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泡姫  作者: ネンブツダイ
第1章
23/44

リストカット

「手首切る女なんて・・・嫌ですよね?」





彼女は悲しそうな声でそう言った。




僕はそっと彼女の手を取り、傷跡をやさしく撫でた。




「いいえ、手首を切る人は・・とても、その・・好きですよ」




彼女は驚いた表情で僕を見つめた。




「どうして!! ですか?」




「なんか、気持ちが分かるからです。きっと死ぬほど辛かったんですね。」




僕は自分の手首を彼女に見せた。




「実は・・僕も何度か切ったことがあるんです。」




彼女は唖然としていた。




「理由は人それぞれ違うと思いますが、きっとあなたは・・サキさんは、優しすぎるんじゃないかな。。」




彼女の目からとめどなく涙が溢れだした。そのまま、彼女は僕に寄り添い、僕はそっと彼女を抱きしめた。




妹が死んでから、僕は普通ではなくなった。



妹との約束を果たさなければいけない。でも、それは絶対に不可能なこと。



思春期に周りの人間が、人を好きになってなっていく中で、僕はただ一人取り残されていった。



人を好きになれない。好きになっちゃいけない。でも、このまま一生一人でいるのは辛い。



その狭間で苦しむ中で、何度かリストカットを繰り返した。





彼女がどんな理由で手首を切ったかは分からないが、彼女も深く傷つき、苦しんだことだろう。



そう思うと、涙を流す彼女が愛おしくてたまらなかった。



彼女を抱きしめていると、まるで妹と一緒にいるような錯覚に陥った。



懐かしい。



彼女は桜なのではないかと思ってしまうほど、面影も雰囲気も、声も話し方もとてもよく似ていた。



まるで、あれから20年後の桜に出会ったかのようだ。





どれくらいの間、彼女は僕の懐で泣いていただろう。もはや、時間の感覚は分からなくなっていが、かなり長い時間、彼女を抱きしめていたと思う。




彼女は鼻をすすりながら、口を開いた。




「ありがとう・・本当にありがとう。今までそんな風に言ってくれる人、いなかったです。」




僕はさらに強く彼女を抱きしめた。




「大丈夫。人間いくらでもやり直しはききます」




・・・



・・・



・・・





「私ったら、本当はもっと楽しく話がしたかったのに、泣いてちゃダメですよね」




彼女は涙を拭いながら、笑顔を見せた。





「・・やっと笑ってくれた」




「え・・」





「やっぱり、笑ってるところが一番可愛いですよ。」




「ふふふ、うれしい ありがとうございます」






ピピピピピッ ピピピピピッ




突然、アラームが鳴った。




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