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泡姫  作者: ネンブツダイ
第2章
30/44

素敵な人

「ミキちゃん、今日、、私の、、最後についたお客さんなんだけど、、」




「何?」




「その人・・なんだか、すごく・・不思議な感じがしたの。」




「不思議な感じって?」




「んんん・・」






5月7日 





0時00分




私はその人に出会った。



お店の壁に掛けてある古い時計の鐘の音と共に彼のやさしい笑顔が瞬間的に脳裏に焼きついた。

背が高くて、さわやかな感じ。男らしさの中にどこか可愛らしさがある。とても緊張してるようだったけれど、なんだか堂々としてた。



鐘の音にびくっとした瞬間の彼の驚き方がなんだかおもしろくて、私は笑っていた。

次の瞬間、ふと我に返った。初対面の人にこんなに自然に心の底から笑ったことって、今まであったっけ。



彼に何か不思議なものを感じた。

どこかで会ったことがあるような感じがして、すごく懐かしい。


私は思わず訊いてしまった。




「あの・・どこかで会ったことありましたっけ?」




すると、彼は目を丸くして答えた。




「あっ、僕もあなたとどこかで会ったことがあるような気がしてたんです。」




うそっ。向こうもそう思ってたの? 知り合い・・かな。

でも、会ったことはない。なんでこんなに懐かしいんだろう。不思議。。




部屋に入って、彼とお話をした。

彼は29歳の営業マン。私とはちょっと住む世界が違うかな。


この仕事を初めて一年、あんな人に出会ったのは初めてだった。

ここに来るお客さんは変な人ばかりだった。変態みたいな人、乱暴な人、酔っぱらい。

私を性の対象でしか見てくれない人達ばかりだった気がする。



でも、彼は違っていた。緊張してたけれど、私と正面から向き合って、普通に1人の人間として会話をしてくれた。

なんだかその誠実な人柄に、とても心を打たれた。



私は今日、誕生日だということに気付いた。



なんと、彼はその場でお祝いしてくれた。しかも、銀座のKID-Gのクッキーで。

どうして、この人がこのクッキーを持ってるの?



信じられない。



私は自分の誕生日には必ずこの店のクッキーを買う。なんで、私の好みを知ってるの?



たまたま持ってたの? 偶然過ぎる。




私は彼と話をするうちに、緊張し始めてしまった。彼が優しければ優しいほど、紳士的であれば紳士的であるほど、彼がとても輝いて見えたから。




きっと彼には素敵な相手がいるんだろうな。なんだか彼の相手がうらやましい。



この後、彼にそのことを質問すると、奥さんも彼女もいないと答えた。

本当かな?? 私は信じられなかった。



でも、なんだか本当みたい。うそをついてるようには見えなかった。



相手がいないって分かったら、なんだかすごくうれしかった。




私が今日、この人の。。



やだ。



この人とHするの? いいのかな? できるかな。



普通のお客さん相手じゃ、こんな風に絶対思わないのに。





私はお風呂にお湯を溜めていなかったことに気付いた。


しまった! 



・・私いつもと違う。どうかしてる。



この人のせい。この人が・・とても・・素敵だから。









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