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泡姫  作者: ネンブツダイ
第1章
18/44

浜辺の女

目を開けると、辺りはすっかり薄暗くなっていた。浜辺に敷いたビニールシートは風になびき、ばさばさと音を立てていた。




妹のことを回想しながら、僕は眠りについてしまったようだ。




そろそろ、帰るか。




そう思い、立ち上がろうとした瞬間、




水平線に沈もうとしている夕日のおぼろげな光の中に、一人の女性の姿が浮かび上がった。




僕が座っている場所から、30メートルくらい離れたところに、その女性は1人でたたずんでいた。




暗かったので、はっきりと顔は確認できなかったが、すらっとした体型で、きれいな人だった。




髪は肩ぐらいまであっただろうか。




どうして、こんな時間に、こんな場所で、女性が一人たたずんでいるんだろう。




僕は不思議に思い、彼女のことを見ていた。




よく見ると、片手にバッグと箱を持っている。




その箱は、今僕の手元にある、銀座で買ったクッキーを同じ箱だ。




偶然ってあるもんだな・・  あの店のクッキーの箱を持ってるなんて。




それから、間もなくして彼女は立ち去った。




彼女のことが気になり、後ろ姿を見ていたが、なんだか見覚えがあるような気がした。





学生時代の同級生かな・・? いや、もっと最近に会ったことがあるような・・





銀座のあの店の箱を持ってたってことは・・この辺りの人間じゃない。





立ち去る彼女の後姿は、やはりどこかで見覚えがある。





突然、強い風が吹いた。




その瞬間、何やら白いものが彼女のバッグから落ちた。




彼女は気付いていないようだ。





僕は急いで、荷物をまとめ、走り出した。




しかし、彼女の姿はもう既になかった。




彼女が落としたのは手帳だった。




走って駅に向かったが、ちょうど、東京方面の電車が発車したところで、駅のホームにはそれらしい人は見当たらない。




おそらく、電車に乗ってしまったんだろう。




交番に届けるか・・




そう思い、手帳を見ると、




名刺のようなものが挟まっていた。




それを見て、僕は目を疑った。





これは・・・








その名刺には 




ROSE PEARL  サキ




と記されていた。





浜辺にいた女性は、なんと、昨日先輩と行ったソープランドで僕の相手をしたソープ嬢のサキさんだ。






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