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泡姫  作者: ネンブツダイ
第1章
26/44

電話


「こんばんは、あの、佐々木と言います。」




「えぇっ! 佐々木さん? うそぉ えっ どうしよ・・」





電話の向こうの彼女は僕と分かって、明らかに動揺しているようだった。




彼女は僕の名字を知っていたのか。




そっか、きっとお店を予約したから、店員から名前は知らされてるか・・。




何を話せばいいんだ。




落ち着け、落ち着け。





「あ、先程はどうも、ありがとうございました。」



「えっ、いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」






「・・あのっ、すみません。遅い時間に。しかも、突然、お電話してしまって・・今大丈夫ですか?」



「あっ・・はい。大丈夫です。 お店終わって、外にいますから。 連絡くれるなんて、うそみたい・・信じられません、うれしいです。」





「手帳のことで、お話が。」



「あっ!! そう、あの・・どうして佐々木さんが私の手帳を?」





「先週の5月7日の夕方、真鶴の海で、あなたらしき人が手帳を落とすのを遠くから見かけて・・」



「えぇっ!・・ あの日、真鶴の海にいたんですか!?」





「はい。浜辺にいました。ただ、落とした手帳に挟んであった名刺を見るまでは、あなただとは分かりませんでした。」




「ぇ・・・・・   偶然、、・・ですね。」





「はい、僕もしばらくの間、信じられませんでした。」



「・・・・ こんなことって・・あるんですね・・」





「ええ、偶然、、というより奇跡に近いかもしれませんね」



「はい、、、、ホントですね・・・  あ、あの、その、なんというか、また・・会えますか?」





え! なんて答えればいいんだ、、



会いたい、会いたい、、また会いたいよ。






「 ・・ また、会いたいです。あの、来週、またお店に行きます。その時また詳しく話します。」



「え!、お店・・ お店じゃなくて・・その、、んん。・・・・待ってます。 来週、お店に来てください」






「はい、必ず行きます。今日は遅いので、これで。 なんか、すみませんでした。」




「いえ、電話くれて嬉しかったです。」






「じゃ、おやすみなさい」



「はい、おやすみなさい」




ふぅ~。




終わった。




はぁ、はぁ。




すごく緊張した。





「すみません、マスター。お水もらえますか。」




「はい、かしこまりました。」




そう言えば、さっき彼女は、「お店じゃなくて・・」と言ってた。




外で会ってくれるということなんだろうか。




ダメだ。




彼女はソープ嬢で、僕は客。




それは、ダメだ。




あんなきれいな人と僕が!? ダメだ 絶対ダメだ。




アルコールが体中に回り、視界がぼやけてきた。




かなり酔ってしまった。ふらふらだ。帰れるだろうか。






突然、店の扉が開いた。




「いらっしゃいませ」




「あの、ここ何時までやってますか?」




「朝の5時までやってますよ」




「あ、よかった」




どうやら、女性客が来たようだ。





「・・ すみません。マティーニください」




「かしこまりました。」





かなり酔っていたので、女性の声がかなりぼんやりとこだまするように聞こえてきた。




なんだか、懐かしい声・・





ええっ!! この声・・




僕とは反対側の一番端のカウンターに座った女性の横顔を見て、とても驚いた。



一気に酔いが覚めた。




肩ぐらいまであるしなやかな髪、細くてやさしそうな目、純白の肌。




サキさんだ。




女性もこちらを振り向いた。




「えっっ!!! うそっ!!  佐々木さん・・?」



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