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【前編】極星の詩(ウタ)

 

 日露戦争、旅順港の戦火はなおも凄烈であった。爆音の鳴りやまぬ爾霊山にれいさん、後の世で言う203高地に、若き士官たちの命が次々と散っていく。


「進め! 進め! 立ち止まるな!」


 必死に小隊を指揮しながら砲弾の雨の中を駆ける青年。

 彼の名は乃木保典(のぎやすすけ)

 第三軍の司令官である乃木希典の一人息子だ。


 正確に言うなら彼には勝典という兄がいたのだが、少し前の南山の戦いで腹を撃たれて死んでいる。

 なので今はもう正真正銘の一人息子だ。


「怯むな! 進めー!」


 かの乃木希典の息子。軍神の一人息子である彼は。

 この日。飛んできた砲弾によりその命を散らしたのであった。


 戦友の叫び、砲煙の向こうの閃光、熱を失ってゆく肉体。

 死は確かにそこにあり、軍の報告にも彼らの名は「戦死」と記された。


 だが──

 奇妙な噂が、その後に残された。


「乃木大将の息子たちの遺体が、跡形もなく消えた」


 埋葬の直前、検視の寸前。はたまた埋めた後に掘り起こされた。等。

 一つだけ確かなことは。

 二人の遺体は、兵も軍医も目を離した一瞬に煙のように消え失せたのだ。


 消えたのが普通の兵であればそのまま気にも止められなかっただろう。

 だが消えたのは軍神と呼ばれる男の息子たちだ。


「本当は二人とも生きていたんじゃないか? 乃木大将が匿っているのでは?」


 そんな馬鹿馬鹿しい噂の他に、敵の攫いか、情報攪乱かと議論されたが、父親である乃木希典本人の希望もあり、結局真相は闇に葬られたのだった。


 そんな奇妙な事件から一年ほど後。


 ……北海道・増毛町。

 北海道の玄関口である函館を大きく回り、流通の中心地である小樽港を経由した後。

 すこし奥まった場所にある町だ。

 大きくも小さくもなく、取り立てた特徴と言えるものは無い。

 あえて言うなら

 後に乃木希典に酒を納め、褒められたことで名付けられた銘酒を関する酒蔵。『国稀酒造』の前進である雑貨商『丸一本間』があるぐらいか。


 海と山が交差するこの地に、ひっそりと建てられた“廟”に、

 冷たい躯が二つ、密かに運び込まれていた。

 その場にいたのは、白衣をまとった異様な風貌の医師のような男。

 男はハーフ顔。つまり異人との混ざりものの血だ。

 さらに奇妙なことに男は名を名乗らなかった。


「ご苦労。帰っていいぞ」


 人足に過剰とも思えるほどの駄賃を渡し、問答無用で帰らせる。

 だが人足たちは特に不満も言わない。

 いつもの事だからだ。


 町はずれに急に祠を建て、

 そこに住み始めた奇人変人の類。

 それが彼。クリエ・ティビテートの評価だったからだ。

 ただ、人々は彼を追い出すことはしなかった。

 なぜなら噂があったからだ──彼には死者さえも甦らせる技術がある、という噂が。


 そう巷で囁かれるほどの名医であり。

