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第十八章 首長竜の巣

 一、二億年もの昔、古代や中世代と呼ばれた頃、地上に君臨していたと言われる生物、恐竜。

 一般的に体が巨大であり、爬虫類を連想させる。大きいからといって必ずしも肉食ではなく、草食の恐竜もいる。そして、空を飛ぶものは翼竜、海に住む恐竜の仲間を魚竜、海竜などと称して区別している。

 一平の目の前にいるのは海竜の一種と思われた。

 海に浮かんだ巨体から細く長い首が伸びている。プレシオサウルス。首長竜である。

 とうの昔に絶滅したはずの古代生物が今一平の目の前にいた。

 さらに驚いたことに、そのプレシオサウルスの頭の上には小さな人魚が乗っていた。

 パールだ。

 一平の脳裏を大亀のドンと会った時のことが過った。

 あの時、亀の首の上に乗ったまま水中から持ち上げられて、パールはギャーギャー喚き立てて怖がっていた。

 今は違う。声を出しているのは同じだが、怖がってはいない。まるで肩車をしてもらった幼児のようにキャッキャとはしゃぎ、この状況を楽しんでいる。

「ほんとだ。一平ちゃん、起きてるぅ」

 大口を開け、一平を指差して笑う。

 呆気に取られる一平の様子が余程おかしかったのか、身体をプレシオサウルスに押し付けて笑いを噛み殺している。

 プレシオサウルスが動いた。

 聳え立った首を器用に曲げ、頭を砂地の方へ突き出すように下げた。

 クレーン車よりも大きいのに信じられないほど滑らかだ。パールが身体の安定を保つ努力をする必要もないくらいに。

「よいしょ」と、パールが海竜の頭の上から降りてくる。

 目を丸くして言葉も出ない一平を見上げて「驚いた?」と尋ねる。瞳がいたずらっけを帯びていて可愛らしい。

(そうか…)

 一平は気づいた。

 自分もこんな感じで運ばれたのに違いない。意識がなかったので、口に咬えられたのかもしれないが、これなら波打ち際からここまで運ぶのなど簡単だ。

(だが、なぜ?この海竜は一体⁉︎…)

「すごいよ。クァオンがね、一平ちゃんがもう起きてるって言うから来てみたら、本当にその通りなんだもん」

「クァオン?」

 聞き慣れない名を聞き返した。

「うん。この子の名前。パールがつけたの。クァォーンって泣くからクァオン。ね。いいでしょ⁉︎」

(それはいいが…『この子?』それに、ボクが起きていることがわかる、だって⁉︎)

「おまえ、こいつと知り合いなのか?」

 途方もない発想だが、訊いてみた方が良くがいい。

「うん。お友達になったの。クァオンはまだね、一歳なの。パールより小さいんだよ」

「友達って…今、友達になったのか?それとも前から…」

「今じゃないけど、前からじゃないよ。さっきから」

 パールの言いたい事はわかる。一平が気を失ってから今までの間、という意味だ。

「…話が…できるのか?…」

 今更驚くことでもなかったが、予想通り「うん」という答えが返ってくる。それでもやはり驚きは隠せない。鳥でも鯨でも亀でもない。なんと今回は『海竜』なのだ。

「トリトニア語で?話せるのか?」

 残念ながら、それは無理のようだった。クァオンは二人のような発声器官を持っていない。従って、トリトニア語を言語として使うのは不可能だったのだ。パールの言う通り、クァオンと聞こえる鳴き声を発するものの、言葉としては聞こえてこない。

 ではなぜ、言葉がわかるのか?

