀になった。


「どうじゃ! これなら料金は掛からないじゃろう」

「わあすごーい! アルメリア様が頭に直接語りかけてる!」

「金は掛からないけど、これじゃあ危険物ってことになって持っていけないんだけど」

「くそっ! ならこれはどうじゃ!!」


 次にエルナが変身したのは晴人が姉から預かった時と同じ姿。十字架のネックレスだった。


「これなら文句はないじゃろう」

「そんなにねえちゃんが嫌いなのかよエルナ」

「むろんじゃ」

「おねえちゃんショック!!」


 晴人は地面に落ちたネックレスを拾い、首にかけた。


「電気の件は謙太のとこの親父さんに頼んだから、そろそろ見に来てくれると思う。安心しろ」

「そう。それなら安心だわ。もう止めないから、今度こそ行っておいで」

「ああ、行ってくる!」


 晴人は姉にしばしの別れを告げ、空港へと歩き出した。


「いい天気だ」


 晴人が快晴の空を見上げて呟いた。


「はるひとぉぉぉぉ!!」


 姉の送り出す声が聞こえる。いざってときは姉らしいことをするじゃないか。


「よいのか? 晴人」

「愚問だ。後ろは振り返らないぜ……」


 晴人はせめて今だけは男らしくあろうとした。なんかただの旅行なのに今生の別れのような雰囲気を醸し出していた。


「いや、姉上の言葉はちゃんと聞こえておるのか?」

「は?」


 目を閉じ、耳を澄ましてみた。


「はるひとぉぉぉぉぅ!! 時間、ヤバいんじゃなぁぁぁぁい!!?」

「」


 晴人は振り返った。そして、


「あと三十分で飛行機いっちゃうよーっ!!」


 晴人の足が凍ったかのように動きを止めた。


「だそうじゃ。よいのか晴人よ、こんなにグズグズしていて」


 エルナの言葉の真意が晴人に伝わった。


「な……」

「な?」

「な、な、なんてこっちゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 晴人氏今作最大のシャウト。

 そしてもうおなじみ、晴人専用自転車を速攻で降臨させて飛ばした。そして、


「事故には気をつけなさいよー!!! ってあちゃー、言ってるそばから……」


 石ころは何度でも立ちはだかるのさ。

 晴人姉は顔に手を当て呆れつつ、笑みをこぼした。

 彼女の目に映ったのは我が弟の美しい弧を描いた大ジャンプだった。


                ☆


「なんとか間に合ったぁ!!」


 戦場帰りのような怪我だらけの晴人は、文字通り必死で自転車を飛ばし、やっとの思いで空港にたどり着いた。だが、そこには一人の女の子が立っていた。


「遅かったじゃない」

「え?」


 そこには、晴人のよく知る人物が腕を組んで仁王立ちしていた。


「秋奈……なんで…」

「いちいち説明しなきゃわかんないの!?」


 秋奈の表情には怒りが見て取れた。しかし、晴人は、幼馴染である彼女のことは知り尽くしている。


「心配してくれてるんだろ? ありがとう。安心してくれ、俺は別に旅行に行くだけであってこれが今生の別れってわけじゃないさ」


 晴人には、彼女が本当は何を言いたいのかはいつもすぐに理解できていた。


「もう聞いたかもしれないけど、アメリカの情報の町ってところだ、観光の名所だし、別に危険な場所なんかじゃない」

「違う。そこじゃない……」

「?」


 しかし、この時ばかりは彼女の言葉の本当の意味を理解することはできなかった。

 空港に今日のスケジュールのアナウンスが鳴り響いた。晴人の乗る飛行機は、あと数分で受け付けを閉め切るらしい。


「時間がないんだ。俺はもう行くよ。大丈夫、すぐ帰ってくるから」

「あっ」


 晴人は行ってしまった。取り残された秋奈はなすすべもなくその場に崩れ落ちる。

 自然と瞼に涙が溢れた。

 口を手で押さえ、唇を強く噛む。それでも彼女は堪えきれずに、嗚咽を止めることはできなかった。


「(言えなかった!! 私には晴人を止めることができなかった……!!)」


                ☆