 どんな病も彼にかかればお手の物。

 さらに村人には無償で治療をしてくれるのだから。

 追い出す理由もない。

 訳ありなのは明らかだったが、この時代に北海道まで来る時点で脛に傷があることなど普通。

 だからクリエだけが特別気に留められることは無かったのだった。


 さてそんな祠に運び込まれた二つの遺体。

 暗い処置室で遺体に手を加えようとする前に、クリエは二人の従者を呼び出した。


「フェルト・バウム。ネーベル・フェルト」


「フェルト・バウム。ここにおります」


 フェルト・バウムは落ち着いた雰囲気ながら軍人のような覇気を持つ青年だ。

 クリエの右腕のようにふるまっている。


「ネーベル・フェルトだ。何だよ? 熊でも出たか? 仕留めて来てやろうか?」


 もう1人のネーベル・フェルト。青年とは言えないが、壮年までは行かない程度の年齢。よく鍛え上げられた体を持つ男性。この男もまた軍人としての威厳を纏っていた。

 ふざけている様子のネーベルの冗談を無視して、医師クリエは言う。


「ここから先のことは……分かってるな?」


 念を押すように言うクリエに、ネーベルは肩をすくめる。


「はいはい。『あの事』だけは二人に言うなってな。何度も聞いてるんだから忘れねぇよ」


「それに追加で『お前ら』の正体の事も言うなよ」


「は……? おいおい、なんで俺まで含まれてんだよ?」


 喰ってかかりそうなネーベルにフェルト・バウムは言う。


「多分、僕の正体も類推されてしまう。……そういう事でしょうか?」


「ああ。ネーベルはいちいち余計なことを言うからな。ネーベルが誰か分かればフェルトの方も簡単に特定されちまうだろう」


「チッ。まあ否定は出来ねぇな」


 不満げなネーベルにクリエは勝ち誇ったような笑顔を向けてから言う。


「つーわけだから頼むぜ。『お前らの正体』と『あの事』だけは伝えるな。時期が来るまではな」


(それって実質一つじゃねぇのか?)


 不満げにブツブツ言っているネーベルを無視し

 クリエは目の前の遺体に目線を向ける。

 そして数刻の後。クリエの能力である創造の技により彼らに再び魂が宿る。

 やがて、乃木の息子たちはまぶたを開けた。

 最初に吐き出したのは吐息ではなく、叫びだった。


「……ここはどこだ……っ」

「我ら……戦死したはずでは……っ」


 だが彼らに応じたのは、目の前の風変わりな医師ではなく──

 その背後に立つ、影のような人物だった。


 フェルト・バウム

 黒衣をまとい、目には仄かに金の輝き。

 男は静かに告げた。


「目覚めたか。勝典、保典。その命は、極星祠のためにある。これより汝らは、我らと共に密命を背負う者となる。必ずお役に立つのだぞ。神のために」


 見知らぬ場所で目覚めさせられ、さらに見知らぬ青年が自分たちの名前を知っている。

 それ以上に混乱した保典はとある言葉に引っかかり聞いた。


「神?」


「俺の事だ。極星祠の教祖なんだから間違いではないだろ?」


 それとも預言者様とでも呼ぶか?

