表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泡姫  作者: ネンブツダイ
第1章
8/44

そろそろ脱ぎましょうか。

彼女はまるで可愛いペットを見るような眼差しで僕を見つめていた。僕の顔は、恥ずかしさで真っ赤になっていた。


彼女はやさしい笑顔で僕にほほ笑んでいたが、僕はずっと下を向いていた。



「あの、結婚されてるんですか?」



僕は顔をゆっくりと顔をあげた。



「いえ、独身です。」



「そうなんですか。なんだか、とってもうらやましいです。カノジョさんが。」



「えっ! ・・」



僕は一瞬、彼女の言っていることが分からなかった。



「・・あなたのカノジョがとってもうらやましいです。」



「あぁぁ、いや、カノジョなんて・・いません。」



「絶対うそ~」



「本当です。」




「また~」




「・・・」




僕は姿勢を正して彼女の顔を見て、少し強い口調で言った。



「本当に、いないんです。嘘じゃありません。」



彼女は少し驚いたような表情になった。



「本当にいないんですか?」



「はい。」




彼女はうれしそうにほほ笑んだ。



「じゃ、今夜は私があなたを独り占めできるんですね。なんちゃって。ふふふ」



僕は何も言葉が出ず、ただ心臓の鼓動だけが速くなっていった。

次の瞬間、彼女は突然大きな声をあげた。



「あぁっ しまった!」



「どうしたんですか!?」



「ごめんなさい。お風呂のお湯入れ忘れてました。すぐ入れますね。」



彼女は水道の蛇口をひねり、お湯を出しはじめた。

蛇口から流れ出る水は、まるで童貞喪失までのタイムリミットの砂時計のようだった。



「本当にすみません。あたしったら緊張しちゃって、すっかり忘れてました。」



「いえ、大丈夫です。」



緊張? どうして彼女が緊張するんだ・・

緊張してるのは僕の方だよ。なんてったって初めてなんだから。

蛇口にお湯を入れ始めてから、僕は平常心を保てなくなっていった。


何だか無性に腹が立ってきた。

何で加藤さんは僕をこんなところに連れてきたんだ。いや、加藤さんが悪いんじゃない。僕が悪いんだ。なぜ断らなかったんだ。

情けないことに、僕は自分自身を責め始めた。



徐々にお湯が溜まっていく。もう時間がない。

どうする・・



「あの・・」



彼女が口を開いた。




「そろそろ脱ぎましょうか。」




「!!・・」




僕は心臓を吐き出しそうなくらいの緊張に襲われた。



どうしよう・・



神様ぁっ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