色欲
今日は5の丘だ。
5の丘は5の街の中にある。
ここの街は色街というらしい。
オイラはよく知らないが、
大人がムフフな事をする街だと言っていた。
この街に入ってから、探偵の様子がおかしい。
なんかだらしない顔をしている。
いつもは眉間にシワを寄せて、眩しそうな顔をしているのに、ずっと鼻の下とか口元が緩みっぱなしだ。
「なぁ探偵さん。前にこの街は大人がムフフな事をする街だって、大人が言っていたけど、ムフフってなんなんだ」
とオイラは聞いた。
「ムフフ……、
そうだな。
ムラムラ、ふっくら、ふくらむ。
みたいな事だ」
と探偵は言った。
「なんか、よくわからないけど、探偵さん、オイラをバカにしてないか?」
とオイラは言った。
「じゃあ。あそこの兄ちゃんに聞いてみろ。ムフフは、ムラムラ、ふっくら、ふくらむって感じか?って」
と探偵は言った。
オイラは素直に屋台の兄ちゃんに聞いてみた。
兄ちゃんは大爆笑して
「違いない」
と笑っていた。
兄ちゃんは
「このピラフもムフフだぞ」
って言った。
オイラが
「どういう意味って聞くと」
「ムラなく炊いて、ふっくら、不思議な食感」
と言った。
オイラが探偵さんのほうを見ると、
「兄ちゃん、あんたもおもしろい奴だな。ピラフ2人分くれよ」
と言って、ピラフを買ってくれた。
兄ちゃんが言うには、ピラフは米をバターで炒めて、スープや具材と一緒に炊き上げるらしい。
オイラは米というものを、初めて聞いたので、兄ちゃんに聞いてみた。
「米というのはね。小麦みたいなモノなんだけど、粒のまま使う事が多いんだ。
あと小麦は乾燥したところで栽培されるけど、この米というのは、水を張った田んぼという池みたいなところでとるんだ。
味とかも違うから、食べてみたら、なんとなく違いがわかるよ」
と教えてくれた。
ピラフはプチプチしておもしろい食感だった。
米のひとつひとつがスープの味がした。
オイラは米というものが初めてだったけど、美味いなと思った。
探偵が言ってたけど、世界には、小麦が主食の国、米が主食の国、豆が主食の国、イモが主食の国があるらしい。
オイラは孤児院時代はイモばっかりだったから、イモが主食。
最近までは、蒸しパンばっかりだったから、小麦が主食。
あれ?じゃあオイラの主食は?オイラの国の主食は?
「なぁ探偵さん。この国の主食はなんなんだ?」
と探偵に聞いた。
「そうだな。俺の住んでいた地域は小麦が多かったな。
となりの街は米だった。
そう考えると、国単位ってところもあるけど、街単位でわかれているところもあるのかもしれないな」
と探偵は言った。
オイラはそれで納得できた。
オイラ達は、
食事を終えて、丘守りのところを目指した。
今回は結構近い。
「そういえば、Ncityには警察ってないのか?」
と探偵は聞いてきた。
「警察ってなに?」
オイラは聞いた。そんなもの聞いたことがない。
「悪い奴を懲らしめる仕事の人だ」
と探偵は言った。
「う~ん。そういう仕事の人はいないけど、悪い奴とか横暴な奴は、だいたい次の日には亡くなってるよ」
とオイラは教えた。
普通そうじゃないのかな。
「亡くなっているって?」
と探偵は言った。
「そんな悪い奴とか横暴な奴って、邪魔だろ。だからみんな襲うよ」
そう教えた。
「なんでそこまでする?懲らしめるだけでいいだろ」
と探偵は言った。
「そんなことオイラに言われたって、困るけど、この街は人数制限があるから、一人でも減ったほうがいいんだよ。そう考えたら、まっさきに性格の悪い奴を狙うでしょ」
とオイラは教えた。
「まぁそうか。ということは、街が悪者を取り締まったりとかはしないんだな」
と探偵は聞いてきた。
「そんなの。わざわざ街がしなくても、後ろから襲えばいいだけの話だから、みんなやるよ。婆ちゃんだってするよ。
こないだも、占ったのに、金を払わなかった男を後からつけて、殴って始末してたもん。
持ち物が割と高値で売れたから、ラッキーだったって言ってたよ」
とオイラは言った。
「ボウズも、始末したことあるのか?」
と探偵が聞いてきたので、
「オイラはそんな変な客に捕まらないから、まだ始末はしてない」
そう答えた。
すこし探偵が安心した顔をしたように思えた。
「じゃあ。この街は、人を始末することに、あまり躊躇はないのか?」
そう探偵が聞いてきた。
ちょっとこの人は失礼な人だとオイラは思った。
「一応この街はどんな職業でもいけるけど、人を始末したり、強盗を行ったりするのは嫌われている。だからあんまりする人はいない。逆にすぐに始末されるから」
そう教えておいた。
……
10分ほど歩いて、
オイラ達は丘守りの住む塔についた。
塔はいたるところがピンク色に塗られていた。
丘守りは、下から上まで、舐めるようにオイラ達を見つめた。
なんだか少し気持ち悪いな……。
オイラは丘守りに話しかける
「こんにちは。丘守りさん。廃人ゲーマーの事知ってる?」
「カワイイ坊や。
廃人ゲーマー?
知ってるわよ」
そう言った。
「丘守りさん。頼む。廃人ゲーマーの事を教えてくれ。礼はする」
そう探偵は言った。
「じゃあ一晩付き合う?」
と丘守りは言った。
「1Gではどうだ」
と探偵が言うと、
「あら残念。2人とも良い男なのに……、
じゃあさっさと金を出せ」
と丘守りは言った。
丘守りは、金を確認して、こう言った。
「黒のライオンよ」
「黒のライオン?それはいったいどういう事だ」
と探偵は尋ねる。
「廃人ゲーマー=黒のライオン。それは常識よ。そうね。ナマケモノが1週間に1回しか排出しないくらい常識よ」
そう言ったきり、なにも答えなくなった。
黒のライオンとはどんな意味なのだろう。
探偵はオイラに言った。
「黒のライオンに心当たりはないか?」
オイラは首を振った。
探偵の表情はやはり曇っていた。
探偵には、このなぞなぞは難しいみたいだ
そうしてオイラ達は5の街を出た。