 あるところに、未来の出来事を予知することができる少女がいました。

 少女は、自分の力に恐れました。

 怖かったのです。その力のせいで周りから孤立することが。

 しかし、少女は優しい心の持ち主で、その力をみんなの役に立てるようにしたいと思いました。

 少女は小さな頭で悩んだ結果、この力を占いで使うことにしました。

 百発百中の占い師がいる。噂はあっという間に学校全体に広まりました。

 少女は、孤立するどころか、たくさんの友達ができたのです。


「もっと役に立ちたい!」


 少女の思いはみんなにたくさんの喜びを与えました。

 少女には、気になる男の子がいて、しばらくしてその気持ちが恋だと気付きました。

 時がたち、少女は高校生になりました。

 初恋の男の子も同じ学校でした。

 高校生になった彼女は今でもときどき占いをしていました。

 そんなあるとき、初恋の男の子が外国に行くと言い出しました。

 いつも一緒にいた彼が少しの間でもいなくなってしまうのです。彼女は彼が何事もなく帰ってくることができるか、最近よく使っていたタロットカードで占いました。

 出てきたカードは、死と絶望をあらわす最悪の未来でした。

 彼女はすぐ行動に出ました。時間はあまり残されていませんでした。

 しかし、彼女は優しかった。

 自分の好きな人の意思を最優先に考えてしまうほど、

 彼女は、優しすぎたのです。


                ☆


「(晴人、貴方は一体どこへ向かおうとしているの……)」


 晴人を乗せた飛行機はもう、大空へと旅立っていた。

 地上に生きるちっぽけな人間程度じゃ手の届かない、天空の大海原へ――――。



                ☆



 アメリカ、ニューワシントン。

 今日はこの場に七大国の要人が集まり、緊急世界会議が開かれる日であった。

 現在使用している席は六席。

 しばらくして、空白の七席目に最後の一人が座り、各国の代表が全員揃った。


「遅れて申し訳御座いません。世界会議規則にのっとり、本日の司会は私、ギルジョワが行います」


 司会のギルジョワはアメリカの大統領である人物だ。

 若くして大統領という座に就き、国民からの支持も八十パーセントを切ったことがない。


「ごたくはいい、さっさと初めてくれ」


 威圧的な態度を取ったのはイギリスの代表、トロイト=カーツだ。


「俺には本来こんなことをしている時間などないのだぞ?」


 肘をついて舌打ちをする。

 自己中、とは彼にふさわしい言葉だと思う。


「失礼しました。では誠に恐縮ながら世界会議を始めさせていただきます。今回、皆様方に集まっていただいた理由は、皆様既にご存知かと思われますが、ユーラシア大宗国の分国にあたるユーラシア極東国の総理大臣の暗殺です」

「続きは儂から話そう」


 ここで、大宗国の代表、サガが口を開いた。


「儂が大宗国の長ということは皆知っているだろう。しかし我が大宗国は儂一人程度では統治はしきれん。広すぎるのだ。だから儂は国をいくつかに分け、その地域の代表に統治を任せておる。今回暗殺された田坂は非常に優秀な部下だった……儂は近いうちに彼を儂の後任に、とも考えておった。だが、彼は……っ!」


 サガは、自分の感情の高鳴りを抑えることはできなかった。本質的に優しい人間なのだ。


「簡潔に言うとゆゆしき事態だ。儂はこの犯行を起こした人物・団体を絶対に許さない。絶対にだ!!」

「落ち着いてください! その件ですが、私たちランドレット魔法学院は既に犯人と思しき人物と遭遇し、撃退したとの報告が入っています!」

「それがどうしたというのだ! 儂は暗殺犯を処刑すると言っているんだ!! 大体お前は何者だ!? ランドレット魔法学院の理事長は若い女だと聞いたぞ!」


 ランドレット魔法学院の代表は誰が見ても明らかな老人だった。


「これは失礼、だがジェシカさんをご存じなら話は早い。彼女はまだ若く、このような場での行動ができるとは思えないと判断されたようで、六賢者が一人、光のセンショウにこの場を任せられた次第です」


