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暴食

今日は6の丘だ。

6の丘は6の街の中にある。


この街は食べ物が有名だ。

今日は何をご馳走してもらえるんだろう。


そう思っていると唐突に、

「そういえば、ここはお墓がないな」

と探偵は言った。


「お墓ってなに?」

とオイラは尋ねた。

そんなもの聞いたことがない。


「ボウズ、お墓を知らねぇのか。

亡くなった人を埋葬する場所だよ」

と探偵は言った。


埋葬ってなんだろう。


「ねぇ、埋葬ってなになの?」

とオイラは聞いた。


「埋葬……、

ちょっと難しい言葉を使ってしまったな。

悪い悪い。

人がなくなったら、棺桶に入れて、土の中に埋めるだろ。

あれのことだ」

と探偵は言った。


何を言っているかわからない。


「人が亡くなったら、土の中に埋めるの。

なんで?」

とオイラは聞いた。


「なんで……、

ってなんでだろうな。

昔っからそう決まっているからな。

ボウズ、ここでは人が亡くなったらどうするんだ」

と探偵は聞いてきた。


「うん?普通に回収車が来て、回収していくよ」

とオイラは言った。


「回収車?霊柩車のことかな?葬式とかはしないのか?」

と探偵は言った。


「葬式ってのがなにかわからないけど、誰かが死んだってなると、周りに人が集ってきて、その人の持ち物を取っていく。

そして下着以外なくなったころに、回収車が来て、回収していく」

とオイラはこの街の仕組みを教えた。


なになんだろ。葬式って。

探偵はビックリした顔で黙っている。


「ねぇ。探偵さん。葬式ってなになの?」

オイラは聞いた。


「葬式って言うのは、その人を見送る儀式みたいなものだ」

と探偵は言った。


「それなら、オイラ達もするよ。回収車が来るまで、亡くなった人の持ち物を物色したり、思い出話をしたりする。ちゃんと見送っているよ」

とオイラは言った。


「あぁそうか……」

と探偵は力なく言った。なんだかボンヤリしているみたいだった。

ここ最近いろんなところに行ったから、疲れているんだろう。


「あの回収車はどこに行って、遺体はどうされるんだ?」

と探偵は聞いてきた。

好奇心が旺盛な人だな。

勉強熱心なのはいいことだ。


「髪の毛はカツラに、内臓とか目とか使えるものは、病院でそのまま使う。

移植用とか言ってた。

あと皮膚や爪、肉とか、骨とかは、再生医療?かな。なんかの材料として使うって聞いた。

遺体がリサイクルされて、外の街の人に売るからNcityは税金が無料だって聞いたことがある」

オイラはそう教えた。


「そ……そうか」

探偵は少し怯えてみえた。

オイラなにか怖いこといったかな。


(ぐぅ~)

お腹がなった。


「そろそろ飯にするか」

と探偵は言った。


「この街は食い倒れの街っていって飯が美味い事で有名なんだ」

とオイラは言った。


「何がいいかな?。

子供が好きそうなのは……」

と探偵は言った。


「オイラはもう12歳だし、一人前だ」

とオイラは抗議した。


「まぁな。

ボウズは一人前だと思うぞ。

でもな口は肥えてない。

肥えてないってのは、いろんな味になれてないって事だ。

ほらカラシみたいなのを好んで食べるのが大人だ」

探偵はそう教えてくれた。


「カラシの他にも大人の味があるの?」

とオイラは聞いた。


「そうだな。ビールやブラックコーヒーは苦い、唐辛子はぴりりと辛い、わさびはキーンと辛い、そういうのは大人の味だろうな」

と探偵は言った。


なるほど、たしかに辛いものや、苦いものは食べたくない。

子供向けというのは、悪くないかもしれない。


「探偵さん。オイラ子供向けでお願いします」

とオイラは負けを認めた。


「じゃあ、そうだな。あそこにハンバーグの屋台があるから行こう」

と探偵は言った。


屋台には、鉄板の上でジュウジュウと音をたてて焼ける丸い茶色の固まりがあった。


「探偵さん、あれがハンバーグ?」

とオイラは聞いた。


「そうだ。あれはなひき肉を丸めて作る料理なんだ」

と探偵は教えてくれた。


オイラはひき肉の凄さに感動した。

「ひき肉って魔法みたいだ」

と言うと、

探偵と店のおじさんは笑っていた。


ハンバーグを一口食べた。

中からまた肉汁が出てきた。


これはまたウィンナーとは違う味がする。

ウィンナーは皮がパリッとしていたが、ハンバーグはまた違う食感だった。


オイラは調理の方法が変わることで、こんなに味が変わることに驚いた。


世界ってどんだけ美味いものがあるんだ。オイラはそう思った。


そして生きている間に色んな美味いものを食べたい。

そんな夢をもった。

ただ腹が膨れたらいいやって思ってたけど、美味いものは、すぐにオイラを幸せにしてくれる。

そんな美味いものがある人生もいいなと思ったんだ。


……


90分ほど歩いて、

オイラ達は丘守りの住む塔についた。


塔の周りはいたるところに空き缶が転がっていた。


丘守りは、腹を抱えて、こちらを見る。


なんか食べられそうだな……。


オイラは丘守りに話しかける

「こんにちは。丘守りさん。廃人ゲーマーの事知ってる?」


「なんだ。

小さいの。

廃人ゲーマー?

そんな事より、

お前ハンバーグのニオイがするな。

広場のハンバーグか?」

そう言った。


「そうだ。ハンバーグだよ。オイラ今日始めてハンバーグ食った。

あんなに美味いもんは始めてだ」

とオイラは言った。


「そうだろう。あれは美味いな。

お前なかなか見どころがある」

と丘守りは言った。


「丘守りさん。頼む。廃人ゲーマーの事を教えてくれ。礼はする」

そう探偵は言った。


「その小さいのにめんじて、教えてやる。俺も今からハンバーグを食いにいくから金を出せ」

と丘守りは言った。


「1Gではどうだ」

と探偵が言うと、


「それで良い。早く食いたい」

と丘守りは言った。



丘守りは、金を確認して、こう言った。


「金の剣だ」


「金の剣?それはいったいどういう事だ」

と探偵は尋ねる。


「廃人ゲーマー=金の剣。それは常識。タコには3つ心臓があるくらい常識だ」


そう言ったきり、なにも答えなくなった。


金の剣とはどんな意味なのだろう。


探偵はオイラに言った。

「金の剣に心当たりはないか?」


オイラは首を振った。


探偵の表情は少し曇っていた。


あと塔はひとつ。

これで答えがわかるのだろうか?


まぁオイラは長引いて、美味しいものが食えるなら、それでも良い気もするけどな。


そうしてオイラ達は6の街を出た。


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