もしかして・・
信じられない。1週間しか経っていないのに、彼はまた来てくれた。
どうして、また私に会いに来てくれたの!? これは夢!?
「信じられないです。また来てくれたんですね。 私、その、何て言ったらいいんだろう。うれしいです。」
「すみません、1週間しか経っていないのに、また来てしまって。どうしても・・お会いしたかったんです。」
えっ!!
どうしても・・って
どうしても会いたかったの?・・・ 私に!?
私は必死に平静を装ったが、緊張し過ぎて、パニックになっていた。
とにかく、お風呂のお湯を入れなきゃ。
立ち上がろうとした瞬間、彼は私の手首を掴んだ。
「あの・・入れなくていいです。今日も何もしなくていいんです。」
えっ!!
どうして!?
じゃあ・・何のために来たの・・?
本当に、私に会うためだけに高いお金を払って来てるとでも言うの?
「え! どうして? ダメですよ。ここ高いんですよ。どうして何もしないんですか?」
・・・・
・・・・
「一緒に居てもらって、普通に話をしてくれるだけで、、、満足なんです。」
握りしめていた私の手首を離した瞬間、彼は一瞬驚いたような顔をした。
まずい。リストカットの痕、見られちゃった。
嫌われちゃった。。かな。。
・・
私はか細く弱弱しい声で訊いた。
「手首切る女なんて・・・嫌ですよね?」
しかし、彼の返答は意外なものだった。
「いいえ、手首切る人は・・とても、その・・好きですよ。」
ええ!! 何言ってるの? この人。 冗談!?
「なんか、気持ちが分かるんです。きっと死ぬほど辛かったんですね。」
彼は自分の手首を私の目の前に差し出した。
えっ!!
とても驚いた。
彼も私と同じように、幾つもの赤い平行な線が刻まれていた。
「理由は人それぞれ違うと思いますが、きっとあなたは・・サキさんは、優しすぎるんじゃないかな。」
それを聞いた瞬間、胸の奥底から熱いものが込み上げ、涙が溢れ出た。
流れ出た大量の涙はあっという間に顎の下から流れ落ちていた。
こんなに泣いたことって、私、今まであったかな。
心療内科の先生にどんなに、優しい言葉をかけられても、決して泣くことはなかった。
本当に不思議。彼といると、すごく落ち着く。
まるで、ずっと前からの知り合いだったみたい。
気付くと私は彼に覆いかぶさった状態で、泣いていた。
私が彼をギュッと抱きしめると、彼もそれに応えるかのように、強く抱きしめ返してくれた。
こんな人に出会ったのは、初めて。
私、もしかして・・この人のこと、好き・・なのかな?