“好き”!?
まずい。時間が無くなっちゃう。そろそろシャワー浴びないと。
「そろそろ脱ぎましょうか。」
言葉をかけても、彼は服を脱ごうとしなかった。
「じゃあ、私から脱ぎますね。」
私がドレスを脱ごうとした途端、彼は私の腕を掴んだ。
「えっ、どうしたんですか!?」
「脱がなくていいです。」
「え、どうして?」
「今日は何もしなくていいです。」
彼は何もしなくていいと言った。
私が可愛くないから・・?
この時、彼の発した言葉はとてもうれしかった。
「いや、あなたはとても魅力的です。んん、なんていうか魅力的だからそういうことしたくないっていうか・・その、もっと話したいです。だからこのまま僕とお話しててくれませんか」
私と話したいって言ってくれたことが、なんだか信じられなかった。
何もしなかったお客さんは初めて。
彼の言葉を聞いて、心が温かくなってきた。
でも彼とはおそらくもう二度と会えない。
そう思ったら、なんだか無性に寂しい気持ちになってしまったの。
「あの・・キスしてもいいですか?」
私は彼にこう質問すると、返事を待たずに彼にキスをしてしまった。
今思えば、何であんなことしてしまったんだろうって不思議に思うくらい。
私は明らかにいつもと違っていた。
彼の好意がすごく嬉しくて、、すごくいい人だなって・・
カッコいいのに、なんだか可愛らしい。
それに、なんとも言えない懐かしさがあって、
何と言ったらいいのだろう・・
こんな気持ちになったことはない。
私・・彼のこと・・。
そこまで話し終えると、ミキちゃんは優しくほほ笑んだ。
「サキちゃん、そのお客さんのこと好きになっちゃったんだよ。」
「え! “好き”!? 私が彼を・・」
私は言葉を失った。これが人を好きになるってことなの?
「今日のサキちゃんなんだか、そわそわしてて落ち着かないもん。彼のこと、頭から離れないんでしょ?」
「・・・ うん。」
「そっか、サキちゃんが恋か。」
「違うよ。好きとか・・ そういうのよく分かんないから。」
その後、ミキちゃんは急に厳しい表情に変わった。
「私、サキちゃんのこと応援したいと思ってる。でも、私たちはお客さんに恋しちゃいけないと思う。」
「どうして?」




