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靴磨きの少年と探偵

オイラは1039番。Ncityで靴磨きをしている。


なんかここいらでは見かけない男がいる。

赤いバンドをしている。

観光客かな……。

あっこっちにやってきた。

営業をかけなくては。

「旦那、おはようございます。靴磨きはいかがですか?」

いつものようにセールスを始める。この言い方は、知り合いの靴磨きの爺さんの真似だ。

一応、オイラの師匠。

勝手に真似しただけだけど。


「子供のくせに大人ぶった口調だな」と男が言う。


足は台に乗せてある。

片側の踵だけが異常にすり減っている。

かなり歩き回る仕事をしているな。

Ncityにはなにをしに来たのだろうか。


「師匠の受け売りです。

旦那はこの街にはどうして来られたのですか?」

オイラは聞いた。


「ボウズお前鋭いな。

なんでわかった」

と男は聞いた。


オイラは自分のブレスレットを見せ、男のブレスレットに近づける。


「そのブレスレットは街の入り口で渡されたものでしょう。

それは客人用、こっちの青いのが住人用です」

そうオイラが言うと、感心した顔をして、

「おいボウズ、お前の1日の稼ぎはいくらだ」

と聞いてきたので、


「いくらお客様といえども、1日の上がりを聞くなんて失礼ではないですか?」

と言うと、


「あぁそうだな。それは失敬。いやな、お前さんが、この街に詳しそうなんで、ガイドを頼もうかと思ってな。

10日なんだが、どうだ……

頼めるか」

と男は言った。

悪い男ではなさそうだが、事情があるようだ。

まずは報酬を聞いてみよう。

「報酬は?」

とオイラ、


「そうだな。10日で1Gでどうだ」

と男、こいつなにを言っているんだ。

オイラの稼ぎは1日で0.01G。

そんな美味しい話があるわけない。

オイラが黙っていると、

「ちょっと安すぎか、じゃあ、その期間中の食事代も全部俺が奢ろう」

そう男は言った。


いやさらに美味しい話になってしまった。


「事情があるの?」

オイラはそう聞いた。


「そうなんだ。人を探していてな」

と男、


「お知り合いですか?」

とオイラ、


「いや……知り合いではない。実は、探偵なんだ」

と男は言った。


なるほど探偵か……。

だから金をもっているのか、

なら大丈夫そうだな。


「わかった。でも10日以内で終わっても1G、10日を超えるなら、別に料金、あと毎日少しずつでも欲しい。逃げられたら、飯食えないから」

とオイラ、

ちょっと言い過ぎかな。


「あぁそうだな。それでいい。とりあえず0.1Gを払っておく。

これが今日分だ」

と男は言った。


「わかったよ。じゃあ今日はこれで店じまいをするよ。

で探しているのは?」

とオイラ、


「7つの丘に心辺りはないか?」

と探偵は言った。


「この街には7つの丘があるんだけど、その事ではないかな?」

とオイラ。


「『7つの丘を見たのか』

と言う言葉に聞き覚えはないか?」

と男、


「それはないけど……7つの丘にはそれぞれ丘守りという丘の頂上から外敵がこないか監視する人が住んでいる。

その人に聞けばわかるかもしれない」


「これから、すぐに行けるか?」

と男、


「今からだと少し厳しいかな。明日朝一番で行くといいと思う」

とオイラは言った。


隣の占い師の老婆が覗き込んできた。

「人探しなら、ワシが占ってやろう」

そう言ってきた。


「探偵さん、この婆ちゃんの占い当たるんだぜ」

そう言うと、


「じゃあ頼む」

と探偵は言った。


「……愚者の正位置か、悪くない。素直に行くことだね」

そう老婆は言った。


「ありがとう。いくらだい?」


「0.03G」


「ほらよ、ありがとうな。

じゃあボウズ行こうか」


オイラは荷物をせおって、探偵について行く。


老婆がオイラに手を振って

「坊や、素直に行くことだよ」

と言った。


「ところでボウズ、お前の名前はなんだ」

探偵は聞いてきた。


「オイラは今1039番、名前ある奴なんかココでは極一部だよ。

だからボウズでいいよ。番号でもいいけど」


「あぁそうか……。

じゃあボウズと呼ぶ。俺は探偵でいいよ」

と探偵は言った。


「わかったよ。探偵さん、」


「それでボウズ、俺はココでホテルを借りようと思っているんだが、お前はどこに住んでいるんだ」

と探偵、ほんと何も、知らないんだな。


「ここいらの子供はだいたい野宿だよ。オイラも野宿だ」

そう教えてやった。


「そうだったか……。

じゃあ、しばらく俺のホテルに泊まれ」

と探偵は言った。


「ホテルなんか泊まる金ないよ」

そうオイラが言うと、


「それは大丈夫だ。俺が払うから」

探偵はそう言った。


「わかった」

そう言いついて行った。


「なんか美味いものないか?」

探偵がそう聞くので、蒸しパンの店を紹介した。


オイラのふだんの食事は蒸しパン。というか、ここに来てから、それしか食べた事がなかった。


「これしか知らないのか?」

って聞くから、

「オイラはそれしか食べたことがない」

と言うと、驚いた顔をしていた。


「ボウズ……。ココで、前から一度は食って見たかった、そんな食べ物はないか?」


そう聞くから、串焼きの話をした。


「広場の串焼きの店がすごい美味そうなニオイをさせてるんだ。

もちろん食った事はないけど」

そう言うと、

「じゃあ案内してくれ」

と探偵は言った。


今日も串焼き屋はいいニオイをさせていた。


「ほほぅ、ここか……。

たしかにいいニオイだな」

探偵は興味深かげだった。

もしかして奢ってくれるのかな?

0.03Gもする高級品だぞ。

さすがにないか。


「大将、それを二つ……。

いや4つ貰おう」


「あいよ0.12G」


「はい。これ。ありがとうな」

探偵は4本も串焼きを買った。

この探偵大金持ちなのか。


「ほら、2本食え」

探偵は串焼き2本をオイラにくれた。


叶わないんじゃないかと思っていた夢が叶った瞬間だった。


串焼きはイモとも蒸しパンとも違った。

中から、じゅわっとなにか透明で熱い液体が出てくる。


「なんか汁みたいなのが出てくる」

そう探偵に言うと、


「それは肉汁って言うんだ」

と教えてくれた。


串焼きはとても美味しかった。


これから10日間なにが起こるのか、オイラにはワクワクしかなかった。


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