 サガは、センショウの発言で、失っていた落ち着きを取り戻した。


「で、その犯人はどうなったの?」


 年端もいかない少女がセンショウに問いかけた。彼女はスードライン帝国の代表であり帝姫、ビクトリア嬢だ。

 幼いながら帝国の頂点に君臨しているので、それ相応のカリスマを放っている。


「犯人は、偵察に行かせた生徒、リナ女子によって撃退されたようです。しかし、リナ女子の一瞬の隙を突かれ犯人は逃亡、そして現在に至るといった状況です」

「ふーん。まあいいわ、そんなやつ私の国に来たら、即蜂の巣にしてあげるわ」


「われらアグレシアに来ても同様。危険因子は確実に潰しましょう」


「エデンは洋上の国だからね、入国審査の時にわかるから安全だな」


「俺の国にはそのような族など入る隙間すらないわ!」


「ちょっと皆様方落ち着いて! 冷静にお願いします」


 ギルジョワが軌道修正をする。


「つまり、ユーラシア大宗国の一分国の総理大臣を何らかの目的で殺害した犯人は依然逃走中ということで、その旨を報告、ということでよろしいですかな? センショウさん」

「うむ」


 センショウはギルジョワの言葉に納得して頷いた。


「他に、何か報告のある方は?」

「ないから早く解散しようじゃないか」

「何もないわ」

「特にありませんなぁ」

「僕の楽園は皆の物さ」


 満場一致だった。


「一ついいかの」


 サガを除いて。


「暗殺犯と思われる人間を見かけたら儂のところに情報を送ってほしい。勿論礼はする。センショウといったか、犯人の容姿などはわかるか?」

「聞いております。犯人はとても巨体で、高笑いの似合いそうな、ごつい体の風貌の男だそうです」

「ありがとう。そのような男を見かけたら儂に教えてくれ、以上だ」


 サガはどうしても暗殺犯を見つけたかった。自国の分国のトップという要人を殺されたのだ。その怒りは生半可なものではない。


「暗殺犯はどこにいるかわかりません。世界の平和のために一秒でも早く見つけ、然るべき刑に処し、安心して栄光の『3000年』を迎えたいものです。それでは、本日は緊急会議にも拘らず全員お集まりいただきありがとうございます。アメリカ大統領兼全地球連盟本部長、ギルジョワによって会議の終了を宣言させていただきます」





 地球のほぼ全土である七つの大国の代表たちによる、幾度目かの世界会議。

 それは世界の今後を決める重要な場だ。

 彼らが決定したことは確定事項であり何人たりともそれを覆すことはできない。

 その人の目には見えない強大な力のことを、いつしか人間はこう呼ぶようになった。



 『権力』と。












 七月一日。午後一時。


「いやー!! やっとついた!」


 ハウ イズ ザ ウェザー トゥデイ?

 オゥ! イッツ サニー!!


「ここが……」


 米国、アメリカのバクトルディア州。


「情報の町―――エールスランディア!!」




                       二九九九年 七月一日。

ハイどうもみなさんこんにちは、私です。一巻という形で更新していった『新日本都編』楽しんでいただけたでしょうか。


ストックの三分の一を投下しました!(ぶっちゃけ)

そこで二巻? まではストックを稼ぐためにしばし更新を中断しようと思います。再開は今月中になんとか、といった具合ですかね。



何? 待ちきれない? そんな物好きがいるのか??


そんな人のために誰得次巻予告!



湧き上がる歓声。轟く嬌声。

堕落する者、頂を目指す者。


それらが入り混じった其処は、楽園か、それとも地獄か。


それぞれの思惑が犇き合うエールスランディアはその時姿を変え晴人たちに襲いかかる。


振り返るな、前を見ろ。

――声が届くには(かばね)と魂の所在が遠すぎた。



次巻『アメリカ編』の

  『序章』と

  『第一章 情報の町』の

一節『蒼天のツナギ』


お楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