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泡姫  作者: ネンブツダイ
第1章
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好き・・?

先輩と僕は近くの居酒屋に入った。



「どうだ? 童貞喪失した気分は。」



「・・・。」



僕は迷った。先輩にどう話せばいいのだろう。

何もしなかったなんて言ったら、先輩は何て言うだろうか。


でも、正直に話すしかない。

僕は恐る恐る口を開いた。



「あの、加藤さん。」



「ん?」



「実は・・何もしなかったんです。」



「え・・どういうこと?」



「ソープで話だけして、プレイはしませんでした。だから童貞卒業はしてないんです。」



「は? なんで? 」



「すみません。お金はお返しします。どうしても・・できませんでした。」



「いや、金はいいよ。お前には世話になったから。 そっか・・何もしなかったんだ。やっぱ、ソープで初めてってのは嫌だったか?」



「それもあるんですが、その・・僕についた女の娘に何か特別なものを感じたんです。」



「特別なものって・・?」



「なんていうか、初めて会ったような気がしなかったんです。昔からの知り合いのようななんだか不思議な感じがしました。だから、とてもそういう気分にはなれなかったんです。」



「そっか。お前、もしかしてその子に惚れた?」



「えっ!!」



先輩の「惚れた?」という言葉で頭が混乱してしまった。

生まれてこのかた、人を好きになったことはない。だから惚れるってことがどういうことなのか、人を好きになるってことがどういうことなのか、僕には分からなかった。



「どうしたんだよ。まさか、本当に好きになっちゃたの?」



先輩の発した「好き」という言葉を聞いて、心臓がドキドキし始めた。

彼女と過ごした60分間の記憶が猛烈な勢いで脳裏に蘇った。

彼女の笑顔、無邪気な性格、やさしさ。思い出すごとにさらに彼女の姿が美化され、先輩の発した「好き」の2文字と結びついていった。


好き? 僕が彼女のことを・・。分からない。これが好きという感情なのか?



「加藤さん。ちょっと聞きたいんです。人を好きになるとどういう気持ちになるんでしょうか? 僕は人を好きになったことがないから分からないんです。教えてくれませんか。」



「えぇっ! んん・・そうだな。」


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