 簡単である。わかろうとするからわかるのだった。パールの感覚ではそうだった。ちょうど、意思の伝達手段が異なる犬が、主人の人間の行動を逐一観察し、その意図するところを読み取り、従うように。飼い主の方も鳴き方一つでペットの犬が何を望んでいるのかわかるように。それの顕著なもの、拡大されたものと考えればいいだろう。

 とは言え、それも一種の特殊能力であるようだった。

 言われて一平も努力してみたが、喜怒哀楽ぐらいは察することができても、細かなところまでは理解できない。


 パールに聞いたところによれば、経緯(いきさつ)はこうである。

 鮫が去った後、一平の体重を支えきれずに途方に暮れていたパールの前に、突如現れたのがこの海竜のクァオンだった。

 クァオンは生まれてまだ一年しか経たないが、そろそろ成竜になりかけている。優しい歌声が聞こえてきたので海底の深みから好奇心に駆られてやってきたと言う。鮫はおそらく海竜の気配を感じ取って、身の危険を回避するべくこの場を離れたのだろう。鮫の聴覚も二、三キロ離れた所でも聞きつけるというから。

 という事は、この海竜は肉食なのだ。しかも、鮫のように大きな魚でも食べる…。

 そして歌の主がパールと知り、もっと歌ってくれとせがんできたのだ。

 嬉しいが今はそれどころじゃない。一平の怪我を治すのが先だと。血を早く止めるため陸上に連れて行きたいが一人では運べないと。パールの事情を話すと力を貸してくれた。一平を咬え、パールを背に乗せて、悠々と、しかも凄いスピードで絶海の孤島へと案内してくれたのだ。

 島の上でパールは一平の足の痛みを麻痺させ、出血を止め、刺さった鮫の歯を抜き傷口を塞いだ。

その前に全ての噛み傷に唇をつけ、一つずつ舌で舐めて消毒をする。誰に教わったのでもない。こうする必要があると、パールの身体の奥から誰かが主張するのだった。

 太腿の歯の跡は二十個は悠にあった。その全てをパールが己の舌で舐めまくったのだと聞いて、カッと身体が熱くなったが、傷跡は見事に修復されている。感心すると同時に、その時寝ていたなんて惜しいことをしたな、などと思ってしまった。

 出来る限りの処置をしても、一平は目を覚まさない。それだけ身体が休眠を欲しているのだとクァオンに促されて、パールはしばらく一平をそのままそっとしておくことにする。そばについていたいがそうもいかない。太陽は今日も元気がいい。パールはクァオンの勧めで滋養強壮に良いというアワビや昆布を探したり、鰻を捕まえたりした。その他はもちろん、遊んでいた。


「ありがとな」

 パールの話が済むと、一平は真面目な顔をして言った。

「また、おまえの厄介になっちゃったな…」

 一平はちょっと情けなさそうな顔になる。

 パールはむきになった。

「厄介じゃないよ。パールがしたくてするんだよ。それより、一平ちゃんの方がずっと大変だったよ。パールの不注意だったのに…。パールだけ逃がして一平ちゃんだけ鮫の方に行っちゃうなんて危ないよ」

 最初はあまり心配していなかったのにこういう結果である。世の中何が起こるかわからないとパールは思ったらしい。

「もう、しないでね。今度鮫が来たら一緒に隠れようね」

 年下の女の子に気遣われるのはちょっと面映い。一平は言った。

「それまでにはもっとトレーニングして強くなっておくさ。早く、敏捷にね」

「それでも怪我しちゃったらどうするの?パール知らないよ?」

 自分の提案を退けられたのでちょっと気分を害しているようである。

「もう治してくれないってことか?」

「そんなこと、できるわけないじゃん。治すけどさ。治すけど…もう怪我しちゃ嫌だって言ってるの‼︎」

 パールの唇が尖ってくる。わかってもらえなくてじれったいのだ。

「冗談だよ。冗談…。ボクだって、怪我なんかしたいわけじゃない。おまえには本当に感謝してるんだ…」

 一平はしみじみと、右の太腿と右腹、そして二の腕の傷に目をやった。その他にも小さな怪我や擦り傷は数えきれない。

「…彼にも、礼を言わなきゃいけないな。わかるかな?」

 そうだ、と思い出して、一平は海辺に佇む海竜を見上げた。

 クァオンは浅瀬に巨体の殆どを突き出してずっとそこにいた。長い首を大儀そうに浜の上へ伸ばして寛いでいる。まるで寝そべって地面に顎を突き出している子犬のようだ、と一平は思った。