 ハーフ顔の風変わりな医師然とした男。クリエは当然のように言って不敵に笑う。


 乃木の息子たちは顔を見合わせた後。

 クリエが話が通じないタイプであることを理解し、そのまま大人しく話を聞くことにしたのだった。


 蘇りし者たち。

 命を奪われ、そして新たな運命を与えられた青年たち。

 彼らはまだ知らなかった──この地に生まれつつある“国家未満の信仰”が、

 いずれ世界をも巻き込む因果の焦点となることを。


 その夜、彼らの魂は再び火を灯された。

 “極星祠”の名の下に──


 ## 【前編】承


 名誉の戦死から一転。

 死体から蘇えらせられ、さらに怪しい新興宗教の手伝いをさせられることになった兄弟。

 勝典と保典。

 彼らにはいくらかの疑念こそあれど不満は無かった。

 丁重に扱われたのもさることながら、極星祠の司祭という役割は彼らに合っていたのだった。


 布教という名目で遠出し、出かけた先で新たに祠を建てるべき場所を選定する。

 その際に悩みがある人間の話を聞き、何か足りないものがあれば教祖であるクリエにそのことを伝える。

「小樽では米が足りないか……分かった」

 すると、どんなに遅くとも翌日には倉庫の中にその物品が納入されているのだ。

 その物品を持っていくだけで交渉はトントン拍子に進むのであった。


 もう一度書くが。今は明治時代である。

 そして明治期の北海道は寒冷であり、まだ稲作は行われていない。

 つまり米は外から運んでこなければ手に入らない訳だが、その時代にそれほどの速度で手に入れられる方法などない。

 種を聞いてみたらクリエは素直に教えてくれた。


「俺が能力で創造してるだけだ」


 神だからな。

 そう言ってタバコをふかしている教祖は続ける。


「表向きには運送業を営んでることになってる。フェルトとネーベルはそこの役員扱いだな」


 保典はカモフラージュに納得しつつも、とある懸念を口に出して言う。


「そういった能力には古来より代償が付き物と聞きますが」


 当然の疑問に神ことクリエは言った。


「そういうのは特に設定してないな」


 設定していない。つまり代償をつけようと思えばできるのにしていない。

 まさしく神のようにふるまう男に保典の畏怖の念は強まるばかりだった。


 ***


「……また。今日も新しい祠がひとつ、か」


 保典が呟く。

 その横で、勝典は雪の積もる道を無言で歩いていた。


 北海道の地に、ぽつり、ぽつりと増え始めた極星祠の社。

 その建立は、彼ら二人の手によるものだった。

 与えられた使命──“各地に極星祠を建て、信仰を広げよ”──という指令は、

 未だにその真意もわからぬまま、彼らの背に重くのしかかっていた。


「極星祠は……神道……に近いが、何か違う気がする」


 道すがら勝典がぽつりとつぶやくと、保典も頷く。


「ああ、北斗七星を祀るっていうのはいい。星は誰のものでもないからな」


「そして祠に伝わる伝説もいかにもそれらしい。寺田屋で襲われた後、瀕死の体を引きずって北海道までやって来た龍馬をアイヌが介抱し、息を引き取った。その伝説と共に坂本龍馬を祭ってるってのもいかにもって感じだ」


「龍馬は北辰一刀流の使い手だった訳だ。だから北辰の使いである北斗七星を祭るのは理にかなってる。龍馬を介抱したのがアイヌだから祠の司祭は和人以外から。つまりアイヌの血筋から出せというのも妥当だ」


 保典がそこまで言うと勝典は頷いた。


「ああ、だが……あまりにも出来すぎてないか?」


「その通りだ。ありそうな物語の詰め合わせって感じだな。不自然なほどにありうるからこそ怪しい」


「……そうだな。あの祠。……何かを隠してる」


 その“何か”を代表する存在が、彼らの補佐として付き添う二人の従者だった。


 一人はネーベル・フェルト。

 常に憮然とした顔で立つ壮年に近い年齢の男。激情を秘めた瞳をしている。

 無口で、戦場のにおいを残す男。


 もう一人はフェルト・バウム。

 仏のような顔をしているが、言葉の端々に“生きた軍人”の臭いが残っている。

 彼は穏やかすぎた。全てを見透かすような目をして、

 時折、遠いものを見るように黙り込んだ。


 そして何より──彼らは二人に「何も教えようとしない」のだった。


 ***


 遠路はるばる出かけていた勝典と保典は、ようやく家にたどり着く。

 彼らの家。極星祠本部である増毛町の祠に帰ってくると、たまたまその場にいたフェルト・バウムを捕まえて二人は聞いた。


「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないでしょうか?」


 あなた方の目的と。正体を。

 勝典も保典も、蘇ってからというものずっと抱いていた違和感があった。

 自分たちの死について。

 蘇生の理由について。

 そしてこの“極星祠”の目的について。

 何か意味があるはずだと。意味を持って軍神の息子である自分たちが選ばれたのだろうと。

 だが肝心の意味がどうしてもわからない。


 だが、どれだけ問いかけても──フェルト・バウムはただ笑ってこう言っただけだ。


「……君たちは、まだ準備ができていない」


 その言葉が、何の“準備”を指しているのか──

 彼らはまだ知らなかった。


 信仰とは、時に問いを受け付けない。

 与えられた使命を果たすだけの日々が続くなかで、

 彼らの中にじわじわと不穏な感情が膨らんでいく。


 それに気づいているのか。フェルト・バウムは言った。


「神が米を提供し、この町の酒造に作らせたお酒。『国の誉』……いや。今はもう『国稀』と呼ばれているのでしたっけ」


 こちらを飲みながらお話するわけにはいきませんか?

