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第5話 告白?

「よ~し、今日はサンドウィッチにしよっか」


 恵子は廊下を歩きながら、思い付いたかのように言う。


「サンドウィッチか」

「うん。たくさん作るのは大変だけど、帰りながら食べられるし。それに気分がサンドウィッチ」

「わかった。それならパンと具材を買えばいい感じかな。マヨネーズとかはあるだろうから」

「そだね」


 今日の陸上部のご褒美はサンドウィッチに決定。

 なぜ陸上部のご褒美なのかというと、俺と恵子は陸上部の料理担当。

 料理担当といっても、毎日何かを作るわけではない。俺と恵子の気分次第で作られる非常に気軽な担当だ

 しかし、この気軽な料理担当は陸上部には必要不可欠な存在であり、このご褒美をもらうために頑張っている部員もいるとかいないとか。

 まぁ、恵子は“一彦のため”に作っているのが…。

 その“一彦だけが物を貰える”というのも部内の空気が悪くなる。そのため、陸上部顧問の森元先生が「作りたいと思った日だけでいいから部員全員の物を作ってあげてくれない?」と言ってきたのだ。

 もちろん、ご褒美の材料費は陸上部持ちであり、何を作るかは俺達次第。

 まぁ…合宿とかの時は大量に作らなければならないのだけど…。


「ハルちゃん、何を挟む?」

「ハムとか無難なモノを買って、残りは当たりはずれのを作っておけばいいんじゃないか?」

「そうね。森元先生の好奇心を」

「まぁそれを楽しむ人ではあるからな」

「そうだね、今日もどんな事をするか楽しみ。あ、そうそう、北条さんってどんな子なの?」

「どんな子ってさっきも言った通りだけど?」

「最高にバカな女の子?」

「そう。最高にバカな女の子」

「例えば?」

「日本の大統領は鳩山邦夫らしい」

「………え?」


 そりゃそんな反応になるよな。

 恵子は何か聞き間違えたのかな?と言いたげに一瞬目を反らし、耳を触る。

 そして、もう一度言うように俺に視線を送る


「日本の大統領は鳩山邦夫」

「……それは冗談だよね?」

「いや、おそらく真面目に言っている」

「………カズちゃん以上の逸材なのかな」

「その可能性は高いかもな。さすがに一彦でも日本の総理大臣を大統領とは言わない。名前は言えないかもしれないが」

「カズちゃんも相当ヤバいね……やっぱり本格的にハルちゃんの脳細胞を…」

「恵子、置いていくぞ?」

「あ、待って」


 また彼女のマッドサイエンティスト思考が始まってしまう前に先手を打つ。

 さっさと靴を履いて、外で恵子を待つ。

 こっちに走ってくる恵子は実に女子高校生らしい。

 確か、恵子ってモテるんだっけか。一彦がそんなことを言っていた気がする。

 学校の外に出て、スーパーへと向かう途中に暇つぶしに聞いてみることにした。


「恵子って告白されたことあるのか?」

「え?告白?」

「一彦以外から」

「カズちゃん以外?え~っと、ハルちゃんに言ってなかったっけ?」

「ん?」

「私、カズちゃんから告白された事ないよ?」

「……は?」

「たぶん、好きって言われた事無いんじゃないかな。他の男の子からは数回あるけど…まぁカズちゃんは恥ずかしがり屋だからしょうがないかなぁって思ってる」

「…いやいやいやいや、まじで?」

「うん、まじで。あれ?ハルちゃんは知ってると思ってた」

「いや、俺は付き合ってると」

「あぁ、付き合ってる風に見えるだけだよ。私はもう付き合ってると思ってるけど、カズちゃんはどうか分からないね」


 恵子はなんてことのないような顔をしながら俺の横を歩く。

 普通、こんな状態でこんな顔できるのか???

 付き合っているつもりってことは恵子は一彦の事、好きだってことだよな?つまり…生殺し状態か?


「そっか、ハルちゃんは知らなかったか。うん、ごめん、知ってることだと思ってたよ」

「いや、それは良いんだけど。えっと…なんというか、恵子は一彦の事が好きなんだよな?」

「まぁ…そうだね、うん」

「一彦にそれは言ったの?」

「一応…でも、はぐらかされちゃった。カズちゃんはハルちゃんの事も好きだからね、ハルー!って言って誤魔化されてる感じかな」


 俺も原因の一因になってるのかよ…。

 思わず、立ちくらみをしてしまいそうな衝撃が頭の中を走る。

 一応、俺の兄貴でもある上に陸上に関しても尊敬はしていたし、恵子と中学の頃から付き合っているという一途っぷりにも尊敬はしていたけど…これは、意外とショックが大きいぞ…。


 頭に手を置いて、頭の痛みを少しでも和らげようとしていると、恵子が苦笑いをする。


「そんな大げさな。大丈夫だよ、カズちゃんはたぶんだけど私の事好きだもん。好きじゃなかったらきっと他の女の子に手を出してるよ。まぁ女の勘だけどね」

「強いな…恵子は」

「ありがとう。まぁいつかは聞きだしてやろうかって思ってるから」

「そうだな。その時は俺も応援させてもらうよ」

「やった。それじゃ先輩を怒らせないように早く買い物済ませちゃおう」


 恵子は嬉しそうにガッツポーズを取り、俺の手を取る。

 もし、一彦から離れてしまっていたら、俺が恵子の事を好きになっていたかもしれないな…。と思わせるほど、その顔は輝いている。

 そして、心の底から恵子を応援したいと思った。



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