「よろしく…クァオン…。ボクのことをここへ運んでくれたそうだね。ありがとう」

 寝そべっていても見上げることになる海竜は一平の声を聞くとパッチリと目を開けた。底知れぬほど青い瞳が意外なほどまっさらで幼い。パールと同じく円らな目は、悪いことを知らぬげにキラキラと輝いていた。

 大きく瞬きをして、海竜は首を擡げる。一平の前に正対すると、ピンク色の舌を出し、一平のことを下から上までペロリと舐めた。

「うわ…」

 犬や猫―いや、牛や馬といってもいい―に舐められるのとは段違いに違い過ぎた。一平は思わず身を竦め、尻餅をついた。

 それをまた、パールが大笑いして見ている。

「だめだよぉ…。もっと、そーっとしなくちゃ…」

 本当にだめだと思っているのか?と疑いたくなるような口調で、パールはクァオンを窘める。

「ごめんね、一平ちゃん。この子悪気はないの。身体が大きいからこうなっちゃうの。一平ちゃんに、『どういたしまして。良くなってよかったね』って言いたかっただけなんだよ」

 パールのとりなしに一平は目を細めた。

 幼い幼いと思っていたこんな小さな女の子が、見たら腰を抜かしてしまいそうに大きい生き物を庇って先輩気取りをしている。

 微笑ましくて、嬉しくて、そして誇らしかった。


 クァオンに案内されて、一平とパールは首長竜たちの巣へと足を踏み入れていた。

 クァオンのたっての願いで、彼の仲間たちにバールの歌を聞かせてほしいと頼まれたからだ。

 大怪我をした一平を陸地まで運んだクァオンは、歌を歌うことでパールが一平の傷を治したのを終始眺めていた。

 そもそもこの首長竜が二人の前に現れたのはパールの歌を聞きつけたからだったし、その上この歌に傷の具合を快方に向かわせる力があるということがわかったからには、ぜひとも自分の仲間たちに聞かせたいと思ったからだ。

 仲間と言っても、クァオンが一番に想定したのは彼の母親である。クァオンの母親は病んでいたのだ。

 クァオンを産んでから体調を崩し、近頃では狩りもままならなくなっている。きっとこの不思議な歌を奏でる少女が母の体を治してくれると、クァオンは感じたのだった。

 パールのことは早くトリトニアに帰してやりたいが、期限付きでも急ぐ旅でもない。それに(クァォン)には恩がある。

 パールが一平を陸上で手当てした方が良いと判断したのは、以前腕を怪我した時に一平が陸上で休むことを選んだのを覚えていたからだ。が、パール一人では一平を陸上には連れて行けなかったし、こんなに早く回復しなかっただろう。

 二列に及ぶ鮫の歯は内側が中を向いていて、噛み付いたら容易に剥がせない仕組みになっている。獲物を逃さないメリットはあるが、逆に剥がしにくいので、鮫の歯は簡単に抜ける仕組みにもなっている。一平の太腿には、咬み傷だけでなく尖った歯先がたくさん刺さったままだったのだ。それを一つ一つ、余計に傷つけないように取り出し、舐めて消毒をし、歌うことで気を一平の身体の中に送り込む。パールがしたのはそういうことだ。理屈を理解した上でしている行為ではなかったが、適切な処置ではあったらしい。

 鮫にやられた者の多くは、傷そのものよりもむしろ失血のせいで命を失っている。止血のためには陸上が有利だ。血液が空気に触れることが効果的なのだ。そのための手伝いをしてくれたクァオンは、一平の命の恩人だと言っても過言ではない。一平の命を脅かした鮫を追い払ってくれたのも、他ならぬこの海竜の存在だったのだから。