 フェルト・バウムは包み込むような優しさで二人に声をかける。

 その姿を見た勝典と保典は思った。

 まるで父親のようだ。と。

 乃木希典。旅順港を攻略し軍神とたたえられた軍人。


 見知らぬ青年に父親を見てしまった保典は、自分の軟弱さに恥じ入ったのか、外に飛び出していく。

 勝典はそれに続いた。

 フェルト・バウムが二人を見送る。

 その目が心なしか悲し気に見えたのは気のせいだったのだろうか。


 勝典が追いつくと保典は兄に言った。


「フェルト・バウム……あいつ、何か隠してる。 ……俺たち、騙されてるのかもしれねぇぞ、兄さん」


 そう保典が言ったとき、勝典は肯定も否定もしなかった。

 そして雪の中、ひとつの祠が完成した夜、

 極星の空に──北斗七星が揃い踏んだ。

 その星々は、まるで何かが始まることを予告しているようだった。


 ## 【前編】転


 勝典と保典が戦死した明治37年(1904年)

 そこから時は流れ、大正元年(1912年)の秋口。

 その日、日本中を震撼させる報せが駆け巡った。


「乃木大将、殉死──明治天皇の大葬に際し、殉じたとのこと」


 新聞の活字は黒枠で囲まれ、号外は民衆の手によって奪い合われた。

 老将の死は、軍人たちの心に深い影を落とし、

 そして……極星祠にも、静かな動揺をもたらした。


 北海道の小さな祠にて、その報せを受けた保典は、

 手にしていた箒を落とし、蒼白になった。


「……兄さん。これ、本当か……?」


 新聞を持ってきた勝典は答えない。ただ、共にいた一人の男を見つめていた。


 フェルト・バウム──その人。


 いつも通りの穏やかな顔。

 けれど、その背は、わずかに震えていた。


 数秒の静寂。

 風が祠の紙垂を揺らし、どこか遠くからカラスが鳴いた。


「やっと。この時が来ましたか」


 フェルト・バウムの声は震えていた。

 悲しみなのか、それとも喜びなのか。

 あるいはその両方なのか。

 保典にはそれを図りかねていた。


 その時。勝典が言った。


「フェルト・バウム……これはドイツ語ですよね?」


 保典は突然何を言い出すのかと呆気に取られたが、フェルト・バウムは黙って聞いている。


「フェルトは野。バウムは木。つまり二つ組み合わせると野木……。フェルト・バウム殿は乃木希典……父上なのではないですかあなたは?」


「……さあ、どうでしょうかね」


 フェルト・バウムは笑顔を崩さない。

 勝典はさらに続ける。


「そうなるともう一人の神の従者。ネーベル・フェルトの正体も類推できます」


「ネーベルは霧。フェルトは野。二つ組み合わせると霧野……」


「父上より少し前の時代に活躍した桐野利秋という人が居ます。父上よりも10歳ほど年上の薩摩の猛将だ」


 フェルト・バウムはゆるりと笑う。

 子の成長を喜ぶ父親のように。


「……まさか?」


「フェルト・バウム。あんた……あんた、乃木希典……父上なのか?」


 保典が絞り出すように言った。


 その瞬間、空気が変わった。

 風が止み、雪も、音を立てるのをやめたかのようだった。


 フェルト・バウムは、ゆっくりと振り返る。

 いつもは笑みをたたえるその目に、深い影と覚悟の色があった。


「……正解だ。君たちの目は、やはり確かだった」


 言葉は、まるで凍った湖面を割るように静かで重かった。


「私は、乃木希典……“元”大将。 いや、今となってはただの魂かもしれんな。君たちを蘇らせたのは、私ではない。だが、 私が君たちを“導く”ように創られたのは、間違いない」


