プレゼント
「今日、誕生日なんですか!? 今日って5月の・・」
「7日です。」
そうだ・・5月7日..
今日は僕の大切な人の命日だ。
僕はあの日のことを思い出した。
まだ、幼い頃だった。
5月7日、僕の大切な人は死んだ。
「あっ、誕生日って言っても、本当の誕生日なんです。お店の誕生日とかはありませんから。」
「・・・」
「あと、歳も本当に21歳なんです。この業界歳ごまかすのが、当り前なんですけど、私は本当に今日で21歳なんです。」
「・・・・」
「どうか・・しましたか?」
僕はふと我に返った。
「あっ、すみません、ちょっと考え事しちゃって。」
「私が、しゃべり過ぎましたね・・ すみません。」
「いえ、僕の方こそすみません。あっ、そうだ。ちょっと待ってください。」
僕はカバンの中から、クッキーの箱を取り出した。今日、仕事の合間に銀座で買ったものだ。このクッキーは明日、ある場所に持っていくものだが、彼女にあげよう。
「これ、よかったらどうぞ 誕生日プレゼントです。」
「 あっ・・」
「甘いもの、嫌いですか?」
「いえ、大好きです。 これ、銀座のKID-Gってお店のですよね。」
「え! はい。そうです。知ってるんですか?」
「はい。私もよくこのお店でクッキー買うんです。はは、なんか本当にうれしい。ありがとうございます。」
「いえいえ。僕もこの店のクッキーよく買うんですよ。」
「これ・・あなたが食べるはずだったんですよね・・?」
「ああ、いいんですよ」
「一緒に食べませんか? 今」
「食べましょうか」
僕たちは2人でクッキーを食べ始めた。
ここがソープランドだということを忘れてしまうくらい、楽しくて、心温まるひとときだった。