 

 深い深い海の底に、クァオンは二人を連れて行った。

 二百メートルも潜ると、もう陽は微かにしか届かない。光合成もできなくなる。スキューバダイビングで人が潜れるのは、せいぜい百メートルが限度だ。

 けれどクァオンも一平たちにもさしたる苦ではなかった。身に備わった能力で、光がなくとも、物の形も動きもわかる。さすがに色は鮮やかには見えないが、普通に生活するのに不自由はない。

 底知れぬ深い海の底に、首長竜たちは身体を丸めて蹲っていた。

 オールのような鰭を体側につけ、長い首を蛇のとぐろのように体の周りに回し、反対側から伸びてくる尾の先とで輪を作るような姿勢で寝入っている。体こそ大きいものの、犬や猫が寛ぐのと雰囲気は大差なく見えた。

 首長竜の巣、というか彼らの縄張りでは、二人のような訪問者は珍しくもないらしい。皆取り立てて驚いた様子を見せたりはしなかった。体が桁違いに大きいのだ。ちょっとやそっとのことで動じるような柔和な神経は持ち合わせていないのだろうし、その必要もなかった。黙っていても、いるだけで他の動物たちは恐れをなして逃げ出してしまうだろう。

 クァオンたちは、おしなべて小さな頭と長い首を持ち、四肢の外翼部が長かった。地上の人間たちの分類で言うと、ジュラ紀に生息したプレシオサウルスの特徴を示している。魚や頭足類を探し、首を素早く動かすための適応と考えられている。歯は細長い円錐形で、小型の獲物の体を刺し貫いて、そのまま飲み込むのに適していた。

 同じ首長竜でも、流線形に近い体を持つプリオサウルスは、先端の摩滅した円錐形の歯を持っている。これは強肉食性の証しであり、おそらく他の首長竜や魚竜その他の大型海生生物を襲って食べていたのだろう。鮫がクァオンの接近に慌てて逃げて行ったことから推し量るに、鮫や象と同じく巨体の割にはおとなしい性質のプレシオサウルスは、ブリオサウルスと同一視されて恐れられているのかもしれない。

 クァオンはまず母親のところに二人を連れて行った。


 クァオンの母親は、群れの外れで一人静かに蹲っていた。

『母ちゃん。お客様を連れてきたよ』

『お客⁉︎』

 クァオンと母親の間でやりとりがなされるが、無論一平に理解できようはずもない。どういう客かを説明する息子に半信半疑の眼差しを向けて、母親は僅かに首を擡げた。

『そんなばかな話があるものかね…』

 母親に一笑に付されてむきになり、クァオンは反論を始めた。

『本当だよ。"一平ちゃん"の足を見てよ。"パール"が治したんだよ』

 クァオンは長い鰭で一平の背を母親の方へと押しやって証拠を見せようとする。何を言われているのかわからないのでたまげたが、病気の母竜は大儀そうで危険な素振りは全くなかった。

 八センチほどある目が一平の太腿を凝視する。

 まだ治りきっていない生々しい傷跡が、一瞥では数え切れないほどあった。

『それが…半日前に鮫に食い付かれた傷なのかい? 』

『そうだよ。ね。パール⁉︎』

 同意を求めてパールを見下ろすクァオンに、パールは屈託のない笑顔を見せて頷いた。

『おばちゃんはどこが悪いの?』

 邪気の全く感じられないパールの声音と表情に感じ入るところがあったのだろうか。母竜は興味を惹かれたように身を起こした。

『この子を産んでから体力がなくなってねえ…。体がだるくて何をする気も起こらないのさ。食欲も湧かないし、体が重く感じられて仕方がないんだよ…』

 体が重いという感覚とは裏腹に、母竜の血肉は減少して痩せ細り、物質的には小さく軽くなっていた。周りの成竜たちと比べても明らかに一回り小さく、皮膚にも張りがない。

『痛くはないの?』

『そうさねぇ…。痛いと言えば、痛いのかもしれないね。体中が鈍く、しくしくとね。…もう慣れちまったが…』

『あのね…。パールね。パール、何人かの人に言われたことがあるの。癒しの力があるって。歌ってあげると、痛いのや傷が、治ったりするの。その代わり眠くなっちゃうんだけど、おばさんにも歌ってあげていい?せっかく、ここまで来たから…』

