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泡姫  作者: ネンブツダイ
第2章
39/44

もしかして・・





信じられない。1週間しか経っていないのに、彼はまた来てくれた。




どうして、また私に会いに来てくれたの!? これは夢!?





「信じられないです。また来てくれたんですね。 私、その、何て言ったらいいんだろう。うれしいです。」




「すみません、1週間しか経っていないのに、また来てしまって。どうしても・・お会いしたかったんです。」





えっ!!




どうしても・・って




どうしても会いたかったの?・・・  私に!?




私は必死に平静を装ったが、緊張し過ぎて、パニックになっていた。



とにかく、お風呂のお湯を入れなきゃ。



立ち上がろうとした瞬間、彼は私の手首を掴んだ。




「あの・・入れなくていいです。今日も何もしなくていいんです。」





えっ!!



どうして!?




じゃあ・・何のために来たの・・?



本当に、私に会うためだけに高いお金を払って来てるとでも言うの?




「え! どうして? ダメですよ。ここ高いんですよ。どうして何もしないんですか?」





・・・・



・・・・




「一緒に居てもらって、普通に話をしてくれるだけで、、、満足なんです。」




握りしめていた私の手首を離した瞬間、彼は一瞬驚いたような顔をした。




まずい。リストカットの痕、見られちゃった。




嫌われちゃった。。かな。。




・・




私はか細く弱弱しい声で訊いた。




「手首切る女なんて・・・嫌ですよね?」




しかし、彼の返答は意外なものだった。




「いいえ、手首切る人は・・とても、その・・好きですよ。」




ええ!! 何言ってるの? この人。 冗談!?





「なんか、気持ちが分かるんです。きっと死ぬほど辛かったんですね。」




彼は自分の手首を私の目の前に差し出した。




えっ!!




とても驚いた。



彼も私と同じように、幾つもの赤い平行な線が刻まれていた。




「理由は人それぞれ違うと思いますが、きっとあなたは・・サキさんは、優しすぎるんじゃないかな。」




それを聞いた瞬間、胸の奥底から熱いものが込み上げ、涙が溢れ出た。



流れ出た大量の涙はあっという間に顎の下から流れ落ちていた。




こんなに泣いたことって、私、今まであったかな。



心療内科の先生にどんなに、優しい言葉をかけられても、決して泣くことはなかった。




本当に不思議。彼といると、すごく落ち着く。




まるで、ずっと前からの知り合いだったみたい。






気付くと私は彼に覆いかぶさった状態で、泣いていた。



私が彼をギュッと抱きしめると、彼もそれに応えるかのように、強く抱きしめ返してくれた。



こんな人に出会ったのは、初めて。




私、もしかして・・この人のこと、好き・・なのかな?


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