表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泡姫  作者: ネンブツダイ
第2章
35/44

あの海との出会い





私にとって真鶴の海は特別な場所。



なぜなら、あそこの海は夢の場所にとてもよく似ているから。



物心ついたときから毎日見ているその夢は本当に不思議な夢。



私は隣にいる少年と話をしている。



話の内容は・・ 信じられないけど、告白。 



しかも、私から少年に。



私は恥ずかしくて、隣の少年の顔をまともに見ることができない。



たまに顔を上げると眩しい夕日に照らされたキラキラと輝く海が視界に入る。



その海の景色と真鶴の海は同じ場所と思えるくらいそっくり。





私が初めて真鶴の海に出会ったのは小学校2年生の時。



週末に両親と3人で熱海に旅行に出かけた時だった。



実家の大船から、普通列車で熱海に向かった。





今でもその時のことをはっきりと覚えている。



小田原を過ぎたあたりから、何とも言えない不思議な感覚に襲われた。



うまく説明できないけど、んんん、懐かしいような、嬉しいような、そんな不思議な感覚だった。



なんだか温かい気持ちになって、自然に涙が溢れて来た。



根府川駅を過ぎたあたりで、急にドキドキ、そわそわし始めた。緊張感のような、期待感のような変な気持ち。



でも、それがなぜだかは全く分からなかった。






列車が真鶴に到着する直前、私は吸い寄せられるように海を見た。



その瞬間、夢で毎日見ている海と、目の前の海がピッタリと重なった。




この海は・・ 夢で見た海。




涙を拭うことも忘れ、無我夢中で海を見つめていた。



これが、真鶴の海との出会いだった。



それから、ちょくちょく、お金が貯まると1人でこの海に行くようになり、



誕生日には必ず、ここに訪れるようになっていた。






銀座を出てから2時間、電車が真鶴に到着した。




ホームへ足を踏み出した瞬間、懐かしい海の香りに、胸が熱くなって、目が潤んだ。



そのまま、吸い寄せられるように、海に向かって歩き出した。



いつも、不思議に思う。



なぜ毎日、この海を夢に見るのだろう。



そして、夢に出てくる少年は一体誰なの?



あの少年とは夢でしか会えないの?




いつの間にか、目の前には夢の海が広がっていた。



きれい。



私は時間を忘れて、一心不乱にその海の景色、空気、温度、音、匂い、すべてを楽しんだ。



あっという間に時間が過ぎ、太陽が沈み始めた。



この夕日に染めれられた景色こそが、夢で見るのと全く同じ光景。



きれい。本当にきれい。




日が落ちるまで、涙を流しながら、海を眺めていた。




なぜ泣いてしまうのか、分からないけど。






あっ、もうこんな時間。帰らなきゃ。



いつの間に、風が強くなっていた。



乱れる髪を押さえながら、小走りで駅に向かった。



駅についたと同時に、ちょうど上り列車が到着し、すかさず乗り込んだ。



電車の窓から、夜の闇を眺めながら、心の中で叫んだ。




会いたい。



また、あの人に会いたい。



また、来てください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