 おずおずと、遠慮がちにパールは申し出た。クァオンに頼まれてきたのには違いないが、この母竜の覇気のない様子を見て、心からそうしてあげたいと思ったのだ。

 それと知らずに鯨を癒した頃に比べて、格段とパールの力は強くなっていた。治したいと強く意思を持つことで一平を死の淵から救った実績は、己の持つ能力に少しばかりの誇りと自信をつけさせた。

 何かと引き換えに施してやろうという驕りではない。純粋に、相手の心身を気遣い、労り、快方へ向かってほしいと願う思いがパールの全身から滲み出ている。

『…見ず知らずのあんたにそんな迷惑をかけるわけにはいかないよ。眠くなるという事は、それだけのエネルギーを消耗するということだからね』

『知らない人じゃないよ。クァオンはパールの友達だもん。だからクァオンのママはパールのお友達のお母さんでしょう⁈』

『………』

「やってもらおうよ。母ちゃん。ぼく…母ちゃんと一緒に泳いだり、狩りに行ったりしたいよ。それに…」

 自分が生まれたせいでこのような体になってしまったのかと思うと辛い、と言いそうになり、慌てて飲み込んだ。母に負い目を感じさせる言葉だったからだ。

 だが、母竜にはクァオンが考えている事はわかってしまうらしい。一歳とは言え、赤ん坊とはとても思えない息子の成竜としての思いやりと、仔竜として当たり前の甘えた願いを同時に感じ取り、母竜は胸が締め付けられる思いがした。

 この子にこそ、負い目を感じさせてはならない。寂しい思いをさせ続けている我が子に報いてやる術は今までなかったが、試してみる価値はあるかもしれないと思い直した。

『わかったよ。坊や。…じゃあ…お願いしようかね。パールさんとやら』

『はい』

 満面に笑みを湛えると、パールは一平を振り返った。深い海の底だというのに、青い瞳がキラキラ輝いて、"いいでしょう?"と訊いている。

 言葉がわからなくても、気をつけて成り行きを見ていれば大体の事はわかる。パールがもう暫くここに留まりたいのだということを理解して、一平は言ってやる。

「好きなようにしろ」と。


 パールは大きく息を吸って目を閉じると、姿勢を整えて何かを念じ始めた。

 穏やかな海底で、敬虔な空気が醸し出された。

 やがて開かれたあどけない桜色の唇から、魂を震撼させるような清らかな歌声が紡ぎ出され、涼やかに辺りに響き渡った。

 いつも一平に歌ってくれる歌とは少し異なっていた。意味があるとは思えない異国の言葉に聞こえる歌詞が、澄んだソプラノに乗せられて心安らげるメロディーを運んでくる。わけもなく涙が溢れそうになるほどの清々しい清冽さ。湧き出る清水で心が浄化されるような瑞々しさが、そばにいる一平の心にも伝わってくる。

 夢の中にいるようにふわふわして気持ちよかった。

 気がつくと、一平の周りで、竜たちは眠りこけていた。パールの力が皆にも波及してしまったのだ。自分もそうだったらしい。そして、パール本人も。

 これは、癒しの力と体力の両方の消耗のせいだ。起こすわけにはいかない。起こしたとしても、気持ちよく起きるわけがない。一平はパールの傍らに寄り、いつものように片腕を枕にしてやって横になった。

(ご苦労さん…)

 天使のようなパールの寝顔を見下ろして、一平は目を細めた。

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