 勝典が口を開きかけたが、言葉が出なかった。

 保典は拳を握りしめたまま、動けずにいた。


  「私は、死んだ。確かに一度。天皇陛下に殉じる形で──だが……」

  「“彼”が私を連れ戻した。君たちと同じように。 名前を変え、記憶を閉じ、そして……君たちの近くに立たせた」


「その理由を知りたいか? ならば……教祖のもとへ行くといい」


「あの方こそ、全ての始まりであり……全ての“先”を知る者だ」


 そして彼、フェルト・バウム。

 いや乃木希典その人は、そっと目を伏せた。



 雪が静かに舞っていた。

 まるで誰かの“記憶”のように。


 ---




 ## 【前編】結(完全版:予言入り)


 ──極星祠・本殿。

 増毛の山中に築かれたその社殿は、他の祠とは異なる空気を湛えていた。


 冬を迎える前の静けさ。

 雪も風も止まり、木々のざわめきすら息を潜める中、

 勝典と保典は、その扉を静かに開けた。


 中にはただ一人。

 あの日、彼らを蘇らせた“医師”──否、“教祖”がいた。


 男は、背を向けたまま佇んでいた。

 薄暗い本殿の奥に、仄かな光。

 その中心に、奇妙な“燭台”のようなものが立っている。


 金属製のそれは、七つの灯火を掲げていた。

 ──黄金のメノラー。


 保典が声を張る。


「教祖……っ! 本当に、あのフェルト・バウムが乃木大将。父上だったなんて……あんたは、何を企んでる!?」


 勝典も言葉を重ねる。


「……俺たちは、お前のために生き返ったのか? それとも……“道具”か?」


 その問いに、男──クリエ・ティビテートは、

 ようやく振り返った。


 高い頬骨、深い眼差し。

 その姿は人のようで、人ならぬ風格をまとっていた。


  「お前たちに与えた命に、嘘はない」


  「だが、真実はすぐには語れないな」


 睨みつけてくる勝典と保典に教祖は手で制止する。


「そう怒るな。理由がある」


 二人は唇を噛む。だが教祖は、静かに言葉を継いだ。


「この祠、この信仰、この蘇り…… すべては、“来るべき日”のための準備だ」


「その日が来たとき、世界は裂ける。 信仰は刃となり、血が星を濡らす。……その時お前たちは、自分がなぜ蘇ったのかを知るだろう」


 言葉の終わりと同時に、黄金のメノラーにひとつ、ふっと火が灯った。


 続けて、またひとつ。

 そしてまたひとつ──

 七つの灯火が、静かにすべて揃うと、その光は、まるで天井を貫き、天へ昇る光柱のように輝いた。


 教祖は言う。


「……そうだな。これぐらいは喋ってもいいだろう。これだけは覚えておけ」


「ユーラシア大陸の西の果て。 そこに“歪んだ太陽”が昇る時──我ら極星が、神の道を示す」


「今は意味がわからなくていい。 ……だが“あの紋章”を見たら、必ず思い出すことになるだろう。必ず、だ」


 勝典と保典は、言葉を失ったまま頷く。

 それは予言か、警告か、あるいはただの祈りか。

 彼らにはわからなかった。ただ、記憶の奥底に焼きつけた。


 そしてその言葉が再び浮かび上がるのは──

 数十年後。

 ハーケンクロイツの旗。歪んだ太陽が欧州を覆ったとき。


 やがて日本がその政権と手を結ぶとき、

 沈黙していた極星祠が再び目を覚ます。


 その先に生まれるものこそ、

 北の大地に生まれる“星の国”──北辰連邦だった。


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